焦燥感が心の表面を支配していた…。  
恐い、怖い。  
ずっと視界の真ん中に捉え続けてた人がどこかへ行ってしまいそうで…  
映し出される世界が、空っぽになってしまいそうで…  
焦りと不安が、小野寺小咲を追い詰めた。  
 
背徳感が心の奥底で蠢いていた。  
脳裏に焼き付く二人の姿…。  
例の鍵をぎゅっと握る…金属特有の無機質な冷たさが、火照った手のひらを冷やしていく…。  
 
「おの…いや、小咲?」  
 
後ろから聞こえる声。主は想い人、一条楽。  
 
「泣い…てるのか?」  
 
楽がそっと小咲の頬に手を添える。  
瞬間、感じられる彼の温もり。  
 
でも、彼が優しくしてくれればくれるほど、小咲の中の背徳感は膨れていく。  
 
つーーッ、と溜めていた涙が溢れだし、上気した頬を伝う。  
…自分は、間違ってしまったのでは無いだろうか。  
自責の念、罪の意識…。  
 
自然と口が開き、気付けば口にするのは、謝罪の言葉だった。  
 
「ごめん……ごめんね…一条君…。」  
 
廻る夜の星の下、二人きりの部屋に響く嗚咽。  
 
…そんな、一条楽と始めて肌を重ねた日のこと。  
 
 
【偽恋-ONE DAY THINGS-】  
 
 
――…二人きりの、帰り道だった。  
 
夕焼けを背に、一条楽と小野寺小咲は帰路についていた。  
 
「…まぁ元気出しなよ、喧嘩するほどなんとやら、って昔から言うじゃない?」  
 
「いや、俺たちの場合はその"なんとやら"に当てはまらないと思うんだが…」  
 
頭を抱える楽に、小咲は明るく声をかける。  
どうやら、楽は彼の交際相手…桐崎千棘と喧嘩をしてしまったらしい。  
 
「言っておくけど、本当に俺たちは付き合ったりしてないぞ…?」  
 
楽が周囲を警戒しながら、小さな声で呟く。  
 
「本当かなぁ…?私にはとっても仲良しに見えるけどなぁ。」  
 
…小咲にとってこれは、攻撃だった。  
いや、それよりも更に質が悪いモノであると、彼女自身認識していた。  
 
小咲は、放課後に二人が口喧嘩をしていたのを知っていた。  
だから、彼が帰り道に一人になるであろう事を知っていた。  
彼女は、帰り道に校門で楽と出会う偶然を装った。  
 
…そして今、間違いなく攻撃していた。  
…卑怯だということは、分かっていた。  
 
「仲良し?はは、なんで皆そういうんだろうなぁ…?」  
 
「でも、喧嘩した後も桐崎さんの事をずっと気にかけてるじゃない…?」  
 
「あとが怖いだけだよ。」  
 
「…ううん、きっとそれは、一条君の優しさだと思うよ?」  
 
少しだけ、距離を縮める。  
一瞬、桐崎千棘の姿が脳裏を過る。  
そして、二人が交際している可能性を現実として突きつけられたあの瞬間のあの光景が浮かぶ。  
正々堂々と気持ちを伝えられない自分が…ただ眺めていただけだった自分が…  
二人の亀裂の隙間に入り込もうとしていた。  
緊張と、焦りと、不安と、背徳とが、自身を悪魔にした。  
 
「一条君のそういう優しさ…私はすごく素敵だと思う。」  
 
自分をもっと見てほしい。  
見てるだけでは満たされなくなっていた。  
だから彼女は、自分を売り込むのだ。  
彼を褒める言葉を並べ、共感し、距離を縮め…そして。  
 
「そんな優しさが…私は……好き。」  
 
「小野寺…?」  
 
悪魔の言葉を降り下ろす。  
焦りは勇気に変わった。  
自分への憤りも、背徳感も、全て押さえ付けた。  
吐き気がする程の罪の意識を殺した。  
…好きだったのだ。  
 
後のことは、あまり覚えていない。  
悪魔が私を支配し、動かした。  
 
焦る彼女は、繋がりを求めたのだった。  
 
◆◆◆◆◆◆  
 
「ん……ッ…んんッ……。」  
 
僅かに漏れる吐息の音だけが、二人きりの部屋に響く。  
 
「っ…………ッハァッ!」  
 
絡めていた舌を抜き、新鮮な空気を取り入れる。  
二人の荒い吐息が同調し、こだまする。  
 
「小野寺…。」  
 
楽が小咲の耳元で囁き、息を耳に吹き掛ける。  
ビクッと肩を震わせる彼女の首筋を這うように唇で愛撫する。  
 
耳…首筋…鎖骨…肩…脇…  
なぞるように、触れるか触れないかの絶妙な加減で舌を操る。  
 
「……ッう……あっ…。」  
 
胸は…まだお預け。  
避けるように乳輪の外側に口付けしながら、舌はへその周辺を責め始める。  
始めは大きくへその周りを円を描くように舐め回し、次第に円を縮めていく。  
 
「んぁッ…!」  
 
舌がへそに到達した瞬間、小咲の口から艶のある声が漏れた。  
 
敏感な部位を避けるようにして、ゆっくり全身を愛撫していく。  
小咲の身体が桜色に染まり、身体の表面は楽の口液と彼女の汗で妖しく光っていた。  
 
「ここ、触るぞ…小野寺。」  
 
「…うん。」  
 
お預けされていた胸に、楽の手が伸びる。  
服の上からだと分かりにくかった彼女の、大きいとまでは行かずともしっかりと自己主張している胸。  
下から持ち上げるような形で手を宛がっていく。  
 
フニフニと揉みしだきながら、舌で焦らすように乳首の頂点をつつく。  
 
「んぅ………あっぁ……ちょっと一条君…ッ焦らさない…で…ッ。」  
 
しかし楽は聞こえていないかのように焦らし続ける。  
彼の目にはささやかな加虐心の光が宿っていた。  
乳首の周囲をぐるぐると指でなぞる。  
時折一瞬乳首に指先が当たる度に、小咲の肩が小刻みに震えた。  
 
そして不意に…  
 
「っんぁッッ…ッ!!!!」  
 
乳首に甘噛みで鋭い刺激を与える。  
間髪入れずに胸を揉む手を激しくし、強く乳首に吸い付きながら口内で舌を素早く左右に動かして、彼女を責め立てていった。  
 
「んんっッッ!!!!!!!うッ……あぁぁっッッ…ッ!!ぁッ…あッ…!!!」  
 
再び乳首に甘噛みした瞬間、彼女の身体が跳ねながら、大きく弓なりに反った。  
 
「んんんんんんっッッっッッッッ!!!!!!!!!」  
 
しばらくの間、身体を小刻みに震わせながら肩で息をする小咲。  
やがて激しい衝撃が引いていくと同時に、その穴を埋めるかのように、彼女の中に不安と虚しさが流れ込む。  
 
「…えへへ、イかされちゃったね。」  
 
不安を振り払うように、楽の存在を確かめるように、彼の胸に顔を埋める。  
意識したら、辛いだけだ。  
自分が卑怯なことなど、最初から分かっていた。それでも愛すると決めていた。  
…全部覚悟はできていた。  
…だから、今は精一杯、彼を感じよう。  
 
それが、例え実の伴わない形だけの偽恋だとしても、そうすることが彼を愛してしまった自分の責任だった。  
 
「今度は…私の番だよね…?」  
 
「あ…あぁ、そうだな。」  
 
悪戯な笑みを浮かべる小咲の声に、緊張した声で楽が反応する。  
 
下着の上からでもはっきりと自己主張しているのが分かる楽の男性器に、下着越しに触れてみる。  
 
「一条君の…脈打ってて…すごく熱いね。」  
 
「…いちいち実況しないでくれないか?」  
 
ニコリと小悪魔的に笑う小咲を見て、楽の男性器が更に誇立する。  
そのまま下着越しで全体的に刺激を与える小咲。  
彼女自信、勃起した男性器を見たことなど無かった為、緊張していた。  
 
意を決すると、小咲は深呼吸をして楽の下着をゆっくりと下ろした。  
 
「うわ…おっきぃ…。」  
 
「だからいちいち…」  
 
恥ずかしそうに楽が顔を背ける。  
小咲からみて、楽の男性器は自分の指三本分より更に太いくらいで、とても自分の女性器に入りきるとは思えず、生唾を飲み込んだ。  
 
初見の男性器に圧倒される小咲に、楽が声をかける。  
 
「…大丈夫か?無理しなくてもいいからな。」  
 
「あ…うん、大丈夫だよ。…今、気持ちよくしてあげるからね。」  
 
そう言うと彼女は恐る恐る男性器に手を伸ばし、竿を握る。  
 
「こう…でいいんだよね?」  
 
「あぁ……気持ち良いよ、小野寺。」  
 
安心したように息をつき、手を前後に揺すり始める小咲。  
時折刺激に反応して跳ねる楽の男性器を観察しながら、ゆっくりと感覚を確かめていく。  
 
やがてコツを掴んだのか、手の動きに緩急が加わり、楽の息が荒くなる。  
 
そして無意識のうちに小咲は、男性器の先端に口を近付けていき、それをくわえた。  
 
「うっ……ッ!!」  
 
ゾクゾクっとするような感覚に楽の身体が震えた。  
それが嬉しかったのか、小咲は更に口で楽の性器を刺激し続ける。  
 
一方楽は、目の前にある無防備な小咲の股に気が付いた。  
純白の下着に大きな染みができていた。  
彼女が楽の男性器に夢中になっている隙に、下着の上から彼女の女性器を強襲する。  
 
「ひゃっッ!!!」  
 
驚きに跳ねる小咲の身体を押さえつけ、更に大きな動きで陰唇を擦っていく。  
キュンッと小咲の女性器が締まると同時に、器内で分泌された愛液が行き場を失って陰唇外に吐き出される。  
じゅわッと広がる下着の染みと雌の匂いに、官能感が高まっていった。  
 
「あッ…ぅんンッ……ッ!…いや…ぁッ…そこは……そこはダメ…ぇっ!!」  
 
「ダメったって……ここ使わないと…できないだろ?」  
 
少し意地悪気に言うと、小咲が頬を膨らせた。  
 
「…ちょっと今日の一条君、意地悪すぎるよ。私ちょっと…怒っちゃったかも。」  
 
いわゆる"69"の体勢…  
楽から小咲の顔は見えなかったが、実はこの瞬間小咲は、楽よりもずっと意地悪気な笑みを浮かべていた。  
 
「…そっこー、思いっきりイかせちゃうから。」  
 
言うが早いか、楽の性器を手でしごきながら舌で先端を責める二重攻撃が始まっていた。  
 
「うあッ……小野寺…ちょっ…と……待て…ッッ!!!」  
 
「さっき待ってくれなかったのは誰だっけ…?」  
 
ニコリと笑う小悪魔。  
竿をしごいていた手を玉に移し、なんとも言えぬ刺激を与える。  
先端を責めていた口…今度は根元までくわえ込んで、深い往復運動を始める。  
ジュボッジュボッ、という音が部屋に響き、ゾクゾクという感覚が背中を走ると同時に、射精感が高まっていく。  
 
「イきそう…だよね?でもまだ我慢してね?」  
 
そう囁いた小野寺は、性器から口を離すと、右手で竿の根元を思いきり握る。  
精通道が塞がれ、イクにイけない状態になる。  
余った左手で、快感がピークになったまま解き放たれない男性器を更に刺激していく。  
 
「うっ……………あぁぁッッ!!!」  
 
「…そろそろかな。」  
 
悶える楽を見て満足した小咲が呟く。  
 
「じゃあ、一杯……出してね?」  
 
先端にキスしながら呟くと、再び深く男性器をくわえる。  
根元を締めていた手を外すと同時に、精子を搾り取るように玉をぎゅっと握り、口で性器を吸引した。  
射精を押さえ付けられる枷が取れた楽は全身を強張らせ、打ち寄せる快楽の波に流された。  
 
「ッぁあああッっッッ……ッ!!!!!!!!」  
 
ビュルビュル、と白液が勢いよく小咲の喉壁に叩き付けられる。  
 
「んんんんっッッ!!!」  
 
眉間にしわを寄せながら、止めどなく注がれる愛人の種を飲み込んでいく小咲。  
しばらくして、脈打っていた楽の性器が落ち着いていった。  
 
「……ッぷぁっ…!」  
 
性器から口を離した小咲がゴホッゴホッと噎せたあと、満足そうに呟く。  
 
「…いっぱい、出たね?」  
 
快楽の波が引いた楽が、ムクリと起き上がる。  
 
「あァ…そうだな。」  
 
「…一条君…?」  
 
低いトーンで返す楽に、小咲は違和感を感じた、次の瞬間だった。  
 
「キャッ!?」  
 
覆い被さる用にして小咲の身体を押し倒す楽。  
間髪入れずに、驚く小咲の耳元で呟く。  
 
「やられたままやり返さないなんて、男が廃るよな。」  
 
「…えっ?」  
 
「いや、違うか。気持ちよくしてもらったから、お返し…だな?」  
 
小咲の秘部を隠す下着をずらして、直接手を宛がう楽。  
ぴちゃっ、と水音が小さく鳴る。  
 
「ちょ…待っ…――、んんっ!!?」  
 
制止の声を遮るようにキスで小咲の口を塞ぐ。そのまま二本の指の腹で、小咲の秘部を素早く擦り始めた。  
 
「ん……っんんんんっ!!!」  
 
口を塞がれながら声を上げる小咲。  
楽は閉めようとする彼女の足を開かせ、更に秘部の包皮を二本の指で、くぱぁ、と開かせた。  
 
「んんん!!!」  
 
咄嗟に手で秘部を隠す小咲。  
楽はその手を無理矢理退けると、舌で肉壁を刺激していく。  
小咲が息苦しそうにしていたので、楽は小咲の唇から口を離す。  
 
「…ハァッ…ハァッ…ッ。」  
 
肩で息をする小咲に止めどない刺激を送り続ける。  
舌の先端に力を入れ、固くすると、それを膣内に突き刺す。  
ジュボッという音と共に愛液が溢れ出す。  
舌を抜き差ししていくと、いやらしい水音が音を増していく。  
処女特有の痛みは、それを上回る快感と恥じらいに押し流されていた。  
 
「いやっッッ!!……ぅぁッ!!!音……っ、恥ずかし……い!!」  
 
楽の頭を押し退けようと、両手を楽の頭に添えて力を込める小咲。  
楽が不意に舌を思いきり抜く。  
一層大きくジュボッと音が鳴り、小咲の身体が跳ねる。  
不意討ちで小咲の両手の力が抜けた隙に、今度は舌でクリトリスを転がすように弄くる。  
 
「あッっッッ……ンンッッ!!!」  
 
最早快感に抵抗できなくなってきた小咲。  
先程まで楽の頭を退けようとしていた両手は、既に力が入らなくなっていた。  
舌でクリトリスを責めながら、二本の指を膣内に潜らせる。  
 
「うッ…あッ…あッ…イ……ッちゃう…ッあぁぁぁッ!!」  
 
楽はクリトリスを口から解放し、代わりに小咲の耳たぶを甘噛みしながら囁く。  
 
「受け取ってくれよ小野寺。心からのお返しだ。」  
 
次の瞬間、小咲の唇を唇で塞ぎ、膣内に入ったままの二本の指を激しく出し入れした。  
粘度のある白濁液…俗に言う本気汁が、小咲の膣内でグチュグチュといやらしく音をたてる。  
そして、楽が一際深く、思い切り二本の指を突き刺した瞬間、膣内がキュッと収縮し、楽の指を思い切り締め付けた。  
 
「んんんンンっッッっッッ!!!!!!!」  
 
口を塞がれたまま絶頂に達し、身体を大きく痙攣させる小咲。  
 
「あっ…あぁぁぁあっ……んぁ……んんんッ…。」  
 
先程よりも長く、激しく、不規則な痙攣が続く。  
楽は小咲の唇を解放すると、ビクンビクンと震える彼女の鎖骨に優しくキスをする。  
同時に、彼女の秘部に付け根まで差し込んだ二本の指をゆっくりと引き抜く。  
いやらしい音と共に、愛液にまみれた指が姿を表す。  
 
「うわっ……すげぇな、これ。」  
 
楽は小咲に見せつけるかのように彼女の目の前で愛液の付いた指を開閉させて、糸を引かせてみせる。  
そして、指を自分でくわえると、彼女の愛液を舐め取って飲み込む。  
 
「い、一条君…!?なにやって……っ!?」  
 
「何って…小野寺のここから出た愛…――。」  
 
「イヤァァァ!!!言わなくていいってばぁぁぁ〜!!!」  
 
両目を腕で隠した小咲が顔を真っ赤にして騒ぐ。  
そんな彼女が愛しくて、思わず楽はその柔らかい身体を抱き締める。  
 
「……一条君…。」  
 
「……小野寺…。」  
 
…――しばらくの間、静かな時間が流れる。  
互いの胸と胸が密着し、心臓の鼓動を共有する。  
 
吐息が  
 
匂いが  
 
体温が  
 
全てが愛しい。  
 
どちらからともなく、囁いた。  
 
「……繋がろう。」  
 
◆◆◆◆◆◆  
 
「さっきのでもう十分解れたんじゃないか?」  
 
「解れたどころじゃないよ…もう。」  
 
正常位の体勢。  
楽が小咲の両膝を持って開かせ、己の生殖器を彼女の生殖器に宛がっている状態。  
ここから腰を前に出せば、二人は繋がる。  
…それは即ち、一線を越えるという事であり、互いに純潔を捧げ合う、聖なる儀式でもあった。  
 
「正直、一条君がこんなに変態さんだとは思わなかったな。」  
 
小咲がジトーっとした目で楽を見つめる。  
 
「あぁ、それなら俺だって、小野寺がこんなに淫乱な女の子だとは思わなかったよ。」  
 
ニヤリとして楽が返す。  
 
「淫乱って…失礼言い過ぎじゃない?それに私、一条君はもっと自制心のある人だと思ってた。」  
 
「小野寺が誘惑したんだろ?俺、小野寺はもっと奥手な人だと思ってたんだけどな。」  
 
言い合いつつ、顔の距離を縮めていき、啄むようにキスしてまた離す。  
 
「でもさ、それでも私…」  
 
「それでも、俺は…」  
 
「「…好きに、なっちゃったんだ。」」  
 
愛の宣誓、重なりあう言葉・心。  
楽はゆっくりと腰に力を入れていく。  
 
「いくぞ、小野寺…。」  
 
「うん…来て…一条君。」  
 
クププ…と音をたて、ゆっくり沈んでいく楽の生殖器。  
指でもなく、舌でもなく、愛の種を吐き出す男性器が侵入してきた事を察知した小咲の生殖器が、期待と緊張でピクンと脈打つ。  
しだいに先端部が埋まってくると、小咲が苦しそうに息を吐く。  
 
「うぅッ……ッぁっん!!!!」  
 
「大丈夫か…小野寺?」  
 
「大っ…丈夫だから……止め…ないでッ…。それより…一条君…っ。」  
 
眉をひそめながら、潤んだ眼差しで小咲が言う。  
 
「名前でッ…名前で呼ん……で。」  
 
それを聞くと、楽は前屈みになりながら、小咲の頬にキスをする。  
身体を起こし、小咲の頬に手を添えて、楽が囁く。  
 
「あぁ……小咲。…繋がろう。」  
 
「……ッうんッ…!!」  
 
名前で呼ばれた瞬間、小咲の膣内がキュンっと締まり、楽の男性器を圧迫する。  
 
「……一気にいくぞ、小咲。」  
 
「うん……大丈夫。」  
 
小咲が楽の首の後ろに腕を回し、脚を彼の腰に巻き付ける。  
楽は小咲に口付けして口を塞ぐと、一気に腰を前に押し出した。  
 
「んんんンンんんんんんっっっっッッっッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」  
 
下腹部に、鋭く激しい痛みが走るのを感じ、塞がれた口の中で思わず大声をあげてしまう。  
 
「…っッ……んんッ…!!」  
 
一方楽も、いまだかつて体感した事の無い激しい締め付けと、膣内独特の愛液が絡み付く感覚や膣壁との摩擦に、うめき声を漏らす。  
 
楽の誇張した生殖器を根幹まで飲み込んだ小咲の生殖器から、大量の愛液と共に生暖かい鮮血が流れ出る。  
 
「…ッ全部入ったぞ……小咲っ。」  
 
「…うッ……ん。…感じるよ……ッ一条君の………全部ッ。」  
 
今動くと小咲が辛いだろうと思い、楽は彼女をぎゅっと抱き締め、深い深いキスをする。  
 
「んんッ………。」  
 
楽の優しいキスに反応し、小咲の膣が彼の全体を締め付ける。  
 
「うぁッ……!!」  
 
思わず声を漏らしてしまう楽に、小咲が微笑みかける。  
 
「…無理、しなくて…いいよ…?私は…ずいぶん慣れてきたから……ありがとう…。」  
 
「あァ……悪い、我慢…出来そうに無い…っ。…動くぞ、小咲。」  
 
ヌヂュ…という音と共に楽が腰を引く。  
小咲の、楽の首の後ろに回した腕と、腰に巻き付けた脚に力が入る。  
 
「ん……あぁぁっッ…!!!」  
 
「………ッっ!!」  
 
一動作毎に強く締め付けられる快感に歯を食い縛る楽。  
少しでも気を抜くと、一瞬で射精までもっていかれそうだった。  
 
「小咲…ッ…もうちょっと、力抜けないか…ッ…?」  
 
「…ごめ…っん……少しッ…厳しいかも…。」  
 
お互い、初めての性交でいっぱいいっぱいだった。  
早鐘のように打ち付ける心臓の音を共有し合いながら、精一杯それぞれを感じ合う。  
 
なるべく長く繋がっていたくて、楽はゆっくりと深い往復運動で感覚を慣らしていく。  
最奥まで己を打ち付ける度に締め付けを増し、腰を引き抜く度に逃がさまいと絡み付く小咲の膣に、快感を植え付けられていく。  
溢れる愛液が奏でる淫らな音は次第にテンポを上げていった。  
 
「んぁッ……あァぁッ…ぅッ!!!」  
 
パンッ…パンッ…と、水音に混じって、肌と肌がぶつかり合う音が部屋に響く。  
楽は何度も何度も小咲にキスしながら、挿入のテンポや強度に緩急を加えて、彼女を責め立てていく。  
 
「あッ…あァ…あッ…ぃゃぁッ!!!」  
 
次第に絶頂へと昇っていく快楽のボルテージ。  
打ち付け、キスをし、胸を責め、乳首を啄み、浅い挿入から深い挿入へと…  
ずらしただけの小咲の下着が、愛液と汗でぐっちょりと濡れている。  
 
「んんッ…んぁぁァッ…あァぁぁぁっっ……一…条君…ッッッ…!!!」  
 
「あぁっ…小咲っ……小咲……ッ!!」  
 
互いの名を呼び合う。  
互いに絶頂が近いことを感じた。  
小咲が楽にガッチリ抱き付き、より近くで彼を感じようとホールドする。  
 
「んッ……んンンッッ……イイよ………一条君っ……このまま…このままァッ…ッ!!!!!」  
 
「あぁっ…良いんだな!!?……小咲ッ!!……俺もそろそろッ…来るぞ……ッ!」  
 
激しく打ち付ける腰に、射精感が高まる。  
楽も小咲の身体を力一杯抱き締め、ラストスパートをかける。  
 
「あぁぁぁぁぁぁっっ……激ッッ……しいぃぃッッッ!!!……一条君…一条君…一条君ッッ!!」  
 
「ッッッ…ぐっ……あァぁぁ…小咲…小咲ッッッ……イクぞ……!!!!」  
 
「あァぁぁぁっっッッ!!!来るッッ!一条君ッッ!!イクッッ…イクッッッ!!!」  
 
最後の瞬間、思い切り自身の生殖器を彼女の生殖器に突き立て、その最奥の子宮に直接精子をぶち込んだ。  
 
「あぁぁぁぁぁぁっっッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」  
 
「うゥッ……あぁぁァッっっ!!!!!!!!!!」  
 
ビクンッッッビクンッッッ!!!  
互いの生殖器が脈打ち、小咲の膣が思い切り締まって楽の精子を搾り取った。  
同時に絶頂し、同調する痙攣が生む一体感が、一層快感を大きなものにしていく。  
 
「あぁっ……あぁぁァッっっ……一条君のがっ……中に…出てる…っ!!」  
 
互いに抱き合ったまま、何十回目かも分からないキスをする…。  
暫く、深く繋がりあったまま、絶頂の余韻を分かち合う。  
 
何度も何度も繰り返し舌を絡め、互いの存在を刻み付け、確かめ合う。  
 
深い深い夜の下、そこには確かに、愛があった。  
 
本気で互いを愛した二人の…本物の恋だった……―。  
 
◆◆◆◆◆◆  
 
「泣い…てるのか?」  
 
――…その恋は、本物の筈だった。  
 
しかし、熱が覚めた布団の中で膨れ上がるのは、自らの醜さに対する嫌悪感だった。  
 
楽がそっと小咲の頬に手を添える。  
瞬間、感じられる彼の温もり。  
 
でも、彼が優しくしてくれればくれるほど、小咲の中の背徳感は膨れていく。  
 
つーーッ、と溜めていた涙が溢れだし、上気した頬を伝う。  
 
…自分は、彼女の…桐崎千棘の存在を、無視してしまった。  
 
事実から目を背け、欲求のままに彼を誘惑し、惑わせ、彼の優しさに甘え…そして、新しい事実を無理矢理作ってしまった。  
 
自責の念、罪の意識…。  
 
自然と口が開き、気付けば口にするのは、謝罪の言葉だった。  
 
「ごめん……ごめんね…一条君…。」  
 
ごめん…ごめんと、溢れる想い。  
何をしようと取り返しのつかない事実が、彼女の下腹部に残る痛みと快楽の余韻が物語っている。  
 
「なぁ、小咲…。」  
 
静まり返った夜の部屋に、優しい声が響く。  
 
「名前で……呼んでくれよ。」  
 
「………ッッ。」  
 
行為の最中も、そして今も…小咲が彼を名前で呼ばないのは、目を背けてきた事実に対する無意識の申し訳無さであり、逃げでもあった。  
 
「……それは……っ。」  
 
何かを壊してしまいそうで、怖かった。  
 
「……小咲。」  
 
「……えっ?」  
 
不意に楽が、彼女の名を呼びながらその身体を抱き寄せる。  
 
「小咲…小咲…小咲…小咲…小咲…小咲小咲小咲小咲小咲。」  
 
何度も何度も、彼女の名前を耳元で呼ぶ。  
 
「俺達は…繋がり合っただろ?…お前が、俺の事を好きでいてくれて…俺が、お前の事を好きで…だから、何度もキスをしたんだろ?……きっとそれが、恋なんだ。」  
 
「…………ッッ!!」  
 
「もう一度言うぞ、小咲…。俺は、お前の事が好きなんだ。」  
 
そのまま彼は、彼女に優しくキスをする。  
 
…涙がこぼれた。  
 
「…うん……うんッ……!」  
 
彼が口を離し、小咲は彼の胸に顔を埋める。  
 
「ごめん……そうだよね…。」  
 
「ごめんじゃなくて、ありがとう…だろ?」  
 
「うん…ごめ…――ううん、ありがとう……楽。」  
 
この気持ちだけは、偽物じゃない。  
何があろうと、誰がなんと言おうと、この気持ちだけは変わらない。  
 
それは決して偽恋などではない。  
 
互いを愛し合った、美しい恋の形だ。  
 
 
…星が瞬いていた日の事。  
…二人が愛を確認し合った日の事。  
 
…――そんな、ある日の事。  
 
 
Fin.  
 

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