「んあっ……!」  
―――二ノ宮峻護が悪いのだ。  
「ひあうっ」  
――人の淫夢に勝手に出て来なければ、  
「んっ……ああっ」  
自慰という行為をせずに済んだのに…。  
「やっ、あっ、はうっ……んっ、やあっ、だめ、そっ、あっ、あっ――や、あっ……!」  
 
北条麗華は生まれて初めての自慰に耽っていた。自分が二ノ宮峻護に犯されるという淫夢を見たのが原因だった。  
自分と同じ寝台には先程、淫夢に登場した二ノ宮峻護と恋敵の月村真由が眠っている。抵抗感は大きかったが、それを上回る性欲に抗う術はなかった。しかし、もともと感度のいい麗華のことである、声が抑えきれなくなるのも時間の問題だった。  
 
「やあっ…んっ」  
初めて得る快楽に夢中で、麗華は水音に気が回らない。  
「ひ…うんっ」  
頭の中が快楽を得ること以外に考えられなくなる。  
「あっ、やっ、んっ、だめ、あうっ――あ、あ、あん、や、あ、やだ、やだあっ……!」  
その途端、鋭い快感が麗華の体を貫き、麗華はひくつく秘所から指を引き抜くのも忘れて快楽に身を任せていた。  
 
「!んあ……んっ!」  
突然麗華よりも一回り大きな指が彼女の胸を優しく愛撫した。  
 
夜中に誰かに名前を呼ばれたと思ったら、先輩が俺の名前を呼びながら何かをしていた。始めは何をしているが分からなかったが、連続する水音と小刻みに震える先輩の背中で何をしているか分かった。自慰だ。  
先輩の行為に興奮しないと言えば嘘になる。先輩にはっきりとした好意を隠しきれなくなってる。もう逃げるのはやめよう。  
突然、先輩の背中が大きく仰け反った。達したんだろう。  
――今の先輩の表情はとても綺麗だろう  
――もっと先輩の声を聞きたい  
気がつけば、俺は先輩の胸に触れていた。今ならまだ間に合う、そう思ったが先輩から離れる気がまるで起きなかった。 性についての知識はあるが、そういう本やビデオはまだ見たことがない。俺はとりあえず先輩の胸を優しく撫でた。  
「!んあ……んっ!」  
――先輩が感じてくれている。なんだか嬉しい  
先輩の体が一瞬硬直し、こっちを見て驚いた表情をしている。  
――驚いた表情も可愛い  
俺は先輩が何かを言うよりも速く、先輩の口元に指を添えた。何も言わずに先輩は俺の指を口に含んだ。  
指の本数を増やしたり、唇を撫でる。先輩のよだれが指に付着する。  
 
口唇への愛撫と同時に、胸への愛撫も忘れない。服の上からでも乳房の先端は既にピンと張っているのが分かる。俺は、先輩の服の間に手を差し込むと下着をずらし、直に先輩の胸を撫でた。  
「あっ……ああ…」  
悲鳴に似た嬌声とともに口唇から指が離れる。早い鼓動がすぐ耳元に聞こえる。吸い付くような肌を掌でふくらみを撫でまわす。解すように揉むと身体の熱が上がっていく。象牙のように白かった肌が薄桃色に変わるころにはしっとりとした潤いまで帯びていた。  
口唇と胸への愛撫をやめ、先輩の充分に濡れそぼった秘所へと指を移動させる。先輩は抵抗する様子は見れない。というよりもそのことに気付いていないようだった。俺は先輩の唾液で湿った指をひくつく秘所に添えるとゆっくりと差し入れた。  
「!あっ……ああっ、あっ…!」  
ようやく事態に気付いたのか、過敏に反応する先輩。先輩の秘所はまるで待ち望んでいたかのように俺の指を受け入れた。先輩の膣内は熱くて狭かった。そのまま、先輩の入口をゆっくりほぐした。  
「んあっ…んっ、あっ…だめ、やっ、あっ、んっ……やっ、あっ」  
外気に触れることのない粘膜を擦られて麗華は本日何度目かの絶頂を迎えた。  
 
峻護は達したばかりの麗華に覆い被さると、彼女の額にキスを落とした。彼が襲う形になっているとはいえ、恋人らしい初体験を麗華と迎えたいのだ。  
峻護が襲っているとはいえ、麗華が本当に抵抗する意志があるなら峻護は既に――想像に難くないだろう。第一、麗華の付き人の保坂が黙っていないだろう。  
 
「……二ノ宮峻護」  
「北条先輩」  
俺たちは初めてキスという行為をした。そのままの状態で、何秒何分経ったのかも分からない。唇を離した頃には先輩との間に銀の糸が繋がっていた。  
俺は先輩の秘所にあてがうと少しずつ腰を下ろしていった。  
「!ひぅっ……ん、やっ、あっ、んっ、やっ、あっ……ん、や、だめ、そっ、痛い……ひっ…!」  
ある程度までいくと何かが伸びているような抵抗感があった。俺は先輩に確認を取ると少しずつ奥まで進んでいった。何かが伸びきって破ける感覚と先輩の秘所から純潔の証が流れるまであまり時間はかからなかった。  
呼吸を整え、先輩の身体の痛みが退くのを待つ。痛いことはわかりきっている、身体の一部を貫かれたのだから。だけど先輩は弱みを見せるのが嫌いだ。あくまで、自分のために時間を過ごすようにしなければいけない。  
 
理性をフル動員させて、動くのをこらえる。先輩の顔が落ち着きを取り戻し始めた頃にゆっくりと腰を動かした。  
「動きますよ、先輩」  
「あっ…、…峻護、……、うぅ、やめ……、きゃ……あう……あう……あう!んあっ!」  
「何ですか、先輩?」  
俺が出し入れする度に、先輩の身体がひくついてくる。先輩の膣内は熱くて、その締め付け具合いは表現のしようがない。  
「あっ……ぁきゃっ!ひゃぅ……、だ、大好き…、……峻護、……し、しゅんごっ!」  
「俺も大好き…ですよ、先輩」  
涙をぽろぽろ流しながら、まるで痙攣しているかのように身をくねらせ、先輩は喘いでいる。  
「あっ……、あ、あ、んあっ……、もうっ、…もうっ!」  
先輩も限界が近いようだ。一気に動きを速くする。  
「ひゃぅっ、……、…しゅ、しゅんごっ…、あ、あっ、……、気持ちいっ……ああっ、……んあっ、やっ、あっ、あ、あ、……もうっ!……んああぁぁっ!」  
大きく子宮近くまでに突くと絶頂を迎えたのか、一際大きく仰け反った。  
同時に先輩の中に体液が流れる感覚がする。避妊はしなかった。本気だからこそ、後逃れができない責任を示すつもりだった。  
「先輩?」  
 
「先輩?」  
返事がない。呼吸はしている、となると気絶か。  
俺は先輩の額にキスを落とすと、先輩を抱き締めた。人肌に触れて先程よりも強い温もりと心地よさが生まれる。先程の性行為よりもこうして肌を重ねる方が好きになれそうだった。  
 
 
 
 
「――み―くん―」  
突如、背中に悪寒が走る。今までに培ってきた第六感が生命の危険を告げる。今までに感じたことがないほどのプレッシャー。本気になった姉さん以上の迫力。 本能が危険を発しているが、恐怖を直視できないのか後ろを振り向くことができない。  
「二ノ宮君」  
振り返るとそこには、満面の笑みの月村さんがいた。  
 

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