黒をモチーフにした戦闘服を着た少女はバッタリと床に倒れた。  
「ふう・・・なかなか良い動きだったよフェイトちゃん。でも後半、イメージに体力が追いついてなかったかな?」  
対する白の少女は笑顔で床に降り立った。かなりの余裕だったらしく汗をかいた素振りも見せない。  
「な、なのは。やっぱり私の戦闘スタイルはなのはには向かないよ。振り回されて一撃を入れる前に疲れちゃうし・・・」  
「むぅ・・・泣き言を漏らすなんてフェイトちゃんらしくないなぁ・・・そうだ!」  
なにやらブツブツ言い始めるなのは。フェイトは思わず身構える。  
「ちょっ、それ・・・バインドの・・・」  
「バインド!」  
フェイトは空中に十字の形に貼り付けられた。しかも仰向けに寝かせられた格好で。  
「なにするの!もう訓練はおしまいでしょ?」  
「うーん、でもさ。」  
なのははフェイトを半笑いで見下ろしながら言う。  
「体力をつける特訓はまた別ものなの・・・」  
えっ、なにその語尾・・・とか思いながらフェイトは自分が嫌な汗をかくのを感じた。  
 
「ではまず脇の下からなの。」  
「いや、さっそく意味がわからないよなのはさん?」  
なのははにこやかに笑いながらレイジングハートの後部をフェイトの脇の下に突きつける。  
「いや、いっぱい笑えば体力がつくと思ったなの。」  
「完全に個人的な趣味からなる特訓メニューでしょ!イヤだよ!離してよなのは!」  
「あれ、そういう感じの本ではフェイトちゃんはこういう感じを喜んでいるはずなんだけどなの。」  
「そういう感じの本だからです!大体その語尾は無理がひゃぁん!」  
なのははフェイトの腋の下にレイジングハートをツンツンし始めた。  
「なにか私の喋り方に文句が?」  
「くっ、ひっ。」  
体を捻りたいがバインドによってまるで自由を奪われているフェイトには無理である。  
「では立場を理解して貰った所でフェイトちゃんの二番目の弱点お臍回りを責めたいと思うなの。」  
よくない。フェイトは思った。この調子ではなのはは必ずフェイトの弱点をついてくるだろう。それだけひなんとしても避けたい。避けなければ。  
「な、なのは!」  
「なに?いきなり足の裏をくすぐられたいのフェイトちゃん?」  
やっぱりである。もう語尾はどうでもいいが確実に弱点を知られてしまっている以上責められるのは避けたい。  
「ゲームしない?お腹の辺りをくすぐられるのを私が30秒笑わず我慢できたら足の裏は許してくれるってゲーム。」  
「んー・・・じゃあ我慢できなかったら神の指先と言われたこの指で直接くすぐってあげるなの。」  
「で、でもさっきまでみたくレイジングハートでね。」  
「おっけーなの」  
フェイトは身震いした。が、このゲームには微妙に勝算もあった。なのはがレイジングハートでくすぐる以上撫でるようにされるのが苦手なフェイトとしてはまだ勝ち目があると踏んだのだ。  
 
しかし甘かった。  
魔王は酷かった。  
「じゃあスタート。」  
「なのは、それなにふゃひゃひゃひゃ。」  
「なにって・・・レイジングハート(で呼び出した大量の鳥の羽)だけど。」  
二秒で決着は付いてしまった。まあ二十本弱の鳥の羽でお臍を余すところなく責められればだれでも終わる。  
「じゃあ覚悟はいいねフェイトちゃん。」  
と言いつつなのははさっくりブーツを脱がし始める。もとより止めるつもりなどないのだ。  
「いやー、いやだぁ!足の裏だけはぁ!」  
「往生際が悪いなぁ。受け止めてよ私の全力。」  
言いながらブーツを脱がし終わったなのはは黒いブーツの中から出てきた白い素足にため息をもらした。  
「綺麗・・・」  
しかし当のフェイトはもがいて足掻いて必死である。まあ、魔王作のバインドは10才の少女では束になっても壊せないのだが。  
「この綺麗な足に免じて今日は片足で許してあげる。じゃあいくよ・・・」  
そういうとなのははゆっくりと人差し指を黒の少女の足の裏にあてた。ピクリと震える衝撃を感じつつ上下に指を動かす。  
「くぅぅ、なのはぁ!やめてぇ!」  
しかし彼女の声はもはやなのはには届いていない。なのはは囁くようにこちょこちょと言いながら五指で足の裏を撫でた。  
「くぅひぃいい。ひははは、やめてぇ!」  
触っているか定かではないフェザータッチ。しかしこれがフェイトには一番効くのだ。やわやわと土踏まずに到着したなのはの指はここで攻め方を変えた。あくまでも優しくしかしかき混ぜるように指を動かしフェイトの笑いを極限まで引きだそうとするのだ。  
「ひぃぃい!きゃはははは!」  
フェイトは体を上下に弾ませながら限界をアピールする。しかし魔王はトドメをさした。右手の動きは緩めず左手の人差し指でフェイトの足の指を責めたのだ。  
「フェイトちゃん・・・もっと笑って・・・」  
しかし、フェイトの笑い声は直ぐに収まった。変わりに涙を流しながら痙攣するモノが生まれた。  
「あっ、やりすぎちゃったなの・・・うふふ」  
それ以来フェイトはなのはとガチの訓練はしなくなったとか。  
 
 
 

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