ある日の夕方、園芸部の活動を終えた石蕗は寮の近くまで学校帰りで歩いてきていた。到着間近、変な物を踏んだ違和感があったので下を見ると
見たことのない、雑誌が落ちていた。
「ん?なんだろう・・・なぜこんなものが・・・」
石蕗は、このまま放置する訳にはいかないと思い、その雑誌を寮の自分の部屋まで持って行った。
「な!なんだこれは・・・アダルト雑誌じゃないか?!やべ!捨てなきゃ!」
しかし、時は遅かった。捨てに行こうとした瞬間にあのぬいぐるみの姿「ユキちゃん」に変わってしまった。
「しまったぁぁぁ!あと1分早ければ・・・こ、これはどうしよう・・・」
捨てる寸前にユキちゃんに変わってしまい、小さなぬいぐるみの姿では捨てにいける訳がない。
「仕方ないから、明日の朝一に捨てようか・・・ あまり見たくないけど内容ちょっとだけ・・・」
ユキちゃんは、仕方なく1ページずつ読み始めて行った。ところが、少しずつ時間が立つごとに内容が過激になり
さすがなユキちゃんでもだんだんと赤面になってきている。
「うわぁぁ、や、やばいなぁ・・・もう見るのをやめてさっさとすももの家にいかなきゃ!」
時間を見たユキちゃんはいつものように赤いレシピの本の上に乗り、すももの家へ飛んでいった。そしていつものように窓を叩く。
「トントン!」
しかし、いつもと違う。部屋から応答がない。
「トントン!トントン!」
何度叩いても結果は同じだ。いつもならこれぐらい叩けば気づくだろう。しかし、何も応答がない。
「すももー!いる?」
声をかけても反応はない。すももに何かあったのか?!
「あー、なんでだろう・・・」
ユキちゃんがため息をついて仕方なく帰るために空を飛んでから1分後・・!
「ユキちゃん!危ない!!退いて!!」
それは突然の出来事だった。なんと、すももが上空を激しく旋回していたのである。
「う、うわぁぁ!」
ユキちゃんはあわてて退いたが、何とここで事故が起きてしまった。
ユキちゃんが退くのが遅れ、すもものレードルの後尾に衝突し、2人とも空中でバランスを崩し失速していったのだ!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」(2人)
2人は空中から激しいスピードで落下している。あまりの落下スピードによりバランスを取り直す暇もなく、結局広い湖の中に距離を離して2人とも落下してしまった。
「うぐぐぐぐぅぅlっぅぅ!」
二人とも激しい衝撃で一時は深く沈んだが、ユキちゃんは幸いぬいぐるみの姿だったためすぐに浮上できた。
「ぷわぁぁぁ!ってす、すもも!!!」
ユキちゃんはすももがどんどん湖の下に沈んでいく様子をみて、慌てている。
「すもも!!今、助けにいくから待ってろよ!」
ユキちゃんは再び潜水し、溺れて沈んでいくすももを助けにいく。
激しい水圧の影響もあり、なかなかすももの元へ追いつけない。
「すもも!すもも!」
その時だった。水の上で何らか激しい光が光った。あの赤いレシピの本が光っていたのだ。
「うわぁぁ!すももを助けないといけないときに何で光るんだよ?!」
ユキちゃんは仕方なく、上へ戻りレシピの内容を確認した。
「こ、これは・・・ステラスピアを守るための守護術・・!」
(ステラスピアが最大のピンチに陥ったときに使う最終術、被害にあってる対象者は使用できないが、それ以外のプラム・クローリス系、セントアスパラス系は使用可能)
「まじかよ・・!こんなときに限って!」
ユキちゃんは早く助けたい気持ちとレシピの内容の戸惑いでパニクっている。
「あら、これは偶然ね。ユキちゃん!」
突然、予知なく上に現れたのは、何とプリマ・アスパラスだったのだ!
「う、うわぁ!びっくりしたじゃないか?!なんでこんなところに・・!」
「決まってるでしょ?もちろん勝負よ!星のしずくが飛んでいたからね!」
「へぇぇぇ!それ本当なのか・・!」
「そうよ!残念だけど、不意の事故があったみたいで私がいただきましたわ・・・」
「そ、そんな・・・ ってそれよりお願いがあるんだ!!」
「あら?この私に向かって何か用かしら?・・」
「すももを助けてくれ!すももは湖の中にどんどん沈んでいるんだ!」
「え?!プ、プリマ・プラムが・・!」
「そうなんだ!!早く助けないと・・!だからお願い、このレシピを使えるならやってほしい!!」
「そ、そんな私が・・・!・・わかったわ!プリマ・プラムを助けてやるわ!そうしないと勝負の続きができないからね!」
「すまないけど、すもものためだ!お願い!!」
「わかったわ!じゃ、はじめるよ!」
「プラクレス・ホーリー・スクウェアマリー!!!」
すると湖の水が渦を巻き始め、外側が少しずつ壁のように立ってきて真ん中の水がなくなっていく。
そして、中から倒れているすももを見つけた!
「すももー!すもも!しっかりするんだ!すももー!」
ユキちゃんが必死に何度か呼びかけ、ようやく目が開いた。
「ユ、ユキちゃん・・・」
「すもも!大丈夫か?!怪我ないか?!」
「う、うん・・・大丈夫・・・みたい・・・」
そう呟くとすももは再び、倒れこんでしまった。
「すもも!すももー!」
・・・・・・・・・
あれから20分後、アスパラスとユキちゃんと一緒にすももを抱え込みすももの家まで送っていった。
「すもも・・・気が付いたか・・・」
「う、うぅぅ・・・」
「つ、冷たい・・・よぉ」
「熱があったから氷水で冷やしているんだ。もう大丈夫だよ・・・」
「え?・・もしかして、ユキちゃんがしてくれたの?・・・」
「うん、そうだよ。もう大丈夫だから安心してね。」
「あ、あれ?!星のしずく・・・は・・・」
「あれは、結局アスパラスさんに採られちゃったみたいだよ。」
「そうだったんだ・・・ぁぁ、また失敗しちゃったよぉぉ・・」
「たまには、あることだよ。それより、事の発端はボクが起こしちゃったんだ。ホントにごめんね・・」
「え?・・なんでユキちゃんが謝るの・・?」
「ボクが空中で退くのが遅れたから、それで、ボクたちは巻き添えになって空中でバランスを崩し湖に落ちちゃったんだ・・・」
「そ、そうだったんだ・・」
こうして2人は、マターリとした会話でこの夜をすごしていった。