続・怪奇!人喰いロッカーの巻  
 
 
 稲葉郷子が失踪してから十日が過ぎた。女子更衣室に残された彼女の  
服と濡れた水着、手がかりはそれだけだった。警察の必死の捜索にも関  
わらず彼女の行方はまったくもって不明であった。なぜ衣服がここに残  
っているのか、ここで誰かに会っていたのか、その誰かに郷子は全裸で  
どこかに連れ去られたのか、全ては謎であった。  
 また郷子と仲のよかった広は雨が降っているにもかかわらず半狂乱で  
郷子を探し続け、挙句肺炎を起こし現在入院中である。  
 警察の捜査が難航している間、童守小学校ではある噂が流れていた。  
 
「稲葉郷子は人喰いロッカーに食べられた」  
 
 この噂は事実を表していたのだが、残念なことにそれに気づく大人は  
いなかった。大人は気づかなかったのである。  
 
 深夜、事件後は入り口に鍵をかけられ立ち入り禁止となったプールに  
近づく一つの人影があった。細川美樹である。彼女は郷子の失踪が更衣  
室の怪異「人喰いロッカー」の仕業だと確信を抱いていた。  
 美樹が事件後に集めた「人喰いロッカー」についての噂は要点をまと  
めると  
・夜間、プール横の女子更衣室に出現するということ  
・プールで泳いだ後、一人で着替えている女子の前に現れること  
・決して自分からロッカーに入らないこと  
・ロッカーの中に入らなければそのうちいなくなること  
であった。  
 対処法まではっきりと噂になっていたのである。もっとちゃんとこの  
噂のことを郷子が聞いていればこんなことにならなかったはずだ、美樹  
は怒りを感じていた。  
 
(私の話ちゃんと聞いてりゃこんなことにならなかったのに…。大体自  
分からロッカーに入るって何よ!あの子自分から妖怪の腹の中に入った  
って言うの?)  
 
 喧嘩をすることもあったが郷子は親友である。大人が当てにならない  
以上彼女を絶対に自分の手で助けるのだと美樹は思っていた。怪異への  
対処がどんなに困難なことか知らずに…。人喰いロッカーの恐るべき罠  
から逃れるのは極めて困難であることを美樹はもうすぐ自分の体で知る  
こととなる。  
 
 
 プールと更衣室の鍵を手に入れるのは簡単だった。不良を気取る克也  
をそそのかし職員室にある鍵を盗ませ、ネットで調べた方法を基に合鍵  
を作ったのだ。時間は深夜、周囲には誰もいない、それに、  
 
「こんな美少女が来てるんだから、妖怪が出てこないはずは無いわ」  
 
 自信過剰とも聞こえる台詞をつぶやきつつ美樹は更衣室の鍵を開け中  
に入った。もっとも、世辞を抜きにしても美樹は外見かなり上等の部類  
に入る少女で、特にその胸は童守小学校の生徒の中ではトップクラスで  
あった。中身に問題があるため男子の中での人気はあまり高くないが。  
 
 さっさと水着に着替えた美樹は、プールに浸かりザバザバと泳いでい  
た。プールを独占していると自分が小さな王国の女王になったみたいで  
気分がよかったが、行方不明の郷子のことを思うとすぐに気分が沈んで  
くる。  
 
「待ってなさいよ、郷子。絶対連れ戻してあげるんだから」  
 
 そう言った美樹はプールから上がると、更衣室へと戻っていった。  
 
「夜の更衣室、プールから出てきた美少女が一人、条件は整ったわね…。  
そろそろ人喰いロッカーに出てきてもらおうかな」  
 
 美樹は持ってきた鞄から秘密兵器その1を出した。短い糸の先端にふ  
りこが付いた物、フーチである。美樹はフーチをゆらせつつロッカーを  
一個ずつ検分していった。当たりならフーチは右に回るはず。そしてフ  
ーチは奥から7番目のロッカーの前でぐるぐると右に回った。美樹は現  
場を見ていなかったために知らなかったが、そこは十日前に郷子が使っ  
た場所、郷子の消えたロッカーであった。更衣室全体を2周して確かめ  
たが、反応したのはそこだけだった。  
 
「ここね…」  
 
 アタリをつけた美樹は秘密兵器その2を取り出した。取り出したのは  
小さな壷、中には霊を退散させるという清めの塩が入っている。自らを  
強い力を持った霊能力者と言い切った、とある寺の住職にもらった物だ。  
住職の語るところによると、この塩は霊験あらたかなそれはそれはあり  
がたい塩でふりかけるだけで悪霊などたちどころに退散してしまう、と  
いうことである。  
 
「住職にもらったありがたい塩なんだから…覚悟しなさい、人喰いロッ  
カー」  
 
 ちなみにこの塩を用意した住職、美樹は霊能力者と信じていたが実際  
にはかなりのインチキ坊主で霊など見ることすら出来ない。清めの塩も  
料理用の食塩に過ぎず、盛り塩すれば意思の希薄な浮遊霊程度なら追い  
払えるかもしれないが、人にはっきりと危害を加えるような力の強い存  
在に効果があるわけも無い。住職を霊能力者と信じ込み、自らは親友を  
救う正義のヒーロー気分に浸っている美樹にそんなことが分かるはずが  
無かったが。  
 
 美樹は、左手に壷を持ち問題のロッカーを右手で一気に引き開けた。  
中には…  
 
 何も無かった。  
 
「何よ…、アレだけ反応してたのに何もなし?」  
 
 盛り上がった気分が一気に冷めたが、あきらめずロッカーの中を上か  
ら下までじっくり眺めた。しかし何度見ても空っぽのままである。  
 
「一体どこにいるのよ!」  
 
 業を煮やした美樹はロッカーを片っ端から空けていったが、どのロッ  
カーも空っぽであった。やけになって塩もまいてみたが、何も変わらな  
かった。  
 
(今日はもう帰るか…)  
 
 自分の考えに根拠の無い自信を持っていた美樹は、予測が外れたこと  
に落胆の表情を見せながら帰り支度を始めた。秘密兵器を仕舞い、濡れ  
た水着を脱ぎながら毒づく。  
 
「この私がこれだけ手間かけてやってるのに、いったいどこに隠れてる  
のよ、郷子のやつ…」  
 
『美樹…』  
 
 囁く様な郷子の声を聞いたのは、美樹が水着を脱いだときだった。  
 
「郷子!?」  
 
 声が聞こえたのは後ろからだった。振り向いた美樹は、自分のフーチ  
による調査が間違っていなかったことが分かった。郷子は、十日前と同  
じロッカー、美樹のフーチが反応を示したロッカーの中に全裸で入って  
いた。ロッカーの上下には赤い触手がわだかまっており、郷子の手足は  
そこに埋没している。  
 
『美樹…、こっちに、来て…』  
 
 甘い、とろかすような声。郷子の声を聞いていると今すぐ駆け寄って  
抱きしめたくなってくる。  
 
(郷子がすごくカワイイ…ドキドキする…だけど…)  
 
 美樹は六年生から聞いた噂を思い出していた。「決してロッカーの中  
に入ってはいけない」、彼女はそういっていた。普段無計画な行動が多  
い美樹だったが、噂とジンクスに対しては忠実である。郷子の入ったロ  
ッカーにすぐには近寄らず、塩の入った壷を手に持つ。  
 
「郷子…今、助けてあげるからね…!」  
 
 壷のふたを開け、目一杯掴んだ塩を赤い触手群に叩きつける。  
 
「そりゃーっ!悪霊退散!!」  
 
 上に、下に、塩を投げ続ける。  
 
「郷子を離しなさい!この妖怪!」  
 
 もはや悪霊と妖怪の区別も滅茶苦茶だ。このロッカーがどちらのカテ  
ゴリーに入るかは不明だが。  
 
「おりゃ!おりゃ!てりゃー!!」  
   
 撒いて、撒いて、撒き散らして、壷の中が空になった頃には赤い触手  
はどこにも見えなかった。夢中でやったことなので赤い触手がどうやっ  
て消えたかは見ていなかったが、とにかく怪異は姿を消したのである。  
自分の勝利を確信した美樹は壷を置きロッカーの中の郷子に近づいた。  
 
「ハア、ハア、ハア……郷子、大丈夫?」  
『美樹、ありがとう…』  
「手間かけさせるんじゃないわよ、まったく…。妖怪はこのスーパー霊  
能美少女美樹様が退治してやったわ。これからは私への感謝を忘れんじ  
ゃないわよ?」  
『うん…』  
 
 郷子はまだ体に力が入らないらしく、どこかボーっとしたような表情  
でロッカーの中にもたれていた。郷子を引っ張り出そうと美樹が手を伸  
ばすと、郷子も弱々しく手を出した。  
 
「ほら、出てきなさい」  
 
 美樹が郷子の手を握った瞬間、  
 
『美樹…、ホントにアリガトウ…』  
 
 美樹はロッカーの中に引きずり込まれていた。  
 
「……あれっ?」  
 
 一瞬美樹には自分がどうなってるのか分からなかった。美樹は今郷子  
に手を引っ張られ、つんのめるように上半身がロッカーの中に入ってい  
た。さらに郷子の両腕は美樹の体にしっかりと巻きつき固定される。美  
樹は郷子に抱きしめられる状態になっていた。美樹と郷子の顔は数セン  
チしか離れていない。  
 
「ちょっと、郷子…ふざけないで!何でこんなことするの!」  
 
 怒鳴りつつ郷子を離そうとしたが不可能だった。美樹の胸の辺りに抱  
きついた郷子の両腕は万力のようにがっちりと固定され、どんなにもが  
いても美樹を離すことは無かった。  
 十日間行方不明であんなに弱々しい姿だったのになんでこんなに力が  
あるのか、いくらガサツな郷子だからってこの力は異常だ。そもそもな  
ぜ自分をロッカーの中に引き釣り込もうとするのか…。楽観的な美樹の  
頭の中にも警告シグナルが出始める。  
 自分は今ロッカーの中に体が入っている、外に出ているのは足だけだ。  
この状態はまずい、ヤバイ、危険だ。早く出ないと…。  
 ロッカーの縁を持った美樹は、郷子をロッカーの外に引っ張り出そう  
と腕に力を込めたが、郷子の体そのものも根が生えたように動かない。  
 
「郷子!お願い、離して!ここから出て!」  
『美樹、あのね、私美樹が来てくれてすごくうれしかったの』  
 
 郷子は美樹の叫びをまったく無視して喋り始めた。先ほどまでプール  
に入っていたため冷えている美樹の体と違って、郷子の体は熱く火照っ  
ていた。美樹は、郷子に触れている部分からどんどん熱が入り込み、自  
分の体を犯すような錯覚を感じている。特に熱いのは胸だった。郷子の  
胸に押し付けられた美樹の巨乳は弱いヒーターでチリチリと炙られてい  
る様な感覚におそわれていた。  
 
『この中は一人でも気持ちいいけど寂しいの…』  
「ふっあっ、やだあ、何これ!」  
 
 胸に広がる熱はいつのまにか快感に変わっていた。オナニーも結構し  
ている美樹だったが、こんな感覚は初めてだった。郷子と触れ合ってい  
る場所から快感が全身に広がっていく。胸だけでなく、抱きしめられて  
いる背中からも、郷子の息が当たる顔も、急速に熱が広がり体内にジン  
ワリと沁みこんでいく。  
 
『だから美樹…、ずうっと一緒にいよう?』  
「!!!」  
 
 瞬間、美樹の脳に電流が走った。郷子にキスをされたのだ。そのキス  
はただ触れるだけの単純な物でなく、美樹の唇を、舌を、歯茎を、口内  
粘膜すべてを貪る物だった。舐めて、吸い付き、甘噛みし、唾液を送り  
込み、唾液を吸い取り、美樹の口が激しく蹂躙される。郷子の舌は別個  
の生き物のように美樹の口内を這いまわり、舌に絡みつき、存分に味わ  
っていた。抱きしめられ、キスをするだけのセックス、しかし美樹は魂  
を吸い取られるような快感を味わい、全身を脱力させていった。  
 
(気持ちいい…、抵抗できない…。こんな、こんなの…)  
 
 抵抗することの無くなった美樹の体を郷子は持ち上げ、足先まですべ  
てロッカーの中に入れる。美樹の耳に自分の背後でロッカーがバタリと  
音を立てて閉まるのが聞こえていたが、もはやどうすることも出来なか  
った。  
 
 狭いロッカーの中に詰め込まれた二人の少女。閉鎖された世界の中で  
二人だけの宴が始まる。  
 
『ふふ、美樹の胸ってホントに気持ちいい…』  
「あ、ああ…きょう、こお、それ、だめえぇぇ…」  
 
 今、郷子は美樹の背中側から抱きつき、美樹自慢の巨乳を揉んでいる。  
二人の全身はどこからかロッカーの中に沁み出してくる粘液に濡れそぼ  
っていた。郷子は、一日とも一年とも感じられる絶頂漬けの中、触手に  
よって己の体に刻み込まれた「どうすれば気持ちいいか」を美樹の体に  
実践していく。  
 粘液の媚薬作用に酔った美樹の体は敏感で、肌を撫で続けるだけでも  
絶頂へと導くことが出来るだろう。そんな状況で、郷子は美樹の柔らか  
い胸の感触をたっぷり楽しんでいた。  
 
『ほおら、美樹…こんなに指がめり込む……先っぽもこんなに硬くなっ  
ちゃって…ギュッってしてあげるね』  
「ひいいいいっ!郷子!それ、キツいいいいいいい!」  
 
 勃起した乳首を強く握られ美樹はたまらず絶叫したが郷子は手を離さ  
ず、美樹の肺の中の空気を残らず悲鳴に変えて搾り出した。  
 
「アヒイイイイイイイイイイッッッッ…………!!!!!」  
 
美樹の叫びが止まるのを確認して手を離し、再び粘液を塗りこむような  
優しい愛撫に切り替える。  
 酸素を取り戻すため深い呼吸をする美樹だったが、すぐに鼻にかかっ  
た甘い声が出るようになり、陶然とした表情になる。  
 
「んふああ、ああ…それ、いい…んん…」  
 
 一方の郷子のほうも肉体ではなく精神からあふれでる悦びに体が震え  
ていた。  
 ロッカーの中の世界は快楽に満たされているが、そこは自分ひとりし  
かいない孤独の世界。それゆえ、外の世界に触れた少女は自分のいるロ  
ッカーに来てもらおうと次なる獲物の少女を誘うのだ。郷子が十日前に  
見た少女達も、もし郷子が同じロッカーに入ってきたら彼女の肌の温か  
み、人としての存在感にあふれんばかりの愛情と快楽を注ぎ込んだだろ  
う。  
 ともかく郷子は同じ世界にいる少女、それが親しかった美樹ならなお  
さらである、に愛しさを感じていた。愛する人と触れ合う喜び、郷子の  
体を満たしていたのはそれである。自分の手で愛しい美樹を感じさせ、  
愛し合い、この世界で溶け合う、それが今の郷子の望みだった。  
 そして一方、常日頃から感じていた美樹の大きな胸に対するコンプレ  
ックスも郷子の胸中を焦がした。たっぷりの愛情とささやかな嫉妬が入  
り混じった郷子は美樹の胸ばかりを責めたてていた。  
 
『美樹…もっと感じて…私の手でイッて…』  
「あああ…そこ、そこぉ…」  
 
 美樹の全身を濡らす媚薬粘液は肌を熱くするものの、触手は一切手を  
出さず、現在美樹に感じられるのは郷子が胸をいじくる快感、郷子の甘  
い声、吐息、ささやかな胸のふくらみとお腹が背中にぴったりと張り付  
く感覚のみで、美樹の知覚の全ては郷子に占有されていたといっても過  
言ではなかった。  
 愛撫を受け続ける胸からもたらされる快感は激しく、耳元での囁きは  
心をとろかせ体をさらに熱くする。郷子の勃起した乳首は、まるで快楽  
のツボを刺す鍼のように背中にめり込み、ジワジワと悦びを染み込ませ  
る。まだ直接触れてもいない秘部からは愛液がとろとろと流れ出すとと  
もに、美樹は自分の心まで流れ出しているように感じていた。  
 ロッカーに引きずり込まれてから手足への拘束はまったく無かったが、  
もはや抵抗する意思は微塵も存在しなかった。  
 快感にとろけた美樹の頭の中には更なる快楽への期待、郷子に愛され  
ているという悦び、一方的になぶられる被虐の悦び、今自分のすべてを  
支配する郷子への恋慕など、快楽と郷子という二つのファクターのみが  
ぐるぐると回っていた。  
 
「あ、ああ、あああ!あああああんんんん!!!!」  
『また、イッちゃったね…そろそろ次のをしようか…』  
 
 郷子は美樹の体をずるりと回し、正面で向き合うようにした。せまい  
ロッカーの中での回転なので胴体、腕などがこすれあい、その刺激で美  
樹はまた達しそうになっていた。  
 正面を向き合った後郷子は美樹の体をしっかり抱きしめたが、美樹の  
脱力した両腕はだらりと垂れ下がったままだった。  
 
『ほら美樹…、私のことしっかり抱きしめて…』  
「うん…」  
 
 自分でももう動かす力が無いと思っていた腕だったが、郷子の言葉を  
聞くと自然に動き出す。二人がお互いにしっかりと抱き合うと、今まで  
の快感とは別の幸福感が心を満たす。未知なる怪異によって醸成された  
歪な愛情であったが、彼女達の心は確かに「愛し合う」喜びで満ちてい  
た。  
 
『ねえ、美樹。キスしよう…?』  
「うん…私もしたい…」  
 
 ロッカーに引きずり込まれたときと違い、美樹は自分からキスを求め  
に行った。二人の体の間でたわわに実った乳房が圧迫され新たな快感を  
生むが、それさえ郷子とのキスの前では霞んでいた。  
 そのキスは甘美という言葉では言い表せない物だった。積極的に舌を  
伸ばした美樹は郷子の口の中を存分に味わい、郷子も負けじと美樹の中  
を舐め尽くす。舌を絡め合い、唾液を流し込み、またそれをすする。愛  
し合う二人の肉体だけではなく心が接続され、お互いに自分の味わう快  
楽が相手に流れ込み、何倍にも増幅しあうような感覚だった。  
 
『んんっ!むふうっ!んむ!ん!』  
「ん、んんんん!むう!あむん!」  
 
 しばらくの間、チュパチュパと粘膜がふれあい、液体が跳ねる音だけ  
が響いていた。やがて二人が唾液でとろとろに汚した唇を離すと、唇の  
間には銀色の糸が引いていた。とろけつつも幸せそうな笑顔で郷子は訊  
ねた。  
 
『ねえ、美樹。ここで、二人で、ずうっと愛し合おう…?』  
 
 それに対して美樹は  
 
『うん。私郷子が大好き…ずっと一緒に…気持ちいいこと…したい…』  
 
 とろけた表情で肯定の返事を返したのだった。  
 
 
それから幾ばくかの時間が流れて−  
 
 
 今、郷子は体を少しかがめ美樹の乳首を吸っていた。右手の指は肛門  
を抉り、左手の指は膣内部に深く入り込みGスポットを引っかき続けて  
いた。  
 
『出ないなー…美樹、がんばってお乳出さないとずうっと続けるわよ…?』  
『あぐううっ!そんなこと、言ったってぇ!で、出るわけ、無いぃぃ!』  
 
 郷子の考えは、美樹の胸は大きいから母乳が出るはずで、その母乳を  
飲めば郷子の胸もきっと大きくなるはずだ、という言いがかりでしかな  
い物だった。もっとも肉体をむさぼる口実などもはやどうでもいいこと  
だったが。延々と続く交わりの中、責め手と受け手は交代を繰り返し、  
今は郷子が責める時であった。  
 今はダメでもいつか本当に母乳が出るかもしれない。何しろ時間は無  
限にあるのだから。郷子がそう思い手の動きを早めると、美樹は簡単に  
絶頂に押し上げられた。  
 
 抱き合い、キスを続けるだけで何日も時間が過ぎることもある。美樹  
が郷子のクリトリスを何時間も啜り続けることもある。触手に身を任せ  
て二人で昇り詰める事もある。郷子と美樹は歪んだ時空の中で愛し合い、  
貪り合う。  
 二人が望んだときには触手が現れ丹念に全身を犯しつくすが、基本的  
にロッカー内の世界は郷子と美樹の二人しかいなかった。そこにあるの  
は互いに求めあい、責めあい、犯しあう、増幅しあいループし続ける快  
楽の永久回路。  
 もはやこのロッカーが開けられることは永遠に無いが、二人は幸せで  
あった。誰の邪魔もなく、永遠に愛し合うことができるのだから。  
 
 
快楽の饗宴が終わることは無い…。  
                                         (完)  
 

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