千棘Side  
 
衝撃の会話を聞いてから数十分後。千棘は自室のベッドの上にいた。  
何かから逃げるように自宅へ戻り、すれ違う度にみんなに「どうしたんですか、お嬢!?」と聞かれ(よっぽどひどい顔をしていたのだろう)、  
ようやく人心地のつく場所に辿り着いた。  
「あ… 体操服… 」  
教室へ向かった当初の目的を今になって今になって思い出すが、やむなしと思い返す。  
 
 
「あんな会話の後で私が教室に入れるわけないじゃない…」  
 
衝撃的な会話だった。  
あのもやし、楽は小野寺 小咲――小咲ちゃんのことが好きで、小咲ちゃんも楽が好き。  
楽は、舞子くんのいうことが正しければ、ずっと小咲ちゃんのことが好きだったのだ。  
ずっと。ずっと。私が来るよりも、前から―――  
でも、楽は私の……偽物の恋人。  
二人は両想いであるのに、私という障害がある。恋人という、大きな障害が。  
もちろん小咲ちゃんは私達がニセモノであるということを知っている。  
恋人関係と偽らねばならない 何かしらの事情があることも知っている。  
だから、身を引いている?いや、引いていなくても同じか。  
私がいるのだ。恋人の私が。――ニセモノだけど。  
ならば私は――――  
 
 
あはは、なんだ。私ってば悪者じゃないの。  
 
 
私が来なければ今頃 楽は小咲ちゃんに告白していたのかもしれない。  
小咲ちゃんと楽はもっともっと仲良くなっていたのかもしれない。  
私が…  
 
私が転校してきたせいで。  
私が戻ってこなければ二人は……  
 
 
…だめ。今更そんなことを言っても始まらない。  
大事なのはこれから。それを考えなければ。  
 
―そういえば、そもそも舞子くんとるりちゃんはどうして教室であんな会話を…?  
楽ととても仲の良い舞子くんと、小咲ちゃんととても仲の良いるりちゃん。  
 
…… 二人も私と同じ考えに至ったんじゃ… 私がいなければ、って…  
 
…今考えても悪い方向にしかいかない気がする。やめておこう。  
二人はそんな人達じゃない。とてもいい人達。  
 
ともかく、これからだ。  
問題なのは、私と楽の関係。  
家の問題はあるが、それは置いておいて、これを解消すれば二人は―!  
それに私だって、あいつとの恋人関係が解消されれば学校だってもっと楽しくなるし、困ることだって…なくなるし… 楽しい学校生活が…  
…あれ?  
 
「あれ…どうして涙が…おかしいな…なんで…?」  
 
――――嫌。恋人関係が、あいつとの繋がりがなくなるのは、嫌。  
 
脳裏に浮かんだ考えに自分で驚く。こんなこと考えたことなんてこれまで一度も――  
 
「え、ちょっと待ってよ、私は…私はあいつのことなんて…好きなんかじゃ…」  
 
好き、という言葉を出した時、胸が大きく弾む。  
鼓動が早くなる。  
 
倉庫に閉じ込められた時、溺れた時、私を助けてくれた楽。  
修学旅行の肝試しでもあいつは――楽は私が泣いていると助けにきてくれた。  
 
まるで――10年前のあの子のように。  
 
10年前のあの子と楽。  
額の傷、錠のついたペンダントと私の鍵、そして―――ザクシャインラブ。  
私の初恋は10年前。そして、10年前のあの子との共通点がある楽。  
 
「楽が10年前のあの子と確定したわけじゃ…ない…けど…」  
 
でも…でも… ―――そっか。  
 
「私、アイツのこと好きになっちゃってたんだ。」  
 
私は、楽が10年前のあの子だったらいいな、って思ってる。  
つまりそういうことなんだ。私は、楽が好き。  
 
「あはは…困ったなぁ…どうしよう」  
 
楽と小咲ちゃんのことを考えると、恋人関係は解消しないと駄目だ。  
せっかく両想いなのに、報われないなんてそんな酷いことがあるもんか。  
… それでも私は… 解消、したくない。今のこの関係を続けたい。  
楽の隣にもう少しだけ居たい。  
 
でも…これはずるくないだろうか?  
ただ家の事情というだけで楽をかっさらった形なのだ。フェアじゃない。  
…やはり解消しなければ。しなければならない。  
 
「パパのところに話に行こう。」  
 
要求は通らなくとも、私の意志は伝えなければならない。  
- - - - - - - - - - - - - -  
 
「パパ?いる?」  
「ん?千棘かい?少し早い夕食の時間かな?」  
「違うの。少し話したいことがあって。」  
「ほう、何かな?入っていいよ」  
 
扉を開けて、何やら事務作業をしていたらしいパパの前に立つ。  
落ち着いて、大きく深呼吸。…よし。  
 
「あのね、パパ。落ち着いて聞いて欲しいんだけど。  
私、楽との恋人関係を解消させたい。」  
「…どうも彼のことが心底嫌になって、恋人関係にはもううんざり、という風でもなさそうだね。  
 理由を聞こうか」  
「うん… 楽には好きな子がいるの。私が転校してくる前から、ずっと。  
 そしてその子も…楽のことが好きなの。だから…だから私は…!」  
「…そうか。楽くんはもう一人の子を選んだんだね。」  
「え…?パパ、心当たりあるの?小咲ちゃんを知ってるの…?」  
「おや、楽くんは千棘に話していないのか。」  
え、え…?どういう…  
「千棘、10年前のことを覚えているかい?この街に昔住んでいた頃のことだ。」  
「え、えぇ。少しだけなら。」  
「そこで千棘と楽くん、そして小咲ちゃんかな?3人は――――――…」  
 
―――パパから聞いた話もまた、衝撃的なものだった。  
私と楽、そして小咲ちゃんは10年前にも会っていた。  
そして、とても仲が良かった。  
ただそれだけだ。  
でも、それは、私の10年前の初恋のあの子は楽で、そして楽の約束の相手は私か小咲ちゃんか、  
どちらかになるということを示しているのではないか。  
そして、じゃあやっぱり私の持つ鍵は…。  
 
「そうか、楽くんは小咲ちゃんをね… しかし、千棘。  
 残念だが、解消はできない。理由は前に話した通りだ。」  
「でもっ…!でも!楽と小咲ちゃんは両想いで!…私は、二人の邪魔をしてて…」  
 
「千棘の言い分もわかる。まぁ話を聞きなさい。」  
 
「?」  
「明日、楽くんの家に行こう。私に考えがあるんだ。  
 彼の父親と楽、そして私達で話をする。いいね?」  
「え、えぇ。構わないけど…」  
「よし。…それと、千棘。一つ確認をしておきたい。」  
「なに?」  
 
「千棘、君は楽くんに好意を寄せている。今の偽りの恋人関係など関係なく、だ。  
 間違いないね?」  
 
「なっ…!…えぇ、そうよ。」  
「わかった。さて、そろそろ夕食の時間だろう。いこうか。話はまた明日だ。」  
 
 
(次の日)  
(あんな話を聞いちゃったけど…私、平常心よ平常心…!)  
『いってきます(いってらっしゃいぼっちゃん!)』  
「お、おはよう、楽。」  
「おう、おはよう。わるい 少し遅れちまった。」  
「べ、べつにそんなことないわよ。いいから早く行くわよ。」  
 
…よし!自然に振る舞えたはず…!…思ってたより普通ね。  
昨日あれだけ悩んだからかしら…  
「あ、そうだ。楽、お父さんから聞いてるかもしれないけど、今夜あんたの家に集まるそうよ。  
 今日の放課後は時間を開けておきなさいよね。」  
「お、おぉ?親父から何も聞いてねーぞ…親父のやつ… それより千棘、お前キーホルダーどうしたんだ?」  
 
「え…?キーホルダー…?」  
 
「あぁ。ゴリラのやつだ。…まぁお前がやっぱり気に入らなかったって言うなら、仕方ないが…」  
え…?  
「…え、嘘…ない…いつから…」  
 
「お、落としたのか…?」  
「…そうみたい。…クロード!クロード!見てるでしょ!出てきなさい!」  
 
「はい、お嬢。何か御用ですか?」  
 
「うおおおおお!どっから出てきたんだ…」  
 
「うるさいわよ楽。クロード、誕生日の日にこいつにもらったキーホルダーを落としたみたいなの。屋敷内を探してきなさい。見つけてくるまで学校にはついてこなくていいわよ。」  
「なっ…!お嬢!あんなキーホルダーを探すために…!あんなものでなく、新しいものでしたら私が  
 
「それ以上言ったらぶん殴るわよ。どんなものであれ楽から貰った物を悪く言わないで。」  
 
「…!わかりました、お嬢。必ずや見つけてみせます。(オボエテイロヨクソガキ)」  
「お願いね。こっちも見つけたら連絡するから」  
「了解しました。では」  
「…ふぅ。じゃあ行くわよ」  
「お、おう…//」  
 
「あんた何赤面して……――あ、いや!違うのよ!あれはその…そう!時間ないし!ああでも言わないとさっさと行かないでしょクロードのやつ!違うんだからね!!」  
 
「わ、わかった!わかったよ!…さぁ、行こうぜ。学校に落ちてるかもしれねぇ。」  
「…そうね。私以外にあんなのつけてる人見たことないし。落し物として届いてるかも。急ぐわよ、遅刻しちゃう!」  
 
「よう!楽!桐崎さん!朝からお熱いねぇ!」  
「うっせーぞ集…。」  
「いいからいいから!それと、桐崎さん、これ。」  
「え?…あ!私の!ありがとう!どこで拾ったの?」  
「教室の前の扉、だよ」(ニヤリ  
「あ、そうなんだ!ありがとう!」  
「(あ、あれ。色々と気付いてない…)ど、どういたしまして。おっとHR始まっちまう。また後でな、楽。」  
「おう。…良かったな千棘。」  
「うん!」  
「…!」  
良かったぁ…見つかって…ちゃんと付けておこう。  
 
「おはよう、一条くん、千棘ちゃん。」  
「!お、おはよう小野寺」  
「あ!…小咲ちゃん。おはよう!」  
自然に自然に… うぅ…楽と小咲ちゃんの二人が揃うとどうしても…  
 
楽も…よく見るとなんかちょっと赤くなってるし!  
 
サッキマイコクントナニハナシテタノ?  
 
小咲ちゃんはなんか楽と話してる時はいつも顔が赤い気がしてきたし!  
 
アァ、チトゲガキーホルダーヲオトシタラシクテナ。ソレヲシュウガトドケテクレタンダ  
 
…舞子くんが言ってたのは本当のようね……むー  
 
「ほら、楽!HR始まっちゃうってば!」  
「お、おう。じゃあ、小野寺、また後でな。」  
 
…く…私自身もこいつのことがその…気になってると自覚したからか…  
妙にイライラするわ… …楽はもう小咲ちゃんのことが好きなのに…はぁ  
恋心に気付いた時にはもう振られてるってどうなのよこれ…はぁ  
…そして、あの舞子くんの気持ち悪い笑みはなんなのよ(ピキピキ  
 
(放課後 帰宅途中)  
 
…はぁ。今日は一日楽と小咲ちゃんのことを見ててわかったけど…  
二人とも、お互いのこと意識しすぎなんじゃないの…!?  
そうと分かって見てたらこうも分かりやすいなんて…  
舞子くんも終始ニヤニヤしながら私とあの二人を見てくるし…  
毎度舞子くんを殴ってるるりちゃんの気持ちがちょっとわかったわ…  
あ、クロードにも連絡入れておこう。メールでいいわよね…遅れちゃったけどクロードなら大丈夫でしょ。  
 
「ただいまー」  
「「「「おかえりなさい、お嬢!!」」」」  
「やぁ、おかえり千棘。早速だけど準備はいいかい?」  
「ちょっと汗を流したいんだけど…」  
「おっと、そうだね。では急いで浴びてきなさい」  
「わかった。」  
 
 
(一条家にて)  
 
「さて、楽くん、突然済まないね。」  
「いえ、全然それはいいんですけど…今日は何のようで集まったんですか?」  
 
「それなんだが… 単刀直入に言おう。昨日千棘に「恋人関係」を解消させてくれないか、と言われてね」  
 
「は、はぁ!?な、なんだってそんなことに」  
「それは私より千棘が話した方がいいだろう。千棘」  
「…はい。楽、あんた好きな子いるでしょ。」  
「なっ…!そ、そんなこと」  
 
「小野寺 小咲ちゃん」  
 
「!?なっ…な!?」  
「当たり…みたいね。理由はそれよ。それにね、小咲ちゃんも…あんたのことを気に入ってるみたい。今日確信したわ。」  
「…小野寺が俺を気に入ってるかはともかく… そうだよ、俺は小野寺が好き だった。でもどうすんだよ。恋人関係を解消するとうちのもんとそっちが…」  
 
「と、いうことで今日の集まりというわけだ。話はわかったね?」  
 
「は、はい。」  
「昨晩千棘から相談を受けた後、私はもう1つ千棘と話したことがある。」  
「っ!?ちょ、ちょっとパパ!」  
 
「必要な話なんだ、千棘。…楽くん、正直に答えて欲しい。君は千棘のことをどう思っている?」  
 
「え…」  
「千棘、お前にももう一度聞いておく。千棘は楽くんのことをどう思っているんだい?」  
 
「…!…はぁ、もういいわよ、どうせくると思ってたし…。…私、楽が好きよ。  
 10年前の初恋もどうやらあんた、そして転校してきてから色々あったけど…  
 今 私は楽、あんたが好き。」  
 
「なっ…!……そうか。ちょ、ちょっと待ってくれ。1分でいい。…  
 …最初は正直たまったもんじゃないと思った。けど、最近は…  
 …最近は時々お前の仕草や言動に少し惹かれてる。」  
 
「え…?」  
 
「好きか嫌いかで言えば、好きだ、と思う。」  
 
「…それが答えでいいかい?」  
 
「はい」  
「…/////」  
 
「…ということらしい。」  
「なんでぇなんでぇ 楽とお嬢ちゃんには酷なことをさせたかと思ってたが、しっかり仲良くなってんじゃねえか!」  
「う、うるせぇな!」  
「そ、それでこれがなんで大事なのよ!」  
 
「あぁ、それなんだが… 楽くん、千棘、こういうのはどうだね?  
 千棘、もうすぐ16になるね?そしたら君たち二人結婚しなさい。」  
 
「「はぁ!?」」  
 
「そして、小咲ちゃんを愛人に迎える。これで万事解決だと思うんだが、どうだい?」  
 
「「えぇー…」」  
 
「あの、パパ、ここ日本なんですけど…」  
「なーに、いろんな所にコネは作っておくものさ」  
「おうよ、お前らがそれを選ぶなら俺らは全力でバックアップするぜ」  
 
「で、でも!小咲ちゃんの気持ちだってあるし… 」  
「そ、そうだよ!それに愛人なんて言っても小野寺の気持ちもあるだろ!」  
 
「そうだな。じゃあ、楽よ、お前明日告白してきな。で、約束だっけ?その小野寺の嬢ちゃんも鍵を持ってるんだろ?それも一緒に確認してきな。」  
 
「ぐっ…わ、わかったよ…」  
「じゃあ、明日告白が終わったらもう一度ここへ連れてきな。」  
「千棘もそれでいいね?」  
「私は全然構わないけど…っていうかやっぱり小咲ちゃんも鍵を持てたのね…」  
 
「そうじゃない、さらっと流してたけど、僕たちは君たち二人に結婚を提案しているんだ。千棘、それでもいいのかい?」  
 
「…!正直、わからないわよ。小咲ちゃんに悪い気がして…」  
「そうだね。では全ては明日だ。楽くん、健闘を祈るよ。」  
「はい…」  
 
 
楽Side  
 
長い対談が終わり、千棘と楽は部屋を出る。  
父親2人はまだしばらく話しているようだ。  
「とんでもないことになったな… …ん?」  
隣にいるはずの千棘だが…  
「…千棘?」  
「な、なななななによ!」  
「い、いやなんでも…」  
…話の最中は驚いて実感できなかったが…  
俺…こいつに告白…されたんだよな…  
 
「千棘」  
「だ、だから何よ!さっきから!」  
「その…なんだ。ありがとうな。」  
「っ!な、何言ってんのよバカ!あほ!もやし!」  
「お、お前なぁ…可愛くねえやつ…」  
 
「っ…!どうせ私は小咲ちゃんと違って可愛くないわよ…」  
 
な、な…!な、泣い…!?  
 
「お、おい!すまん!悪かったって!」  
「いいわよ別に…わかってるし…小咲ちゃん可愛いもんね…」  
「…すまん、無神経だった。」  
くそっ可愛いじゃねえか…!  
「いいってば。…それで、明日どうすんの?告白するんでしょ?」  
「あぁ、するさ。ここまで来てしないやつは男じゃねえ」  
「そっ。…それはいいんだけど、さ…その…鍵、のことなんだけど…」  
そう、なんだよな。子供の頃俺たちは3人だった…らしい。  
「…そうだな。約束の相手はお前かもしれないんだよな…」  
 
「あのね、確かめるのなんだけどね。…小咲ちゃんを先に試して欲しいの。それともう1つ。確かめる時には私も立ち会わせて欲しいの。ワガママだってことは分かってる。お願い」  
 
「…わかった。」  
「ありがとう!」  
「っ…!お、おう」  
…こいつ笑うとめちゃくちゃ可愛いんだよな…  
そんな子が俺のこと…マジか…  
 
「見送りありがと。じゃあまた明日ね。『ダーリン』!」  
「なっ…!お、お前なぁ!」  
「あはは、照れてるんじゃないわよ、ばーか!」  
 
「くっ…!また明日な!『ハニー』!」  
「っ!うっさいアホー!」  
 
はは、自分も赤くなってやんの。  
…今日一日で話が一気に進んだなぁ。  
そんで明日告白かぁ。  
…千棘と言い、集と言い、なんであいつらあんなに自信満々に小野寺が…だなんて…  
明日…か。よし、気合入れていくか!  
 
 
(翌日 放課後 屋上にて)  
 
「一条くん?話って…?」  
「…小野寺。俺…」  
「…?」  
「俺…ずっと小野寺のことが好きだったんだ」  
「っ!!」  
「…ただ、付き合うってことが、できない。…でないとうちと千棘の家が戦争始めちまう。どっちも無事じゃ済まない…  
 …でも、それでも良ければ返事を聞かせて欲しい。」  
「…私も…ずっと一条くんのことが好きでした」  
「…!…そっか。ありがとう。…話はまだ続きがあるんだ。ちょっと待っててくれ。…千棘か。あぁ、終わった。屋上だ」  
「…?千棘ちゃん?」  
「あぁ。…実は今日の告白、千棘も知ってたんだ。それと、告白が上手く行ったら呼んでほしいってこと。話は…これ。ペンダントのことなんだ」  
「え…?」  
「10年前のことだ。…千棘の親父が覚えていた。俺と千棘、そして小野寺は10年前に会っていた。仲が良かったらしい。」  
「え、それなら一条くんの錠のペンダントと、私の鍵は…」  
「…それが、千棘も持ってるんだ。鍵を」  
「!?」  
「(バタン!)はぁ…はぁ…ま、まだ確認…してないよね?」  
「今10年前の話を少ししたところだ。これからだよ」  
「良かったぁ…」  
「千棘ちゃん… もしかして、千棘ちゃんも一条くんのこと…?」  
「っ… …うん。ごめんね。いつの間にか好きになっちゃってた。」  
「わ、私の方こそ!千棘ちゃんと一条くんは…恋人同士なのに…」  
「そ、それについてはいいのよ!家の事情ってだけなんだから。さぁ、楽。解錠といきましょうか。小咲ちゃん、鍵持ってる?」  
「わ、私が先でいいの…?」  
「楽が選んだのは小咲ちゃんなの。だから小咲ちゃんが先。これは譲れないわ」  
「…うん。一条くん、はい、これ…」  
「お、おう。ありがとう。…じゃあ、開けるぞ… 」  
(…カチ。カチャカチャカチャ。…ガチャ)  
「あ、開いた…じゃ、じゃあやっぱり小野寺が…」  
「…そっかぁ。やっぱり小咲ちゃんかぁ。良かったね、楽。」  
「本当に…開いた… っ…!あ、あ…!」  
「小野寺…?」  
「い、一条くん!そのまま開けるのは待って!鍵を開けた状態で止めて!千棘ちゃん、鍵持ってるよね?ちょっと貸してもらえる?」  
「え、えぇ。…はい、どうぞ。」  
「ありがと!一条くん、一度ペンダント貸してもらえる?…ありがと。一度鍵を閉めて…(ガチャン)抜いて、千棘ちゃんの鍵を…」  
「えっ?!」  
「…(カチ。カチャカチャ。…ガチャン)…開いた…!良かったぁ!」  
「ま、マジか…小野寺と千棘、両方の鍵で解錠できた…お、思い出したのか…?」  
「わ、私の鍵でも…どういうことなの…?」  
 
「私も朧気にしか覚えてないんだけどね。…約束をした時に3人いた気がしたの。鍵は2つ、錠は1つ…そんな気がして…」  
 
「…ねぇ、楽。あんた、子供の頃からひどい男だったのね…」  
「あはは、そうだねぇ。女の子2人と結婚の約束するなんて」  
 
「は、ははは…(笑えねえ…何やってんだ子供の頃の俺…)」  
「まぁ、何にせよ良かったわよ。どっちの鍵で開いてもちょっと気まずいなーと思ってたのよね… まさか両方で開くとはねぇ…?」  
「も、もう勘弁してくれよ…」  
「ふふふ。あ、あのね、小咲ちゃん。話はもう1つあるの。将来に関わる話なの。  
 今日この後空いてる?空いてればこのまま楽の家に行きたいんだけど。」  
「あ、うん。平気だよ。」  
「良かった。じゃあ行きましょう、楽。」  
「あ、あの!一条くん!頼みがあるんだけど…その、いいかな?」  
「お、おう。小野寺の頼みならなんでもきくz(ツネリ)いてぇ!何するんだよ、おい千棘!」  
「ツーン」  
 
「あ、あのね、私のこともその…名前で呼んでほしいなぁ…って…//」  
 
「そうね、私だけ名前じゃおかしいわね。選ばれたのは小咲ちゃんなんだし」  
「お、おう。…じゃ、じゃあ…こ、…小咲」  
「っ!うん!ら、楽くん…!//」  
「ッ…!お、おう。(ナンダコレハカイリョクヤバイ)」  
 
「おーおー二人とも赤面しちゃって…なんか私蚊帳の外だなー。ラブラブだなー」  
「「ら、ラブラブなんかじゃ!」」  
「はいはい、ごちそうさま。行くわよー」  
 
(一条家にて)  
「「「おかえりなさい、坊ちゃん。いらっしゃい嬢ちゃん、お嬢さん!」」」  
「私が嬢ちゃんで、小咲ちゃんがお嬢さん?」  
「どっちでもいいだろ…ヤス、親父はどこだ?」  
「昨日の場所でさぁ」  
「おう、サンキュー」  
「お、お父さんのところに行くの?」  
「あぁ、千棘の親父さんもいる」  
「えぇ!?」  
「ほらほら、行くよー。…楽!道案内早く!」  
「お前昨日も来たじゃん…」  
キノウハキンチョウシテテワカンナカッタノヨ! イイカラサッサトアンナイスル!  
「(千棘ちゃん、昨日も来たんだ…)」  
 
トントン  
「親父、いるか?」  
「おう、きたか。入れ入れ。お嬢ちゃん方もいらっしゃい。」  
「早かったね、千棘、楽くん、小咲ちゃん。どうもその様子だと上手く行ったようだね?この話はしたのかい?」  
「いや、全くしてないです。」  
「分かった。じゃあ、小咲ちゃん、ちょっと話を聞いて欲しい。実は――――」  
 
 
(説明完了)  
 
「あ、愛人…ですか。」  
「おうよ。楽はどうも嬢ちゃんを選んだみたいだがね、こいつ優柔不断で千棘嬢ちゃんのことも好きだと抜かしやがるんだ。俺の息子ながらなかなか大したやつよ。はっはっは」  
「それでね、説明した通りなんだけど、実はうち、マフィアと集英組の仲はすごく悪かったんだ。  
 そこで千棘と楽くんにラブラブの恋人になってもらうことで全面衝突を避けた。  
 だから、別れる、なんてことや、他の人と結婚、なんてことになると非常にまずい。だからこちらとしては千棘と楽くんの結婚は動かせない。」  
「だからよ、愛人だなんて言ってるが、要は重婚よ。本当に我が息子ながら今の御時世に重婚たぁやることがでかくて俺の鼻も高い!」  
「そう、体裁上は千棘が本妻ってことになってしまうがね。どうだろう、受け入れてもらえないかな?」  
「…その、法律的な問題とかは…」  
「その辺りは俺らに任せとけ。厄介事は全部片づけたる。」  
「…じゃあ、お受けします!私も楽くんのお嫁さんにしてください!」  
「よし、ありがとう。…さて、千棘。小咲ちゃんの返事は見たね。あとは千棘次第だが…どうするんだい?」  
「…決まってるでしょ。返事はYESよ。もう既に約束の相手とか、その辺りのもやもやも全部解消してるしね。」  
「と、いうことだ楽よ。良かったなぁ。こんな可愛い嬢ちゃんを2人も捕まえやがって…よくやったぞ息子よ!」  
 
「(ガラッ)おい、野郎ども!聞け!楽と千棘嬢ちゃんの結婚が決まった!しかも可愛い嬢ちゃんの愛人も一緒だ!今夜は騒ぐぞー!」  
「「「「な、なんだってえええええ」」」」  
「坊ちゃん!本当ですかい!」  
「こ、この子が坊ちゃんの愛人だとお…!めっちゃくちゃ可愛いじゃねえですかい!さすが坊ちゃん!」  
「おい、酒だ!最高級の酒を用意しろ!」  
 
「クロードかい?みんなに伝達してくれ。今楽くんと千棘が婚約をした。今日は一条家でパーティーだ。  
 食材と酒を持って集まれ。あ、あとシェフもだ。いいね?」  
 
「わー…なんかすごいね、いちj…ら、楽くん」  
「お、おう…なんかすまねえな、おのd…小咲」  
「ちょ、ちょっと!小咲ちゃんと仲良くするのはいいけど、私もほうっておかないでよね!一応私が本妻なんだから!」  
...  
 
to be continued...  
 

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