成恵の世界  

「あーあ…」  

誰もいない個室トイレで、私はため息をついていた。  
私の名前は七瀬成恵、ちょっとフツーじゃない中学生。  
どこが普通じゃないかっていうと、実は私は宇宙人。  
だから地球の科学力じゃ想像もつかない、超科学の力を使った芸当がたくさんできる。  
例えば、テレポートとか。  
(……どうしよう……)  
   
もう一度、両手を壁について見るけど、ピッタリはまってウンともスンとも動かない。  
遠く始業のチャイムが聞こえるけど、とても授業になんか出られる状況じゃない。  
たまにはサボりも悪くないと、思う。でも、それは遊べるときの話であって、出たいと思っている時に限って出席できないのはなんとも腹が立つ。  
   
ガチャ  
   
私がうなっていると、トイレの入り口が開いて誰か入ってきた。  
まずい。この状況を見られたら、とてもじゃないけど言い訳なんてできない。  
幸い私がいるのは一番奥の個室。普通に入ってきただけなら見られるはずはない……。  

−ジー…  
−チョロチョロチョロ…  
   
その「誰か」が用を足す音だけがトイレに響く。  
私は恥ずかしくなって、どうしていいかわからなくなってしまった。  
構造はわからなくても、「音だけ」というのが余計想像をかき立てる。  
恋人であるはずのかずちゃんのだって見たことないのに、何故か卑猥な妄想が浮かんでは消える。  
   
(や、やだ……)  
   
私は頭に浮かんだピンクの靄を消そうと、首を小さく振った。  
その時、腕が便器に当たり、  
   
−ガサッ  
   
小さな音がした。  
(まずっ……)  
   
相手もこちらに気付いたみたい。  
絶体絶命、一巻の終わり。  
(カズちゃん……!)  
   
「誰か」は猛ダッシュで奥の個室まで走り、思いっきりドアを引き開けた。  
そこには、見慣れた顔。  

「カズちゃん!」「成恵ちゃん!」  
   
そう、私はまたしてもテレポートの失敗で壁に埋め込まれていたの。  
カズちゃんは私を見て吹き出しそうにしてたけど、必死にこらえてくれたみたい。アリガト、カズちゃん。  
   
「もう!監察庁がここの亀裂すぐに埋めないから、またハマっちゃったじゃない!」  
   
さっきまでの不安を誤魔化すように、強がってふくれてみせる。  
ううん、強がりなんかじゃない。「嘲笑」とは違う、安心させる「笑顔」を浮かべるカズちゃんを見て、さっきまでの不安はもうどこにもなかった。  
   
「……無事でよかった……」  
「カズちゃん……」  
   
できることなら、その体に飛び込んでぎゅっと抱きしめて欲しかった。  
私にはあなたが必要なんだ、とそう伝えるために。  
でも…そんなことできる状態じゃないのは明かだった。  
   
「えっと、確か後ろから引っ張ればいいんだっけ…?」  
「う、うん……」  
   
前回のことを思い出して、私は顔が熱くなるのを感じた。  
転送中のスカートが大きく広がった状態のままで壁にめり込み、お尻が丸出しになってたんだもの。  
カズちゃんも思い出したのか、顔を赤くしていた。  
でも今の状態じゃ……ううん、こんなことを頼めるのはカズちゃん以外にはいないもの。  

「じゃ、じゃあ行ってくるね!」「急いでっ!」  
   
カズちゃんが何故か中腰で個室を飛び出した。  
それからちょっとして、女子トイレのドアが開かれる音が聞こえた。  
男子のカズちゃんが女子トイレに入るのだから、相当勇気がいるんだと思う。  
本当にごめん、カズちゃん。  
   
バンッ!と衝撃が体と壁を通して伝わる。  
壁と完全に一体化しちゃっているから、音や声までは聞こえないけど、カズちゃんが来てくれたってことはわかる。  
そのとき私はとんでも無いことに気付いてしまった。  
テレポートの影響でスカートがめくれてしまっていることは前と同じ。  
でも前回よりもひどいことに、脚をバタつかせて暴れたせいで下着が少し下がってしまっているみたい。  
お尻の割れ目が少し顔を覗かせているはず……。  
こんなのカズちゃんが見たら……。  
   
ぴちょっ……  
   
案の定、熱い飛沫が太ももや脚に飛び散ってきた。  
カズちゃん、鼻血吹いたな……。  
いつもなら激怒ものだけど、そもそも私が悪いんだし、下着に直撃しなかっただけまだマシ。  

 

……そんなことしてる場合じゃないでしょ…早くしてよ…  
   
でも私の願いとは裏腹に、カズちゃんは一向に作業に入ろうとはしなかった。  
なにしてるのよ……。  
暫くして、カズちゃんの手が私の脚に触れた。ようやく始めるみたい。  
私はカズちゃんが力を入れる体勢になれるよう、なるべく抵抗せずに脚の力を抜いていた。  
そうこうしている間に、ようやくベストな体勢になれたみたい。  
何の前触れもなく、カズちゃんが私の両太ももを引っ張った。  
   
「きゃっ!」  
   
あまりにいきなりだったので、私は思わず力を込めてしまった。  
そのせいか、身体が抜けそうな気配はまったくなかった。  
カズちゃんは諦めず、そのままの体勢でぐっ、ぐっとと力を入れる。  
   
「や、カズちゃん、そんないきなり……!」  
   
とは言っても壁の向こうなんだから声が聞こえるはずもなく、そもそもカズちゃんも「いくよ」とか言っていたのかもしれない。  
ともかく、私自身の準備がまったくできていない状態だったので、引っ張られる力に抵抗するように壁に手を付いてしまった。  
カズちゃんはもっと力を入れるためか、より私の下半身に体を密着させてきた。  
   
「!!」  
   
カズちゃんは太ももを小脇に抱えている状態。私の下半身……というかお尻は、カズちゃんの腰に密着していることになる。  
そのお尻の上に、なにか熱いものがあるような気がした。それはきっと、カズちゃんの……  
   
……やっ…やだ…私、なに考えてるのよ…  

でもそれは気のせいじゃなかった。  
カズちゃんが再び下半身を引き寄せたとき、お尻にはっきりと熱源のものが触れた。  
   
「やっ、カズちゃん、早くっ、しないとっ、授業が……あっ…」  
   
聞こえないことはわかりきっているのに、私は言わずにはいられなかった。  
ううん、耳に届いていたとしても、いまのカズちゃんには聞こえなかったんだと思う。  
もう私にははっきりとわかっていた。  
いま、カズちゃんは私を引っ張るという作業を完全に忘れている。  
カズちゃんの頭の中には……  
   
「あっ、やっ、ちょっ、ちょっと……!」  
   
ついにはカズちゃんは私を引っ張るのではなく、自分から腰を私のお尻に擦りつけてきた。  
両手も、抱え込んでいた両足をなで回し、そろりそろりと内股へと伸びている。  
   
「やだ……こんなの、やだってば……!」  
   
もはやカズちゃんの暴走した性欲を止めることは出来ない。  
……違う。本当は私が必死に抵抗すればいいんだろう。そうすればさすがにカズちゃんもわかってくれるはず。  
なのに、私はなにも出来ず、ただカズちゃんの暴行とも言える行いを受け入れるだけだった。  
   
(わたし、わたし……)  

わたしも、カズちゃんが欲しい。  
身体もそう反応している。欲望が目覚め始める。  
でも、最期の理性が必死にそれを押さえ込んでいた。  
   
(するなら、こんな状況じゃ嫌なのに……)  
   
その最期の理性も、もはや風前の灯火。  
私はカズちゃんを受け入れることも抵抗することも出来ず、ただ従順に終わりの時を待つだけ。  
そしてその時はすぐに来た。  
   
(え……?)  
   
急にカズちゃんは腰を引いてしまった。  
これで終わり……? そう思ったのは間違いだった。  
再び腰が押しつけられたとき、鉄の棒があるのだと思った。  
それほどまでに、熱く、固くなったソレが、私のお尻に擦り付けられている。  

「あっ、やっ、カズちゃんのおちんちんが……」  
   
一瞬、私はついに少女から女に変わるのだと思った。  
でもカズちゃんはただお尻に擦り付けるだけ。  
それがカズちゃんの最後の優しさのように感じられた。  
   
私の両足を閉ざすことで、股間に生まれる小さな逆三角の隙間。  
カズちゃんはそこにおちんちんを入れ、必死に腰を出し入れする。  
もしも壁がなかったら、もしも誰かに見られていたら、私達は愛の行為を交わしているように見えるだろう。  
それほどまでにカズちゃんの行為は激しく、呼応するように私の声も荒げていく。  
   
「カズちゃん、カズちゃん……カズちゃぁぁんっ!」  
   
おちんちんの先端から溢れる液体が下着にしみこみ、そのせいで下着とその中身がぴたりと張り付く。  
もう下着なんてあってないようなもの。  
私の「女性の部分」はカズちゃんのおちんちんを直接擦られているような、強烈な刺激を受けている。  
それはいままで一人でしてきたのとはまったく別物の、男女二人で行ってこそ得られる、最高の快感……。  
私はもう我慢の限界だった。  
最後に残された理性が消えかけ、私は自分から腰を動かそうとしている。  
そうすることでもっと気持ちよくなれる。カズちゃんも、わたしも。  

「もう、だめっ……カズちゃん、カズちゃん……!!」  
   
私が腰を振ろうとした瞬間、  
   
ビュルルル、ビュクッ、ビュクッ………  
   
突然、お尻に熱い液体が降り注いだ。  
それはさっきの鼻血なんかよりもずっと熱くて、ネトネトとしている。  
話に聞いた、これが男の人の絶頂の証、精のつまった液体。  
   
(ああ、終わったんだ……)  
   
さっきはずっと待ち望んでいた「終わり」が、今ではとても残念に思う。  
もっと長ければ、もう少し我慢してくれたら……。  
でもこれで良かったのかもしれない。  
もし私まで理性を失っていたら、私達は本当に「最後の関係」を結んでしまっていたかもしれないもの。  
それもいいと思ったけど、やっぱりその時はこんなトイレなんかじゃなく、星の見える海岸とかロマンチックな場所がいいもの。  
   
カズちゃんは全部出し切ったのか、おちんちんを盛んにお尻や下着に擦り付けている。  
その先端から出ているネトネトがお尻で渇いてカピカピに変わっている。  
……なんか嫌。  
満足いくまで拭えたのか、ついにお尻からカズちゃんが離れてしまった。  
改めて自分の格好を考えてみると、もしかしたらとんでもないことになっているのかも。  
カズちゃんが激しく腰を振っていたせいで、下着はどんどんずり落ちて、今では太ももにまで下がっちゃってる。  
あっちからだと、全部丸見えなのかもしれない。  
   
と、向こうからお尻を押された。その瞬間、私の下半身は男子トイレの個室へと引き抜かれていた。  
なんだ、引いてダメなら押してみろってことだったのね……。  
数十分ぶりの自分の下半身を見ると、黄ばんだ白いネトネトが沢山ついてる。  
これが男の子の……。  
興味本位で指先にとってみると、ネバ〜っと糸を引いた。  
このなかに、赤ちゃんの素があるんだ……。  
もっと良く観察したかったけど、すぐにバタバタと足音が聞こえた。  
ヤバ、カズちゃんがこっち来たんだ。  
こんな状況になっちゃってどうしようと思ったけど……取り敢えず私は寝たふりして誤魔化すことにした。  
あとはカズちゃんに全部押しつけちゃおう。うん、そうしよう。  
   

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