「えっ!?」  
私の爆弾発言に、目を丸くする高坂。  
(ああああああああっ、遂に、遂に言っちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! どどど、どうし  
よぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!)  
自分で『目を見て』と言っておきながら、ギュッと閉じたまま顔を伏せる。とても高坂の顔を直  
視する勇気がない。  
いきなりこんなことを言われて、どう思ってるだろう? 驚愕? 困惑? それとも冗談だと?   
どちらかというと、そうあってほしい。何と言っても、これは一種の遊び。罰ゲームのようなも  
のだから。お互い笑って済ますことが出来る。  
でも、でも――もし、マジに受け取っていたら? 高坂は何と言うのだろう?  
 
高坂 『すいません、先輩。俺、もう好きな人が……』  
(言うな。聞きたくない!)  
高坂 『俺、実は水野のことが……』  
(聞きたくないったら!)  
 
最初から分かっていた。それくらい。だからこそ、聞きたくなかった。知りたくなかった。目を逸ら  
し続けていた。ただダラダラとぬるま湯につかるような温もりの友人関係でいたかった。それなら、  
ずっと傍にいられる。孤独じゃなくなる。  
(誰からも相手にされない。必要とされない――そんな毎日は、もう嫌だ)  
気付かない振りをしたままの、傷つかない振りをしたままの、穏やかで満ち足りた生活――高坂の  
傍にいるとそれがあった。いつも人の輪の中心にいて、いつの間にか話題の中心にいて、賑やかで  
退屈知らずの心地よい空間。  
羨ましかった。不思議だった。  
(パッと見、格好いいわけでも口が達者なわけでもない。ごく普通の日本男児なのに……)  
でも、その内そんな疑問は、どうでも良くなってくる――大事なのは高坂の傍にいられれば楽しい。そ  
れだけは、確かなのだから。  
しかし、私は禁を犯してしまった。誘惑に負け、好奇心を抑えられず、友人のラインを超えてしまった。  
もう遅すぎるかも知れないが、何とか取り繕わなくては――。  
「あ、あの……あのさ、別に深い意味は無いんだ。深刻に考えないでくれ。王様ゲームとかの、ああいう  
ノリでさ、こう……いかにも罰ゲーム的なネタをさ、考えてたら、つい……思いついたことを、そのまま言  
っちゃったっていうか……その……」  
不意に高坂が私の両肩を掴む。  
(ひっ!)  
何が起きたのか分からず、びっくりして目を開き――高坂と目が合った。そして――高坂が、  
 
 
「好きだ」  
と言った。再び、  
「愛してる」  
と続けた。  
 
 
(――なっ?)  
心臓がバネ細工の玩具のように跳ね上がる。  
(いま何て――確かに聞こえた。『好きだ』って。『愛してる』って。でも……まさか)  
ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドドドドドド……!! 鼓動が16ビートのリズムを刻  
んで鳴り響く。心が掻き乱される。頭の中を嵐が吹き荒れる。  
(いや待て待て、落ち着け、私)  
そう、これはあくまで賭けの結果による流れ。素直に喜んでいい状況じゃない。  
(私一人が浮き足立って本気にして、高坂は賭けの代償としか考えてなかったら……)  
そんなの哀しすぎる。でもこれは私自身が選択したこと。高坂に文句をいえる立場じゃない。  
だから私は逸る気持ちを唾とともに飲み込み、震える下唇を噛んで、努めて平静を装った。  
「う……うん、まぁ……ありがとう――って、変な感じ。やっぱ少し照れくさいかな。私ってさ、お  
恥ずかしながら、この年齢になるまで他人から『好き』とか『愛してる』なんて言われたこと無くっ  
てさ。も……もし言われたら、どんな気持ちになるかなって、ずっと興味があって――そっか、  
こんな気持ちになるのか」  
「どんな気持ちですか?」  
高坂が訊いた。  
「心臓がドキドキして、身体中がポカポカした感じになって、鼻の頭がツンツン痛くなって……」  
「ふうん」  
「私って単純で、そそっかしくて、馬鹿だからさ。何でもすぐに真に受けちゃうんだよね。ほんのお  
遊びの、か……賭けの成り行きで無理矢理、言わせちゃったみたいで悪かったけど、それでも言  
ってもらうと、それなりに嬉しいもんなんだな。ハハハ……」  
「本気ですよ。俺は」  
「――えっ?」  
「俺は本気で、『好きだ。愛してる』って言ったつもりなんですけど」  
今度こそ、本当に打ちのめされた。思いがけない展開に、身体が硬直し石化してしまう。人間は降  
って湧いたように訪れた幸運に対して臆病になる。勇んで手を伸ばせば、そのまま砕けて消えてし  
まうのを怖れるかのように――尚も私は慎重を期して、  
「そ、そ、それ……それって……本当に本当? 冗談、とかじゃなくって?」  
声が上擦る。引きつる喉を叱咤して、振り絞るようにして訊いた。  
「冗談で、こんな大事なことを言いませんし、言っちゃいけませんよ――先輩のことが好きだから、俺  
はここにいて、先輩のことを愛してるから、俺はベッドの上でこうしているんです――そっか、とっくに  
気付いてもらってるとばかり思ってて……ちゃんと意思表示しておかなかったのがいけなかったんで  
すね。どうも、すいません」  
(そんなの、気付けるかよぉ!)  
私は心の中で突っ込みながら、もう一方ではこの急転直下のラブラブハッピーな状況に戸惑い、どこか  
持て余していた。無理もない。これまでの人生が挫折と絶望と諦めの連続だった。  
(油断していたら、いつか足元を掬われる)  
その恐怖心がある。  
(ああ……ああ……そんな……どうしよう、どうしよう。こんなことって……)  
 
本心は――無論、嬉しい。こうなれば良いと、ずっと願っていた。が、いざそれが叶ってみると、ム  
クムクと不安が頭を擡げてくる。迂闊に幸福に縋るのが怖い。その反動でやってくる不幸がもっと  
怖い。  
人生の分岐点で立ち往生。  
(私、一体どうしたら?)  
憧れの先輩から、ある日突然、『あなた、わたくしの妹になりなさい』と言われた平凡な女子高生の  
ように、私は焦点の定まらぬときめきとおののきに、揺れ動いていた。  
それともう一つ、大きな問題がある。  
私が高坂を受け入れたら、確実に哀しい想いをする少女が二人――楓と加奈子。二人は私にとっ  
ても大切な存在だ。『美しいものは、美しいままで』がモットーの私にとって、二人を泣かせるような  
マネなど出来はしない。だけど――。私は生涯最大のジレンマに苛まれていた。  
「先輩は、どうなんです?」  
高坂が追い討ちをかけるように尋ねる。  
「先輩は俺のこと、どう想ってるんですか?」  
(わ、私は……)  
これまでのことが、走馬灯のように思い出される。極道の家柄のために友達が離れていき、ガサツな  
性格と女性らしからぬ身体つきのために初恋は頓挫し、破れかぶれに自分の世界に引き篭もり、美  
しいものだけを愛でる『美の追求者』と化し、それでも満たされないまま時が過ぎ――高坂に出逢った  
のだ。  
 
『傍にいますよ。気が済むまで』  
 
その一言が、私を変えた。それは射干玉の闇に輝く一筋の光明。どれほど救われたか。どれほど励ま  
されたか。どれほど嬉しかったことか。今まで誰も、そんな言葉をかけてくれる人間などいなかった。そ  
れ以来、高坂から目が離せない。高坂の一挙手一投足が気になる。そして高坂の事を知れば知るほど  
に、切なくなる。  
その高坂が今、私に尋ねている。  
『俺のことを、どう想っているのか?』と、  
(そんなの……そんなの……決まってるじゃないか! 私は……)  
再び楓と加奈子の顔が、脳裏をよぎる。哀しげに表情を歪めて、『先輩、やめて!』と叫んでいる。胸が痛  
んだ。だけど、もう自分の気持ちを誤魔化せない。裏切れない。  
(楓、加奈子。許して――私だって幸せになりたい!)  
たとえ二人に憎まれても、このまま地獄に堕ちることになろうとも、悪魔に魂を売る覚悟で私は高坂に告白  
するつもりだった。  
(私だって、高坂のことが好きだ。高坂のことを誰よりも愛してる)  
しかし、  
「わ……わた……わた、し……」  
これまで溜め込んでいた想いが強すぎて気持ちが空回りするせいか、声が震えて言葉にならない。あまりの  
不甲斐なさに、泣きたくなった。  
(私って、本当に駄目だな。高坂みたいに、ちゃんと言いたいのに、ちゃんと伝えたいのに……)  
「わたし……私も……こ、高坂のこ……こと……」  
 
一世一代の大事な瞬間に何て不様。何て格好の悪い。反面、とても私らしいと言える。惨め過ぎて笑  
い出したくなる。だけど、出てきたのは笑みではなく一粒の涙。  
(またご破算になってしまうのだろうか? また幸運は、指の間をすり抜けて行ってしまうのか?)  
そんな情けない私を、高坂がそっと抱きしめてくれた。力強く温かな腕の中で、私は泣き通した。  
(高坂、ごめん。ごめんね)  
ひたすら謝る私を、高坂が  
(大丈夫ですよ)  
と励ましてくれる。  
散々に泣き明かし、どうにか気を静めた私は、  
「高坂……好き。大好き……愛してる」  
思い描いていたのとは全然違ってしまったけれど、なんとか気持ちを伝えることが出来た。  
「知ってましたよ。ずっと前から」  
出逢ってから、これまで――長いようで短い。短いようで長い。ここで私達はようやく想いを打ち明けあえ  
たのだった。  
「なぁ、高坂」  
「何ですか?」  
「もう一度、言ってくれないか? 『好きだ。愛してる』って」  
「――言うことを聞かなきゃいけないのは、一回こっきりじゃなかったですか?」  
「意地悪――いいだろ、もう一回だけ」  
実際、今でも信じられないくらいだ。もう一回でも確認しておかないと、すごく不安になるネガティブ思考の私。  
「分かりました。『好きだ。愛してる』――どうです?」  
「ああ……ありがとう」  
もう死んでもいいとさえ思った。あとどれだけ長生きしたって、この瞬間ほど素晴らしいものは、有り得ないだ  
ろう。天国だって、ここより素敵な場所ではないはずだ――それとも、ここは地獄なのだろうか?  
「さてさて、こうしてお互いの相思相愛の気持ちを確認しあったところで、いよいよ本番といきますか」  
そうだった。それがあった。大事なことを忘れてた。思えば随分と寄り道をしてしまったものだ。おかげで私に  
とっては随分と美味しい状況になったわけだが。  
(お互いがちゃんと好き合ってて、その二人が身を重ねて……文字通り、身も心も一つになって。これって、最  
高じゃん――あっ!)  
「――なぁ、高坂」  
「はい?」  
「実はだな……もう一つ、頼みたいことがあるんだが……」  
「……」  
「ああ、分かってる! 我侭だってことも、図々しいってことも、重々承知している。でも、それでも――」  
たった今、ひらめいたことだった。なんとなく立場上、頼みづらい雰囲気ではあったが、それでも言うだけは言っ  
ておきたかった。  
 
さすがに高坂も苦笑交じりに  
「いいですよ。先輩の、そういう唯我独尊で強引なところも好きなんですから。遠慮なく何でも言っ  
てください」  
「そ、そうか。なら……あの、だな……これからは私の事を『先輩』じゃなく『凪』って呼んで欲しいん  
だ。それと話し方も、もっとフランクな感じで、例えばそう……こ、こ、こ、こ、恋人同士みたいな……  
ど、どうだろうか?」  
たちまち頬が赤く染まっていくのが分かる。私にしては、かなり大胆な提案をしたものだ。咄嗟に思  
いついただけでなく、ちゃんと言えただけでも大したものだ。やっぱり、私は少しずつだが変わってい  
っているのだと感じる。  
高坂は私の提案に、ちょっと目を丸くして、やがて薄く笑みを浮かべ、  
「いいですね。面白そうだ。どうせなら、先輩も俺の事を『高坂』じゃなく『潤平』って呼んでください。話  
し方は……これまで通りでいいのかな? 先輩のやりやすい方向で。これでOKですか?」  
「あ、ああ……申し分ない」  
「それじゃ――始めるよ。心の準備はいいかい――凪?」  
 
 
 
(――ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんんっ!!)  
なんという精神波攻撃。免疫のない私は、一瞬で悶絶。撃沈してしまった。   
勿論、こうさ……潤平の提案に異存など、あろうはずが無かった。  
 
 
 
「なあ、高坂……本当に、こんな格好で犯らないと駄目なんだろうか?」  
「そうですよっと……こら、今『高坂』って言ったでしょ」  
「あっ、そうだったか。すまん……その……潤平」  
「もう、何を照れてるんですか? 言いだしっぺは凪なんだぞ」  
「それはそうなんだが……それでも……」  
頬が熱い。どうしようもないほどに熱い。このままグラグラと、脳みそが茹で上がってしまいそうだ。  
(ああ、恥ずかしい。想像以上に、めっちゃ恥ずかしいぞ!)  
裸身を視られるより、恥部を観察され弄られるより、『愛してる』と告白するよりも、ただ相手の名前  
を呼ぶことのほうが何倍も何倍も恥ずかしい。恥ずかしいけど――嬉しい。  
当の告白した相手の顔が目と鼻の先――吐息が触れ合うほど間近にあるのだから、私の羞恥もひ  
としお。むべなるかな。思わず視線をそらしてしまいそうになるが、その度に潤平に『駄目ですよ。愛  
し合う者同士、ちゃんと見つめ合ってなきゃ』と、引き戻されてしまう。  
(はぁぁ、これは……どうにも堪らん……)  
クスクスと笑いながら潤平が、  
「さあさあ、もういいでしょう。愚図愚図してたら、このまま夜が明けちゃいますよ」  
「ああん……すまぬ、潤平」  
「いいですよ。ところで、凪。この体勢、やっぱりキツい? 無理っぽそうかい?」  
「ああ、嫌――そんなことはないんだけど……」  
陸上部の強化メニューに、器械体操と入念な柔軟運動を必須で組み込んでいるおかげで、この程度  
の体勢を維持するのは困難ではない。しかし、  
「なんだか、ちょっと……思い描いていたのとは、かけ離れてる感じがして……」  
私がいま、どんな格好を曝しているかといえば――ベッドに仰向けに横たわり、腰を浮かせ身体を折り  
曲げ、両脚の間から覆い被さるようにしている潤平の両肩に膝裏をもたせかけて――傍から見れば、浅  
ましくはしたない事このうえない光景があった。ほんのちょっと視線を動かせば、潤平の爽やかな笑顔と  
腰を浮かせた分、丸見えとなった自身のとろりと滑った恥部が同時に飛び込んできて、とても直視できる  
ものではなかったが、瞳を閉じることも視線を外すことも潤平が許してくれない。  
「これで良いんです。一見奇抜そうに見えるけど、実はこれが一番結合がスムーズにいく体位なんですよ。  
お互い初めてなんだし、失敗して後味の悪い思いはしたくない。自分なりに無難な線を狙ったつもりなんで  
すが」  
私はジトッと潤平を睨み、  
「なんで、一々そんなことに詳しいの?」  
「なんでって――晴彦が教えてくれたんです」  
「……」  
コホンッと潤平が咳払いを一つ、  
「さて、あんまりお喋りが長引くと、せっかく潤滑剤代わりに濡らした箇所が乾いて台無しになっちゃいそうだ。  
速やかに始めよう。それじゃ、随分待たせちゃったけど――いくよ、凪」  
「お、おうとも」  
(いよいよか……)  
ゴクリと、音を立てて唾をのむ。  
潤平の肉棒の先端が、秘裂を撫で擦っていくのが分かる。グッと圧力が増し、おもむろに侵入を試みようとして  
いるのが感じられる。  
 
お腹にくっ付きそうなほどの勢いでそそり立つ潤平の肉棒は、相変わらず禍々しく、猛々しく、雄々  
しく、優男風の風貌とは何度みてもミスマッチだ。それがいま、私を貫こうとしている。犯そうとして  
いる。最初は口に咥え込むのさえ、一苦労だったアレが。  
(本当にあんなに巨っきいモノを、私の性器で受け止めきれるのだろうか? 万が一、裂けたりしち  
ゃったら……抜けなくなったりしちゃったら……)  
よりによって、この大事な時にこんな不吉な思考に囚われてしまい、我知らず力をこめて括約筋を  
固く引き締めてしまった。  
「ねえ、凪。悪いけどもう少し、力を抜いてくれないか? これじゃ、挿入れるに挿入れられないよ」  
私の思いがけないドタン場の抵抗に、さすがの潤平も参ったようだ。  
「ああ、うん……分かってる。分かってるんだけど……」  
しかし一旦、根付いた不安と恐怖は容易に拭い去れない。頭では理解していても、肉体が勝手に反  
応して潤平を拒絶してしまうのだ。  
(私って、いつもこうだ……肝心な時に尻込みして、しなくてもいい後悔ばっかりして……)  
不甲斐なさに挫けそうになった時、潤平が自分の手と私の手と重ねて、指を絡めてきた。  
「凪、大丈夫だ。落ち着いて俺の顔を見て。大丈夫だから。焦らないで――さあ、ゆっくりと二人の呼  
吸を合わせてやってみよう」  
ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……。  
重なった手。絡み合う指。徐々にシンクロしていく二人の息遣い――私は段々と心の緊張が解れ、不  
安と恐怖が薄らいで穏やかな気持ちになっていくのが分かった。皮膚を通して潤平を感じる。潤平の優  
しさが、逞しさが、愛情が伝わってくる――なんて、なんて幸せ。  
(そうだ。怖れることなんて何も無い。潤平を信じて、全てを委ねて、ただ一つに繋がっていられることだ  
けを願っていればいいんだ)  
亀頭部分が、ようやく秘裂の中に埋まりこんで入った。身体の内部でメリメリと肉の軋む音がしたような  
気がするが、もう私は逃げない。不安が無い、怖くないと言えば嘘になるかも知れないが、それを乗り越  
えてこそ、潤平に愛される資格があるんだと思う。  
呼吸のリズムの合わせるかのように柔らかな恥肉が左右に押し広げられ割り裂かれていく。チリチリと疼  
くような痛みが走る。分厚く白い氷原を突き進む砕氷船をイメージした。  
(やっぱり、ちょっとだけまだ怖い……怖いけど……潤平……潤平……潤平……潤平……)  
そして遂に、その瞬間がやって来た。  
それまで虫が這うように緩慢な速度で侵攻していた肉茎が、突然タガが外れたかの様に、ズンッと一気に  
根元まで押し込まれた。  
「!」  
覚悟していたとはいえ、全くの不意打ち。  
閃光が煌く。目の前が真っ白になった。火花が飛んで焦げたよう臭いが漂う。耳の奥で響くブゥツゥンンンン  
ンッ! という何かが弾けて切れる音がいつまでも木魂する。  
(――いっ! い、い、い、い、いっ痛……!)  
あげそうになった絶叫を慌てて飲み込んだ。私がまた取り乱して、潤平に迷惑をかけるわけにいかない。萎  
えさせるようなことになったら、元も子もない。もっとも体位の関係上、顔をつき合せる格好なので誤魔化しよ  
うがなかった。  
 
案の定、  
「凪、大丈夫かい? 痛くなかった?」  
と訊いて来た。  
私は首を横に振り、笑顔をつくって  
「大丈夫……全然。だから、このまま続けて」  
潤平の顔は紅潮し、じっとりと汗ばんで荒い息を吐いていた。同時に、一つ大きな責任を果たし終え  
た後の晴々とした表情が浮かんでいた。それを見つめているうちに、私まで気分が高揚してきて、瞳  
から涙が溢れ出てきた。決して痛いだけで泣いてるんじゃない。これは嬉し泣きなんだ。  
お互い言葉も交わさず、申し合わせたように唇を重ねた。今夜だけで数え切れないほどキスをした。  
でも、これは特別。一緒にしては駄目。これは二人が結ばれた事を記念するための祝福の儀式。  
忍び入ってきた潤平の舌を貪るように、激しく吸い上げた。唾液が口腔内で渦を巻き、弾け廻る。飲み  
込んで、その甘露な深い味わいにひたすら感動し酔った。  
(ああ……甘い、甘い)  
キスがこれほどまでに甘く濃密なものだったなんて、思いもしなかった。私は我武者羅に、潤平の舌を  
求め絡めて言った。  
下腹部は潤平の陰毛と私の薄い茂みが混ざり合い、真っ直ぐな縦の秘裂の通っていたそこは、今では  
大きく歪んで、あの太く長く逞しい肉茎を、がっちりと根元まで咥え込んでいた。  
上の口も下の口も、ぴったりと結合しあった私達は、まさに一塊の肉の造形物のようだった。  
 
 
 
 
 
 
 
 
長い長い長いキスを終えて、再び見つめあった私達。しばらく無言の状態が続いていたが、潤平が口火を切った。  
「凪。少し……動かしてみるよ。充分、気をつけるつもりだけど、それでも痛いのが我慢出来なくなったら、すぐに言  
ってくれ」  
 
 

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