ヒュンッ──
乾いた音と共に闇から飛来する矢文を見た瞬間、鴉のゴウは咄嗟に身を転じていた。
「何者だ」
矢文はゴウの脇をかすめ、床に刺さった。射た側もこれで仕留められるとは思ってい
ないのであろう、すでに気配を消していた。
「逃げたか。俺を殺しにきたわけではなさそうだ」
敵がたくさん出るとフレーム落ちが発生するので、出来れば俺一人の方が良い。ゴウ
はそんな事を思いつつ、文を開けた。すると──
『はたし状。女は預かった。返して欲しければ、水車小屋まで来い。うずむしより』
ミミズがのたくったような字で書かれているのは、脅迫状であった。
女とあるのは、キヌの事であろう。ゴウはキヌが毛伸忍者たちとの間で、何らかのトラ
ブルを起こしたのだと察した。
「放ってはおけん」
装備画面に入り、回復薬とパワーアップ系のアイテムを身につけるゴウ。スニーキン
グアクションゲームなのに、正面切って敵と戦わなければならないのが辛い所。
「火薬玉と混乱玉は必須。からくりはほとんど役に立たん。手裏剣とまきびしは全く
使う事が無いとは・・・」
おそらくキヌは、聞くに堪えないような辱めを受けているに違いない。囚われた者の
宿命とはいえ、ゴウはキヌの女である身の上を哀れまずにはいられなかった。
水車小屋は町の外れにある。そろそろ宵で、辺りには猫一匹見当たらないが、どこから
かすすり泣くような女の嘆きが聞こえてくる。
「ううッ・・・うううッ・・・」
小屋の脇にある水車に、全裸で縛り付けられているのはキヌだ。その周りには、毛伸忍
者の渦虫と蛇蜻蛉が構えている。キヌは水責めという拷問を受けている最中だった。
「い、いつになったら、バ、バグが消えるのかな、蛇蜻蛉よう」
「さあな。宿命だと思って諦めるんだな」
毛伸忍者の二人は、美しい女が厳しい責めに喘ぐ様を、にやつきながら見ている。
「で、でもよう、お使いミッションの最中に、荷物担いだまま血祀したら、荷物が消えちま
ったぜ。い、いくら探しても、荷物が見つかんないしよう」
「普段は荷物担ぐと血祀出来ないけど、襖越しなら出来ちゃうっていうのが、問題だよ
な。」
キヌは両手足を大の字に縛られているため、下から覗きこむ男たちの視線をかわす事
が出来なかった。そのため、熟れ始めの女陰の全てが晒されている。
「ちくしょう・・・こんな風にいたぶるくらいなら、さっさと殺せ・・・」
背で水車がギシギシと軋んでいるのを聞きながら、キヌは呟いた。昨日、どこぞの姫様
の影武者を装い駕籠に載ったはいいが、毛伸衆の襲撃に遭い、虜囚の身と相成った挙
句、おぞましい輪姦を味わう羽目となった。渦虫と蛇蜻蛉、そして数多の毛伸忍者から
激しい陵辱を受けたのである。
陵辱は一昼夜続き、いい加減、嬲り抜かれた所で、金目当てにゴウの元へ脅迫状を
出すと聞かされたキヌは、砂を噛むような気持ちになった。
(こんな姿を見られたくない・・・来ないで、ゴウ・・・)
何本もの男根が出入りした女穴は、開ききって充血していた。二枚貝も捲れあがって、
まるで夜鷹のように型崩れしている。キヌは目を閉じて、ゴウがここへ現れないことを
願った。
「さ、侍ってよう、ムービーがスキップ出来たら、メ、メチャクチャ尺が短いよなあ」
「その代わり、マルチエンディングじゃねえかよ」
「へ、蛇蜻蛉よう、さ、侍ウエスタンやったか?あ、あれ、見えない場所から敵が鉄砲撃
ってくるから、嫌になるよな」
「れっどにんじゃよりマシだろ」
「ぜ、絶対、剣豪シリーズと間違える奴、いるよな」
「ああ、それに関しては同感だ」
毛伸忍者の二人はいつまでも話が尽きないようだった。そして、ゴウはある小屋の上に
いた。
「ここ、どこ・・・?」
見渡せども水車小屋はない。そう、道に迷ったのであった。
─完─