「じゃ、まっ仲良くなっ!」  
「ごめんね、小谷さん!」  
早めの夕食を終えた後、修二とまり子は手を振りながら駅のホームへと消えていった。  
「二人になっちゃったね。」  
二人の後姿を見送りながら彰は呟いた。修二の言う“仲良く”の意味が違うことは彰も悟っていた。  
別にいいじゃん、そんなにあせんなくたって。野ブタと会えただけで嬉しいのよん。  
でもそんなのは痩せ我慢なんですけどぉ〜、野ブタをチラっと見ると心細そうにずっと手を振っていた。  
「そろそろ行くのぉ〜。」  
「うん。」  
どちらともなく手をつないで歩き出した。二人でいるときは離れないように手をつなぐのが暗黙の了解だ。  
「明日の朝ごはんはどぅーしよっか?」  
(まり子がいないと困っちゃうネッ。)駅から家への帰り道、商店街にぷらぷらさしかかると、彰は口を開いた。  
「大丈夫、あたし作れるから・・。」  
信子がぽつぽつ呟く。彰の反応が怖いのか、顔を上げない。  
「マジノスケ?」  
「彰が一人暮らしだから・・・。」  
恥ずかしそうに信子が口ごもる。  
「俺のため?」  
信子が首を縦に振る。  
「野ブタ、最高!」  
彰がぎゅっと抱きしめて信子の背中をぽんぽん叩く。  
「たったぶん・・。」  
自信無げにそう付け足すと、人目を気にして彰を無理やり遠のけた。  
「しゅ、修二たち、どこに行ったのかな?」  
彰の胸元に男を感じてどぎまぎした信子は急いで話題を変えた。  
「かな〜?じゃ、俺らもどっかいっちゃう??」  
「えっ?」  
信子が素っ頓狂な声を上げ、彰の顔を見上げる。  
「冗談・・だっちゃ。」  
別に驚く事でもないのよーん、むしろ信子の反応に彰が驚く。  
「冗談・・なんだ・・。」  
信子はまた下を向くと押し黙ってしまった。  
(へぇ〜んな、野ブタ。)不思議そうに顔を覗きこむと、真っ赤な顔でぎゅっと目をつむっていた。  
(もしかして野ブタ意識しちゃってる?!)そうだ、今日は二人きりなんだ、今までとはわけが違う。バイバイと言って自分の家に帰れる距離じゃない。うぶな信子でもさすがに意識するだろう。  
(かぁわいいっ!)彰が手をぎゅっとした。  
 
「野ブタはさ、その、したい?」  
さっき抱きしめた野ブタは柔らかくて女の子を感じた。修二のせいでほんの少しだけもっと触れたくなった。彰が勇気を振り絞って聞いてみた。  
「なっなにを?」  
「はっ花火。」  
信子がびくっとして、勢いよく顔を上げたので、彰はおののいてせっかくの勇気をごまかしてしまった。  
「あるの?」  
「あるの。」  
ほんとは昨日皆でしようと思って用意しておいたのだが、信子のおかげで予定が狂ってしまった。  
「すっする。」  
信子にしても花火の存在は、願ったり、だ。何もする事がなくて、雰囲気に流される勇気はまだない。  
「ほっか、じゃ、浴衣着ちゃう?」  
(浴衣でカランコロンなのぉ〜。)と彰が立ち止まって顔を向けた先は呉服屋だった。  
「浴衣着せてくださーい。」  
彰が信子の返事を待たずに店の奥に入って行った。  
「とびきりいい女にしちゃってください。」  
(呉服屋さんも迷惑だと思うんだけど・・。)信子の心配はよそに暇だったらしく、無茶なお願いにも笑顔で対応してくれた。  
「・・どっどうかな・・?」  
しばらくすると信子がおずおずと現われた。少しクリームがかった白に桜が大きく舞った浴衣を纏い、何種類ものピンクがグラデーションになっている帯を巻き、アップにした髪をかんざしで止めた姿で、彰の反応を待っていた。  
「野ブタ、すっげぇ。」  
彰はそれ以上何も言わずに(これ使えますか?)とカードを出してお礼を言うと、信子を引っ張って店の外に出た。  
 
「彰?」  
(すっげぇ、なに?)彰の反応が少し物足りない。  
「野ブタ、か・・か・・・。」  
「かっ?」  
「か・・・帰るっちゃ。」  
か・・わいいって続けるつもりだったのに、伝えられなかった。  
(何か野ブタじゃないみたい・・。)無造作にまとめた髪とそのせいで見えるうなじが色っぽくて、誰かに見せるのが忍びなくて、急いで信子を引っ張り出した。(俺もへぇーんなのぉ〜。)素直に伝えられないそのわけを考える彰は無言になってしまう。  
「うん。」  
(にっ似合わないのかな。)いつも褒めてくれる彰だから今日も喜んでくれるはずだと思っていた。彰の笑顔が信子の自信だったのに、不安に襲われ、頼るように彰を見たら、凄く真剣な横顔に動揺した。  
「彰も着たんだ・・。」  
あまりにまっすぐできりっとしたその横顔は決して信子を見ようとしない。自分の方に振り向かせたくなって信子は話を振った。  
「ペアルックなのぉ〜。」  
濃い目の紺地のかすりを粋に着こなしていて、いつもより落ち着いて見える。(ペアルックとは言わないと思うけど。)それでも、振り向いた彰は爽やかな笑顔を放ったので、信子は少しどきどきしながら満足した。  
「はあ〜カランコロンってならないのぉ〜。」  
(考えすぎはダメだっちゃ。)黒く染まりつつある空を見上げて、彰が下駄を大きく鳴らして気を取り直すと、信子の体を手繰り寄せ、(らぶらぶかっぷるぅ〜。)と信子の顔を赤らめさせた。  
 
いったん家に帰って荷物を置くと、花火とライターとバケツを持って砂浜に出た。  
子供のようにはしゃぐ彰に、信子はねずみ花火やらロケット花火やらで驚かされたり、二人の時はとても早く過ぎ行くように感じた。  
「夜の海はなんか吸い込まれそうで怖い。」  
最後の線香花火が静かに散ると、信子はしゃがんだまま海を眺めた。  
「俺は青春ドラマを思い出すのよん。海に向かって叫ぶのぉ〜。」  
少し臆した信子を元気付けようと彰は明るく言った。  
「なっなんて叫びますか?  
和んだ信子が、隣でしゃがんでいた彰に、マイクを差し出すまねをする。  
(なんて?)彰が信子を少し見つめる。彰がくだらない事を叫ぶと思っているのだろう、信子は笑顔で彰の言葉を待っている。  
(やっぱり野ブタ、こないだより・・。)かわいい、会うたびにどんどん綺麗になってく感じがして、嬉しいことのはずなのに彰はなんともやるせない。  
修二の言うとおり離れている間にいつかさよならを言われる日が来るんじゃないかって。  
(そんなことなぁ〜い、修二のバカ!!)修二のせいにして懸念を振り払うと、彰が立ち上がって深く息を吸う。  
「今日も野ブタがだぁいすき〜今日の野ブタぁ〜可愛さ最大級〜。」  
押し寄せる不安の波を押し返すように海に向かって叫ぶと、(やっと言えた。)と笑顔を向けた。  
「さっきの野ブタ、可愛すぎて言えなかったのよん。」  
彰の声は思いの丈と同じように大きくて、砂浜の向こうの道路を歩いていた人までもくすくす笑いながら去っていく。  
「では野ブタも。SAY!」  
(恥ずかしい・・。)嬉しいやら気恥ずかしいやら信子はいたたまれなくなって、くるっと方向転換するとその場から走り出す。  
「野ブタ?ぬぁんで?俺の事好きじゃないの?野ブタ〜?」  
花火の残骸が入ったバケツをつかむと、砂のせいでバランスを崩しながら、彰は必死に信子の後を追いかけた。  
 
彰がもたついたせいで、結局家まで追いつけなかった。要らぬ汗をかいてしまって、申し訳なさそうに信子が彰のためにお風呂を沸かした。彰がお風呂から上がってくると、信子は浴衣姿のままテーブルにうつ伏して寝ていた。  
(まーた寝ちゃってるのぉ〜。)寝る子は育つ。このままだと信子はどこまで成長しちゃうんだろう、彰が布団に移そうと肩をさわると(彰?)と寝ぼけ顔で信子が顔を上げた。  
「ごっごめん、寝ちゃった。」  
信子が慌てて立ち上がると、眠い目を起こすためにごしごしこする。  
(すっごいかわいいんですけどぉー。)女の子の寝ぼけまなこを初めて見た。これはもう殺傷能力です。  
彰は自然に信子を抱きしめて、唇を重ねた。信子に回した手で帯をするするーとほどく。  
あっそうそう、あ〜れ〜お代官様ーくるくるくるぅーは期待しちゃダメなのぉー。  
「彰?」  
まだ寝ぼけているのか、信子もされるがまま彰のする事をただぼぉっと見ていた。  
「お手伝いしてるのよん。浴衣は大変だネッ。」  
浴衣の紐を解くと、前がはだけた。白いスリップを着ていて野ブタらしいと思った。  
「野ブタがいけないんだぜ。浴衣で誘うなんてずるいよ。」  
脱がしたはいいが、恥ずかしくて信子のせいにした。  
「だぁってさ、昨日だってさ・・。」  
いろいろ話したい事もあったのにさ、すぅっと肩から浴衣を外すと、野ブタをまたぎゅっと抱きしめた。  
「ごっごめん・・。」  
昨日の事を言われるとつらい、信子は本当に朝まで一度も目を覚まさなかった。信子が今朝のことを振り返る。  
信子が彰の布団の中で目覚めると、布団からはみ出たところで彰が大の字になって寝ていた。彰の手にはしっかり信子の手が握られ、はなす事はなかった。  
びっくりして目をぱちぱちさせて(おはよう。)といったら、(野ブタの寝顔見てたらそのまま寝ちゃったの  
〜。)と笑った。  
「ちゅーしても起きなかったんだぜ。」  
だから、お詫びのちゅー、といって、身をかがめて、信子の唇に向けて唇を突き出した。  
(彰だって起きなかったくせに。)目覚めてつながれた手を見た時、なんだか心があったかくなって、自分でもどうしてだかわからないけど、寝ている彰にキスをした。初めて信子からしたキスだ。だけど彰は起きなかった。だから気付いてないと思う。教えてあげないけど。  
そんなこと思いながらも、しっかりちゅーは受け止める。  
 
「おいで、野ブタ。」  
彰が信子の腕を引っ張って、部屋に誘った。月の光が射し込んだ彰の部屋はなんだか神秘的で、魔法にかかったみたいに体がふわふわ浮いて地に着いてない感じがした。  
「よろしくお願いしちゃいます。」  
「こっこちらこそ。」  
ベッドの上で正座して二人そろってお辞儀すると、自分のTシャツを脱ぎ捨て、信子のスリップも脱がして抱き寄せた。  
ごめんね、野ブタ、やっぱ待てないや、だって俺、野ブタを誰かに渡す事はできないんだ。  
「野ブタ、抱っこ好き?」  
それは修二が見たら俺がプロデュースするって怒り出しそうなほど、ムードのかけらなんて全然なくて、  
「好きかも・・。」  
だけど手探りだから、俺らはいっつも一生懸命でもどかしくって、  
「じゃ、ちゅー好き?」  
でもね、この世の中で誰よりも俺が野ブタを好き、  
「うん・・好き・・彰となら好き・・。」  
ってことをね、今夜、立証してみようと思うのよん♪  
「俺も野ブタとなら好き。野ブタじゃなきゃいや。」  
彰が唇を近づけたので信子は目を閉じた。恥ずかしいから闇夜にまぎれてキスをしたのに、夏の夜空は明るくて、二人の姿はすぐ照らされた。  
唇を重ねては離し重ねては離し、信子を抱きしめる手にどんどん力をこめると、それに伴いキスが激しくなる。彰が信子の髪をかきあげながら、首をもたげると舌を捻り込んで絡ませると唇を吸った。  
「ねっ、これは?」  
彰がブラジャーの中に手を入れる。初めて触る女性の胸はとても柔らかくてふるんっと手のひらでゆれる。  
「んっ・・。」  
囁くようにあえぐと信子が頷く。  
「じゃさ、これは?」  
ホックを外しておそるおそる肩紐を外すと、小さすぎず大きすぎず、形が良くて若々しい信子の胸があらわれた。彰が綺麗な色をした先端を口に含む。  
「あンっ・・。」  
言葉で返事をする代わりに恍惚とした表情で訴える。彰がもう片方の胸を揉みしだく。それに呼応するかのように信子の先端が徐々に赤くとがりはじめる。  
「・・・ぁっ・・・ぁっ・・・んんっ・・。」  
彰が左右の胸を交互に舌先で転がしたり、吸ったりして責め立てると、声を出すのが恥ずかしいのか、時折か細い声で泣く。  
「ひゃっ。」  
彰が腰や太ももをさすりながら、ショーツの中のもっともデリケートな部分へ手を伸ばすと信子は悲鳴をあげた。  
 
「どぅーした?」  
信子が体を強張らせてわなないたように感じたので、乳首から唇を離すと耳元まで顔を上げ、いつもより優しくゆっくりと囁く。  
「いや?」  
怖いのならやめよう、今日じゃなくったってこの先俺たちにはいっぱい時間があるんだから。  
信子が首をふる。  
「きょ、今日の彰、すっすごくかっこいいから、緊張してドッ、ドキドキする。」  
胸がはり裂けそう、怯えからなのか快感からなのか信子の瞳は潤んでいる。  
「ぬぁんで?いつもでしょ?」  
・・・・・・・・、信子の答えに間が出来る。  
「えっ?いつもじゃぬぁいの?!」  
力が抜けて信子にのしかかる。(ちぇっ、俺、野ブタのこと写真でだって毎日かわいいと思ってるのにさ。)ひぃ〜どぉ〜いぃ〜と信子の上でじたばたする。  
「ごっごめん。」  
(おっ重い・・。)彰の胸と信子の胸がこすれてこそばゆい。反面、少し気持ちよくて信子は危うく声を上げそうになった。  
「謝っても遅いのよ〜ん。」  
立ち直れない、と信子の首筋に顔をうずめる。  
「どーすればいい?」  
顔の見えない信子は彰の重みに耐えながら、頑張って反応をうかがおうとする。  
「んっ〜、なら、こぉーするの〜、お仕置きだベぇ〜。」  
俺の印を刻んじゃうのよん、彰が首筋を噛もうとする。  
「ダッダメっ。」  
信子が必死に体を押しのけようとしたので、彰は唇でなぞっただけで顔をあげた。  
「じゃさーこれならどぅ?」  
信子の口を塞ぎ、舌をからめてきたので、信子はもう答えられなかった。  
彰がショーツに手をのばす。上からなぞるとうっすり湿っている。ショーツの中に手を入れると、彰の指先を濡らす。  
「んっ・・。」  
信子がシーツをぎゅっとつかむ。彰が秘部を撫で上げながら、片手でショーツを丸めながら脱がせる。  
「野ブタ、きれぇ〜。」  
一糸まとわぬ信子の身体は、月を味方にしてまばゆいばかりの美しさを放つ。  
綺麗とか可愛いとかそんな言葉しか浮かばない自分のボキャブラリーのなさがじれったい。  
初めて見た信子の全ては麗しすぎてガラスケースの中に閉じ込めていつまでも見ていたい。けどそれじゃ彰の相手をしてくれないから、彰はガラスを割って連れ出してしまうのだけど。  
「あっあんまり見ないで・・。」  
彰が自分の体を見ている、ただそれだけで信子は興奮して、シーツを濡らした。  
「野ブタ、すっげぇ。」  
溢れる雫を指ですくって、彰は言葉を止めた。(だから、すっげぇ、なに?)でも恥ずかしくなるからその続きは聞かないほうがいいだろう。  
「あっ・・あっあっあっ・・。」  
彰も聞かせてはくれなかった。彰が噴出す蜜の源を探り当て、中へと指で侵入する。指が往復するたびに体を仰け反らせながら吐息をもらす。  
「野ブタ、これは好き?」  
彰が足を広げると、穢れを知らない信子のとても綺麗な色をした、濡れそぼってきらきら輝く秘所がむき出しになる。彰が顔をうずめて吸いついた。  
 
「ぁあああん・・はぁん・・あアンッ・・・。」  
彰が起こす刺激に耐えられなくて、信子の体がビクビク脈打つ。打って変わって大きな声をあげてしまった自分が恥ずかしくてますます蜜を溢れさす。  
「野ブタぁ〜お願いがあんだけどぉ〜。」  
(なっなんのお願い?)この状況で信子にお願いなんて聞く余裕はないんだけど。  
「入れていい?」  
お願いと言ったのは、信子の心を和らげるためだ。濡れているとはいえ、初めてなら痛いはず、信子の意志を確認した。  
「うん。」  
緊張しているのか、少し声は震えていた。どんだけ痛いんだろう、しかし彰の下半身は布をまとっている事すらつらい。ズボンとトランクスを一緒に脱ぐとベッドの脇にほっぽり投げた。  
「いい?野ブタ。」  
もう一度確認するとゆっくりとその先で信子とつながり始めた。  
「うっ・・。」  
彰に回す手に力をこめ、信子が痛みをこらえ、顔をしかめる。  
「イタイのイタイの、とんでっちゃえ〜。」  
本当にムードなんてものとは無縁だ。でも彰が言うと魔法にかかったみたい。痛くなくなった気がするから不思議だ。  
ゆっくりゆっくり奥まですすめる。彰だって初めての体験だ。異物感を感じ、きつく締め上げ、それだけでも気持ちよくていってしまいそうになるのをぐっとこらえる。最後まで包み込まれると彰がへへっーと笑ったので、信子もへへっと笑い返した。  
華奢な信子が折れちゃいそうなほど、彰は力いっぱい抱きしめて唇を合わせた。  
ゆっくり腰を動かす。徐々にスピードを上げていくと、とめどなく溢れる愛液のおかげで動きがだいぶスムーズになる。  
「ぁあん・・あ・・きら・・。」  
彰が奥へとつきさす度に、彰を受け入れた信子の顔が少女から大人の女性へと変わっていく。息が乱れ、  
頬が火照り、彰の名を呼びながら、艶やかに舞い上がる。  
「・・あ・・きらっ・・・。」  
激しい息づかいと共に、二人の体が汗ばむ。信子の手が滑って、彰の背中にしがみつくのがやっとだ。  
「離さないで・・。」  
俺を。体を。どっちも離さないで。野ブタ、一生俺のもんでいてね。  
「ぁあっ・・はあっ・・あ・・き・・ら・・もう・・あたし・・あたし・・。」  
乱れた息はあがって、体をよじる。  
「野ブタぁ〜お願いがあんだけどぉ〜。」  
彰も息を弾ませて動きを止める。(つっ次はなんのお願い?)やっぱり信子にお願いなんて聞く余裕はないんだけど。  
「一緒にイッテ・・?」  
信子が彰の頭をぽんとはたいて凄く恥ずかしそうに表情をとろけさせたので、彰は満足そうに微笑むと身体と身体がぶつかり合う音をフィナーレに向かって一層奏でた。  
 
「あとさ5年位かな〜。」  
信子の横で唐突に彰はそう言った。  
「5年?」  
「うん、5年くらいたったらさ〜立派な道端の十円玉になれるかな〜?」  
信子は彰の顔を見てきょとんとしている。  
「なれたらさ〜俺野ブタにお願いあんだけど。」  
(おっお願いばっかり。)今度は何をお願いされるんだろう、信子は少し緊張する。  
「何?」  
「あのね、着て欲しい服があるのぉ〜。」  
彰が少し体を起こして信子の顔を覗き込んだ。  
(ウエディングドレス。)そういうと彰はにこっと微笑んだ。  
(ずるい、彰はずるい。)あたしが断らないって知ってるから、ほんとは答えなんて要らないくせに、だから信子は首を振った。  
「彰しょーーーく。」  
ずるっ、彰は体のバランスを崩した。  
「野ブタ、ひどい!こんなに愛を確かめ合ったのに!えっちすると態度が変わるってほんとなのぉ〜!!」  
およよぉ〜と枕に顔をうずめる。  
(それは女の子の台詞だと思うけど・・。)枕に顔を伏せながらちらちら信子の様子をうかがう彰はあからさまでかわいらしかった。  
「彰・・。」  
信子がおでこを彰の腕に寄せ、くすっと微笑んだ。  
「・・白無垢でって決めてるの。」  
信子にしてやられた、(やっぱ態度変わってんじゃん!)もしかしたらカカア天下かも。でも紋付はかまも悪くない、信子だってきっと今想像してるはず、彰は信子の方に体を向けると胸の中に抱きしめた。  
 
 

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