客間から聞こえる掃除機の音。その合間の鼻歌。
昨夜、徹夜で研究を進めていた所長は自室で夢うつつ。
誤って以前に観た覚えのあるAVを借りてしまったパクマンがテレビの前で白くなり、
掃除中のエルエルから「…少しはこっそりと観てください」と窘められる。
その日も、コバヤシ研究所は薄ぼんやりと平和な空気に包まれていた。
この家ではもはや恒例となった、珍客の訪問があるまでは。
「エルエルさん! バッタ16世、あなたのバッタ16世です!
ここを開けてください、そうすればたちまち祭りが始まりますよ!!」
玄関の方から声が聞こえると同時に、エルエルがびくり、と身をすくめる。
忘れた頃にやってきてはエルエルに求婚を繰り返す、バッタことバッタ16世。その持ち前のしつこさと変態パワーには
エルエルもほとほと困り果てていた。
お人好しを絵に描いたような彼女が接触を避けたがる、数少ない逸材である。
「ぱ、パクマンさん…」
「野郎、性懲りもなくまた来やがったのか…ふふふ、よほどこのコスモサーベルの味が忘れられんと見えるな」
ビニール傘を片手に、不敵に笑うパクマン。危ないので傘で人を突いてはいけません。
「とりあえず、いきなりの暴力はちょっと…。
珍しく玄関から来てるんですし、話くらいは聞いてみましょうよ」
「お前、まだあいつにそんな一般常識を求めてんのかよ。
いつまでも菩薩ヅラで油断してると、気付いた時にはオッパイの型とか取られてるぞ」
「そ、そんなわけないですよ!」
と。
そんなやり取りを繰り広げるうち、玄関からの声の様子が変わった。
ぱたりとエルエルへの呼びかけが止み──
「…ん? うぐわぁーっ!? こ、これは!
やいてめえ何しやが…あーれー! 助けて! 助けてたもれーっ!!」
「!? ば、バッタさん?」
「奴はきっとその型で茶碗を作って、それでメシを食うつもりだ。
食事風景を見せつけられたエルエルは、えもいわれぬ羞恥に体が熱く…あ、おい待てって!」
玄関のただならぬ様子に、ぱたぱたと駆けていくエルエル。
基本的に人のいい彼女のこと、それが例え罠であったとしても、近くでピンチに陥っている者がいれば
放っておけないのが性分なのだ。
「ど、どうしたんですか! 大丈夫で──きゃいーっ!?」
「おーっと! これはいけない、突然開いた引き戸に私の体は勢い余ってバランスを失ってしまう!」
大抵の場合、それは実際に罠だったりするのだが。
エルエルが玄関の引き戸を開くと、雪崩れ込むようにタックルを仕掛けてくるバッタ。
普段からパクマンあたりに「どんくさい」と揶揄されるエルエルがこれに対応できるはずもなく、二人もつれるようにテイクダウン。
「ふふふ…開けてくれると信じていましたよエルエルさん!
あなたのその迸る優しさに私はいつも感動を禁じ得ません!」
「わ、分かりましたから離れてくださぁい!」
「やや、これは失礼! こうして地面に両手をついてすぐに…」
「やああぁ! そ、そこは地面じゃないですー…っ!!」
バッタの飽くなきセクハラ精神がエルエルを襲う。
抵抗してみても、4本の腕を持つバッタにのしかかられ、逃れる術を彼女が持ち合わせているはずもない。
ドタバタのうちに行為はエスカレートしていき──
ごすむ。
「ギャオン!?」
鈍い音とともに崩れ落ちるバッタ。
降ってわいた救いの手。涙目のエルエルは、見上げた先にその主を見た。
「大丈夫ですかエルエルさん! 私が来たからには、怪人の思う通りにはさせません!」
「あ──っ、ありがとう、なっちゃん…」
お団子頭がトレードマーク。頬から首にかけてのペイントのような黒いライン。
悠然と立っていたのは、ナメクジのなっちゃんであった。
彼女にしてみれば、エルエルに強引に迫るバッタの所業は以前から許容できないものがあった。
いつものように遊びに来たところ、そのバッタが玄関先でこのような狼藉。
玄関に備え付けてあった、所長愛用の釘のいっぱいついた角材を手に取ったのも、ごくごく自然な行動と言える。
「…し、自然なもんかコノヤローッ!
私のエルエルさんに対する夢のような愛情表現の数々を何だと思っているのか!
この愛を邪魔する権利など誰にもないと言うのに!」
どうにかこうにか身を起こすバッタ。
さすがに普段から殴られ慣れていると復活も早いらしい。
「馬鹿なこと言わないでください。すっごく嫌がってたじゃないですか!
無理矢理そんなことしたって、エルエルさんを悦ばせることなんてできっこないです!」
エルエルを抱き起こしながら、なっちゃんが毅然と立ち向かう。
言うことは至極もっともだが、「よろこぶ」の誤変換に一抹の不安を覚えるエルエルであったりした。
彼女を助け起こす仕草も妙に密着度が高い気がするのは、果たして気のせいだろうか。
「ぬうう、言わせておけば生意気な…ならば君ならエルエルさんを満足させられるとでも言うのかね!」
「えぇ!?」
バッタのただならぬ一言に、エルエルが声を上げる。
いつも自身を襲う理不尽な出来事のお陰か、エルエルは会話の中の不穏な気配を読む能力には長けていた。
ただ押しの弱い性格ゆえに、それが危険回避に繋がったためしはないのだが。
なっちゃんは、と恐る恐るそちらを見れば、頬を赤く染め、心なしか目を輝かせている。
何を想像したのか。エルエル的には割と未知の世界だ。
「ふふふ…面白い、ならば受けてみるかね私の挑戦を!」
「挑戦…?」
意味ありげに含み笑いを漏らすバッタ。4つの手がビシリとなっちゃんを指差す。
そして放たれたのは、史上稀に見る破廉恥かつ自分勝手な宣戦布告だった。
「そう! キーワードはまさに愛!
私と君と、どちらの愛がより洗練されているか! どちらが優れたテクニックの持ち主か!
いわゆる床勝負──ぶっちゃければえっち勝負という奴です!!」
「ふふふ…よくも逃げずにやって来たものだ。私が伊達に人間界で風俗巡りしていたわけではないことを
知るがいいでしょう!
浮気は男の甲斐性! バッタ16世、バッタ16世です!」
「わたしがエルエルさんを怪人の呪縛から解き放ってあげるんです!
そのためなら、エルエルさんとえっちなことでも喜んで──いえ! 仕方ありません!」
コバヤシ研究所の空き部屋。昼にもかかわらずカーテンを閉め切ったその簡易リングで、祭りは行われようとしていた。
リングの両端には、ふたつの人影が正座で向かい合っている。
かたや、かっこよくない仮面ライダーといった風貌のバッタ16世。
かたや、髪を頭の両脇でお団子にし、白いワンピースの水着姿でバッタを睨む少女──なっちゃんである。
二人の間は形容しがたい闘志で満たされ、火花が散るような勢いだ。
その動機は極めて不純ではあるが、とにかく双方が犯る気に満ち満ちていた。誤字ではない。
「あの……」
そんな中、部屋の入り口に立ちすくむエルフの少女。
首から下をシーツですっぽりと覆ったエルエルが、リングサイドでハンディカメラを回すパクマンに声をかける。
「ぱ、パクマンさん…その…」
「安心しろ、男優がキモいから後で全身にモザイクを入れる」
「そんなこと言ってんじゃないです!
…と言うか、やっぱり撮る気なんですね…」
ほとんどその場のノリでバッタの提案が受け入れられた後、別室に控えさせられていたエルエル。
満を持しての入場だったが、なぜかそこから動こうとしない。
「あーもう何だよ!
グダグダ言ってる暇があったらさっさとそのシーツ取れやい! 皆様お待ちかねだろが!」
ギザギザの歯を剥き出して吠えるパクマン。
しばらく真っ赤に染めた顔を俯け、もじもじと体を揺すっていたエルエルだが、やがて意を決したようにおずおずと手が動く。
はらり、とシーツが床に落ち、現れたその姿は──
「…な、なんなんですかこの格好は! 勢いで着替えさせられちゃいましたけど…!」
全裸にリボンを巻き、大事な部分を隠しただけのサービス精神旺盛ないでたちであった。
ゆるく結んだだけのリボンは、華奢なのが定説のエルフにしては豊かなその胸のふくらみを、肉付きの良い太股を守るにはあまりにも頼りない。
ともすれば、わずかに身を捩っただけでずり落ちてしまいそうだ。
エルエルは緊張のためか羞恥のためかうっすらと肌に汗を浮かべ、この理不尽な状況から逃げ出すこともできずに
身を縮こまらせながら、パクマンにツッコミを入れるのが精一杯だった。
「おう、それはコガネグモスーツだ」
「コガネグモ…? って言うか、もはやスーツとは言えないような…」
コガネグモ──
腹部に黄色と黒の太い縞模様がある大きなクモ。黒色部には、小さな青い斑点をもつ。
林の周辺や草原などにX字形の白い隠れ帯をつけた円網を張り、その中央部に脚を2本ずつそろえてとまる。
「身体に巻いたリボンを腹の縞模様に見立てて……なんてな! こじつけに決まってんじゃねーか!
だって賞品なんだから全裸にリボンは第一種礼装だろーっ!」
「ば バラすの早すぎますよ! しかも賞品って」
「うるせーっ、いい加減に覚悟決めろや! バイストンウェルまで飛ばされてーか!」
パクマンのテンションが高い。こうなると、いつも勢いで押し切られてしまうのがパターンである。
あれよあれよと、闘志とは別のものを発し始めたナメクジとバッタの間に連れて行かれてしまう。
今回は事が事だけに必死で脱出しようと考えを巡らすエルエルだが、別の方角からのプレッシャーがそれを許しはしなかった。
(さ、さすがエルエルさん…! こんなベタなエロコスチュームでもここまでの…!)
(え え え エルエルさん…! エルエルさんのあられもない姿…!)
右手のバッタ16世、左手のなっちゃん。
二人とも相変わらずリングサイドで大人しく座っているように見えたが、その内部で膨れ上がる得体の知れないオーラは
収まり切らずに体外へ噴出し、熱のこもった視線となって既にエルエルを挟み撃ちにしていた。
「ひんっ…!」
思わず、両サイドから猛烈に降り注ぐ視線を避けるように身を竦めてしまうエルエル。
(ど──どうしてこんな事に…)
バッタは言うに及ばず。
なっちゃんは基本的にはそれほど無茶をするたちでもないが、気温や湿度を初めとする周りの環境によってよく「壊れる」。
今回のシチュエーションは彼女にとって、理性を駆逐するのに十分な破壊力があったらしい。
四面楚歌。
腰から力が抜けるのを感じ、エルエルはその場にへたり込むことしかできなかった。
「まあまあ、そんなに怖がるなよエルエル。ちょっとアダルティな遊びだって。
バッタどもを納得させたら適当なとこで止めるからさ」
「ほ、本当ですか…?」
他の二人がこの有様では、エルエルが縋れるのはパクマンのその言葉だけだった。
セクハラ担当を自称して憚らないパクマンが頼みの綱というのは、果てしなく不安ではあったが。
「よーし! ルール説明はいらんだろうが、要はお前らでウフウフアフアフ絡み合って、先にエルエルを
昇天させた方の勝ちだ!
エルエル! クモの交尾のマニアックさは本編1話でやった通りだから、そのへん踏まえて頑張ってくれ!
ふふふ、ではレディ──」
「ほ、ホントに止めてくれるんですよね!?」
エルエルの叫びを遮るように、今──
「ファイッ!!」
レフェリー兼記録係の緑の超合金が、声高らかに宴の始まりを告げた。
「ちょっ、パクマンさ…!?」
エルエルが続けて抗議の声を上げるより早く、彼女の目の前に、少々グロテスクな緑色の昆虫顔が迫っていた。
バッタの4本の手は、獲物を狙う猛禽の爪のように鋭く素早い動きで、哀れなエルフの白い肌を狙う。
「おら覚悟しねがーっ! すぐ! すぐ良くなるけえのう!」
「ひ…っ!」
思わず、座ったままの姿勢で後ずさるエルエル。だが、その肩を優しく受け止めるふたつの手があった。
「エルエルさん…」
「! な、なっちゃ…ん、ぅ!」
驚いて振り返るエルエルの可憐な唇を、柔らかいものが覆った。
すぐに首筋の辺りに手が添えられ、優しいが有無を言わせないタッチで首の角度を固定する。
不意を突かれたエルエルが口を閉じる前に、なっちゃんの舌がにゅるり、と口腔に侵入してきた。
「ふぅ……ぅ! っ…む、んうぅっ…!」
なっちゃんの舌はくちり、くちりと巧みにエルエルの舌を絡め取り、優しく、激しく刺激する。
舌に乗って伝わってくる唾液が混ざり合い、こくり、とエルエルの白い喉が動く。
奇妙な感覚がぞわぞわと脊髄を駆け上がるのを感じ、エルエルはふるり、と身を震わせ、目をきゅっと閉じて目尻に涙を滲ませた。
キスだけで、こんな──
思い起こせば、なっちゃんとの初対面の日。
あの日も、パクマンの思いつきで彼女とのベッドシーンを演じさせられそうになった。その時のキスの味が、エルエルの脳裏に蘇る。
悪意の無い、ただひたすらにエルエルを悦ばせようとするなっちゃんの口付けは、甘く、優しく──恐ろしいほどに熟練されていたのだ。
ぴちゃぴちゃという水音とともに、エルエルの頬に見る見る赤みが差していく。
同時に、強張っていた身体から少しづつ力が抜けていった。
と、キス責めに翻弄されるエルエルの身体を別の刺激が襲った。
胸のふたつの膨らみを守るリボンと肌の間に何かが侵入したと思うと、その柔肉を揉みしだき始める。
「!? んっ、う! んむむぅっ…!」
「やや、いきなりアドバンテージを取られたか!? しかしまだまだここから!」
言うに及ばず、それはバッタの手であった。
4本の腕のうち2本が、エルエルの胸の双丘を無遠慮に、しかし意外に繊細なタッチで捏ね回す。
下から上に、ぐいっと持ち上げるように揉み上げる際にリボンの生地が膨らみの頂点を擦り、その度にエルエルは
くぐもった呻きとともに肩をぴくん、と震わせた。
甘いキスに蕩かされつつある身体は与えられる刺激に顕著な反応を見せ、敏感な突起は次第にしこりを帯び始める。
さらに、残ったバッタの2本の腕が腰を回り込み、エルエルの張りのある尻に辿り着いた。
びくり、と腰を震わせるその反応を楽しむように初めはゆっくりと、やがて大胆に左右の尻肉を捏ね回していく。
(い…やぁ……っ…)
ソフトだがツボを心得たなっちゃんの責めと、同時に多数の箇所を襲うバッタの責め。
申し訳程度に身体を覆っていたリボンは見る見るうちに解け、まるで強姦のような状況にエルエルは涙ぐむ。
しかし相手の一人が普段から自分を慕う顔見知りであることもあってか、恐怖心はさほど大きくはない。
むしろ、恐怖を上回る羞恥とそれによる興奮がエルフの少女を苛み、次第にその白い肌は熱を帯びていった。
たっぷりと口内を陵辱し尽くし、ようやくなっちゃんの唇がエルエルを解放した。
ふたつの唇の間に、銀色の糸がつぅっと名残惜しげに橋を架ける。
頬を上気させて息を荒げるエルエルに、妖しく微笑みかけるナメクジ少女。
「ぷぁ──、っ……ああ、エルエルさん…可愛い。もうそんなに良いんですか…?」
「あ、ふ……なっちゃ……だ、だって…あの……ん、んんっ!」
なっちゃんのしなやかな指が発育の良い太股の内側を這い上がると、エルエルの言葉はたちまち中断させられる。
ぞくぞくと身を震わせ、何かを堪えるようにひきつった足の指は床に敷かれたシーツを握り締めて、
身体の奥底からじわりとこみ上げてくるモノに慄いていた。
その痴態に、遠慮会釈のない愛撫を続けていたバッタもその顔に喜色を浮かべる。バッタ顔なのでよくは分からないが。
「ふふふ…まったくはしたない。その姿が雄を奮い立たせるとも知らずに。
まあ知っていたとしても、どの道たんまりと泣いてもらうのは変わらんのですがね!」
「そ、そんな、っ、ことっ…ん、あ、なぃ……っ、だ、ダメ、です〜〜っ…!」
羞恥を煽る言葉に弁解しようとするが、両の乳房を蹂躙するバッタの指がその頂点をくにくにと捏ねるたび、
声は途切れ途切れの喘ぎに変わってしまう。
おずおずと抵抗を試みる手はなっちゃんに巧みにかわされて宙をさまよい、腰を引いて逃げようとすればバッタの4本腕が押さえつける。
もともと流されやすい性質の彼女に抵抗らしい抵抗ができるはずもなく、なすがままに二人の熱の篭った愛撫を受けるしかないエルエルであった。
(ほ…本気です……二人とも、本気ですよぉ……パクマンさん…!)
「あ……!」
不意に、ひくん、と肩を震わせると、エルエルが泣きそうな声を出す。
いち早くそれに反応したなっちゃんは、太股をさすっていた手をそっと脚の付け根へと移動させ──
「! だ、だめ……!」
エルエルの制止より早く。
なっちゃんの指先に、ちゅくり、と湿った感触が伝わってきた。
赤く火照った顔をさらに真っ赤にして、ただただうつむくばかりのエルエル。
「エルエルさん──」
ことさらにゆっくりと顔を寄せ、エルエルの耳元に囁きかける。
「濡れちゃった…んですね」
「〜〜〜〜…っ!!」
泣きそうな顔を真っ赤に染めて、エルエルがきゅっと目を瞑る。
その瞬間、エルエルのその部分に触れた指先に、とくん、とまた蜜が溢れるのが分かった。
エルエルが感じている。
自分の指を、愛撫を受け入れて身体を火照らせている。
その事実はなっちゃん自身をも激しく歓喜させ、熱く甘い吐息が可憐な唇の間から漏れ出た。
普段から、エルエルに対する無邪気で開けっぴろげな好意を隠そうともしないなっちゃん。
自分の体のことにしても周りと違うことを嘆くどころか、むしろエルエルと愛し合うことができるのは幸運なことだとさえ感じていた。
エルエルにしてみても、なっちゃんは最も親しい友人の一人である。その好意を疎ましいと思ったことは決してない。
しかし、それも「友人」としてのこと。
なっちゃんにとってまさに本懐であろうこの行為は、エルエルに大きな背徳感と羞恥を刻み込んでいく。
そして同時にそれは、ぶっちゃけ少々Mの気のあるエルエルにとって、じりじりと脳を蕩けさせる快楽を生み出すものでもあるのだった。
「エルエルさん、可愛い…
いいんですよ、我慢なんてしなくて。もっともっと、感じてください。
ほら、こうやって──」
「う、く、うぅ〜…ぅ、ああぁ──!」
下から上へ、初々しい割れ目に添えられていた指が動く。
ちゅぷ、と僅かに濡れた音がして、顎を反らせるエルエル。
それを繰り返し、時に割れ目の上端の敏感な部分をくりくりと撫でると、その度にエルエルの声に甘い響きが混じっていった。
「っ…ん! あ…ぁふ、っ、な、なっ…ちゃんっ…あ、だ…ダメ、ダメっ…!」
エルエルの大事な部分を隠していたリボンは解け、汗──あるいはそれ以外の液体に濡れて肌に張り付いている。
それは彼女の身体を守るどころか、むしろその四肢を絡めて縛り付ける、エロティックな演出の小道具と化していた。
エルエルの頭を抱き寄せ、額に軽くキス。
そうして緊張感を取り除かせながら、エルエルの秘所に添えられた手はそこを優しく、しかし本格的に刺激し始めた。
一度堰を切って溢れ出した感覚は節操なく身体を侵し、指が踊るたびに腰がひくん、ひくんと跳ねる。
次々と襲い掛かる快楽の波に呑まれそうになりながら、目尻に涙を浮かべて耐えるエルエル。
しかし、女のツボを心得たなっちゃんの攻めは怒涛のように押し寄せ、エルエルのちっぽけな防波堤を一つ一つ突き崩していった。
「さあ、エルエルさん──」
やがてくたりと脱力したエルエルに、なっちゃんはことさらにゆっくりと顔を寄せていく。
先にも彼女をさんざん翻弄した、天使のように優しく、悪魔のように甘いキスが、弱っていく獲物にトドメを刺そうと迫る。
「…ぁ──」
とくん、とくん、と、痺れるような感覚が足の付け根から広がってくる。
その鼓動にあわせて、体の奥の奥からいやらしい体液が溢れてくる。
あの唇に囚われたら、今度はきっと耐えられない。
ぬるりと入り込む舌は自分の唇を、歯茎を、舌を絡め取り、脳の奥まで痺れさせるような水音を立てながら蹂躙するだろう。
そしてそのまま、どうすることもできずに上り詰めさせられるのだ──
エルエルはそうと知りながら、焦らすように近付いてくる唇を泣きそうな顔で見詰めながら、魅入られたように動く事ができなかった。
しかし。
可憐な唇が塞がれるまさにその時、背筋を電撃のように駆け上がる感覚に、エルエルは目を見開いた。
「ひ、ぁ──っ!?」
「きゃ…!」
突然の激しい反応に、なっちゃんまでもが驚きの声を上げる。
くぅっと背を反らせ、ぞくぞくと腰が震える。
その背後では──
「ば、ば、バッタさ──だめ、それ…嫌ですっ…っうぅぅ〜〜っ…!!」
バッタが、エルエルの尻尾をと弄んでいた。
短い毛の生えたふさふさの尻尾を扱き、くにくにこりこりと愛撫するたび、エルエルの体が小刻みに跳ねる。
「そーらフィーッシュ! 尻尾のある娘っ子はそこが弱いということはもはや業界では常識。
さあエルエルさん、私の手で思う存分イくのです! そらっ、そらっ、そらっ!」
「きゃうっ、あう、い、やぁっ、きゃい、っ、くああン…!」
「え、エルエルさん…!?」
バッタの空気を読まない攻めに、しかしエルエルは急激に高められていく。
なっちゃんの優しい愛撫にのぼせていた上、心の準備もなしに弱点を無遠慮に攻められ、囚われの少女はされるがままに
熱っぽい喘ぎを吹き零すしかなかった。
「あ、あぁ、あ、あ、うあ! は、ぁ、ああぁ、ぁ…」
その全身にはたちまちのうちに汗の珠が浮かび、桃色に上気していく。
次第に視線は焦点を失い、鳴き声を上げる唇からは唾液が、顎から喉の曲線を伝う。
「エルエル──さん、」
なっちゃんはしばし、愛撫の手すら止めて想い人の痴態を見詰めていた。
自分以外の手が、エルエルを犯している。
エルエルが、次から次へ襲い掛かる快楽に咽び泣いている。
それは胸が締め付けられるように痛むことだったが──同時にエルエルの泣き顔、鳴き声は、彼女の身体を熱く火照らせる。
そんな光景を見て興奮する自分に唾棄し、心の中でかぶりを振る。
しかしその罪悪感は、エルエルの喘ぎ声を増幅させて彼女の身体の中心に響かせるばかり。
いつしか彼女の白い水着の下では、花びらは綻んで蜜を生み、両性具有の証たる肉竿はひゅくひゅくと震えながら、布の下で
存在を誇張し始めていた。
「──い、ぁ!」
バッタの手がきゅっと強めに尻尾を握った瞬間、エルエルの背がびくん、と反り返った。
とくん、とまた夥しい量の蜜が花弁から溢れる。
(ああ──もう、──)
思考が混濁し、目の前に白く霞がかかる。
間断なく弱い部分を攻め立てられ、エルエルは観念した。
断続的にひゅくひゅくと腰が震える。もはや、愛撫の手が止められても絶頂は免れないだろう。
にやりとほくそ笑み、バッタは最後の攻めを加えていく。
両の胸の頂を捻り、同時に、きゅ、きゅ、と尻尾を握る手に力が込められる。
くん、とエルエルの身体が震え──
「っ──させません、エルエルさんをイかせるのは──」
片手でエルエルの秘めた花を慈しみながら、なっちゃんが空いた手でエルエルの頭を引き寄せる。
そのまま、熱い息を漏らす半開きの唇を、自分の唇で塞いだ。
「────…!!」
瞬間、焦点を失っていた目が見開かれる。
抵抗する間などあるはずもなく、必殺の接吻がエルエルを襲う。二人分の唾液は少女の小さな口に収まりきらずに溢れ、
パンケーキのシロップのように白い肌を伝い落ちていく。
くちゅ、くちゅり、と絡み合う舌は脳を犯す麻薬を精製し、哀れなエルフの少女を蕩かす。
「ふ、ん、んぶ、ぅ、んぅんんんん────…!!」
びく、びくん、と何度も小刻みに身体を震わせ。
エルエルはついに、暴力のような快楽の前に屈した──