何度か眉をひそめた後で薄く目を開けたクシャナは、後頭部に残る鈍痛を気にしながら、辺りの様子をうかがった。  
 
(ここは、どこだ……?)  
 
一つにまとめられた両腕を上に向かって吊られている姿勢では、自分が今いる部屋の全てを見回す事は出来なかった。  
それでも、その部屋の暗さとすえたような匂いから、自分が牢のような場所に囚われている事は認識出来た。  
 
(不覚……!)  
 
クシャナの脳裏を、気絶させられる前までの映像がよぎる。風の谷に降り、兵の陣容を整え、  
建物の接収を指揮していた時だった。自分の前にいた兵が血相を変えて「殿下!」と叫ぶのに気付き、  
後方を見た時には、既に、あの青い服を着た娘が、サーベルを手に軽やかに跳躍していた。  
自身の剣を抜き、防御の体制を整えるには余りに時間が足りなかった。  
「斬られた」と覚悟を決めたクシャナの延髄に娘のサーベルの柄がめり込み、  
予期していた鋭い痛みの代わりに視界が暗転するような衝撃を与えられ、クシャナは失神したのだった。  
 
(生かされているだけでも、幸運だと思うべき、か……)  
 
自嘲的な笑みがクシャナの頬に浮かぶ。両側の壁に一本ずつ灯されている蝋燭の火だけが、  
狭い牢の中を鈍く照らし出していた。クシャナの視界に黄金色の光が入る。  
その光の源を目で追うと、牢の片隅に、クシャナが身に付けていた、軍団長用の重層戦闘鎧が重ねて置かれていた。  
それを見た事で、クシャナは自身が下着だけの姿で吊られている事に気が付いた。  
瞬間、狼狽したが、冷静さを失っては終わりだと、自身の感情を整えた。  
 
(さて、どうするかな……)  
 
両腕を吊っている鎖を、軽く力を入れて引いてみたが、それで腕が自由になるはずもない。  
現実的に考えて、自身がここから脱出するには、指揮下の兵士達に頼らざるを得ないという事をクシャナは悟っていた。  
武力を考えれば、トルメキア第3軍団の精鋭が、風の谷の兵を圧倒出来ないはずはない。  
トルメキアの敗北があり得るとすれば、風の谷が、捕えた人質、つまりクシャナを材料に撤兵の交渉を進めた場合だが、  
クワトロの事だ、そのような交渉に応じる愚を犯すとは考えにくい。  
 
(つまり、待てばよい)  
 
そう考え、少しでも疲労の溜まらない姿勢を取ろうと身体を捻ったクシャナの目の前で、牢の扉が開き、  
青い服を着た娘、ナウシカがゆっくりと牢に入った。  
 
「小娘……!」  
 
扉を後ろ手で閉めたナウシカは、穏やかな笑みを浮かべて言った。  
 
「起きたのね」  
「小娘、トルメキア第4皇女に対するこの扱い、後に悔いる事になるぞ」  
 
威厳を込めた声で発せられたクシャナの発言を無視すると、ナウシカはクシャナに近付き、サーベルを抜いた。  
 
(ここで殺すか……?いや、馬鹿な)  
 
表情を変えずにいるクシャナの喉元にサーベルの切先を突き付けたナウシカは、  
 
「動かないで」  
 
と短く言うと、切先を固定したまま、クシャナの横側の壁から鎖を引き、それを足枷のように、  
手早くクシャナの足首へと嵌めた。  
 
「……?何をする」  
「動かないで」  
 
もう一方の足首にも、同じように足枷を嵌めると、ナウシカはそれぞれの鎖を壁に向かって引き、  
クシャナの脚を肩幅ほどに開かせた。  
切先を外し、それでもサーベルの柄を握ったまま、ナウシカはゆっくりと言葉を選んで話した。  
 
「あなたには、分かっていないの、なぜ、私達が、蟲とともに生きるかを」  
「分かろうものか」  
 
吐き捨てるように言ったクシャナの鼻先を、ナウシカが振りかぶったサーベルの刃が鋭く通り過ぎる。  
 
「!」  
 
ナウシカのサーベルは、クシャナの薄い下着だけを袈裟懸けに切り裂いていた。  
 
「こ、小娘ッ!何を……ッ」  
 
「人」の字に吊られたまま、クシャナは、自身の躯を覆っていた布が少しずつ重力に負けて床に落ちるのを、  
ただ眺めるしか無かった。  
 
「まあ」  
 
そこに現れたクシャナの裸体に、ナウシカは目を見開いて反応した。  
陶磁器のように冷たく白く澄んだ肌、肩から腰、尻、腿へと至る滑らかなライン、  
思っていたよりもボリュームのある乳房と、その頂きに小さく乗った桃色の乳首、臍の下に微かに萌える金色の叢……。  
それは女であるナウシカから見ても、魅惑的な躯だった。  
 
「綺麗……」  
 
そう呟いたナウシカを、クシャナは、屈辱で煮えたぎる心中を苦労して制御しながら睨んだ。  
依然として髪をアップに留めているティアラと、膝から下を覆う足甲冑の黄金色の輝きがまだ躯に残されている事が、  
逆にクシャナの恥辱を増していた。  
 
「怖い顔しないで……」  
 
そう言うとナウシカは、胸のポケットに収められていた短い試験管を一本取り出すと、  
それを蝋燭にかざして中身を確かめた。ぽん、と小気味良い音をさせながら蓋を開け、中に入れられていた、  
粘度のある水色の液体を指先に取る。  
 
「これ、何だか分かるかしら……?」  
「小娘、今ならまだ許す、これ以上の無礼を重ねるな」  
「これはね、発情期の王蟲の生殖液なの……王蟲は単性生殖だけど、お互いが協力し合って子供を作る、  
その時に分泌される体液を、煮詰めて凝縮したものなの」  
 
ほら、と粘液にまみれた指先を鼻先に近付けられ、クシャナは思わず顔を背けた。  
生臭い匂いが、尖った鼻を微かにかすめた。  
 
「人間にも効くのよ、だって、もともとは同じ生き物だもの……」  
 
そう呟きながら、ナウシカは、ゆっくりとクシャナの背後に回った。クシャナは僅かに怯えていた。  
ナウシカの意図が分からなかったからだ。  
 
「こ、小娘、何を……」  
「もう、喋らなくていいのよ、全てを躯に任せて……」  
 
ナウシカは、微かに震えるクシャナの背中にぴったりと躯を寄せると、  
背後からクシャナの躯を抱きかかえるように腕を回し、粘液を取った指先を、ゆっくりと、  
クシャナの脚の間へと降ろしていった。  
 
「や、止めろッ」  
「力を抜いて……」  
 
ナウシカの指先が、淡くけぶる金色の陰毛を掻き分け、つつましく閉じられていた肉の唇へと達すると、  
クシャナは躯を硬直させて低く唸った。  
 
「ううッ」  
 
ナウシカは、粘液をそっと肉唇に擦り込むように指先を動かした。その微妙な感覚がクシャナの背筋を駆け抜ける。  
敵であり、しかも同性であるナウシカにそこをぞられ、沸き上がるおぞましい快美から、  
クシャナは身を揉むようにして何とか逃れようとした。  
 
「止めろッ、小娘ッ、止めろッ」  
「ほら、もっと躯を開いて……」  
 
いつしかナウシカは、陰唇の間に指を滑り込ませ、ひくひくと息付くクシャナの女の入口を求めていた。  
粘液にまみれたナウシカの細く冷たい指先は、滑らかにすべるうちにそこを探り当て、  
指先から、少しずつ沈めていった。  
 
「くううッ」  
 
眉根を寄せて喘ぐクシャナは、屈辱に気死せんばかりだった。顔を背け、視線を床に落としているクシャナの頬に、  
ナウシカは軽く口付け、「可愛い……」と囁いた。試験管の中に残った粘液を更に指先に取り、  
クシャナの細くきつい内部や、その行き止まりのこりこりとした子宮口にまでも塗り込める。  
ナウシカは、クシャナのそこが、王蟲の粘液ではない何かで潤ってきている事に気が付いていた。  
 
「ううんッ」  
「ほら……ほら……ね?」  
 
耳元で囁きながら、クシャナの愛液と王蟲の粘液とでどろどろになった指を、今度は後のすぼまりへと移動させる。  
 
「……!」  
 
クシャナが身悶えする暇も無く、ナウシカの指は、そこをやわやわと揉み込み始めていた。  
初めての感覚に鳥肌を立てながら、クシャナは、自分の理性に対する信頼が揺らぐのを感じた。  
ナウシカは、クシャナの後の穴の皺を、一本一本伸ばすようにして揉み、指先でくすぐるように撫でた。  
 
「ああううッ」  
「可愛い声……もっと聞かせて……」  
 
自分が上げてしまった声に顔を上気させながら、クシャナは必死に威厳を保とうと努力した。  
唇を噛み、目をきつく閉じて、言い聞かせる。どうした、私はトルメキア第4皇女、クシャナだ……。  
だが、その努力を嘲笑うかのように、ナウシカは既に柔らかくほぐれたクシャナのアヌスに、  
ゆっくりと小指を沈め始めた。  
 
「ああッ、あああッ」  
 
愛液と粘液に助けられ、すぐに根元まで収まった指を、ナウシカはくるくると中で回し、折り曲げ、  
腸壁を引っ掻くようにして弄った。もう一方の手を前からクシャナの股間に差し入れると、ナウシカは、  
手探りでクシャナの肉芽の包皮をめくり上げ、その米粒のようなクリトリスを指の腹で撫でながら、  
そこにもしっかりと粘液を擦り込んだ。  
 
「ああうッ、ああッ、うううんッ」  
 
既に腰に力が入らなくなり、両腕の鎖にぶら下がるようになっていたクシャナの耳元で、ナウシカが熱っぽく囁く。  
 
「そろそろよ……」  
 
後と前を弄っていた指をすっと抜くと、ナウシカはクシャナの前に回り、顔を覗き込んだ。  
じっとりと汗を浮かべ、頬を上気させたクシャナは、それでも、ナウシカの方をきっと睨むと、言い放った。  
 
「この屈辱、死ぬまで忘れぬ」  
「これ、取りましょう」  
 
ナウシカはクシャナの頭部に手を伸ばすと、髪を留めていたティアラを外した。  
クシャナの豊かな金髪が、波打つようにほどけ落ちた。  
ティアラを床に置き、ナウシカは、クシャナの様子を伺った。そろそろ、王蟲の粘液の効果が現れてくるはずだった。  
正にその時、クシャナは、自分の躯に起こっている異変に気が付き始めていた。  
ナウシカが触れていた陰唇や肉芽や菊門が、まるでそこに電気を通しているかのように、  
ぴりぴりとした細かな刺激に犯され始めた。  
 
(か、痒いッ……)  
 
一度それを痒いと認識してしまうと、収める事ができなかった。  
陰唇と菊門の間の粘膜が、肉芽と包皮の間が、愛液を溢れさせている膣口が、  
無数の細かな羽虫にくすぐられているような痒さに襲われ、それを自分で掻きむしる事が出来ない歯痒さに、  
クシャナは鎖をじゃらじゃらと鳴らしながら、腰を揺らして耐えた。  
 
「痒いでしょう?」  
 
ナウシカが少し笑いながら訊くが、それに答える余裕がクシャナには無い。  
 
(痒いッ、畜生、痒いッ)  
 
「掻いてあげましょう」  
 
そう言いながら、ナウシカは、陰唇の端を少しだけ撫でた。  
 
「はあううッ」  
 
そこから迸った甘美な感覚の余りの大きさに、クシャナは自分の置かれている状況も、  
目の前にいる少女も、全てを瞬間的に忘れた。だが、その感覚の波が収まると、再び痒みがクシャナを捕えた。  
 
「ねえ、とてもいいでしょう?全然違うでしょう?」  
 
そうは言いながらも、二度とそこを掻こうとはしないナウシカを、クシャナは恨みがましく思った。  
 
「もっと掻いて欲しいの?」  
 
(欲しいッ、掻いて、掻いて欲しいッ)  
 
自身の中で渦巻く欲望の声を、皇女としてのプライドが何とか押さえ付けた。  
だが、ナウシカがクシャナの足下にしゃがみこみ、痒みでひく付いているそこに細く暖かい息を吹き掛けると、  
クシャナのプライドは吹き飛んでしまった。  
 
「ああううッ、も、もっとッ」  
「もっと、何?」  
「頼むッ、もっとッ」  
「だから、もっと、何?言って貰わないと分からないわ」  
「ち、畜生ッ」  
「ほら、楽になりなさい……?」  
 
苦悶するクシャナの顔を見上げるように、ナウシカが再び息を吹き掛ける。  
その微弱な刺激でさえも、甘美な電流に変換され、クシャナの膣口からは次々と透明な愛液が糸を引いて滴り落ちた。  
 
「はあッ、はああッ、もっと、もっと触ってくれッ」  
「どこを?」  
「私の、私のッ、おまんこをッ」  
「おまんこ触って欲しいの?」  
「欲しいッ、触って欲しいッ」  
「分かったわ……思いきりイきなさい……」  
 
そう言って立ち上がると、ナウシカは、指を二本揃えて、クシャナの肉壺に捩じ込んだ。  
そこは沸騰する泥のように、ねばねばし、どろどろし、熱く、形がなかった。  
外の指で肉芽を擦り、もう一方の手でアヌスを縫いながら、肉壺の中の指先を、臍の方に向けて曲げ、  
その膣壁を引っ掻くように動かしてやると、クシャナの理性が完全に形を消した。  
 
「ああッ、あああんッ、いいッ、いいわッ」  
「ほら、もうイけそうでしょう……?」  
 
がくがくと首を振りながらうなずくクシャナを見て、ナウシカは満足そうに笑うと、  
指先に一層力を入れてクシャナの急所を弄り回した。  
 
「はああうッ、あああううッ、も、もうッ、もうイくうッ、イくううッ」  
「いいのよ、思いきりイっていいの」  
「あああああッ、駄目ぇッ、出るうッ」  
 
一際高く叫ぶと、クシャナは下半身をピンと突っ張り、それを細かく痙攣させると同時に、  
尿道口から夥しい量の液体を勢い良く噴射した。  
 
「あら、凄い」  
 
ナウシカがそれを興味深そうに眺めながら、膣内を圧迫するように指を使うと、収まりかけた失禁が再び始まる。  
 
「嫌ぁッ、あああッ、いいッ、出ちゃうッ、出ちゃうううッ」  
「もう沢山出てるわ……」  
 
はあッ、はあッと肩で息をするクシャナの顎に指をかけて上を向かせると、  
その潤んだ瞳をじっと見ながら、ナウシカは唇を重ねた。舌を差し入れると、クシャナの熱い舌が差し換えされてくる。  
 
「もっとイけるわね……?」  
 
クシャナは、恥辱に顔を歪めながら、小さく頷いた。  
 
「いい子ね……」  
 
そう言うと、ナウシカは再び指を使い始めた。  
 
完  
 

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