「こ、これでいいのか?」  
高坂に指示された体勢をとると、私はちょっと不安になって訊いた。私と高坂は双方の頭と足の位置  
が逆向きの、俗にいう『69』の体勢をとっていた。  
「はい、ばっちりですよ。先輩、さっきも言いましたけど、これから俺達がやろうとしてるのは、今までの  
前戯紛いのお遊びじゃなくて、場合によっては痛みの伴う本格的な性行為ですからね。充分に準備を  
しておかなきゃならないんです」  
「うん……」  
事前に説明されて知っていたが、それでも緊張して少しばかり身が強張るのを感じた。  
「大丈夫ですよ、先輩なら。これまでも、きちんと犯り遂げて来たんですから。もっと自信を持ってくださ  
い。それで、そのためには――」  
「お互いのアソコを舐めあって唾液と淫液を潤滑剤代わりに、たっぷりと塗した状態にしておかなきゃな  
らないんだよな?」  
高坂の言葉を引き継ぐ格好で、私が続けた。  
「その通りです。ほら、やっぱり大丈夫じゃないですか。他に訊いておきたいこととかありますか?」  
「ううん……いまのところは……」  
「それじゃ、喋ってばかりいても仕方ない――早速、始めましょうか?」  
「お、おう……」  
うながされるままに彼のモノを掴み、舌を差し出して目の前にそそり立つ肉茎にゆっくりと唇を近付けて、  
いままさに――  
「あっ、ちょっと待って!」  
突然、『待て』がかかった。さては、また何かヘマをやらかしたかと思い慌てて私は、  
「な、なに!?」  
「すいません。一つ言い忘れてました。いま大事なのは、あくまで性器をヌルヌルの状態にしておくことで、  
無理にイカせようとしないでください。俺もそこまでタフガイじゃありませんからね。肝心なときに勃たなくな  
りますから」  
「わ、分かった。肝に銘じておく」  
ちょっと出鼻を挫かれちゃったけど、再度決行。高坂の性器を口にするのは、これで二度目。つい今しがた  
射精したばかりなのに、もうこの浅黒い肉の凶器は元気を取り戻し、私の口内でみるみる硬く大きくなってい  
く。その逞しくも頼もしい有様は、どこか感動さえ覚えるものだった。  
(ハ……ハァム……ンン……)  
高坂の舌と指に、私の恥部が嬲られているのを感じる。クリトリスを撫でられ、摘まれ、押し潰され、唇が秘裂  
に触れ、舌が挿入されてきた。たちまち下腹部全体が甘く疼き、熱く潤い、湿って……濡れて……クチュクチュ  
と下品な音をたてた。  
考えてみれば、男性器と違い女性器は勃つ、勃たないの心配など無用である。イッてしまったとしても、なんの  
問題も無い筈だ。ねっとりと汗が浮かぶ。呼吸が荒くなる。背中が激しくわななき、『もっと、もっと』と誘うように尻  
がゆらゆらと妖しく揺れ動く。  
(あああああんんん……た、たまんないっ!!)  
蕩けるような陶酔の海を漂い溺れていると、不意にペシンッ! と尻を打たれた。  
「痛っ!」  
「先輩ったら、手が完全にお留守になってますよ」  
 
叱られてしまった  
「――ああ……御免なさい(あとちょっとだったのに……)」  
悦楽の波を中断させられたことに、軽く拗ねて鼻を鳴らしながらも何とか自分を奮いたたせ、高坂へ  
の奉仕を改めて再々開する。さっきも言ったが二度目である。もう最初から口いっぱいに頬張るよう  
な無作法なマネはしない。  
ピンク色をした亀頭に数回軽く啄ばむようなキスすると、鈴口を尖らせた舌先で突付き、雁首周辺を  
なぞるように動かし、特に裏側への刺激を強くしていく。前回も好評だったやつだ。そして長大な竿に  
唇を這わせ、舐め上げ、唾を塗していく。ここでようやく性器全体を唇で包み込み、口腔を開いたり窄  
めたりさせながら喉の奥へ奥へと強く吸い、リズミカルな律動を咥えていく。  
私にはまだ奥の手があった。前回は指で弄んだ陰嚢――今度はそれを、高坂が私の耳で犯ったよう  
に口いっぱいに含んで、柔々と甘噛みをしていくのだ。唇と舌と、軽く歯も使って、この毛むくじゃらの肉  
の袋を嬲り上げていく。  
「あ……あ……ああ……せ……せんぱ……」  
(ふっ、まだまだ驚くのは早い。これからずっと、私のターン!!)  
陰嚢への口内奉仕を済ませると、今度は右手で高坂のモノを握ったまま、顔を尻の肉の割れ目へと寄せ  
ていった。  
(よ、ようし……と)  
これから自分が始めようとしている行為に、目が眩みそうになる。だけど、犯らなくては。高坂だって、犯っ  
てくれたのだ。もっともあの時は指だったが、私は……大きく息を吸い込み腹を括って、肛門へと舌を伸ば  
した。体毛を掻き分けるようにして排泄器官を探り当てると、ゆっくりと強い力で舐め上げる。更に先端を精  
一杯尖らせて、内臓に挿入するまで差し入れた。口の中に、カカオ成分の多いチョコレートのような苦味が  
広がっていく。それと同時に右手の力を僅かに増して、激しくしごきあげていった。  
「は……ぐあっ……せんぱ……そんな……されたら、俺……どこで……こんな……こんな……」  
驚愕と興奮と歓喜の入り混じった高坂の声が、裏返って喘いでいる。  
だけど、別段びっくりするようなことじゃない。  
「高坂だぞ」  
私が肛門から顔を上げて言った。  
「えっ!?」  
「高坂が犯ってくれたことを、私なりにアレンジして犯っているだけだ。高坂が犯るから、私も犯りたくなる。犯っ  
てみたくなる――どんどん自分が堕ちていっている気がするな。高坂のせいだぞ。ちゃんと責任を取れ」  
高坂の方へ向き直り、にじり寄って行く。ここで自分が意外に『69』の体位が物足りなく感じていたことに気付い  
た。  
(だって、あの体勢じゃ高坂の顔が見えないんだもん。ちょっとでも表情なり視線なりを感じていられる方が、私  
は好きだな)  
「責任って……どんな風にですか?」  
(高坂――私は、お前のことが好きだ。お前のためだったら、何でもする。だからお前も、私を……)  
湧き起こってくる邪な考えを、即座に振り払う。今この流れで、それを口に出すのは卑怯だ。高坂が、どう答えて  
くれるか知りたい気持ちはあるけれど、何を言われても、きっと私は後悔してしまうだろう。  
 
「そ、それ位、自分で考えろ」  
「厳しいなぁ」  
「なぁ、高坂――ちょっと賭けをしてみないか?」  
話の流れを断ち切るべく、思いつくままに言葉を並べてみる。  
「お互いの性器を一緒に弄りあって、どちらが先に相手をイカせるかってーーどうだ、面白そうだ  
ろ?」  
「先輩――さっきまでの俺の話、ちゃんと聞いてました? ここで余計な体力消費すると、後々困  
ることになるんです。どうしてそんな、無意味なこと……」  
「分かってないな。無意味だからこそ、面白いんじゃないか。高坂は細かいこと気にしすぎだ。後  
のことは後で心配すればいいじゃないか。なぁ、いいだろ?」  
「しょうがないなあ、先輩は。言い出したら止まらないんだから。それで、もし賭けに負けたら――先  
にイカされた方は、どうなるんですか?」  
「――相手の言うことを、何でも一つだけ聞かなきゃならないんだ」  
「また随分と古典的ですね」  
「う、五月蝿いな! 文句ばっかり! それじゃ、私が『よーい、ドン!』って言うから、そこからスター  
トだからな。いいな」  
そう告げると、私は再び高坂の性器に顔を向ける体勢になった。ほんの思いつきで始めた事ながら、  
ワクワクしている自分がいた。  
(私だって、それなりにテクニックは身に付けたんだ。やってみる価値はあるんじゃないか?)  
そして、今度こそきちんと精液を飲み干してやる。  
「OKです」  
「よし、それじゃ始めるぞ! 負けないからな、高坂。覚悟しとけよ! せーの、『よーい、ドン!』」  
 
 
 
 
 
負けた。  
「は、吐いたツバは呑まん! さあ、なんでも言ってみろ。高坂!」  
 
「いや、だから俺は別にいいですって……弱っちゃったなぁ〜」  
実際、高坂はほとほと困った顔をしていた。だが、それで引き下がるような私ではない。  
「そうはいかん。私が申し出た賭けに、私自身が敗北したのだ。高坂の情けに甘えて、賭けの決め事  
を反故にしてしまっては、極道の血を引く者としての示しがつかん。さあ、高坂。なんでもいいから、言  
ってみろ」  
「そう言われてもなぁ……本当に思いつかないんですよ。う〜ん、どうしたもんかなぁ」  
(ちょっとは自信があった。それなのに……)  
本来なら、  
 
高坂  『参りました。先輩ってウブっぽい感じなのかと思ってたけど、中々どうしてテクニシャンなんで  
      すね。びっくりしちゃいましたよ!』  
 
私   『もう、さっきも言ったけど、一体誰のせいでこんな風になったと思ってるんだ?』  
 
高坂  『ええと……やっぱり、俺のせいですか?』  
 
私   『決まってるだろ。寝ても覚めても思い浮かぶのは、お前のことばかり――もう高坂無しじゃ生き  
      られない身体になってしまったぞ。この落とし前、どうつけてくれるつもりだ?』  
 
高坂  『おっかないな。アレが萎えちゃいそうだ――でも、奇遇ですね。俺もどうやら、先輩無しじゃ駄目  
      みたいです』  
 
私   『ああ、高坂、それじゃ、それじゃ……』  
 
高坂  『先輩――俺に一生かけて落とし前をつけさせてもらえませんか?』  
 
 
 
こうなるはずだったのに……それなのに。  
「何かあるだろ? 何でもいいんだ。例えば――三遍廻ってワンと啼けとか、跪いて足の指を舐めろ、  
 とか」  
「――嫌ですよ、先輩にそんなマネさせるの。はぁ……そうか――先輩。本当に、なんでも一つだけ  
 言うことを聞いていただけるんですね?」  
高坂が、何か思いついたようだった。  
「無論だ。一ノ瀬 凪の名において二言は無い」  
ニッコリ笑って、  
「分かりました。それじゃ決めました。先輩にしてもらいこと。いいですか? 言いますよ?」  
「ああ、いいとも」  
頷きながら、少し不安になる。これまでの経験で、高坂は満面の笑みを浮かべながら想像を超えた突  
拍子もないことを言い出す輩だということを思い出したからだ。しかし、当然のことながらもう後戻  
りは出来ないし、私だって逃げるつもりはない。  
 
「俺が先輩にやってもらいたいこと。それは――先輩が賭けに勝っていた場合に、俺にやらせたかっ  
 たことを言ってください」  
一瞬、わけが分からずに、  
「どういうことだ? いまいち意味が理解出来ないのだが……」  
「言った通りの意味ですよ。今回の賭けで先輩が勝っていた場合に、俺に『何でも一つだけ言うことを  
聞かせたかった』内容を言って欲しいんです」  
「それを聞いて、どうする?」  
「言われたことを、実際にやってみようと思います」  
本当にわけが分からなくなってきた。  
「何で? どうして?」  
「第一に、先輩が俺に対して何を望んでいるのかを知りたいから。第二に、それをやることによって、先  
輩の喜ぶ顔が見たいからです」  
「でも……それだと……なんだか……すっきりしないなぁ」  
単に情けをかけられているだけのような、賭けの勝ちを譲られているような。  
「別にいいじゃないですか。『何でも』言うことを聞いてもらえるんでしょう?」  
「それは、確かにそうだが……」  
尚も躊躇している私に、高坂が、  
「ほら、先輩。こっちへ来て」  
腕で私を抱き寄せ、二人の身体が密着する。  
「あっ!」  
突然のことに、頬が赤く染まり息を呑む。胸が恥ずかしいほどにときめく。  
「俺はね、先輩とただこうして過ごしていられるだけで幸せなんです。他には何もいりません。これ以上、  
何か望んだらそれこそバチが当たっちゃいますよ」  
高坂が人差し指と中指を揃えて差し出す。私はそれを当然の如く受け入れて口に含みしゃぶった。もうす  
っかり慣れた舌を用いての奉仕。指の間に絡ませ、唾液を塗して舐め上げていく。高坂も指を蠢かせて口  
腔内を犯す。溢れ出る唾液が顎を濡らしていく。  
その内、二本の指が私の舌を挟み込んで取り押さえられてしまった。  
(ぐえっ……)  
思わぬ展開に目を丸くして慌てたが、不思議と抵抗しようという気持ちにはならなかった。高坂への信頼と  
服従と忠誠が心を支配し、私は人形同然だった。  
「反面、先輩が俺をどう想ってるのかが、すごく興味あるんです。だからこれはいい機会じゃないかと……」  
指は更に力を強めて、舌を引っ張り始めた。キリキリと鈍い痛みが脳天に響く。喉元が痙攣した。  
(あぐっ……あは……ふ……)  
もしかしたら、このまま引っこ抜かれてしまうかも知れない。それでも恐怖心も怒りも湧き起こらない。傍から  
見れば異様で屈辱的な光景であろうが、高坂の腕に抱かれ構ってもらえる状況に酔いしれていた。  
しばらくそうやって弄ばれていたが、ようやく指から解放された。舌はすっかり痺れて重く、感覚が麻痺してしま  
っている。高坂が唇を合わせ、舌を差し込んできた。二人の舌が絡み合い、マッサージをしてくれる。たちまち痛  
みが退いていった。  
 
(あああああああっ……)  
身も心も、トロトロに蕩けてしまいそうな甘い愉悦。爛れた幸せ。下腹部が、どうしようもなく熱く  
疼いてくる。  
唇が離れ、細い透明な橋がかかる。  
「ねっ、いいでしょう。先輩?」  
「――ああ、うん」  
何か高坂が良いことを言っていたようだが、丸っきり頭に入っちゃいない。例えそれが、どんな理  
不尽なことでも、今更抗う気力もない。  
「それじゃ、言ってくださいよ。先輩が俺にやらせたいこと」  
先ほど心に浮かんだ邪な考えが、再び頭を擡げる。  
(高坂。お前のことが好きだ。だからお前も、私のことを……)  
馬鹿な。それでは元の木阿弥。何のために、こんな子供じみた賭けを始めたのか分からなくなる。  
でも、しかし……  
「その顔は、もう決めてあるって感じですよね。先輩、俺なに言われても平気っすから安心してくだ  
さい。大丈夫ですよ。所詮、お遊びみたいなもんだし」  
遊び――そうだ、どうせ遊びなんだ。言ったところで後を引くことはない。最悪、『冗談でした!』で  
済ませる事も出来る。遊び……遊び……遊びなんだ……。  
「――分かった。それじゃ言うからな」  
「はい、楽しみだなぁ!」  
口の中がカラカラに渇く。心臓が口から飛び出さんばかりに、激しく高鳴っているのを感じる。  
深呼吸を繰り返す。一度……二度……三度……。  
(まさか、こんなことになるなんて。でもいつかは、こんな日が来ると思っていた。これで良かったの  
かも)  
瞳を閉じて、覚悟を決める。  
(よしっ!)  
唇を軽く一舐めして、私は言った。語尾が少し震えた。  
 
 
 
 
「私の目を見て、『好きだ。愛してる』って言ってくれ」  
 
 

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