「あー平和だ」
そう呟く綾瀬裕人はごく一般的な日曜の昼をのんびり過ごしていた
「今日はルコもいないし掃除も洗濯も終わらせた」
そう言って裕人は薬箱から一本の耳掻きを取り出した
「ルコの目の前でやると私にもやれって言うからなあ」
そう思いながら耳掻きをはじめた、右耳から耳かきを始めて大物の感触を捉え今から取りかかろうとしたその時
「……至福の時間に失礼します」
「ぬおぉぉぉぉ!ははは葉月さん?」
「……ですから 私の顔はそんなに驚かれる造作をしておりますでしょうか?」
心外そうな顔で無口メイド長さんが立っていた
「誰だって耳掻きしているところに急に声をかけられば驚きますよ」
そんな事を話しつつもなぜここに無口メイド長さんがいる事が気になり
「葉月さん?今日はどうしたんですか?春香に何かあったんですか?」
そう聞くと
「……いえ今日はお休みを頂きまして散歩をしていたところ裕人さまの自宅前にきましたのでお手伝いする事がないか伺ったまでです」
「休みの日もお手伝いしたいのかこの人は」と思いつつ
「お気持ちは嬉しいですがさっき掃除も洗濯も終わらせてしまい一息ついていたところなんです」
「……失礼ながら、裕人さままだ掃除されていない所がありますがよろしければこの葉月がお掃除いたしますが」
「えっまだありましたか?どこですか?」
「……耳です」
「はい?」
「……耳です」
「いやだから」
「……耳です」
「わかりました」
掃除させないと帰ってくれないようなのでしかも中途半端に掻いてしまい耳の中が気になっていたので了解した
「それではお願いします」
そういって耳掻きを無口メイド長さんに渡したところ
無口メイド長さんはすっとソファーの端にちょこんと座り膝の上をポンポンと叩いた
「あのぅ葉月さん?」
「……耳掻きと言えば膝枕。膝枕と言えば耳掻きこの二つは切っても切りきれない関係でございます」
そう力説して無口メイド長さんはソファーの端でさぁ来いと言わんばかりで待ち構えていた
「わかりましたお願いします」
そう言って俺は無口メイド長の太股の上に頭をおいた
「……裕人さま失礼します」
そう言って無口メイド長さんは耳掻きを始めたが
無口メイド長さんの耳掻きは痒い所をピンポイントで攻める痛くもなく気持ち良いしか言えない見事なものだった
「……裕人さま反対側です」
その言葉に頭を上げて、無口メイド長さんが移動するのを待っていたら全く動かず
「あの葉月さん?」
「……裕人さまは葉月の方を向くように寝てください」
一瞬気を失うかと思ったがここは覚悟を決めて無口メイド長さんの方を向くように太股の上に頭をおいた
「……いつも清潔にしている裕人さまも耳の中は汚れているのですね」
なんかこっぱずかしいセリフを言われたが
「葉月さんやっぱりメイドは耳掻きも仕事で覚えるのですか?」
「……主人の身の回りのお世話をするメイドとしては基本的な作業の一つになりますちなみに春香さまの耳垢はしっとり型なので綿棒を使いますが」
「春香の耳垢はしっとり型なんだ」と新たな知識を取り入れ気持ち良い状態でうとうとしていた時に
「裕人!今帰った由香里もいるぞ今から飲むからつまみ作れ」
「裕くーん私おつまみに裕くんの鮭カマ食べたい」
そんな事を叫びながら年長者二人組が帰ってきたが、今の状況無口メイド長さんの膝枕で耳掻きされている俺の姿に二人はフリーズし
「裕くんがメイドちゃんの膝枕でしかもお腹に顔を埋めてラブラブな世界に」
「裕人貴様と言うやつは」
そう言って刀を構える姉に
「葉月さんこれまでのいきさつを話して下さい」
「……裕人さまの恥ずかしい所を見せて頂きまして……ポッ」
「ダメだこの人は」
いつものごとく俺には味方が無い状態で暴れ狂う二人を説得するのに20分はかかった