――心がざわめく、この気持ちなかなかにして言い表せない。男が男を好きになる?  
いや・・・普通ならありえない。ちょっと違うのはその相手が女の子より女らしい男ということだけ。  
 
「まーくん?どうしたの、ぼーっとしちゃって。勉強難しい?」  
「い、いやなんでもないよ」  
 
ゆうきの部屋でテスト勉強をしているが、集中できない。近頃、気がつくとゆうきの顔を見ている。  
そして我に返った後、自問自答するのだ。俺は男が好きなのか、ゆうきが好きなのかと。  
 
「ふふ、まーくん・・真剣だね?大空さんもこういうまーくん見たことあるのかなぁ?」  
「まだ付き合って間もないからな。家に行ったのも一回だけだし」  
「そ、そうなんだ・・大空さんのお家に行ったこと・・あるんだ?まーくん」  
 
俺はハッとして口をつぐみ、みるみるうちに声が翳って俯くゆうきを見る。  
まただ。いつも何気ない言葉で俺はゆうきを傷つける。この間、家にいる時だけは恋人になると言ったばかりなのに。  
 
「い、いや。進級テストの時だよ?それにすぐ先生が来て何もしてないし、勉強だって出来なかったんだから」  
 
俺はしどろもどろになりながらもゆうきに説明する。だが説明をしている自分もおかしいと思う。  
俺は大空薫と付き合っている。もちろん女性だ。しかも普通ならば俺なんかが逆立ちしたって付き合えないような才色兼備の全校生徒憧れの女の子だ。普通ならばそれで満足していればいいだけの話。  
・・・だが、家には同居している幼なじみがいる。ゆうきだ。  
ゆうきは俺と大空薫が付き合ってるにもかかわらず、それでもなお、俺を好きだと言う。  
実際、ゆうきが男でなければ何の障害もなく付き合っていたはずだ・・俺とゆうきは。  
 
「まーくん・・ごめんね?私が家にいる時だけは恋人なんてまーくんにお願いしたから気を使わせちゃって・・」  
「そ、そんなことないよ!俺こそ・・ごめん」  
「・・でも私、薫さんに負けないくらいまーくんが好き!どうしようもないくらい!ごめんね・・」  
 
ゆうきは伏していた顔を上げ、涙を目にためながら俺の方へ近寄ってくる。  
俺は手がゆうきの顔に近づく距離になったあと、そっと指でゆうきの涙を拭う。ゆうきが泣き笑いのような顔をした後、俺は珍しく自分から唇をゆうきの唇に重ね、舌をゆうきの口の中へと這わせる。  
 
「・・ちゅ・・ちゅ・・ぷ」  
 
ゆうきも俺の舌に動きを合わせるかのように舌を絡ませる。  
気持ちがいい・・ゆうきとのキスはゆうきが男であることや、大空薫とも付き合ってるという現実をも忘れさせる。  
俺はさらに舌を激しく、ゆうきの口の中すべてを感じようと動かす。  
 
「んん・・ちゅ・・ちゅぷ・・ちゅ・・ハァハァ。まーくん、ちょっと激しいよ?・・んん」  
 
俺は苦しいのか唇を少し離したゆうきの髪の毛の中に手を入れ、また俺のほうへと強く寄せる。  
ゆうきも観念したのか、動きを俺の激しく動き回る舌に合わせようとする。  
俺とゆうきの舌が動くたび唾液が俺達の口の中を行き来する。  
 
「ぷはぁ・・ハァハァ・・」  
 
さすがに苦しくなってきた俺は唇を離し、ゆうきの顔をまじまじと見る。  
透き通った肌、大きく綺麗な澄んだ瞳、そしてキスをして少し淫靡な雰囲気をもったゆうき・・  
 
「・・まーくん。私この間のことね、覚えてるよ?」  
「この間のことって?」  
「まーくんが一人で勉強してた時のこと・・本当の恋人になっちゃおうかって私が言った時のこと・・」  
 
俺はゆうきに言われてその時のことを思い出す。あの時は先生が入ってきて行く所まではいけなかった。  
後日、やっぱりゆうきは男だから行く所までいかなくて良かった・・なんてことも考えた。  
だが今も、ゆうきとキスをした後はもう何も考えられない。考えるのはゆうきのすべてが見たいということだけ。  
それだけゆうきの魅力が大きく、俺を倒錯の世界にいやがおうにも引きずり込む。  
 
「まーくん・・今日は先生・・いないけど・・」  
「・・・・・」  
 
俺は無言でゆうきを押し倒し、被さりながらゆうきの少しだけ瞼に残っていた涙を舌で拭う。手はゆうきの胸を弄りながら・・  
 
「んん・・まーくん・・私は・・いいよ?まーくんがしたいなら・・」  
「・・・・・」  
 
ゆうきは潤んだ瞳で俺を見つめ返す。頬は高潮し、少し恥ずかしそうだ。  
俺は手をゆうきのスカートの中に入れ、パンツの引っかかりを探して指を動かす。  
 
「ま、まーくん・・私・・少し恥ずかしいよ・・電気消してベット行こ?・・ね?」  
 
ゆうきは両手で顔を覆い、俺に懇願してくる。その仕草に興奮したが、ゆうきの提案に俺は無言で乗り  
ゆうきの背に両手を入れ、体を持ち上げる。  
 
「きゃ!?・・まーくん、私重くない?」  
「うん、大丈夫だよ?ゆうきは軽いし」  
「ふふ・・まーくん、これってお姫様抱っこだよね?私、夢だったんだぁ・・まーくんにこうしてもらうの」  
 
ゆうきは顔を俺の胸に押し付け、摺り寄せてくる。その仕草がいかにも女の子な反応で、俺の下半身は反応する。  
俺はゆうきをベットまで運んで、ゆっくりと下ろす。  
 
「ごめんね?まーくん。疲れたでしょ?・・でも、ありがとう。私すごく嬉しい」  
 
俺は部屋の電気を消しにドアへ向かう。  
 
――ガチャ!  
 
いきよいよく電気が消えた直後ドアが開かれる。  
 
「こらーーーーっ!!あ、あんたたち、なにやってんの?!」  
「うわっ?!せ、先生?出かけたはずじゃあ??」  
「今、帰ってきたのよ!そしたらあんた達の姿が見えないし、変な声が聞こえるから!」  
「も、もしかして先生?ドアで聞く耳をたてていたんですか?」  
「ぐっ・・そ、そんなことはどうでもいいのよ?こ、こんなことばれたらあんた達!退学よ?私は退職じゃない!!」  
「そ、そんな〜じゃ、じゃあこうしましょうよ」  
 
俺は先生がしゃべる前に口で先生の唇をふさぐ。先生は不意をつかれたのか目を見開いている。  
さらに俺は手を先生の豊満な胸にあて、ゆっくりと下から上へと揉んでゆく。  
 
「んんん?!・・ぷはぁ・・あ、あんた?!」  
 
俺は胸を揉んでいた手をすばやく先生の股間に滑り込ませ、指を動かす。  
 
「ヒッ?!な、なにをするのよ?・・んんん」  
「先生?俺達の会話聞いていたんでしょ?濡れていますよ・・先生のあそこ」  
「バ、バカのこと言ってないで、や、やめなさいよ!」  
「おい、ゆうき?先生も仲間になりたいんだって。ちょっと手伝ってくれ」  
「え・・・?そ、そうなの?まーくんがそういうなら・・」  
「の、野村さんまで?!・・い、いや!」  
 
俺とゆうきが先生をゆっくりベットに連れて行く。言葉ではいやと言ってるが体はそうは言ってはいない。  
偶然だが俺が男が好きなのか、ゆうきだから好きなのかがこれではっきりする。  
先生と関係を持った後、俺はゆうきともするつもりだ。  
それでもゆうきに特別な感情があったのなら俺は大空薫と別れるつもりだ。  
 
男ではない野村ゆうきという個人を愛していこうと俺は思う。先生の胸を揉み、唇はゆうきに重ねながら・・・  
 
―了―  
 

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