虫による侵食が進んだ美樹の体は以前にも増していやらしいものとなっていた。  
寄生虫の蹂躙を受けたあの夜以降、性欲がそれまでとは比較にならないほど強くなり、  
夜毎のオナニーは欠かせぬ物となっていた。  
特に好んでいたのが、自分の胸から絞り出された母乳を体に塗りつけての愛撫だった。  
美樹自身は知る由も無かったが、寄生虫の改造によって美樹の体液成分は  
常人のそれとは異なった物に変えられており、母乳、唾液、愛液などはすべて  
人間の体には媚薬として働く成分に変わっているのだ。  
己の分泌した液で発情して快感を貪り、さらに媚薬を分泌して悶絶する、  
奇妙なループが完成していた。  
今の美樹には、自分ではない誰かが自分の体を動かし快楽を貪ってるように感じられた。  
その体形も変化していた。成長を続ける胸はバレーボールの大きさに近づきつつあり、  
くびれたウエスト、突き出たヒップと合わせて小学生ではありえない色気をかもし出していた。  
さらに、現在美樹の体からはフェロモンが分泌されている。それも男性ではなく  
女性に有効なフェロモンが。  
寄生虫には、新しい宿主となる他の女をおびき寄せる必要があったのだ。  
そして、フェロモンによる悪魔の誘惑を最も強く受けていたのは稲葉郷子だった。  
美樹と親しく、行動を共にすることが多かった彼女が餌食となるのは当然のことだろう。  
 
 
そして郷子は最近悩んでいた。自分が美樹に恋愛感情を抱いているのではないかと考えているのだ。  
きっかけが何だったかは思い出せない。  
ただ、気が付くと美樹を目で追っていた。笑っている美樹を見て心が温かくなった。  
異常な発育を見せる胸にも以前感じていた嫉妬は感じず、とても愛しい物に思えた。  
ふざけて抱きつかれたとき背中に当たる胸の感触にドキドキし、  
かすかに香った汗の臭いに背筋がぞくぞくした。  
 
(私、どうなっちゃったんだろ…)  
 
自問するが答は出ない。無論のこと、美樹の体内に潜む寄生虫が元凶だとは分かるはずも無かった。  
 
 
その日の3時間目は体育だった。わいわいとした空気の中郷子の声が響く。  
 
「いった〜っ!」  
 
美樹の方ばかり気にしていたせいで、郷子は思いっきり転んでしまった。  
すりむいた脛に血がにじむ。  
 
「大丈夫?」  
 
乳をたぷたぷと揺らしながら美樹が駆け寄ってくる。怪我をしていると  
いうのに郷子は自分の脛より美樹の巨乳の方が気になっていた。  
 
(やっぱり大きい…。柔らかそう…)  
 
「何やってんの?ほら、保健室行くわよ」  
「う、うん」  
 
美樹に手を引かれ、郷子は保健室へと連れて行かれた。  
 
しかしあいにくと保険医は外出中らしく、保健室は無人だった。  
 
「…どうしよっか?」  
「しょうがないわね、消毒して絆創膏貼っとくわ。郷子、そこ座って」  
 
美樹に言われて郷子は保健室のベッドに腰掛けた。  
美樹は戸棚をがさごそとあさったが、目的の消毒薬は見当たらない。  
ふと、郷子のほうを見た。  
ブルマからは健康的な脚線美がのぞいている。じっくりと見てみると実にいい。  
「体操服がエロい」と言っていた男子の気持ちがよく分かった。怪我をして  
弱気そうにしている郷子を見ていると、もっといじめたくなる。  
からかうと真っ赤になって怒るかわいい郷子を、もっとかわいくなるよういじめたい。  
美樹の中で黒い欲望が大きくなる。  
そのとき、ふと気づいた。  
 
今、この静かな場所にいるのは自分と郷子の二人だけ。  
 
美樹の中で何かがザワリと動いた。  
 
「消毒薬見つからないから、唾液で消毒するね」  
「え…?唾液って、美樹?」  
「私がそこ舐めてあげる」  
 
そう言って美樹は郷子にずんずんと近づいてきた。  
 
「舐めるって、ちょっと」  
「自分じゃ舐めれないでしょ?だから私が舐めて消毒してあげる」  
「そりゃできないけど…うん、それじゃお願いするわ」  
 
結局郷子は美樹の勢いに押された。  
自分も一緒に消毒液を探せばよかったのに、何故そうしなかったのかは  
郷子自身にも分からなかった。  
 
郷子の足元にひざまづいた美樹が、すりむいたすねに口づけをする。  
出血した血をふき取るように、唾液を塗りつけるように傷口に舌を這わせた。  
 
「くっ!ううっ!」  
 
傷口を舐められ痛みに顔をしかめた郷子だが、次第にその痛みは疼きへと変わっていった。  
保健室の中にはピチャピチャという舌の音だけが響く。  
虫に寄生された今の美樹の体液は、媚薬としての成分を持つ。それを傷口に塗られ、  
体内に吸収されていくとどうなるか。フェロモンによる精神の侵略、そして  
媚薬成分による肉体の侵略。郷子は今、人外の快楽地獄のドアを開けようとしていた。  
 
傷の痛みはジンジンとした熱に変わり、その熱は全身に広がっていく。  
顔が火照っているのが自分でも分かる。酸素が足りない。口を開け、  
ハアハアと荒い呼吸を繰り返す。目の前では美樹が自分の足元にひざまづき、  
傷口を舐め回している。それは何ときれいで、何といやらしい光景だろうか。  
そこまで考えてようやく郷子は気づいた。  
 
自分は、美樹に体を舐められることにひどく興奮している、と。  
 
傷口の消毒が終了したのか、美樹は舐めるのをやめ郷子の隣に座った。  
体と体が密着する距離、美樹の紅潮した顔と潤んだ瞳を間近で見て、  
郷子は興奮しているのが自分だけではないと分かった。  
 
「郷子…」  
 
甘いささやき声が脳に響く。美樹は郷子の方に腕を回し、ぎゅっと抱きしめた。  
郷子の体に美樹の超巨乳の感触が沁み込み、互いの顔は息のかかる距離まで  
接近していた。体操服にしみこんだ美樹の汗の臭いを吸い込むと、それだけで  
体の力が抜けていく。  
 
「郷子…ここも怪我してるみたい…消毒していい?」  
 
美樹はそっと郷子の唇に触れながら、尋ねた。それに対し、郷子は潤んだ瞳で  
美樹を見つめながら答えた。  
 
「うん…消毒、して…」  
 
脱力し、体を預けた郷子の頭を片手で抱え、その唇を美樹は奪った。  
 
「んむうっ!?ん、むうう!」  
 
それは郷子が予測していた唇同士が触れ合うだけの優しい物ではなかった。  
美樹の舌は郷子の口内に侵入し、蹂躙する。郷子の舌に絡みつき、口内粘膜を  
味わいつくすかのように舐めまわし、唾液をすする。  
一瞬体を強張らせた郷子だが、ディープキスが気持ちいいものであることに  
すぐ気づき、再び脱力して美樹に身を任せた。  
 
「ん、んん…ぷはぁっ」  
 
美樹が一旦離れると、郷子はキスの間忘れていた呼吸を深く行なった。  
新鮮な空気が肺に入り、一心地つく。そこを再び美樹が襲った。  
 
「んん!?ん〜〜っ!!!」  
 
今度は郷子の唇を貪るだけでなかった。郷子の舌に自分の舌を絡めながら、息を大きく吸い込む。  
快感と共に郷子の肺の中の空気が強制的に吸い出され、酸素不足で意識が遠のく。  
 
(く、苦しい…!気持ちいい…!)  
 
発情させられた郷子の体はその感触で軽い絶頂に達し、体をピクピクと小刻みに震わせた  
朦朧とした頭の中で美樹の舌による快感だけが強く刻み込まれる。  
郷子が意識を失いそうになった瞬間、美樹の唇は離れた。  
 
「ぷはあ!ハア、ハア、ハア…」  
「どう?郷子。気持ちよかった?」  
 
呼吸をするのに精一杯の郷子だが、ぼおっとした顔でうなずいた。  
美樹はリンゴのように赤く染まった郷子の頭をいとおしげに撫で、言った。  
 
「それじゃあ、もう一回ね?」  
 
言うが早いがキスを再開する。口内を蹂躙し、空気を吸い尽くすバキュームキス。火照った体は再び快楽を甘受する。  
呼吸を封じられながらの絶頂に郷子は今度こそ意識を手放した。  
 
「……あれ?」  
 
再び意識を取り戻したとき、郷子は保健室のベッドで横たわっていた。  
 
「目が覚めた?あなた貧血で倒れたのよ。お友達がずいぶん心配してたわよ」  
 
保険医の言葉を聞いて郷子はようやく我に帰った。  
 
(貧血?それじゃさっきの美樹との、き、キスは…)  
 
夢だったのだろうか。あの生々しい感触、とろけるような快感。  
あれが現実ではなかったというのだろうか。いや…  
 
(あんなことあるわけないわよね…。でも、あんな夢見ちゃうなんて、  
私本当に美樹のことが…好きになっちゃったのかな…)  
 
顔を真っ赤にした郷子を見た保険医が心配して熱を測ったが、結果は平熱。  
だが念のためとの保険医の言葉で郷子はベッドで休むことにした。  
しかし、目を閉じると美樹のことが頭に浮かび郷子の心をかき乱す。  
 
(どうしよう…私…美樹が…)  
 
 
一方教室で授業を受けていた美樹も悩んでいた。  
自分が何故あんな行動をとったのかが分からない。  
オナニーの際に、誰かに手を動かされているような錯覚に陥ることはあったが、  
今日のは違う。肉体だけでなく精神までが何かに冒されていた。  
その何かに突き動かされて美樹は郷子を嬲ったのだ。  
女同士であんなことをするのは普通じゃない。それは分かっている。  
だけど、もう止まれない。なぜなら、  
 
郷子の体がとても気持ちのいいものだと知ってしまったから。  
 
 
郷子が教室に戻ったのは昼休みになってからだった。  
 
「郷子、大丈夫?」  
 
美樹はいつもどおりの様子で話しかけてきた。その様子に郷子は、  
先ほどのことはやはり夢なのだと安心した。心の片隅で少し残念に感じていたが、  
理性はすぐにそれを否定した。  
いつもどおりの他愛の無い雑談、やっぱりこれが普通よねと郷子が思っていたとき、  
美樹が会話を振ってきた。  
 
「そういや明日休みよね。郷子はなんか予定ある?」  
「別に無いわよ?」  
「そう、それじゃあさ、今日私の家に泊まりに来ない?  
今日パパもママも仕事でいないから私一人なのよ」  
「え?」  
 
一瞬息が詰まる。美樹と二人きりでお泊り。先ほどのキスの記憶がよみがえる。  
だがすぐに思い直した。  
 
(何考えてるのよ、私!美樹の家に泊まりに行くなんて前からあったじゃない!)  
 
「いいわよ。じゃあ今日はお泊まり会ね」  
「よかった!…これで続きが出来るわね」  
「…続き?…いったい何の?」  
 
郷子の頭にじわじわと影がにじんでくる。  
そんな、まさか、と不安と期待の入り混じった影が。  
 
少しの間意味ありげな笑みを浮かべていた美樹は、郷子の耳元に顔を寄せてささやいた。  
 
「さっきの、続きをよ」  
 
ビクリ、と体が震え、郷子は硬直した。  
顔が火照り、心臓が一気にその鼓動を早める。  
いやらしい予感が、背筋をぞくぞくと駆け登る。  
 
今夜、美樹の家で何があるのか、自分はいったい何をされるのか。  
 
そこにあるのが不安や恐怖ではなく期待感であると分かったとき、  
郷子は自分が逃れられない深みにはまっていることを悟った。  
 
 

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