私はこの日もカズちゃんの家で遊んでいた。カズちゃんとお話したり、ゲームしたり…。  
私はカズちゃんと過ごすそんな何気ない日常が大好き。カズちゃんと一緒にいられたら楽しくなれるもの。  
 
…ただ、この日は話していくうちに微妙にいつもと様子が違うことに私は気づいた。  
ちょっとしたことで動揺するカズちゃんに全くそんな素振りが見られない。  
私は好奇心からちょっと試してみようかと思い、座っていた状態の足を崩してみせた。  
この日の服装はスカート。崩す際に一瞬下着が見える。いつもならカズちゃんはそれだけでも動揺する。  
知らないと思っているだろうけど、ちゃんと観察してるんだよ、カズちゃん。  
しかし、私の期待をよそに、カズちゃんは全く動揺しなかった。少し見ただけで、全く何も思ってないような表情をしている。  
 
何かいつものカズちゃんと違う。私はこのときから薄々と感じていた。  
 
太陽が沈み、そろそろ帰ろうかと思ったときだった。  
「…成恵ちゃん」  
カズちゃんが突然、私の手を取ってくる。  
「ん、なあに?」  
「今日は最後に行かせてほしいところがあるんだ」  
「行かせてほしいところ?」  
どうしたんだろう。いつもなら私をそのまま帰すのに…。  
「で、どこに行かせてほしいの?」  
「前に成恵ちゃんが連れてってくれた山に。成恵ちゃんお気に入りっていってた場所」  
「ん、いいけど。じゃあ転送するね」  
私はカズちゃんを言われた場所に転送させた。  
 
星や月が見える下、心地良い風が吹き、草木が揺れる。  
私が気に入ってる場所。私とカズちゃんだけの場所。  
 
カズちゃんが腰掛けるので私もその辺りに座る。カズちゃんが、ここに来たかった理由って何なんだろう。  
私はカズちゃんに理由を聞こうと思った。  
「ね…」  
しかしそれより早く、カズちゃんが私に聞いてくる。  
「ねえ、成恵ちゃん」  
私は開こうとした口を一旦閉じ、カズちゃんの話を聞く。  
「成恵ちゃんは僕のこと、本当に好き?」  
 
全くもって当たり前のこと。そんなこと言われなくても私は…。  
「私はカズちゃんのこと、大好きだよ」  
こう答えるほかにはない。カズちゃんは続けて言う。  
「そう、だよね。どうして当たり前のことを聞いたんだろう…」  
理由がこれだけとは思えない。こんなことならカズちゃんの家でもいえるもの。  
「僕も成恵ちゃんのことは好き。好きでしかないぐらいに」  
それでもいざ言われると私の顔がぱあっと赤くなる。  
「好きだけど…超えることができない壁があるなんて、思いたくない」  
カズちゃんの口調がそれまでスムーズなのが一転、暗くなる。  
 
「これからのことは、本当に冗談ではない上で聞いてほしいんだ」  
「う、うん…」  
「僕らはまだ確かに子供だよ。でも成恵ちゃんが好きで仕方ない以上、一回は言いたいんだ。  
 成恵ちゃんが望んでいるのかどうかわからないけど…」  
カズちゃんは一旦視線を落とし、唾を飲み込む。そして再び私を見て言った。  
 
「僕は成恵ちゃんと一線を越えたい」  
カズちゃんの思いがけない言葉に、私は何も言えなかった。カズちゃんの視線が「ああ、言ってしまった」  
とばかりに再び下に落ちる。  
 
一線を越えたい―その言葉の意味はわかっていた。  
 
しばしの沈黙。重い空間を切り出したのは私だった。  
「…その、一線を越えたいっていうのは……」  
…聞かなくてもいいのに。ただでさえ私に言うのは苦しかったと思うのに、言わせてどうしたいの。  
私は言ったあと後悔した。にもかかわらずカズちゃんは答える。  
「成恵ちゃんと……」  
やはり恥ずかしいのか、カズちゃんの声は小さい。  
「…えっちしたい」  
…わかってる。わかってはいるけど、いざそういわれたらどうすることもできない。  
いつもはこういうことは「大人になってから」云々言ってる私が、言えない。  
いいえ、言うことができない。このまま言ってしまったらカズちゃんは立ち直れなくなってしまう。  
確かにこんなことはカズちゃんの家では言えないし、できないよね。  
 
私は驚いた。でもそれと同時に嬉しかった。ちょっとしたことで動揺するカズちゃんが、本当に勇気を  
出して言ったんだもの。私にカズちゃんの決意を裏切ることなんて、できない。  
私は心の内で決めた。  
 
「…いいよ」  
私もカズちゃんが好き。そしていつかはカズちゃんが欲しい。これまではそれは頭の中でしか叶わなかった。  
でも、こんなに早く現実になるなんて。  
こういうものはお互いが本当に愛していないとできないもの。カズちゃんの愛にとうとう触れることができる。  
そして私は、カズちゃんの唇に自らの唇を重ね合わせた。今までカズちゃんとしてきたキスよりずっと長いキス。  
愛しい存在のあなたに、すべてを捧げたい。そんな気持ちを私はこめた。  
 
唇を離し、私は衣服を脱ぎだす。周りにいるのはカズちゃんだけ。私たちを星空が見ている。  
月光に照らされる私の体を見て、カズちゃんが言う。  
「綺麗だよ、成恵ちゃん」  
その顔に、いつもの動揺している顔は全くない。むしろ、私のほうが動揺している。  
初めての、その緊張で胸が高鳴る。  
「あの、あまり見るべきものはないよ。私って思いっきり子供体型だし…」  
「ううん、そんなことは全く関係ないよ。僕は成恵ちゃんが欲しいんだ」  
また私の顔が赤くなる。今日のカズちゃんって、何でこんなに大胆で、落ち着いていられるんだろう。  
 
お互い衣服を脱ぎ終えて座る。地面の草がむき出しになった足に触れて、ちょっとくすぐったい。  
初めて見るカズちゃんのもの。私を見ていつの間にか大きくなってる。  
やっぱりカズちゃんも男の子。落ち着いていても体は正直。  
そう思っていると、カズちゃんは私の胸に吸い付いてきた。  
「はあっ!うぅっ…」  
そして手を、私の股間にあてがう。私は何とも言えない快感に身を委ねるしかなかった。  
カズちゃんは私の乳首を舐めたり、時には赤ん坊のように吸ったりした。カズちゃんに吸われる度、  
必ずしも大きいとはいえない私の胸が、このまま大きくなってしまうかの気さえする。  
今まで触ることすらできなかった私の体。カズちゃんはそんな体の感触を確かめるかのように、股間から  
お尻から、私の体を触ってくる。  
カズちゃんのその行為に、私はその気が高まってくる。  
「ひあっ、カズ…ちゃあぁんっ…」  
「成恵ちゃん、そろそろ始めていい?」  
「…うん」  
私とカズちゃん、お互いに抱き合い、カズちゃんのものが私の中に入る。  
 
「んっ…あっ、ああっ!」  
初めて感じる痛みに考えてることすら忘れそうになる。  
「痛い、いたいよっ!」  
「ごめん、成恵ちゃん…。もう少し、優しくするから…」  
「んあっ、カズちゃん、カズちゃあんっ…」  
カズちゃんが出し入れする度に、私の髪が大きく揺れる。  
「あうっ、なる…成恵ちゃん……」  
カズちゃんはなおも続ける。いつしか私とカズちゃんはお互いの背中で組んでた手を外し、  
カズちゃんは私の腰を持ち、私は自らの胸を揉み、仰向けになっていた。  
もはや、痛みが快感に変わっている。  
 
「いいよ…もっと、もっと突いていいから……」  
完全に私は、身も心もカズちゃんに預けていた。  
「成恵ちゃん…」  
カズちゃんが、しているうちに変わってしまった私を見る。  
「私はあなたを愛してる。だから安心して」  
もう知らないよと言っていそうな表情で、カズちゃんはさらに突き始めた。  
「ああんっ、いいよ…カズちゃん、いいよ……」  
どんどん突きは激しくなる。  
「ああっ、そのまま…されると、わた…し、いっちゃうっ…」  
「成恵ちゃん、そろそろ……一緒に、いこう」  
そしてその時は来た。  
 
「あっ、カズちゃん、ああっ…あうっ、ああぁっ!」  
お互いに絶頂を迎え、カズちゃんの熱いものが私の中に流れ込む。その瞬間に私の頭の中で  
何かが弾けたかのような感じがした。  
すべての行為を終え、カズちゃんは私の中にあったものを引き抜く。こうして私とカズちゃんの初体験は  
終わった。終わってしばらくし、少し変になっていた私の理性が元に戻る。  
私はカズちゃんを胸に強く抱きしめた。  
 
「…成恵ちゃん?」  
「カズちゃんに私の鼓動を聞いてほしいの…」  
二人が生まれて、出会って、愛しあえるのは何分の一でしかない貴重なこと。それだけに世界に一つで  
しかないあなたを愛することができるのは素晴らしいこと。  
そんな素晴らしいことを、どうして私は今まで拒んできたんだろうか。愛することに年齢は関係ないはずなのに。  
そう考えたら、カズちゃんに対して申し訳なく思えてくる。  
「まだ、胸がドキドキしてる。カズちゃんと一緒にいるといつもなんだよ。特に今日は…」  
私、カズちゃんと一緒にいていいんだよね。カズちゃんをずっと好きでいいんだよね…。  
「これからもずっと一緒にいようね、カズちゃん」  
「うん」  
 
私たちはこの日、ついに一線を越えてしまった。でも、周りにこんな関係だって思われても全然構わない。  
カズちゃんと一緒なら、私はそれ以外に何も望むものなんてないから。  
 
 
 
それからというもの、私とカズちゃんはこれまでにない信頼関係で結ばれている。  
やっぱり、あのままでいられたのは1日だけで、またいつもの動揺するカズちゃんに戻ってしまった。  
あの日のカズちゃんは私の見た幻だったのかもしれない。あんなに大胆なカズちゃんはもう見られないのかもしれない。  
でも、私の中には残っている。  
 
        私の目には見えなくても、その気持ちはずっと残ってるよ…  

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