犬伏文音がしくじるたびに、厳しい大叔母は文音を叱責する。
罰を受ける事を覚悟をして『箱』を持っていかれた事を告げると、いつものようにスリッパを用意し、こう言ってくる。
「尻を出しな」
文音が四つん這いで臀部を向けると、年頃の少女に対して大叔母は容赦がなかった。何の躊躇いも見せずに、まるでそれが当たり前であるかのようにスカートを捲り上げ、白いショーツが露出する。
屈辱だった。
小さな子供ならまだしもとして、とても文音の年頃で受けるような罰ではない。
ずるり、と皮でも剥くように勢い良く、色白の生尻が丸出しにされる。
パァン!
スリッパを叩き付けられ、文音の尻たぶはほのかに赤みをおびた。真っ白な桃に桜色を振りまぶした色合いは、まさに白桃を連想させる。
パァン!
柔らかな肉はプルンと弾み、皿に出したプリンをつついた時のような小刻みな振動を波打たせる。
叩かれるたびに赤みは色を増していくが、腫れぼったい痛みなどより、こんな罰を与えられる屈辱の方が遥かに文音を苦悶させていた。
パンパンパンパンパン――
大叔母の手首がしなり、肌を打ち鳴らす打撃音は一定のリズムを刻み始めた。
左右の尻たぶを交互にだ。
右と左は順々に、規則正しくプルプル揺れる。
パンパンパンパンパン――
文音はただひたすら耐えていた。
老齢の大叔母の後継者として、この程度の屈辱に耐える精神がなければ修養が甘いと見做される。単なる罰というだけでなく、正しく強い精神を身に付けているかを試す一種のテストも兼ねていた。
拳を強く握り締め、力の余りに爪が食い込む。唇を噛み込み、こぼれる涙さえ瞳の中に封じながら、恥辱に震える身体を抑えてただ終わりの時を待っていた。
パンパンパンパンパン――
待ち続けた。
若かりし頃の大叔母も同じ罰を受けていたのか、犬伏では伝統的にこうした罰が受け継がれたのか。将来後継者を決めるほどの歳を取った時、自分も弟子に同じ罰を与えるのか……。
屈辱感を紛らわすように思いに逃げ込み、懸命に耐え続けた。
「……まあ良い。このくらいにしよう」
ようやく尻叩きの連打が止み、文音はショーツに尻をしまい直した。
これが失態を犯した文音の受けるいつもの罰であった。