「わ・・たし、が・・・」  
 
野ブタの震える指が、ゆっくりと持ち上がっていく。心臓が、早鐘を打つように速度をあげる。  
よし・・。  
 
来い。  
 
来い。  
 
 
来い・・・!  
 
ぐっと拳を膝の上で握り締めた。  
 
が、その細い指が自分のほうに向くことはなかった。  
・・・あれ?  
 
「わ、私がほん、本当に好きなのは・・バンドー・・・さん・・・・」  
 
その指は、しっかりと厚化粧お化けを指していた。  
 
「・・・・お」        
握った拳が、膝の上でふるふると震えはじめるのを押さえることが出来ない。  
 
「・・っ俺じゃ・・俺じゃねえーのかよーーーー!!!!」           
花びらの中にたたずむ、天使のように愛らしい野ブタの身体が、驚いたようにびくり、と強ばった  
 
いつもならすぐにでも駆け寄って、大丈夫何も恐くないっちゃ☆などと、べたべたに甘やかして抱き締めてやりたくなるところだ。  
 
が、しかし。  
今は、怒りで身体中がわななき、駆け寄るどころの話ではない。  
 
「おま、野ブタ!そこは“私が本当に好きなのは・・・草野くん”って!草野くんって言うとこじゃないのか!!?」  
 
「え?え?」  
 
野ブタが珍しく、焦ったように見つめてくる。  
 
「そこは、実は野ブタは彰くんが好きでした☆な、びっくり展開を繰り広げるところだろうがあぁぁあ!!」  
「誰かあいつを止めろー!」  
 
ーあのあと、なんとか落ち着いた俺は、とりあえず野ブタに謝った。ひたすら謝った。  
しかし、その日からなんとなーく避けられるようになったことは言うまでもないだろう。  
 
 
end  
 
 

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