にこにこと微笑む乃木坂秋穂を前に、茅原弥生はガクガクと震えながら土下座していた。
一目で高価とわかる仕立の着物を身に纏う秋穂と対照的に、弥生は全裸を晒している。
弥生が額を擦り付けている床にはバケツが置かれ、その中では何かが蠢いていた。
カサカサコソコソと鉄製のバケツを引っかく音が、弥生の心臓を恐怖で凍てつかせる。
それでもなんとか許しを得ようと、カチカチと奥歯を鳴らしながら弥生は顔を上げた。
「お、お願いします、許してください! 悪気はなかったんです!
そ、それに罰ならもう十分に受けたじゃないですか! どうか許してください!」
恐怖に萎縮しながらも訴えを起こせるのは、マネージメント業で身に付けたスキルの賜物なのだろう。
確かに罰は十分に受けていた。まず手始めにタレントとしてバラエティの汚れ役をさせられた。
そしてその後、別名義の事務所に移籍させられAVデビュー。何人もの男の相手をさせられた。
その業界でも大成できるほどの容姿も覚悟もない弥生は、そこでも汚れ仕事をさせられた。
多人数の相手に器具の使用。何人もの男の不浄の穴を舐めさせられ、大量の精液を飲まされもした。
たった数ヶ月で奈落の底まで落とされた弥生が、罰はもう十分受けたと許しを請うのも無理はない。
いや、一連の事態の黒幕であろう秋穂本人が数ヶ月振りに眼前に現れた今が唯一のチャンスだった。
弥生は、頬に手を添えて訴えを聞く、住む世界の違う上品な婦人に必死に言葉を続ける。
「確かに嘘はつきましたが、私たちだって春香さんを立派なアイドルにしようと純粋な気持ちで――」
「あら、弥生さん」
熱心な言葉は、そっと紡がれた小さな言葉で冷や水を浴びせられたように止められた。
喋るうちに収まりかけていた震えが戻ってくるのを感じながら、弥生は続く言葉を待つ。
乃木坂秋穂はにこにこと――にこにこと笑いながら言葉を続けた。
「私も純粋な気持ちで思ってますの。弥生さんが――
たくさんのそれを笑顔で貪り食うことができる立派な女優になることを」
その言葉を合図に筋肉質の男が二人現れ、弥生の背後から頭と肩を押さえる。
そしてバケツにされていた蓋が外されると、中にはうぞうぞと蠢く大量の――
「ひっ……!! イヤッ! イヤアアアアアア!! 助けてっ助けてくださいっ!
お願いしますこんなっ、こんなの嘘よぉ、ありえ、なっあああああうううぎいい!!」
屈強な男達に抗いながらの最後の懇願も、力尽きていくと共に苦悶の呻き声に変わっていく。
この世のものとは思えないおぞましい悲鳴と、何かが次々に潰されていく音が響く中、
「御相子ですよね? そちらも春香の気持ちは無視していたのですから」
乃木坂秋穂はただにこにこと微笑んでいた。