「ごめんね、裕人」  
クラスの担任である由香里さんに椎菜が、学校にはやくなれるためという理由のために厄介な仕事を押し付けられ  
俺は、その補佐を命じられ、  
今俺たちはクラスに残り、机をくっつけ、向かい合って仕事をしていた。  
「いや、気にすんなって…いつものことなんだし」  
ホント、何でいつもこんな目に…。  
「でも…」  
椎菜の顔を見る限り、かなり気にしているようだ  
「そんなに気にするんだったら、そのうちお礼にジュースの一本でも奢ってくれ」  
これ以上気にしてもらっても困るしな。  
「そっかお礼か。じゃあ私にできる限りのことするよ」  
「そんなに大それたことしなくていいから」  
何かに納得したように立ち上がると、こちらへと近づいてくる。  
「なんだ?どうしたんだ?」  
「お礼、するね」  
そのつぶやきをきいた瞬間に、頭の中が真っ白になった。  
目の前に椎菜の顔があった。  
唇に何かやわらかいものを感じる。  
こ、これは一体…。  
「な、何をいきなり…」  
あわてて体を引き離し、キスしてきた椎菜に対し問いかける  
「あはっ、お礼だってものすごく恥ずかしかったけど。嫌だった?」  
「嫌じゃなかったけど……ってそうじゃなくてなんでこんなことを…そういうのは好きなやつにするもんだろ」  
そうだ。確かに嬉しかったけど、こういうのはちゃんとした気持ちがあってそれで…。  
「私は……裕人のこと……好きだよ?」  
突然の言葉にまたも頭が真っ白になる。  
「裕人は気づいてくれなかったかもしれないけど、私は、ずっと好きだったよ。  
でも裕人はいつも春香さんと一緒に居て楽しそうにしてて…それで…」  
椎菜、泣いてる…?  
俺が好きって……。  
「私は…私は…」  
そういって俺にしがみつき、泣いてくる。  
ただ呆然とするしかなかった。  
無意識のうちに抱きしめていた。  
いつまでも泣いている椎菜を見ていたくはなかった。  
椎菜を傷つけたくないその思いでいっぱいだった。  
その気持ちに気づいたとき、俺は、椎菜が好きなのかもしれないと思った。  
しばらくして落ち着き、椎菜を離す。  
「えへ、ごめんね、裕人」  
照れくさそうに言いながら、笑いかけてくる。  
「その…なんていうか…忘れていいから」  
その顔には少しだけ悲しみが混じっていた。  
「忘れないよ」  
「えっ?」  
「忘れないって言ったんだ」  
そういって俺は稚菜を引き寄せ、もう一度強く抱きしめた。  
「ちょっ…裕人?」  
椎菜は少し戸惑っている様子だったけれど気にせずに抱きしめ続ける。  
「俺も、椎菜が好きだ」  
「裕人…?」  
「今やっと気づいたんだ。いつも隣でアドバイスしてくれてたのはお前だったんだって。  
今までありがとうな。椎菜」  
「えへへ、裕人…」  
目に涙を浮かべながら椎菜も抱きしめ返してくれた。  
 
 
 

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