集英組の屋敷に有るキッチンに、シチューの食欲をそそる匂いが漂う。
鍋の前で、楽は小咲を抱きしめていた。
小咲は、頬を赤らめながら、楽の胸に顔を埋める。
「み、見惚れてたって…じゃあ…俺の、事…?」
「…う、うん…料理中の、真剣な顔…と、とても、カッコよくて…つ、つい…」
二人とも心臓が高鳴り、身体が熱くなる。
「お、俺も、さぁ…しょ、正直、見惚れて、たんだ…」
「えっ?」
小咲が顔を上げる。
「小野寺が…エプロン、付けた時…」
楽が耳元で囁いた。
「ど、どうして…」
そこまで問いかけてハッと気づいた。
多分、自分と同じ心境だろう。思わず視界が歪む。
「い、一条君…」
「え?…あ、お、小野寺、わっ、ごめん、俺…」
小咲の目を見て楽が焦った。腕の力が強かったか。
「あ、ち、違うの」
頭が混乱し、慌てて腕を離す楽に、小咲が言う。
「あの、その…う、嬉しくて…」
「…へっ!?」
予想外の返答に、楽が素っ頓狂な声を上げた。
「…りょ、両想い、だったから…」
涙を拭いながら声を絞り出す。その言葉が、楽の心に突き刺さった。
「きゃっ!?」
思わず小咲を抱きしめる。
「両想いって…嘘じゃ、ねえよ、な…」
もう一度、耳元で訊く。
「…一条君も…夢じゃ…無いよ、ね…」
「あぁ…」
抱きしめる腕に力が篭る。小咲も、楽の首に両腕を巻きつける。
「…あっ、お鍋、は…?」
思い出したように小咲が訊ねる。
「あぁ…このまま、とろ火でもう少し煮込めばいいよ」
時計を見ながら答えた。
小咲の方を向いて、顔を赤らめながら更に続ける。
「もう少し…このまま…」
「えっ?…んっ!?」
聞き返そうとした瞬間、楽に唇を奪われた。
一瞬小咲の肩が震えたが、すぐに受け入れ、目を瞑る。
楽は舌を恐る恐る送り出す。小咲は、ぎこちない動きでそれを迎え入れた。
互いの舌を突っつき、分泌液を絡める。
暫く感触を堪能した後、楽は顔を離した。
ほう、と小咲がため息を吐き、目を開ける。
髪の毛から漂う匂いが楽の鼻腔をくすぐり、理性を緩ませた。
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「あ…小野寺…」
「…なぁに?」
見つめ合って、緊張しながら言葉を絞り出す。
「なんか、髪の毛から良い匂いするけど…」
「あ、多分、シャンプーの、匂い、かな…」
楽に褒められると気分が良い。
「ボディソープと洗顔用のも、同じ香りがするんだけど…」
えへへ、と照れ笑いを浮かべる。
その笑顔を見た瞬間、楽の中で何かが弾けた。
徐に顔を耳元に近づける。
「…わりぃ…なんか…抑えられねえ」
そう囁くと、首筋にかぶり付いた。
「えっ?きゃっ!?」
項や耳たぶに吸い付き、印を付けていく。
「あっ、やっ!だ、だめ、そこ、く、くすぐった、んっ!」
啄むように、白い肌にキスの雨を落とされ、身体の力が抜けていく。
「もっと…嗅いで、みたい…」
呟いた後、楽は小咲の服のボタンに手を掛けた。
「はっ、んっ…やっ、せめ、て、し、しんし、つ、に、あっ!」
露わになった鎖骨や胸元を甘噛みされ、頭が真っ白になっていく。
「ごめん…待て、ねぇ…」
上擦った声で言うと、楽は小咲を壁に押し付けた。
二人の理性が吹き飛んでいく。
シチューはもうすぐ出来上がる―。
~fin?~
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