のだめと別れて3ヵ月。
「ったく…ミルヒーめ…」
午前二時。千秋は今、やっとパリのアパートの前に辿り着いた。本当はもっと早くパリに着いていたのだが、ミルヒーの
「打ち上げデース!」と言う言葉と同時に"one more kiss"に強制連行されてしまったのだ。隙をみて抜け出したが、足元はふらつき、二回転んだ。
(のだめはもう寝ているだろうか…)
あれから三ヵ月、のだめとは殆ど連絡を取っていなかった。巨匠の一挙一動を目に焼き付け、吸収することで精一杯だった。しかし、のだめのことは、昼は忘れていても、疲れ切って夜、ベッドに横たわった時に頭に浮かんでくることはたびたびあった。
(あいつ、一人でがんばっていただろうか…)
(オレがいなくてもちゃんとやっていたら、少しはほめてやるか…)
ふらつきながら門を開け、階段を上っているうちに、のだめに鍵を預けていたことを思い出した。
(…仕方ない)
千秋はのだめの部屋の前に立ち、ドアをノックした。
「のだめ、起きてるか?」
…物音はしない。千秋は少し大きな声で呼び掛けた。
「のだめ!オレだ、千秋だ!」
ガチャッとドアが開く音がし、のだめが姿を見せた。しかし、のだめが出てきたのは、のだめの部屋でも、千秋の部屋でもなかった。フランクの部屋から出てきたのだ。
「ふおぉ…先輩!お帰りなさい!」
なぜこんな時間にフランクの部屋から…。
「先輩!今日帰ってくるなら連絡してくだサイよ!迎えに行ったのに!!今、フランクとプリごろ太の新作映画を見てたんデス!」
(元気そうじゃねーか…)
ほたるのだめにでも、なってはしないかと心配していた千秋は気が抜けた。と、同時になんとなくムカーッとしてきた。
「この三ヵ月、遊んでばっかりいたのか!?ピアノはどうしたんだ!?」
のだめに詰め寄った途端、異臭が鼻をかすめた。
「お前…また風呂に入ってねぇだろ!来い!!」
「まだプリごろ太が途中なんデス!」
「うるさい!とにかくオレの部屋を開けろ!」
千秋は部屋の前までのだめを引っ張って行った。
千秋の部屋は床が見えなかった。かろうじてソファに座れるくらいだ。予想はついていたものの、疲れがどっと出てきた。
「とりあえず風呂に入れ!早く!!」
ピアノにかかっていたバスタオルを投げ付け、のだめを風呂に追いやる。
「あいつはオレがいなくても、普通に元気そうじゃねーか」
(またプリごろ太の話で、ずっとフランクと楽しく…)
開封してないワインボトルを見付け、ビンから直接飲む。
「先パーイ、演奏旅行どうでした?」
バスタオル一枚で出てきたのだめを見て、千秋はワインを吹き出した。
「お前…もーちょっと何か着ろよ!人間の文化を捨てるな!」
「今、洗濯してて…」
「限界に達するまでに洗濯しろ!!」
千秋は酒に酔った勢いで怒鳴った。
「何なんだよお前は!男の家にこんな夜中までいたり、ずっとオレが心配してたのに相変わらずプリごろ太かよ!!」
そこまで言って千秋は口をつぐんだ。
(…オレ、嫉妬してるみてーじゃねーか!)
「…でものだめ、頑張ったんデスよ?毎日毎日ずっとピアノばっかり弾いてたから、フランツが心配して、気分転換にプリごろ太の映画を見ようって誘ってくれたんデス。」
…確かに頬がこけて、影ができている。鎖骨も大きくでて、肩も華奢に…。
(こいつも頑張ってたのかな…)
千秋はのだめの頭をつかむと、乱暴に胸元に抱き寄せた。
「ふぎゃっ」
どうやら鼻が当たったらしい。
「ぶっ」
のだめらしくて、つい吹き出してしまった。
「先輩、お帰りなさい…。のだめがいなくて淋しかったデスか?」
「別に」
「ぎゃぼ…ひどいデスね!」
顔を上げたのだめは涙ぐんでいた。
「のだめは…先輩がいない間、淋しかったデスよ!でもピアノを頑張って…先輩に少しでも追いつこうと思ったんデス!」
のだめの頬に涙がこぼれた。
「なにも泣くことないだろ…」
千秋は指で涙を払い、頬に手を当てた。
「…嘘だよ。オレも少しは…淋しかったよ」
のだめがじっとこっちを見ている。
千秋は頬に当てた手をのだめごと引きよせ、キスをした。
「…会いたかったよ」
千秋が言い慣れない言葉に照れてうつむくと、今度はのだめから唇を重ねてきた。クラクラする。酒のせいか?千秋はのだめの背中に手を回し、ソファに寝かせた。のだめが、
「うきゃっ」
と小声でつぶやくのが聞こえた。千秋がぷっと吹き出す。クスクスと笑いながらのだめの額、頬、耳、首すじ、鎖骨とキスを続ける。くすぐったいのか、のだめが身をよじると、バスタオルがずれ、形の良い右胸があらわになった。
「ぎゃぼ!」
真っ赤になってバスタオルを引き上げようとする、のだめの両腕を頭の上で押さえ付け、キスしながらバスタオルを取って投げる。
(やっぱDカップって…でけーんだな…)
のだめは恥ずかしいのか、目をぎゅっとつぶったままだ。しかし、もう抵抗する気はないらしい。千秋は右胸の乳首を舐めた。のだめがびくっと体を震わせる。口の中で優しく、舌で突いたり歯で甘噛みされるたび、固さを増してゆく。左も指でそっと撫で、転がす。
「…っ!」
のだめは声も出ない。そして千秋は右手をわき腹に這わせつつ、下へ。下着の上から触れると、既に湿っているのがわかった。
上から手を入れ、指で一番敏感な部分を探り当てる。
「ふぁ…先輩っ…!」
始めは指の腹で優しく。のだめの奥から熱いモノが湧いて出てくる。次は円を描くように少しだけ強く指を動かす。
「のだめ…気持ちいいか?」
「ん…っ!ハ…イ…。」
足がピクピク動いている。のだめの下着を脱がせ、今度は舌先を這わせた。
「先輩!やめてくだサイ!それはだめデス!」
「風呂入ったんだろ?」
静まりかえった部屋に音が響く。
くちゅっ…ぴちゃ…ぐちゅ
「や…ぁっ!もうだめデス!」
オレはのだめの頬にキスした。
「のだめ…オレも…もういいか?」
「…ハイ…」
オレは服を脱ぎ、のだめの一番熱く濡れた部分に押しあて、ゆっくり中に入れた。おそらく、のだめは初めてだったのだろう。唇を噛み締め、目もぎゅっとつぶっている。
「ゆっくりするから…」
「…ハイ」
のだめの首筋にキスしつつ、ゆっくり腰を動かす。
のだめの目は閉じたままだ。
「のだめ、オレを見ろよ」
のだめがゆっくり目を開ける。
「のだめ…オレのことが好きか?」
腰の動かし方が知らず知らずに早くなってくる。同時にのだめの締め付けもキツくなってくる。のだめから溢れた熱い水滴は、オレが入るたびに押し出され、卑猥な音をたてる。水滴がこぼれ、ソファにしみ込んでいる。
「あっ…あ!好きデスよ…!」
その言葉を聞いて、オレは我慢ができなくなった。のだめの奥に当たるくらい、激しく動く。
「…オレもう…」
「あっ…のだめも…なんか変になりそうデス!」
次の瞬間、オレは痙攣し、のだめも体を大きく震わせた。
しばらく落ち着くまでの間、千秋はのだめを抱き締めていた。
「のだめ…恵、オレもお前のこと…好きだからな」
千秋はぼそっとつぶやいた。
しかし返事はかえってこない。
「…え、のだめ…?」
顔を覗き込むと、のだめはすでに心地よさそうに寝息をたてていた。
「すぐに寝んなよ…。オレの話も聞けよ…。」
千秋はため息を吐きつつ、のだめの顔に寄り添い、いつのまにか一緒に眠り込んでいた。
しかし、パリはすでに寒かった。次の日、二人して風邪をひいて寝込んだのだった。
【終わり】