とりあえず俺は走った。一度も振り返らずにとかく走った。
走りすぎて次にまり子としゃべったのは駅に着いたときだった。
「はっはやいよ、修二。」
まり子が息をはずませながらそういった。
「ごめん。」
二人でいたかったんだ、そう続けたかったけど恥ずかしくて言えなかった。切符を用意してプラットホームへと向かう。俺らは電車に・・。
乗っちゃいまぁす、ガタンゴトン、降りちゃいまぁす。
「ねえ、修二。」
駅からホテルへのわずかな距離で、本当に二人なんだと確信すると、少し心配そうにまり子は口を開いた。
「小谷さんと草野くん、心配してないかな・・?」
確かにまり子のいう通りだ、大丈夫、なんて軽々しくいうのもあまりにイメージが悪い。しかしここまできて二人を呼ぶというのも、せっかくまいた努力も無駄になるというもんだ。
「じゃ、メールでも打っとくか。」
修二が携帯をポケットから取り出してすばやく打つ。
「とりあえずそのうちこっち来て、みたいな?」
ちょっと見てすぐ戻ろうなんてまり子に言われないように、修二は嘘をついた。
「そのうち?」
「あいつらも二人でいたいんじゃないかなと思って・・。」
俺の言葉にまり子は首をかしげながらも頷いて無理やり納得していた。
(二人っつーか彰が。)今日俺たちがここにいるのは彰が信子に会いたがったからだ。自分が幸せだと、他人の幸せも応援したくなる。
たまに彰に遅れて屋上に行くと、手帳を取り出して信子の写真を眺めている姿を見かけた。彰は俺に気付くと急いで手帳を隠し、コンッと挨拶するので、俺はずっと気付かない振りをしていた。
でもなかなか諦めきれないたちの悪いものが恋ってもんで、この旅でまり子に気づかされた俺は、その事を思い出し、彰の恋もうまくいけばいいのにって心底思った。ほんと、野ブタと話す彰の顔を見て、すげー思った。
「あいつらも・・。」
修二の言葉の意味より、まり子にはその言葉のほうが重要だったみたいだ。(あいつらも。)まり子に繰り返されて、無意識のうちに発した言葉に恥ずかしくなる修二。しかし、自然と出た言葉だったからこそ、まり子は嬉しかったのだろう。
「あっこっち。」
気恥ずかしさをごまかすために、まり子の顔を見ずに後ろ手で手を引いてエレベータにのり、部屋に誘導した。部屋の前につくと、修二はカードキーを取り出して差し込んだ。
「素敵〜。」
ドアを開けるとまり子は部屋を見回しながら、目を輝かせた。
なんとなく修二は(俺のおかげなのぉ〜。)と彰が入ってきそうな錯覚に襲われたので、廊下をもう一度見渡して、ドアを閉めてチェーンをかけた。
「へぇ〜リビングと寝室は別々なんだ、なんか普通のおうちみたいだね!わ〜おっきいテレビ〜ほんとすごーい。」
そうなんだよ、すげーんだよ、つーか度肝を抜かれてまじびびったよ。
(ただ寝るだけなのに、すげーな、おまえ。)と言ったら、(何が違うの?)とホテルの部屋はみんなこんなもんだと返した彰が少し恐ろしかった。
「これなら外に出なくてもずっといたくなっちゃうね・・。」
窓から外を見ながらまり子は呟いた。
「えっ?」
修二はよく聞こえず、聞きかえした。
「ううん。」
振り返ってまり子は首を振ると、(どうしてこんなところに泊まれるの?)と聞いた。
「彰が用意してくれたからさ。」
「草野くんが?」
まり子が驚く。
「あいつんち、親社長でさ、それで。」
「へーお金持ちなんだ。知らなかった。」
そっか、知らないのか、俺にとっては当たり前の事も、まり子にとっては当たり前のことじゃないことに気づく。
俺の仲間はおまえの仲間なんて照れくさいことを言ったが、いたるところで疎外感を与えたんだな〜と改めて反省する。
「見えないよな?」
「うん、見えないね。」
しかしまり子にさほど気に留めたそぶりは見えなかったので、修二は安心した。
「あっ上着・・。」
外からきた格好のままに気付き、まり子のコートを預かり、クローゼットの中にかけた。自分の上着もついでにかける。
「お茶入れるね。」
まり子がポットのスイッチを入れてお湯を沸かす。
「ああ・・。」
コートを脱いだまり子は薄手のVネックのニットを着ていた。体のラインがよく分かり、目線に困り、修二はどきどきしながらソファに腰掛ける。
「はい、どーぞ。」
まり子が入れたお茶を差し出すと修二の隣に腰掛けた。少し広めのソファだったため、残念な事に二人の間にゆとりが出来た。
「ありがと。」
まり子はミニスカートだったので、座るとよく長くて綺麗な足が目に入った。部屋には二人きりだ、さらにどきどき感が助長する。
(会話が・・ない。)まり子といてこんなに緊張したのは初めてだ。まり子じゃなくても女の子と二人になったことなら多々ある。でも緊張はおろか会話を作れないなんて事はなかった。
なんせ昨日付き合い始めたばっかりなのだ。今までまり子とお昼を食べていた気持ちとはまったく違う。
「やっぱり修二、向こうでも人気者なの?」
心中穏やかじゃない修二と違って、まり子は緊張する様子もなかった。
「やっぱりって・・・。」
「違う学校での修二はどんな感じなのかなって思って。」
はい、そーです。と自分で言うほど修二の神経も図太くない。言葉を濁した。
確かに修二はすぐ溶け込み、気配り上手な一面と持ち前の面倒見のよさで、女子にも男子にもかなり人気がでた。
都会ではあんなに浮いていた彰も、のんびりした今の学校の生徒には受け入れられ、俺たちの存在は一目置かれている。
「いや、まあまあ。つーか変わんない。うん。」
修二は頷きでごまかした。
「じゃ、やっぱ人気あるんだ。女の子にもてちゃう感じ?」
そういう事になりますか、まり子の追求は予断を許さなくて、俺の頭の中はせわしく稼動する。
「いや、全然もてない。つーかまり子みたいな子、向こうにいないからもてたところで別に。」
修二が思いっきり頭を振り、力いっぱい否定する。
正直俺はもてる。少し漂う都会っぽさも手伝ってか、同級生はおろか後輩や先輩、先生にまできゃあきゃあ騒がれた。
バレンタインも・・かなりの成果でまあ結構いい思い出だ。ちなみに彰は人気があるといっても男限定なので、バレンタインの結果は散々だったが・・。
「俺が好きなのはまり子なんだから・・さ・・・。」
「へへっでも心配だな〜。」
好き、その二文字を言ったとき、まり子が凄く嬉しそうな顔をしたんで、少し修二はうしろめたくなった。女にもてるのは正直悪い気はしないが、これからはまり子を大事にしなきゃ、あんまり他の女に優しくするのはやめよう、と誓う。
「じゃあ、聞いてもいい?」
「えっ?」
「なんで私の事好きになってくれたの?」
(なんでって・・。)答えにつまった。好きになる気持ちに理屈なんてない。というより自分でも理由がつけられない。ただまり子にもう一度会って微笑みかけてもらいたかっただけなんだ。
「教えませんっ。」
適当な言葉が見つけられなくて、修二は冗談ぽくそう言った。
「なんでー?もう、意地悪っ!」
まり子が笑顔で修二を責める。その言い方が凄くいじらしかったので、まり子をいじめるのは悪くないと修二は新たな喜びを見出してしまった。
「そういうまり子こそさ、心変わりしようと思わなかったの?」
まり子は俺なんかよりはるかにもてる。転校前だって、なんつったっけ、3年の・・まあ名前なんて忘れたが、言い寄られてたし、その前だって俺が知ってるだけで両手じゃ足りない。そんな奴を俺の彼女だって皆に思わせて俺は優越感に浸ってたんだから。
「えっ?」
「まり子こそもてるじゃん。だからさ、なんでかなと思って。」
そういえば、その先輩とはその後どうなったんだろう、聞いてない。心の中がもやっとする。
「なんとなく。」
「なんとなく?」
ちょっと拍子抜けだ。“当然”の二文字を心のどこかで期待してた。
「うん、なんとなく修二を諦めないほうがいい気がしたから。」
「そっか。」
その“なんとなく”に乾杯だよ。あぶねぇ〜。
「そういや、その、なんつったっけ、先輩でいたじゃん。それとはその後どうなったの・・?」
心の中のもやもやが消えなくて、勇気を出して聞いてみる。
「・・・・。」
「ほら、俺がいない間とかさ、まり子強引に誘われたのかもってさ、なんかいろいろ心配じゃん?」
まり子が黙って考え込んでしまったので、修二は戸惑って饒舌になった。
「あるわけないじゃん。修二に振られて、私バスケで生きてやるって、これでもすっごい落ち込んだんだから。」
修二を目でとがめる。(ごっごめん。)言葉にしたら嘘くさそうで、修二が心の中でとどめた。
「っていうか修二、もしかしてやきもち妬いてくれるの?」
まり子はすぐに、非難の表情を崩して(嬉しいな。)と呟いた。
「そりゃ妬くさ。」
そっか、このモヤモヤ感はやきもちか、恥ずかしげもなく自然に答えていた。今までまり子にはずいぶん嘘をついてきたから、これからは正直でありたいという気持ちの表れでもあった。
「おまえは妬かないの?」
自分だけはやだなとおもったので、まり子にも聞いてみた。
「うん、妬かないかな〜。」
えっなんかショック、もとい、しゅーじ、しょーーーーーーーーーっく!!って一回やってみたかったんだ、これ。
「私は修二のいう事だけを信じるから平気。さっきそう決めたの。」
誰に言われても自分が信じたいから信じる、まり子はそういう女だ。人に、それも世界で一番大事な奴に、信じてもらえる、って俺はなんて幸せもんなんだろう。
「でもやっぱ妬いちゃうかな、草野くんにだけは。」
「彰に?」
「うん、だって修二を追いかけて転校するなんて私にはできなかったからね。」
(ちょっと悔しい。)とまり子が顔の前でちょっとの大きさを手で作る。
「そっそう?あっおまえ、それ彰にぜってー言うなよ。あいつ、喜ぶから。」
喜んでるのは修二なんだが、それを隠すために彰に置き換えてみる。
「小谷さんと草野くん、今頃何してるんだろうね?」
今の話で二人の事を思い出す。
「気になる?」
「うん、やっぱ修二たちといるときの小谷さん凄い楽しそうだし、今もきっと凄い楽しいんだろうな、と思って。小谷さんいつも以上に活き活きしてたから。」
まり子が遠くを見つめて微笑む。
「そっか。」
俺たちがいない間、まり子は野ブタの傍にいたんだもんな。
「ありがとな、野ブタの傍にいてくれて。」
「ううん、私のほうが小谷さんに助けられてたかも。」
(やっぱ修二、小谷さんのお父さんみたいだね。)と続けた。
「小谷さんは修二が残していってくれたプレゼントみたいな感じ?」
(小谷さんに失礼かな?)茶目っ気たっぷりに舌を出すとまり子は自分の気持ちを語り始めた。
「修二とね、ずっとお昼を食べてたから、一人になったら誰と食べていいか分からなくて、友達がいないってわけじゃないけど、なんだか本当に一人ぼっちになっちゃった気がして。」
まり子の長いまつげが日差しを浴びてきれいな日陰を作る。
「でも、あの日の海で、小谷さんが波の音の作り方を説明してくれた時、凄く一生懸命でうらやましいなって思ったの。」
(まり子・・。)まり子の顔は笑顔なんだが、それは必死に作っている笑顔で、見ちゃいけないような気がした。そのかわりまり子の声は一つ一つしっかり聞かなきゃいけないと思った。
「修二のために小谷さんと草野くんはさ、一生懸命演出してくれてたんだよね。私のためにこんなことしてくれる友達いるかなって思ったら凄くうらやましかった、修二の事が。」
(俺の事が?)そうだよな、彰と信子がいたから、まり子との未来を修二は切り開けたのだ。彰と信子がいなきゃいつまでも修二がつまらない人間だったのは間違いない。
「友達っていいなぁって思ったの。私もそんな友達が欲しくて。だから次の日一緒にお昼食べない?って勇気を出して小谷さんを迎えに行ってみた。」
(修二を迎えに行ってた教室に。)まり子が心の中でそっと付け足す。
「その時なんか変われた気がした。だからかな、修二をあきらめきれなかったの。修二ともう一度出逢ったときの自分にかけてみたかったの。」
(修二にもう一度好きになってもらえるような、中身がちゃんとした自分になっていたかったの。)言い終えるとまり子は充実感に浸った顔をした。
俺は心なんてすげー気持ち悪いと思ってた。でも人の心って何考えてるか分からなくて気持ち悪いからいいんだよな。分からないからこうやって聞いた時、俺の心が揺さぶられるんだよな。
「なれてる、かな?」
(なんだかまだ付き合ってるってのが信じられなくて・・。)学園のマドンナだって、好きな人の前ではただの一人の女だ。マドンナだけに、心の内を誰かにさらす事が出来なくて、一人で泣き暮れた夜もあっただろう。
(ごめんな、まり子。)修二がもう一度心の中で謝る。その涙のほとんどは修二が作り出したものなのだ。
(俺の方がまり子に全然ふさわしくないのにな。)でも本当はふさわしいとかふさわしくないとかそんなの関係ない。ふさわしい基準って誰がきめんだよ。そんなの他人の主観だろ。惹かれあった瞬間に俺らのバランスは取れたんだ。
「まり子・・。」
返事の変わりに修二はまり子にキスをした。少し開いていた距離に俺は身体を伸ばした、俺たちにとっての初めてのキスをするために。
「修二?」
まり子は驚いて目をつぶる事も出来なかった。(可愛いじゃん。)吸い付きたくなる桜色の唇に修二の辞書から我慢という二文字を消した。
「まり子。」
もう一度愛しい名を呼ぶと修二は手を引いてまり子を立たせて寝室へと引っ張る。
「かっ帰ってきちゃうよ。」
「大丈夫、夜まで帰ってこねぇよ。」
言ってから、しまった、とつないでない手で口を押さえる。
「じゃ、お風呂入りたい。」
しかしまり子には気にする余裕がなかった。
「なら一緒に入る?」
「それは・・・。」
凄く恥ずかしそうに俯いたので修二は抱きしめて二回目のキスをした。
修二はまり子の口を侵し、舌を絡める。舌で優しく、まるでソフトクリームでもなめるかのようにあまーくゆっくりと。
キスの経験ははじめてじゃない。だが何やらせても器用な俺はどうやら女を感じさせるキスをしてしまうらしい。まあ要するにキスがうまいということだ。
その証拠にまり子の全身の力が抜けて立っているのが怪しくなってきたので、修二は抱きしめる腕に力をこめた。
「我慢できないんじゃないかな、と思ってさ、おまえが?」
(ほんとは俺の方が、だけど。)自分で自分にこっそり突っ込む。まり子は反論しなかった。というよりも瞳が熱っぽく潤んで反論出来なかったようで、俺はそっとまり子を押し倒した。
綺麗に整えられたベッドに飛び込むとスプリングで体がはねる。まり子の綺麗な長い髪が白いシーツの上に広がった。
貪るようにキスをしながら、服の上からまり子の胸をもみ、ミニスカートを揺らしながら、足をさする。
ニットの裾の方から手を滑り込ませる。じらすようにブラジャーの上から揉んだ。
「んんっ。」
その感触にまり子が声を上げる。
修二はまり子の背中に手を回すとブラジャーのホックを外す。ブラジャーの下から手を入れて、胸に触れた。
その頂点はすでに激しく自己主張していて、修二は指先でちょんと突く。
「あんっ。」
まり子が身体をくねらす。少しの刺激でも反応する敏感な身体に変わっていた。
修二がまり子の耳を甘噛みすると、首筋をなぞる。
「くすぐっ・・たい・・。」
吐息が混じって、話す声は色っぽい。
まり子が何処を感じるか、ちゃんと把握しなくては。修二の体も熱に帯びて、潤んだ目でまり子の表情を読み取る。
「服が伸びたら困るよな?」
もっともらしい理由をつけてまり子のニットを捲り上げ上手に脱がせた。
緩めたブラジャーが微妙にずれて、申し訳程度に修二の視線から隠そうと覆ってるのが、またたまらなくそそる。
ブラジャーの下からはみ出る胸をそっと指先でなぞりながらブラジャーを跳ね除けた。
まり子の形のいい胸が露になる。まり子は息をはずませながら修二にされるがままだ。
「何をすればいい?」
そのとろけた表情に満足した修二は、まり子の胸を包んでピアノを奏でるかのように指を動かした。
「・・わ・・か・・んな・・・い・・。」
まり子が答える最中に、修二が揉む手に緩急をつけたので、言葉を発するのも苦しそうだ。
「まり子の望みを叶えたいんだけどなぁ〜。」
修二はまり子の耳元でささやいた。
「んもぅ・・・・・いじわるっ・・・。」
(意地悪?やべっ、はまりそっ。)この上ないまり子の甘ったるい声が新鮮で修二をさらに喜ばせた。
修二はにやつきたいのを我慢して、唇で身体を伝うと柔らかい胸の頂点を舌で刺激した。
「・・ぁあん・・。」
修二は片方の胸を揉みしだきながら、もう片方の胸を舌で転がし、吸い上げた。時折歯を立てるとまり子は身体をなまめかしくねじ曲げた。
修二が片手でミニスカートの裾を足をなでながら捲し上げ、ショーツの上から秘部をなぞった。ショーツがぐっしょり濡れているのを感じる。
「んっ・・・あっ・・・。」
まり子の身体がびくんと大きくのけぞった。どうやらやはりここが一番感じるらしい。
「こんなのとっちゃいなよ。」
スカートのホックを外し、ずり下ろす。
ショーツ一枚になって、綺麗な肢体がすべて露になった。(やっぱ、いい女。)修二が上から下までゆっくり眺める。
「修二・・・?」
修二の動きが止まったのでまり子が目を開けて様子を伺った。
「まり子がすげー綺麗だから見とれちゃった・・・。」
「やだっ修二〜。」
まり子が恥らう。紅く火照ったほほが愛らしい。修二がもう一度キスをして軽く舌を絡めると、ショーツの隙間から指を入れ、秘部をなでた。
「ぅぅんっ・・・。」
唇は修二がふさいでるので、まり子のあえぎ声は口の中で消え入った。
修二が中指でまり子の敏感な部分を中指でなでる。身体がぴくっと反応したのを受けて、重ね合わせた唇を解き、内腿に吸い付いた。小さく印を残すと、中指の動きを早くする。
「あっ・・・はぁ・・・ぁああん。」
快楽に耐え切れず、まり子が指の動きにあわせて、悦楽なる悲鳴を上げる。
修二はショーツを素早くおろし、二本の指をその奥へ差し込んだ。出したり入れたりを繰り返すと、ぴくぴく魚のようにまり子の身体が跳ね、背中をのけぞらせ、胸を突き出した。
その胸に修二がまたむしゃぶりつく。上からも下からも責められ、まり子の意識は朦朧として、ただ愛液がいやらしい音を立てるだけじゃ飽き足らず、シーツに綺麗にしみを作り続けた。
「びしょ濡れじゃん。」
修二に感じてあまりに溢れる蜜を見て、嬉しくて修二は少しいじめたくなった。
「・・しゅ・・・しゅう・・じ・・のせい・・だよ・・・。」
修二の執拗な責めのせいで息も絶え絶えだ。
「じゃ、やめる?」
「えっ?」
まり子がすがるような瞳で声を上げたので、修二の意地悪心に火がつく。
「俺のせい、なんでしょ?」
「修二・・。」
名前を呼ぶ甘えた声が修二の頭の中でこだまする。
「なに?」
「やめないで・・・。」
もとよりやめるわけがない、まり子の言葉に気をよくした修二は、返事をするかのようにまり子の秘部に顔をうずめた。
綺麗な陰核が顔を出し、修二は丁寧になめ上げた。
「はふっ・・ぁあっ・・・・んんっ・・。」
まり子の身体にあわせ、ベッドも揺れ動く。シーツの上でまり子の長い髪が波を打つ。揺れる身体を押さえながら、修二は舌を転がしながら這わせた。
膝を立てたまり子の足がヒクヒクし、力が入らなくなったのを感じ、修二は顔を上げた。
「まり子入れてもいい?」
「うん。」
恥じらいながら頷く。あまりにも可愛くて唇に一つキスを落とした。
がちゃ、ガチャガチャ。
修二が挿入しようとした瞬間、ドアが開く音がする。
「あれチェーンがかかってる?修二ーコンコンっ修二ー。」
「かっ帰ってきた・・。」
聞き覚えのある声が飛んでくる。(すっ寸止め?こんな展開ありっ??)あとちょっとじゃん、罰ゲームかよ、はぁ〜、修二がため息をつく。
修二とまり子が慌てて服を着る。(つーかまだ夜じゃないだろ。)窓から差し込む光は赤く染まっている。
「いっいないのかな?」
「そんなことないのぉ〜。中に人がいるからチェーンがかかってるのよ〜ん。コンコンッ、桐谷くぅーん、上原さぁ〜ん。」
彰が廊下で騒いでいる。(ちっ余計な事に気付きやがって。)彰の能天気な声に殺意を覚えた。ふと乱れたベッドに目がいく。
(気付くよな・・。)彰もこれを見ればさすがに気付くだろう。
「まり子、そっちもって!」
びしっと綺麗にベッドメイキングする。(やっぱ何やらせても俺器用だわ。)と心の中で自画自賛する。
「今日は楽しかったね。」
部屋を移動しながら、まり子は表情をほころばせた。
「おっおお。」
言いたい意味はわかる。次会えるまでのおまじないだ。でもちょっと意地悪してみたくなった。
「でもまり子、まだ今日は終わってないよ。」
「じゃ、今日も楽しいです。」
俺の軽いジョブをまり子はものともしない。でもそんなまり子だから俺は好きなんだ。
とりあえず俺の楽しみは4ヵ月後まで先延ばしだ。仕方ない。今日も明日も明後日も、そんなまり子をまぶたの裏に焼き付けて夏休みを待つとするか。
まり子をソファに座らせて、短く唇を重ねると、彰と信子を迎える為にドアへと向かった。