楽「ったく……。今日の鶫は、なんか変だったな」
今日もか?
夕方になり、名ばかりの勉強会がお開きになった。
自室にてなにやら一人、ウソ発見器で遊んでいた鶫。
その後、玄関まで案内し、手刀で破壊した機器を抱えながら帰る姿を見送る。
実にシュールな光景だった。
一転して静かになる我が家。
先程までの騒がしさが、嘘のようだ。
楽「しかし、一気に誰もいなくなるとちょっと寂しいな」
玄関から廊下を歩きながら、自室に戻る途中。
ふと、そんな事を呟いてしまった。
自分以外の人間は現在、全員出払っている。
理由は、まあ、ヤクザ的アレな事情で。
全てを把握しているわけではないが、ウチの家族(非血縁含む)は
普段から千棘のファミリー以外とも、色々やってたりする。
実に仕事熱心な組織だと思う。見習いたくない。
鶫の怪しげな機械を難なく持ち込めたのも、そんな事情があったりする。
楽「それを理由に、さらに一悶着なんて勘弁だしな……」
たとえばウソ発見器を爆弾と誤解して……。
なんだかんだあって、最後は千棘に殴られる俺。
何故だ。
そんな事を考えていると、いつの間にか自室に到着していた。
楽「さて」
一人になったことだし。
全く手付かずになっている、夏休みの宿題でもやるとするか。
楽「よし! 今日中に半分まで終わらせてやるぜっ!」
無茶な目標設定を掲げ、勢いよく掛け声と共に襖をオープン。
万里花「お手伝いしますわ」
崩れ落ちる。
見なかった事にしようと、静かに襖をすすす……と閉めていくも、
足でガッと止められてしまった。畜生。
気力を振り絞って顔を上げると、超が付く程の満面の笑みを浮かべながら
見覚えのある美少女がそこに立っていた。
楽「あの、万里花さん……なんでいらっしゃるんでしょうか」
さっき帰った筈だが。
えっ、とでも言いたげに、目を少し見開き、驚く万里花。
こっちが驚いてるわっ。
口に手を添え、万里花しばしの逡巡。
そして。
万里花「私たちの夜はこれからですもの、楽様」
頬をうっすら染めて、そうのたまった。
●第40.5話「アイビキ」
万里花「楽様―――!! お会いしたかったですわ〜〜!!」
楽「さっき会ったじゃねーかっ!?」
万里花「楽様となら何回でもお会いしたいんです!!」
スリスリ。
俺に抱きつきながら、体を擦り付ける万里花。
うぅ……スゴイ良い匂いだ。
花のような甘く優しい香りと、女の子独特の匂いが混じり合って
思わず「反応」してしまった。
万里花「……?」
少し体を離して、下を向く。
しまった、気付かれた!!
再び顔を上げ、こちらを見ながら色っぽく微笑む万里花。
万里花「嬉しいですわ、楽様……」
少し背伸びして、俺の耳元で囁く。
恥ずかしくて、顔を上に逸らす俺。
まずい。
この流れはまずい気がする。
ここは二番煎じだが、小野寺の事を考えよう。
楽(えー……、小野寺小野寺小野寺小野寺小野寺小野寺……)
目を閉じ集中して、気を逸らす。
万里花「ん……ちゅっ……大きい……」
手遅れだった。
俺の中の小野寺像が、白く灰になってサラサラと消えていく。
ファスナーをいつの間にか下げ、俺のモノをうっとりした表情で嬲る様に舐めしゃぶる万里花。
いままで見たことの無い表情。
その笑顔を直視してしまった。
楽「ま、まずいって橘!」
万里花「まぁ……じゅる、ちゅ……はぁ。名前で呼んで下さらないなんて――――」
笑顔のまま、ちょっと拗ねた様な声を出す。その直後。
割れ目に舌を這わせ、ほじる様に舐め始める。
楽「うぁっ」
万里花「――――イジワルしたくなってしまいますわ」
俺の反応を見ながら、緩急をつけて舐め続ける。
しばらくして、先端だけを咥え、それ以外を一切舐めなくなった。
楽(気持ちいいけど……焦らされてる?!)
万里花「楽様」
楽「あぁっ……、えっ?」
敏感な所を刺激され、曖昧な返事をしてしまう。
万里花「出したい時はいつでも『飲んで欲しい』とおっしゃって下さいね」
くすっと笑う。
楽「な、何を言って―――」
何度も何度も先端だけを細かくしゃぶられ続け、射精欲が延々と高められていくが
決して射精は出来ない。
意識が朦朧とし、足が震えて立っているのも辛くなってくる。
楽「ま、万里花」
万里花「どうかされました? 楽様」
こちらの目を見つめながら問う万里花。
楽「だ、出したい!」
万里花「『飲んで欲しい』んですか?」
楽「ああ……」
万里花「私の目を見ながら、はっきりとおっしゃって下さい楽様」
楽「飲んでくれ万里花!」
自分がもう何を言っているのか分からない。
万里花に誘導されるように自分の欲望を言葉にした。
万里花俺の言葉を聞いて、満足そうな表情を浮かべる。
万里花「はい楽様……私、いっぱい欲しいですわ」
最後に深く強いスロートが始まり、射精感が最大に高まると
それに合わせるように口を離した。
舌を伸ばし、口を少し大きめに開き、俺の射精を見つめる様に待つ。
楽「うぁああ!!」
延々と焦らされ溜まりに溜まった精液が、一気に尿道を駆け上がり
勢い良く万里花の顔と口内に何度も降り注いだ。
万里花「あん……!」
初めて見るような量の精液が、万里花に注がれていく。
射精が終わると俺のモノを再び咥え、中に残っているものを吸い出された。
全て吸い出したのか、動きを止めるとそっと俺の手を自分の喉に当て
溜まったものを飲み干す万里花。
そして、 妖艶な微笑み。
万里花「忘れられない思い出……二つ目ですね」
俺は自分のモノを飲ませたという、少し黒い征服感を感じながら
そのまま意識を失った。
楽「うわあああああ―――!?」
目を覚ます。
周りは暗く良く様子が分からないが、自室らしい。
いつの間にか寝てしまい、夜になってしまったようだ。
楽「ゆ、夢オチか!?」
良かった!
エロい展開なんて無かったんだ!
楽「小野寺を裏切らずに済んだんだ!!」
集が親指を立ててる顔が浮かんだ。
いや、お前は関係ないから。
万里花「小野寺? 小野寺さんがどうかされたのですか?」
時間が止まった。
目が慣れてきたのか、気付けば布団のふくらみが俺以外にもう一つ。
メチャクチャいい笑顔で添い寝している万里花に気付いた。
楽「た、橘どうしてこんなところにモウコンナジカンジャナイカカエラナイト」
万里花「……そんなお顔されても素敵ですわ、楽様」
笑顔がちょっと引き攣っていた。
万里花「寝顔はもっと素敵でしたけど」
楽「うわあああああ―――!?」
なんて事だ。
楽「終わった」
万里花「……」
何かいろんな物が終わった気がする。
万里花「楽様は何か、誤解されいるようですわ」
楽「へ?」
万里花「勉強会が終わった後に私、忘れものをしてしまって一度楽様の家に戻りましたの」
万里花「でも、呼び鈴を鳴らしても誰もいらっしゃらないし、玄関は開いてましたし……、
嫌な予感がして、その、大変失礼ですが、あがらせて頂きました」
バツが悪そうに顔を逸らす。
万里花「そうして楽様の部屋を訪ねた所、楽様が机に伏せておいででしたので、寝具をお借りして―――」
そうか。
万里花は寝ていた俺を、布団に運んだのか。
万里花「―――私も一緒に寝る事にしました」
楽「最後おかしいよなっ!?」
てへっと言わんばかりに、ぺろっと舌を出す。
ほっぺにキスされた時と同じ顔だ。
楽「でも、まあ、ありがとうな」
もしこれが大怪我していたら。
もしこれが病気だったら。
もし俺が何者かに襲われていたら。
あらゆるリスクも省みずに万里花が来てくれた事に感謝する。
万里花「楽様。私は楽様と生きていきたいです。」
楽「――っ」
短い言葉。
でも、それには色んな想いが含まれているようで。
万里花「そう言えば、ウソ発見器なんて私に必要ないと思います」
楽「えっ?何だ、突然に?」
万里花「『万里花が彼女でも悪くない』。楽様は今そう思ってますね?」
楽「なっ!」
な、何でこんなに動揺するんだっ!?
落ち着け!!
楽「そ、そんな事ねーよっ!!」
万里花に背を向けて布団を被って誤魔化す俺。
小学生か俺は。
万里花「……愛しとーよ、らっ君」
楽「えっ、何か言ったか?」
万里花「いいえ、何も。おやすみなさいませ楽様」
END
楽「いや、帰れよ」
万里花「残念ですわ」