「チクショー雅の奴め! いつまで経っても俺をスーパーヒーローと認めようとしやがらねえ!  
 さっきだって俺が攻撃を全て巧みに尻で受け止めて見せたの、あいつ気付いてないぜ!?」  
「なんと! いつも尻に被害が集中するのは意図的だったんですね!」  
 
昼下がりの忍者屋敷、忍者数人を連れた音速丸がいつものようにダラダラと廊下を歩いて(飛んで)いる。  
今の会話と、音速丸の全身──主に尻に集中しているが──の絆創膏から、この直前に何があったかは  
だいたい明らかだった。  
 
「しかし、いい加減いつまでもこのまま調子に乗せておいては頭領として示しがつかん。  
 何か奴を打ち負かす案を示せ、サスケ」  
「はっ。………寝る前に、音速丸さんが勝利の雄たけびをあげている絵を枕に忍ばせておく…  
 というのはどうでしょう」  
「てめー、そりゃ夢で勝てってことかよ! 次!」  
 
しかし彼らの即興の会議はろくな意見など出ないのが常である。  
この日もそろそろ、なし崩し的にモテトークに突入するかと思われた──  
が、一人の忍者の意見がそれを食い止めた。  
 
「雅のお札にあらかじめ細工しておく…か」  
「…しかし、それって相当に卑怯では」  
 
わずかな沈黙。  
音速丸としては頭領の威厳を示すために雅にギャフンと言わせたいはずであった。  
果たして、このような手段での勝利に意味はあるのだろうか。  
やがて、カッと両目を見開く音速丸。  
 
「馬鹿野郎、忍者が卑怯とか言ってどうする! 戦場では騙し騙されが日常茶飯事なんだよ!  
 よく言うだろうが、嫌よ嫌よも好きのうちってなああ!」  
 
あったらしい。  
 
「そうと決まりゃあお前ら、雅の部屋に潜入するぜ! ついてこいや!  
 一番遅れた奴はバレた時に罪かぶる役な!」  
「早っ! そういう事はダッシュかける前に言ってください!」  
「許して雅ちゃん、君の部屋に入るけどこれは頭領の命令だからどうにも仕方がないンだ!」  
 
 
古めかしい屋敷であるにも関わらず、そこここにファンシーな小物が鎮座まします一室。  
忍者屋敷の離れ、女子寮にある雅の部屋である。  
 
主が不在のその部屋に、不意に気配が生まれる。  
それは一瞬前までは何も感じさせず、おもむろに天井の板をずらして黒い頭巾を覗かせた。  
続いてカーペットがめくれ上がり、障子が薄く開き、音もなく姿を見せる人影──  
 
気付けば、進入経路に何の痕跡も残さず、部屋に溢れかえる同じ顔、顔、顔。  
見事な気配遮断の術。  
煩悩が絡んだ時のみ、彼らの身体能力は数倍に膨れ上がるのだ。  
 
「よーし、雅はいないようだな。フフフ…俺には見える、跪き涙ながらに許しを乞う雅の姿が!  
 そして、これまでの奴の所業を全て水に流す俺。その無限の愛に感動!改心!愛の応酬!」  
 
音速丸のリアルシャドーが冴える。  
普段の所業を水に流してもらわなければならないのはどちらか分かったものではないが、そんな殊勝な考え方は  
彼は持ち合わせていない。  
 
「よーしお前ら、速やかに任務を果たせ!」  
 
ウオオオン、あがる鬨の声。無駄に盛り上がる忍者軍団。  
普段から内部に隠れ雅ファンを擁する彼らのこと、この降って湧いた祭りに際して無理からぬことではあろう。  
 
「ウフフ…これが雅ちゃんの匂いなんだね!」  
「きゃあ! 押さないでったら、もう!」  
「おい見ろ、こっちの壁にビジュアル系アーティストのポスターが!」  
「くっそぉ雅ちゃん、俺たちより先にこんな奴を部屋に! これでもかこれでもか!」  
 
傍から見ればかなり立派な犯罪行為だが、密書を盗み出すのは忍者の仕事と相場が決まっている。オールオーケーだ。  
ともすれば任務を忘れそうな彼らであるが、そこは痩せても枯れても忍者。  
やがて音速丸の前に、雅の愛用するお札の束が差し出された。  
 
「フフ…無用心だったな雅とやら。今ここに、忍者屋敷の食物連鎖図が塗り換わる!  
 鳴り響くファンファーレ! ここからは黄色いハンサムボーイが出ずっぱりで八面六臂の大活躍です!」  
 
ぐるんぐるんと両の腕を回しつつボルテージを上げる。  
このお札たちに音速丸は、いやさ音速丸の尻はどれほどの苦痛を強いられたことか。  
 
一方、忍者たちはと言えば、雅の部屋に潜入するという状況に慣れてきたのか、まともな思考のできるものが  
現れ始めていた。  
 
「…う〜む、しかしやはり雅ちゃんに酷いことをするのは気が進まないな」  
「頭領の命令とは言え、なあ…」  
「いや待て、考えてもみろ。お札が使えずに焦る雅ちゃん、迫り来る頭領。  
 その悪夢のような一撃から身を挺して雅ちゃんを守る我々。小さなラブロマンスの幕開け…ということさ」  
 
……。  
 
「オーンソークマル!オーンソークマル!」  
「よーし、このお札すべてに音速丸さんの顔を落書きしておこう! 未知のパワーに期待!」  
「ワハハーッ、乗り気だなお前ら! おいおい強化してどうすんだサスケ、真面目にやりたまえよ!」  
 
まあ、現れ始めたからと言ってどうなるものでもなかったが。  
ペンを持ち出し、雅のお札に思い思いの細工を施していく彼らは、その時確かに輝いていたのだ──  
 
 
自室へと戻る途中、雅は異変に気付いた。  
と言うよりも、「アキェーッ」とか「ドゥワーッ」といった奇声とともに建物全体を揺るがすような振動に駆けつけてみれば、  
それは自分の部屋からの騒音であることが分かったわけだが。  
 
「もーっ、いつもいつも馬鹿ばっかり!  
 今度と言う今度は念入りにお仕置きしてやるんだから…!」  
 
雅には、聞こえてくる声に嫌と言うほど心当たりがあった。  
肩を怒らせ、ずんずんと廊下を行く雅。小さな身体を包む大き目の呪術学科の制服をなびかせ、思い切りドアを  
開け放つ。  
 
「こらーっ! 人の部屋でなに騒いでんの!  
 また馬鹿なことやってるんでしょ──」  
 
と。  
 
ドアを開けたままの姿勢で絶句する雅。  
それはそうだろう。部屋の中の光景は、彼女が想像していたものとあまりにも違っていた。  
 
散乱する本や小物。  
破れかけた壁のポスター。  
そして部屋の中央では。  
 
「ひ───っ!?」  
 
植物のツタのような、しかし肉塊じみたグロテスクな光沢を持つモノ。  
無数の触手が蠢き、絡み合い、今まさに最後の忍者をつまんで窓から外へ放り出すところだった。  
 
ぞわぞわと蠕動する肉色の触手は、視線を辿らせると、それぞれ数本が一枚の紙切れから伸びていることが分かる。  
見慣れた雅には、その紙切れが何であるかは考えるまでもなかった。  
 
「お、お札が暴走して…!?  
 あいつら、どんな馬鹿なことやってたのよ…!」  
 
慌てて懐に手を入れ、今持っているお札を取り出す。  
 
「あ…!」  
 
しかし雅がお札を使うよりも早く、その小さな手を、彼女の背後に回り込んでいた触手が掴む。  
両手を絡め取られ、背の低い雅はすぐに床から足が離れて宙ぶらりんになってしまう。  
 
「ちょ、ちょっと…離しなさいよ! 言うこと聞いてったら…!」  
 
じたばたと足を動かすが、その足にも別の触手が巻きつき、雅の動きを封じていく。  
子供らしくぽっちゃりとした太股を触手が這い上がると、粘り気のある粘液がてらてらと肌を汚していき、  
雅は不快感に身体を震わせた。  
 
「ぁ………や、やだぁ…! お、お姉ちゃ──ぅ、ぐ!?」  
 
いくら普段は強がっているとは言え、雅は基本的にまだ幼く、また不測の事態に弱いところがある。  
今も目の前のトンデモ事態に対するパニックと恐怖、生理的な嫌悪とで、普段の冷静な態度は影を潜めつつあった。  
混乱する頭で姉に助けを求めて必死に絞り出した声は、途中でくぐもった悲鳴に変わる。  
開いた口を塞ぐように、触手の一本が潜り込んだのだ。  
 
「〜〜〜〜〜!? んぅ、お、おえぇひゃ…おえぇひゃん、おえぇひゃぁん…!」  
 
更なるパニックに陥る雅は、懸命に姉を呼ぼうとするが、少しもまともな言葉にならない。  
そうするうちにも彼女の口腔を満たす触手は、じゅぷり、じゅぷりと得体の知れない液体をまとわせながら  
雅を蹂躙していく。  
見る見るうちに、雅自身の涙と唾液、触手の分泌する液体とで、その幼い顔はじっとりと濡れ光っていった。  
 
(いやぁ…! ヤダ、ヤダっ…気持ち悪いよぅ…!  
 なんで…なんで、こんなこと──)  
 
お札たちは、音速丸の思念の影響を多分に受けて動いていた。  
デタラメな使用方法のため、それはごく部分的で大雑把なものであったが。  
 
 
 
「雅を屈服させる」ということに対してのみ、お札の働きは忠実だった──  
 
 
 
「ん、ぅ、ふ…う゛ーーーっ! むーー…っ!」  
 
ひとしきり暴れた雅だったが、身体を戒める触手はびくともしない。  
それどころか、活きのいい獲物の反応を嘲笑うように、雅の身体をじわりじわりと這い上がっていく。  
触手に絡まれた腕や脚は粘液で濡れ光り、乱れた着衣は少女の儚い抵抗を物語っていた。  
 
「ん…おぁっ…! んぅ、うぶぅぅ…っ…」  
 
雅はイヤイヤをするように首を振り、口腔を蹂躙する触手を吐き出そうとするが、首に巻き付いた別の触手は  
彼女の頭を固定し、それも許そうとしない。  
陵辱の屈辱と恐怖に、雅の頬を透明な液体が伝った。  
 
触手は小さな口の中でじゅぽじゅぽと抽送を繰り返し、逃げ場をなくした雅の舌を絡め取って無遠慮に刺激する。  
そのおぞましさに雅は何度も噎せ返り、可愛らしい唇の端から唾液の筋を伝わせた。  
 
「んぐっ────!?」  
 
ふいに、辛そうに閉じられていた雅の目が見開かれる。  
口の中の触手が、ひときわ激しく突き込まれた瞬間。その体積を増したかと思うと──爆ぜるように、先端から  
何かを迸らせたのだ。  
 
「ぐ、ぷっ…!? んぐっ、んぶぅ! むうぅ──!」  
 
びゅるっ、びゅくっ、と断続的に脈動する触手から吐き出される粘り気を伴った液体を喉の奥へ叩きつけられ、  
雅は否応なしにそれを嚥下させられる。  
彼女の小さな口腔内に収まりきらない量の液体が、ごぽり、と唇の端から零れ落ち、雅の制服を汚した。  
 
年相応の少女の性知識からすればまさに想像も及ばない出来事に、雅が抗う術を知るはずもなく。  
驚愕に目を見開いたまま、心の準備もできずに蹂躙を受け入れるしかない。その肩は触手の蠕動に合わせて  
痙攣するように震え、喉はこくり、と口の中に溢れるものを身体の奥へ流し込んでいく。  
 
やがて、ずるり、と口から触手が引き抜かれ、同時に雅の身体がくたりと弛緩する。  
 
「げほっ! けほっ…えふっ…! っ……はっ…はぁ…は、えぅっ……」  
 
触手に四肢を絡め取られたまま、激しく咳き込む雅。得体の知れないものを無理矢理に飲まされた嫌悪感に激しくえづく。  
荒い息に華奢な肩を上下させながら、幼い身体を震わせる。高潮したその顔は、雅自身の汗や涙、そして  
触手が放った白い液体ですっかり汚れていた。  
 
(気持ち…悪い…なんなの、これぇ…  
 やだ…やだよ、こんなの──助けてよぉ…お姉ちゃん…)  
 
手も足も出せない状態でいいように嬲られ、不気味な触手で口の中を犯された──  
その事実は、キスすら未経験の少女から抵抗の意思を奪うには十分すぎた。  
脱力したまま、しばし放心してしまう雅。  
触手の粘液に濡れ、着衣を乱れさせ、荒い息をつきながら嗚咽を繰り返す姿は、彼女の幼さに不釣合いな妖しさを  
醸し出していた。  
 
「ひぁっ……!?」  
 
ややあって、手足を戒めるものとは別の触手が腰の辺りから這い上がるのを感じ、雅はびくりと身体を跳ねさせた。  
それは彼女の恐怖を煽るように、殊更にゆっくりと幼い腰を這い上がり、着物の合わせ目から胸元に潜り込もうとする。  
粘液に濡れ光る触手が、ぴちゃり、と白い肌に触れ、雅はまた身震いした。  
 
「あ…や、やだっ! 何するの…!」  
 
普段から、姉に対する黄色い生物のセクハラ三昧を目にしている雅だが、彼女自身はそのような行為に対して耐性は  
ないに等しい。  
慌てて身を捩るが、触手はそれをまるで意に介さずにずるずると着物の下に侵入していく。  
膨らみとも言えないような幼い曲線を触手がなぞるごとに、雅は長い舌で胸を嘗め回される錯覚に陥り、不快感が  
ぞわぞわと背筋を駆け抜けるのを感じた。  
 
「こ、このぉ…何するの、スケベっ…!」  
 
雅がろくに動けないのをいいことに、触手は好き放題に幼い身体を這い回る。  
なめらかな白い腹や愛らしい臍を触手がずりずりと這いずると、ナメクジが這ったようにぬらりと濡れ光る跡を残していった。  
 
「〜〜〜〜……っ!」  
 
むず痒いやら冷たいやら、言いようのない感覚に目をぎゅっと瞑って耐える雅。  
と、不意に触手が雅の胸の先端、周囲とわずかに色の違う部分をかすめた。  
 
「ん……!」  
 
ぴくり、と頤を逸らし、息を呑むような声を漏らす雅。  
 
ほんの一瞬。ほんのわずかな反応だったが、触手たちはそれを見逃さない。  
たちまち2本の触手が着物の下で蠢き、雅の左右の胸へと伸びていく。  
 
「ちょ、ちょっと──やっ!?」  
 
なだらかな裾野を辿って、2本の触手が同時に胸の先端を捉えた瞬間、雅は引き攣った声を上げた。  
淡い桜色の突起に触手の先端があてがわれ、くにくにと蠢く。  
あるいは巻き込むようにその身を擦りつけ、きゅう、と締め上げる。  
 
「や、やだ…くすぐったい…っ、んぅ……くふっ……ん、ん…っ」  
 
胸の先端から送り込まれるむずむずとした刺激に、雅は身をくねらせる。  
触手の動きは、幼い少女には「くすぐったい」という感覚にしかならなかったが──その反応に変化が現れ始めるのは、思いのほか早かった。  
 
「あ……ぁ?」  
 
執拗に胸の突起を擦られ、こねられるうち、雅の声に甘いものが混じり始めた。  
腹の奥からムズムズとこみ上げてくる、得体の知れない感覚。  
 
(な、何これ…おっぱい…なんだか変、だよぉ…)  
 
痺れるような、蕩けるようなその感覚は、一度自覚すると加速度的に全身を侵していく。  
左右の胸の先端を触手がしごくたびに、身体の中で何か熱いものが膨れ上がってくるような気がして、  
雅は知らず知らずのうちに熱のこもった吐息を漏らす。  
 
触手の動きは徐々に大胆なものになっていく。  
既に雅のまとった着物は胸を大きくはだけられ、その幼い、しかし白くきめ細かな肌が外気に晒されていた。  
 
「はぁ──はぁ、はぅ、はぁ…ぁ、うう、ぅ…っ」  
 
わずかに汗ばみ始めた肌の上をグロテスクな触手が這い回る。  
雅自身は気付いているのかいないのか、触手が激しく動くたび、その桜色の乳首は充血して、ぴんと張り詰めだしていた。  
雅は顔を真っ赤に染め、眉根をぎゅっと寄せて、自らの体を襲う異変にただ打ち震える。  
いつしか肌は桜色に上気し、荒くなる呼吸に合わせて薄い胸が上下する。  
 
「きゃっ…!?」  
 
突如、別の触手が雅の前面に回り、一瞬震えたかと思うと──はだけた雅の胸に白い液体をびゅるり、と吐き出した。  
幼い胸にぶちまけられた粘り気のある液体は、なおも胸を蹂躙する触手の動きによって、にちゃにちゃと音を立てて  
雅の肌に塗り込められていく。  
ぬめりを増した触手の感触とそれが立てる音のおぞましさに、雅は気が遠くなるような恥ずかしさを覚えた。  
 
「や…やぁ……っ、………あ、ぁ…?」  
 
と。  
ぴくん、と雅の身体が震える。  
触手がねちねちと執拗に音を立てるうち、その反応は目に見えて激しくなっていった。  
胸から全身に広がる熱い波が伝播し、触れられてもいない股の奥がじくり、と痺れる。雅は狼狽した。  
 
未知の感覚に翻弄され、すっかり混乱する雅。  
それが触手の分泌した液体の作用によるものであるなどと、幼い彼女には想像もつかない。  
先ほど同じものを大量に飲まされた雅の身体は既に、年齢とは不相応に淫らに開花しつつあった。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、あ、や、ん、あ、あはぁぁぁ…!」  
 
触手がこすれるたび、胸の先端に血が集まってどんどん固さを増していく。  
そうして体積を増した乳首はより激しく、こりこりと触手とこすれ合い、ますます強い快感を送り込んでくる。  
この悪循環に、押さえ切れない吐息が甘い声を伴って唇から漏れ出るのを止められない。  
同時に、触手と、それが分泌する淫液とが立てるにちゃにちゃ、ちゅくちゅくという音も、耳から雅を犯す。  
押し寄せる感覚に翻弄され、どうしていいか分からない雅はぽろぽろと涙をこぼしながら舌足らずな嬌声を上げ続けた。  
 
 
やがて、最初の絶頂が訪れる。  
 
「や…ダメ、ダメ! なにか…なに、か、来ちゃう、よぉ…!  
 やめ、やめて、お願い、だからっ…やめてぇ…っ、やめ──!」  
 
不意に、雅のあげる声が切羽詰まったものに変わる。  
 
上ずった甘ったるい声で、必死に懇願の言葉を紡ぎだす。  
が、それが聞き入れられようはずはなく。  
 
太股にまきついて動きを封じていた触手の一本が、雅の足の付け根の真ん中を下着越しにずるりと舐めあげた。  
 
「ひ────!?  
 や、あ、あああああああぁ──…っ!!」  
 
悲鳴とともに、雅の小さな身体がぴん、と背を反らせて張り詰める。  
目の前が一瞬白くフラッシュし、雅は白い喉を仰け反らせて目を見開き、ひときわ強烈な快感を全身で受け止めさせられた。  
 
(な──なに…こ、れぇ…)  
 
ほどなくして、ぴくぴくと断続的に痙攣を繰り返しながら、雅の全身から力が抜けていく。  
眠りに落ちる直前のような夢うつつの表情で息を荒げて肩を上下させる雅は、しかし下半身を苛む違和感に、  
恐る恐る視線を落とす。  
 
「いやああぁ……」  
 
真っ赤な顔で、雅が泣きそうな声を上げる。  
 
その内股からはちょろちょろと水滴が伝い、下着のみならず太股から足元までをしとどに濡らし、ほかほかと  
湯気を立てていた──  
 
 
 
「うひーい! おい頼む許してくれ、そしたら今回だけは見逃してやる!」  
「なぜこの状況で強気なんですか!」  
 
その頃、屋敷の庭。  
触手に全身を締め付けられ、ボンレスハムのように変形する黄色い物体があった。  
 
「触手に絡め取られる頭領! なんて嫌な構図だ!」  
「ぬうぅ…なんてことだ、ただこうして手をこまねいて見ているしかないとは…!」  
「クラァーッ! 助けていいんだよコノヤロー!」  
 
おフダの暴走によって呼び出されたモノを音速丸らが制御できるはずもなく、庭へ放り出された彼らもやはり  
触手の暴虐ぶりに手を焼いていたのだ。  
なんとか緊縛プレイから逃れた音速丸はとりあえず安全圏まで避難し、相手の様子を窺う。  
しゅるしゅると不気味に蠢く触手。  
 
「…どうします、かなりのハチャメチャっぷりですよ彼は」  
「くっそ〜、触手が襲っていいのは美少女だけって決まりを知らんのか、コイツよそ者だな!?」  
 
憤りを抑えきれない音速丸。  
彼としては、帰ってきた雅が姿を見せる前にこの状況を打開したかった。  
事態の収拾にまた彼女の手を借りては自分の立場が悪くなるし、何より怒った雅にしこたま殴られる。  
 
「えーい、お前らも少しはなんとかしろ! いつまで俺の暗殺拳に任せっきりにしておくつもりだ!!」  
「ふむ…仕方ありません、少々乱暴ではありますが、アレを使うしかないようですね…!」  
 
颯爽と立ち上がり、ぱちんと指を鳴らすサスケ。  
そこへ、数人の忍者が何かをわっしょいわっしょいと運んできた。  
 
「我々、い組武器開発班がついに完成させた近代兵器! その名も音速砲!」  
「音速砲?」  
 
近代兵器に視線を移す音速丸。  
黒光りする筒に移動用の車輪が付き、お尻から導火線とおぼしき細い縄が伸びていた。  
歴史の教科書を開けば、お侍さんが黒船に同じものを向けているイラストが見られそうだ。  
 
「さあ頭領。この作戦にはあなたの協力が不可欠なのです! 何も言わずにこの発射口…いや不思議装置に入って!」  
「バカヤロー、名前と形状で何するか丸分かりなんだよ! さてはこの機に俺を亡き者にしようってハラだな!?」  
 
文字通りの肉弾戦。  
黄色い弾丸が敵を鮮やかに蹴散らし、自らも爆砕して果てる壮絶な絵面が瞬時に思い描かれる。  
実際にはそこまで酷いことにはならないだろうが、相当に痛いことにはなりそうである。  
 
「ええいワガママな人だ! 我々の計算では頭領を弾丸にするのが最も効率がいい方法だと言うのに!」  
「それにその方が面白いし!」  
「まごついてる暇はない! 全員で頭領を押さえ込むんだ!」  
「ブーッ! いま誰かさりげなく本音を述べやがったぞ!」  
 
たちまち巻き起こる熾烈なケンカパーティー。  
今まさに女子寮の一室で繰り広げられている展開を知る者は、そこには誰一人としていなかった。  
 
 
 
「う……あぁ…や…やあぁっ、やああぁ…っ!」  
 
幼い嬌声と、じゅくじゅくという粘液の立てる音で充満する部屋。  
その真ん中で、雅は未だ触手に囚われていた。  
帯は解かれ、着物は大きくはだけられて用を成さず──彼女の身体を覆うものは下着と、脚絆に厚底下駄のみ。  
そして今、その子供らしく飾り気のない下着は、無遠慮に潜り込んだ触手によってはち切れんばかりに張り詰めている。  
 
「やめ、て…もう……やめてぇ……  
 もう…っ、おか、おかしく…なっちゃう、よぉ……」  
 
普段、音速丸をしばき倒す際に見せる凛々しい表情はそこには見られない。  
涙に濡れた瞳、桜色に上気した頬。舌足らずの甘い声による哀願は、今は逆効果となるだけだった。  
下着の薄布の下で触手の動きが激しさを増し、中心に息づく幼い割れ目を嘗め回す。  
触手と雅自身の双方から分泌される液体とが擦れ合い、ちゅぷちゅぷと淫らな音を立てた。  
 
「きゃぅ、あ、あやああぁ…!  
 は、あ、やぅ、あああぁぁ…ぁ…!」  
 
もはや、幼いながら甘く蕩けた嬌声を止める事も出来ない。  
触手の表面を濡らす淫液は雅自身が零す蜜と絡み合い、拘束された太股を伝って足元の床に水溜りを作る。  
いいように敏感な部分を刺激され、淫らな液体をすり込まれ続けて、雅はあっという間に絶頂寸前まで高められてしまう。  
 
「あ…! ぁ、ぁ、あ…! や、やだ、やだあ…!  
 ま、また…またっ…! う、う、あ、うああぁぁ…!!」  
 
きゅっと目を瞑り、押し寄せる感覚に抗う雅。  
しかしそんな気丈な抵抗も、荒れ狂う快感の波の前ではあまりにも儚い。  
 
「!? ひああぁ!! あ、あ、あ、ああぁ────ッ!!」  
 
幼い割れ目を弄んでいた触手がわずかに標的を変え、その先でひくつく敏感な肉の粒を擦りあげた瞬間、  
雅は全身を戦慄かせ、夥しい量の愛液を吹き零してあっけなく気をやる。  
 
汗と触手の放った液体とに塗れた身体をぐったりと脱力させ、荒い息をつく雅の姿は痛々しく、同時に  
息を呑むほどに淫らだった。  
 
触手の陵辱は終わらない。  
むしろこれからが本番だとでも言うように、雅の身体に残った下着に触手を絡め、するするとずり降ろしていく。  
ぴったりと張り付く濡れた布の感触に、雅はぶるりと太股を震わせる。  
 
「や、やだっ……もう…もう許して…」  
 
力の入らない身体に鞭打って腰をよじり、触手の蛮行を止めようともがく雅。  
しかし背後から伸びた触手に胸をまさぐられると、甘い喘ぎとともにまた力が抜けてしまう。  
 
「ん…! あ…ふあ…あ、ぁ、だ、ダメ、ダメぇっ…」  
 
触手の先の淫液を垂らす口が吸盤のように変化して雅の両胸の突起に吸い付き、ちゅうちゅうと吸いたてる。  
絶頂を迎えたばかりの雅の身体はそれだけで過敏に反応し、節操なく性感を高めていった。  
言うことを聞かない自分の身体に、雅は喘ぎながらも首を振ってイヤイヤをする。  
 
そうするうちに下着は脚から抜き取られ、雅の幼い「その部分」を露にする。  
乳首を吸う触手の動きに雅がぴくん、と身体を跳ねさせるたび、その奥からじくり、と蜜が染み出てくる。  
そこには産毛程度の恥毛しか生えておらず、その形も発達していない子供のものでありながら、それは自らの蜜に  
濡れそぼり、淫らにひくついていた。  
 
「!! や、やだぁっ…ばか、ばかばかっ!  
 見ないで…見ないでぇ…!」  
 
思い出したように羞恥の感情に苛まれ、雅は顔を真っ赤に染めて叫ぶ。  
しかし当然、それだけでこの辱めが終わるはずがない。  
雅の両足を拘束する触手が動き、ゆっくりと彼女の両足を左右に広げていく。  
脚を大きくM字に開いた格好で吊り上げられた雅にできるのは、未知の不安に打ち震えることだけだった。  
 
「ぁ……や、やだ、何するの…?」  
 
先端から液体を滴らせる触手が一本、太股に巻き付く。  
それはしゅるしゅると太股を這い進むと、無防備に曝け出された幼い性器にその先端を擦りつけ始めた。  
しばらく、そのぷりぷりとした感触を楽しむかのように蠢く。  
 
「んんっ…ぁ、あぅぅっ…く、んふ、ぅっ…」  
 
触手の粘液によって性感を異常に高められた少女は、その幼い膣口でも性的な興奮を覚えていた。  
不気味な愛撫によって蕩かされていた身体。  
蜜の溢れるその場所に力が加えられた時も、気付いた雅が脚を閉じようと力を込めるより、その中に異物が潜り込むほうが早かった。  
 
「え…!? ダメ、やめ──っ!? あ、あ、ひうああぁっ!?」  
 
ずぶり、とも、ずちゅり、とも取れない音が雅の脳に響く。  
程よく脱力していた雅の身体は、驚くほどすんなりと触手を迎え入れていた。  
 
「…あ…あ、ぁ…かっ…ぁは…!!」  
 
これも液体の効果なのか、さほどの痛みはなかったが──経験したことのない圧迫感が下腹から雅を襲う。  
幼い性器はしっかりと肉質の触手をくわえ込み、蜜でてらてらと濡れ輝く。  
その中に混じる赤いものが、つい先程まで守られていた少女の純潔を示していた。  
 
「いやあ…ぁ…っ、やだ、やだやだぁ…っ…」  
 
しゃくり上げるような雅の声。  
それを黙らせようとするかのように、彼女の蜜壷を満たす触手が蠢き、ずちゅり、と音を立てる。  
 
「うあっ、あ!?」  
 
痛みからか、下腹部を満たす違和感からか、くっと顎を反らせて雅が喘ぐ。  
触手はずりずりと少女の内部を擦りながら、ことさらにゆっくりと触手を引き抜いていく。  
 
「あ、ぁ、ああああぁ……」  
 
やがて愛液にぬらぬらと濡れた触手が、先端を残して外気に晒される。  
と。息を休める間もなく、今度は再び、ずぶずぶと雅の中に埋め込まれていく。  
 
「う、ふ、ああぁぁぁ…!」  
 
ずるずると引き抜き。  
ずぶずぶと挿入する。  
 
その動きは徐々に速度を増す。  
接合部から聞こえる音も、ずちゅり、ずちゅり、というものから、ずちゅ、ずちゅ、と素早くリズミカルに変化していく。  
 
「!! や、だ! やっ…やっ! もう、もうっ、うごっ、動かすの、やめてぇ…!」  
 
耳まで赤く染めた雅が、かぶりを振りながら絶叫じみた懇願をする。  
鈍い痛みとおぞましい圧迫感ばかりでない、何か甘く蕩けるような感覚が湧き上がってくる。  
甘美なそれが恋しくもあり、恐ろしくもあった。  
触手の淫らな液体によって無理矢理に目覚めさせられた性感に、雅は戸惑い、怯える。  
しかし触手の戒めは緩むことなく、大きく開かれた両脚の真ん中では、触手が我が物顔で幼い性器を蹂躙し続けている。  
 
濡れた肉の擦れ合う音は、ずちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、と間隔を狭め、接合部では互いの蜜が泡立ってじゅくじゅくと音を立てる。  
吊り上げられた小さな身体は、突き込み、引き抜かれる触手の動きに為すすべなく揺すられるばかり。  
 
「くっ、あっ、あっ、あー、っ、ぅあぁ〜〜〜…っ!!」  
 
先に二度も絶頂を味わわされただけに、幼い雅にも理解できてしまう。  
 
──このままでは、またイかされる。  
 
それが分かっていても、もはや身体は言うことを聞かず、口を開けば甘い息とはしたなく濡れた声が漏れ出るばかり。  
そんな雅に、トドメとばかりに更なる攻めが施される。  
 
「──きゃい、っ!?」  
 
びくん、と華奢な身体が跳ねた。  
両脚の付け根、触手が陵辱の限りを尽くす肉孔のその上端のあたりに、一本の触手が取り付いている。  
それは制止する間もなく、肉の鞘に包まれた敏感なその部分を、吸盤のように変化した口を吸い付かせた。  
 
「ひきっ──ぃ…!?」  
 
その瞬間、絶息するような短い悲鳴が漏れ、新たに大量に分泌された蜜が飛沫く。  
雅は一瞬飛びかけた意識をつなぎ止め、荒い息をつきながら、新たな甘い責め苦に打ち震えた。  
 
次から次へと、自分の知らない、自分の身体のいやらしい感覚を呼び覚まされている。  
これ以上身体を好きに弄られたら、自分の身体がどうにかなってしまう──雅には本気でそう思えた。  
 
「も…う、やめっ──っ!!? あ、あ! うああ、ああぁぁぁぁ──!!」  
 
残った理性を総動員した制止の言葉は、しかし最後まで紡がれはしなかった。  
吸い付いた口が雅の最も敏感な突起をくわえ込み、激しく吸引しだしたためだ。  
 
「うあああぁーーーっ!! あ、ああぁ! きゃふぅっ、いや、いやああぁぁぁ!!」  
 
ずちゅ、ずちゅ、と出し入れを繰り返す触手。  
加えて三つの敏感な突起を執拗に吸われ、雅の頭の中に白い靄がかかり始める。  
ぼう、と熱に浮かされたように瞳を蕩けさせ、愛らしい口元からは喘ぎとともに唾液の筋がだらしなく喉元を伝い落ちる。  
 
──ずっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。  
 
脚の間で断続的に繰り返される淫らな音も、雅の甘い感覚を増幅させるばかり。  
ついに、雅は快感に目を蕩けさせ、無防備に屈服の声をあげる。  
 
「そんな、ぁ、あ、やぁっ、き…きもち、ぃ──  
 いい…っ、きもちいいっ…きもちいいよぉ…っ!!  
 ひああぁぁっ!! す、ごい、すごいぃぃっ…しんじゃ、死んじゃうよぉぉっ!!」  
 
甘く蕩けた幼い声が、次々と与えられる淫らな快感に悦びの言葉を紡ぐ。  
雅の全身はすっかり桜色に上気し、熱病に冒されたように荒い息を繰り返しながら、快楽の頂点へ上り詰めていった。  
 
ふわふわと落ちていく。  
そんな不可解な感覚の中を浮遊するうち、雅は自分の中の触手が一瞬、体積を増したように感じた。  
 
直後。  
大量の熱いものが最奥を叩く感覚とともに、雅の頭の中で白い爆発が起こる。  
これまでのものに倍する強烈な絶頂に、少女は全身を強張らせて愉悦の声を吹き零した。  
 
 
「や、あ、あ、あああああぁぁぁぁ──────っ!!」  
 
 
 
「──ひいいぃぃっ! これはもはや国民的アイドルに対する所業じゃねーっ!!」  
 
爆音。続けて奇声。  
 
けたたましい音を立てて障子を貫き、何かが部屋に飛び込んできた。  
どこかで見たような黄色いそれは、突っ込んできた勢いそのままに、ピンボールの玉のごとく部屋中を跳ね回る。  
 
やがて、弾丸は凄まじい勢いで壁に突き刺さり、ようやくその動きを止めた。  
黄色い球体からぐったりと垂れ下がった手足。その尻とおぼしき部分に、何かビリビリに破れた紙切れが挟まっているようだった。  
 
雅にはっきりとした意識があったなら、それが自分のおフダであることが見て取れただろう。  
直後、雅の身体を蹂躙していた触手の動きがぴたりと止まる。  
 
 
──ぼん!  
 
 
「きゃっ──!」  
 
音とともに彼女の四肢の戒めが力をなくし、雅は部屋の床に尻餅をつく。  
その衝撃に、半ば飛びかけていた意識が戻ってくる。  
触手たちは、音と同時に部屋に立ち込めた怪しげな煙とともに、嘘のように姿を消していた。  
 
(な……に? なに、が……)  
 
朦朧とした意識。力の入らない身体。  
ともすればそのまま眠りに落ちてしまいそうな雅の耳に入ってきたのは──  
 
壁に半分埋まった黄色い物体から漏れる、「うう…生まれ変わるなら…おっぱいに…」というような寝言めいた呻きだった。  
 
 
「よーし命中! みんなの思いが勝利を呼んだンだ!」  
「バカ! 流れ弾──いや頭領が突っ込んだの、雅ちゃんの部屋だぞ!」  
「やっべー、絶対すげー怒られるよ。もっとよく狙えよサスケ」  
「おいおい何さりげなく俺のせいにしようとしてんだよ、みんなの思いの結果なんだろ!」  
 
夕暮れ時、心配した忍に対して天岩戸が開かれた時には、部屋には何の痕跡も残らず、不機嫌そうに佇む雅の姿だけがあったのだった。  
 
この出来事はすべて雅一人の胸の内に仕舞われ、他の誰の記憶にも残らないだろう。  
しかし、結果的にそうなっただけのことだとしても、音速丸が雅を陵辱から救い出したのは紛れもない事実である。  
 
 
「…元はと言えば、あんたがおかしなことしなければあんな事には…〜っ!  
 待てこら、くされまんじゅうーっ!!」  
 
 
それ以来。  
彼女の音速丸に対する行動も、ほんの少しだけ優しいものになっていたのだった。  
 
 
「アヒィーッ! おいナレーション間違ってんじゃねーかよ! だいたい何だよあんな事って──  
 ギャアオーウ!? 尻が! 尻がーっ!!」  
 
 
 
 後日談 
 
 
ある夜。  
辺りが寝静まった頃、雅は自室でひとり立ち尽くしていた。  
 
手には数枚のおフダ。  
彼女も呪術学部の天才少女と言われる身。就寝前の呪術具の点検も当然、怠ったりはしない。  
が──今、雅がおフダを見詰める視線は、いつものものとは違っていた。  
 
少女の頬は白い月明かりの中、心なしか上気しているように見える。  
やがて雅の小さな唇が短い呪文のようなものを紡ぎ、同時にその手からおフダが離れ、ひらひらと宙を舞った。  
 
こくり、と唾を飲み込む音が、雅自身にはやけに大きく聞こえた。  
 
 
ぼん。  
 
 
宙に放たれたおフダは、音とともに煙に巻かれ、何かを召喚する。  
普段、屈強な手や足に化けて音速丸たちを折檻するそれが、今回呼び出したもの。  
 
「あ……っ」  
 
驚きでも怖れでもない、わずかに濡れた、短い呟き。  
得体の知れない粘液を滴らせる何本もの肉質の触手を前に、雅は後ろめたいような、しかし何かを期待したような表情で、  
渇いた喉を唾液で潤す。  
 
しゅるしゅると触手の何本が伸び、雅の小さな身体を絡めとっていく。  
着物の合わせ目に潜り込むと、ぱさり、と胸をはだける。少女の白い肌が、月明かりに照らされてなお白く見えた。  
 
どきどきと心臓が弾む。  
いけないことをしている。  
はしたないことをしている。  
お姉ちゃんが、タケル君が知ったら、きっと嫌われる。  
 
そんな思考がぐるぐると巡る中、雅の手に一本の触手が巻きつく。  
 
「……今夜…だけ…  
 ちょっとだけ……だから……だから、いいよね……」  
 
 
 
熱に浮かされたように頬を上気させ。  
雅は、ゆっくりとそれを小さな口に含んだ。  
 
 

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