一歩足を置くごとにギシギシと床が悲鳴をあげる。  
蜘蛛の巣に彩られらた薄暗い館内に素早く視線を這わせながら  
千里は慎重に歩を進めていた。  
「いんこぉー!観念して出て来ーい!」  
とりあえず叫んでみるが当然返事は無くあたりはまた静寂に包まれる。  
「この館の周りはあたしの部下が囲んでいるんだ!」  
この島に来る時にいんこも追いかけてくる千里達のボートを見ていた。  
はったりで無い事はわかっているはずだ。  
それで観念して出てくるいんことは思えないが  
無駄な抵抗をしたあげく他の者に捕まって欲しくは無い。  
少し待ってみて返事が無い事を確認すると千里は細長い廊下を先へと進んだ。  
「全く・・いんこの奴アジトまで知られておいて  
 まだ逃げられると思っているのか・・・」  
暗闇への恐怖をいんこへの怒りで打ち消すように独り言を言う。  
所々に部屋があるが全て扉すらなく家具一つ置いてない。  
念のため一つずつ確認していくがいんこの姿は無く徒労に終わる。  
「なに・・・これ・・・」  
廊下を歩いていると千里は異様なものを発見した。  
鉄製の白い扉である。  
いや、ここにあるのでなければ全くもって普通の、  
アパートにでも使われているような扉なのだが  
扉すらない部屋が並んでいる中、一つだけある普通のドアは異様に目立っている。  
千里はすぐに気を取り直すとドアノブを掴んだ。  
(・・・開く!)  
すかさずノブを引くとギイッという音をたててドアが浮く。  
それを反対側へ蹴り飛ばして壁に張り付いた。  
千里がたてたもの以外の音は無く中から気配もしない。  
危険は無いと判断し千里は中に飛び込んだ。  
 
扉の中は完全に居住空間のようで、小さな段差の先は畳の部屋だ。  
その横にはさらに部屋が見えるし開け放たれた障子の向こうには台所が見える。  
「何・・・ここ?」  
思わず独り言がでてしまう。  
「お邪魔・・します」  
馬鹿馬鹿しいと思いながらも、思わず口に出す。  
そのまま上がろうとした千里だったが  
あまりにも生活感にあふれた空間におされて靴を脱いだ。  
電気をつけ改めて室内を見渡すとますます奇妙さが目立ってくる。  
畳の上にはちゃぶ台があり、まるで読みかけのように新聞が広げられている。  
ちゃぶ台の周りには座布団、部屋の隅には随分古い型のテレビに茶箪笥。  
台所にもきっちりと物が揃っており、見れば見るほど人が住んでいるとしか思えない。  
(ここにいんこが住んでいるのかしら・・・?)  
あまりにもイメージが違いすぎるが案外そんなものかもしれないと千里は思った。  
ここに人が住んでいないと考えるよりはあり得そうだ。  
「いんこー!いないの?」  
叫んではみるが、返事は期待していない。  
「いんこー!!」  
体の中が痒くなるような感覚を覚え千里はそれを吹き飛ばすように叫んだ。  
大声を出した事で少しすっきりして千里はもう一つの部屋へ向かった。  
「へい、邪魔するよ!」  
威勢よく障子を開け放った千里は目を見開いた。  
子供用の木製の机の上に学生鞄があり、横には本棚、クッションの置かれた椅子。  
子供の、それも女の子の部屋だ。  
しかし、それだけではない。  
(ここ・・・あたしこの部屋・・・知ってる・・・!?)  
そのはずは無い。  
しかし、心がこみ上げてくるような、身体が震えるような感覚は懐かしさ。  
千里は思わず机に駆け寄った。  
恐る恐る椅子に座った千里の目には涙が浮かんでいた。  
 
どれぐらいの時が経ったのだろうか。  
千里は尿意を覚えて読みふけっていた本を置いて部屋を出た。  
あっと思ったのは用を足した後。  
(あたし、なんでトイレの場所知ってたんだろう・・・)  
答えが一つしかない疑問を浮べるが、わからない振りをする。  
もう一度、あの部屋に戻ると机につっぷした。  
疑問は次々と湧いてくる。  
答えが分かるものも分からないものもある。  
しかし考えれば考えるほど頭がこんがらがってきて千里は人民帽を叩きつけた。  
「いんこ・・・!」  
何もかもいんこに会えばわかる。  
当初の目的とも合致する。  
萎えた心を奮い立たせ千里は立ち上がった。  
「刑事さん、俺に何か用かい?」  
不意に聞こえてきた声に仰天し千里は振り返った。  
「いんこ!」  
不敵な笑みを浮べて立っているいんこに掴みかかる。  
「おっ、おいおい!  
 なんだってんだ!」  
「うるさい!  
 どこにいたんだ、このぉー!  
 なんだい、この部屋?  
 何の為に作ったんだ!  
 きりきり答えろ!」  
千里は興奮していんこの襟首を引っつかんで締め上げる。  
「ちょっと!いい加減にしてもらえませんかね?  
 人の家に勝手に上がりこんで乱暴する権利は刑事さんにもありませんぜ」  
 
いんこが千里の腕を振り払うと千里はにやりと笑った。  
「へん、それが今日はあるんだよ!  
 令状も持ってるし表には部下が一杯張りこんでる。  
 今日こそ年貢の納め時だ!」  
千里が得意満面に声を張り上げると、いんこがにやりと笑い返した。  
「あんたの部下は帰したよ。  
 ちょっとあんたの真似したらあっさり帰っていった」  
「か、帰った?」  
途端に千里の顔が青ざめる。  
「何てことするんだ!」  
そう叫ぶと千里は慌てて部屋を飛び出した。  
ガチャガチャとノブを回しドアを叩く。  
「このっ!  
 いんこ、何した!?」  
「ドアを閉めただけですよ。  
 私じゃないと開けられない方法でね」  
「お前じゃないと開けられない方法だって!?  
 なんだそれは!言え!」  
千里が凄んで詰め寄るがいんこは顔色一つ変えない。  
「ふふ、それより話をしませんか、刑事さん。  
 あなたも聞きたい事があるんじゃないですか?」  
千里はぐっと唸った。  
はぐらかすようないんこの態度は腹も立つが  
確かに聞きたい事は山ほどある。  
 
「取引といきましょうや、刑事さん」  
冷蔵庫から取り出した缶入りのお茶を千里に渡すと  
いんこはちゃぶ台の向こう側に座りそう切り出した。  
「取引?」  
「俺は刑事さんの質問に答える。  
 刑事さんは俺の要求をのむ。  
 一問答えるごとに一つ。どうです?」  
いんこは缶いりのお茶を一口飲んで目を合わせた。  
「よ、要求って何よ。  
 捕まえるなとかだったらお断りですからね!」  
千里が睨みつけるといんこは嬉しそうに笑った。  
「そんな事は言いませんよ。  
 俺の一つ目の要求は・・・  
 あなたが上着を脱ぐ事」  
「ブッ」  
千里は思わずお茶を吹き出した。  
「ぬ、ぬ、脱ぐって・・・」  
「嫌ですか?」  
ちゃぶ台の上で腕を組みいんこは千里を見つめ返す。  
「あ、あんたそんな事いって嘘ついてからかう気でしょー!  
 そんなんでこの千里さんをだまくらかそうったってそうはいかないやい!」  
「ふふ、誓って嘘は言わないさ。  
 信じてくれないってんならしょうがないですがね」  
おどけて誤魔化そうとした千里に対していんこはあくまでも真剣な目で見つめ返す。  
「本当に嘘つかない?」  
「つきません」  
千里がじとーっとした目で見てもいんこは真剣な顔だ。  
時計の針の音が響く。  
「さ、先に答えてよ!」  
「いいですよ」  
 
お茶を飲み干すと千里は覚悟を決めて口を開いた。  
「この部屋は何?  
 なんでこんな所にこんな部屋を作ったの?」  
「質問は一つですぜ、刑事さん。  
 この部屋はね、あんたの部屋を模して作った部屋なんだ。  
 正確に言うとあんたが中学生の頃のあんたの家族が住んでいた部屋をね」  
「あっ、あたしの部屋だってエ!?  
 う、嘘だ!こんな部屋に住んだ覚えは無いぞっ!」  
千里は動転して喚いたが、いんこの答えを否定できないのも確かだった。  
どこか、やっぱり、といった気持ちがある。  
「嘘じゃありませんよ。  
 完璧とは言いませんが俺が知ってる限りのあなたの部屋を復元したんだ。  
 テレビもちゃぶ台も机も冷蔵庫も同じ型のを用意したし、  
 本棚の本も同じものを並べた」  
いんこは何を言ってるんだろう。  
千里にはいんこの言っている言葉が半分も入っていかなかった。  
自分の昔住んでいた家、それが本当だとしても  
なぜいんこはそれを知っているんだろうか。  
ぐるぐると頭の中にいんこの言葉が回る。  
「さあ、脱いでもらいましょうか」  
いんこの言葉で千里は現実に引き戻された。  
仕方なく胸のボタンに手をかける。  
のろのろとボタンを外していくと上着の前がはだけた。  
素早く胸を片手で隠し上着を床に置いた。  
「刑事さん、下着をつけないと形が崩れますぜ。  
 せっかく綺麗で大きいのに・・・」  
いんこが評すると露わになった白い肌がうっすらと赤く染まった。  
「うるさい!」  
千里は顔を真っ赤にして怒鳴り返した。  
覚悟は決めていたはずだったが、実際いんこの前で脱ぐと恥ずかしくてたまらない。  
腕からこぼれそうな自分の胸の大きさがうらめしかった。  
 
「私の次の要求はズボンを脱ぐ事だ。  
 それでいいんなら質問をどうぞ」  
千里は必死に頭を働かせた。  
この調子じゃいんこは次にパンツまで脱げといいそうだ。  
それだけはなんとしても避けたい。  
「何もないんですか?  
 ま、今のままでも十分眼福ですが」  
いんこは両腕を使っても隠し切れない千里の胸の谷間を食い入るように見つめている。  
「・・・あんたの正体は誰?  
 何者?」  
考えたあげく千里は最もシンプルな質問にたどり着いた。  
いんこの正体さえわかれば多くの疑問に片がつくはずなのだ。  
「私の本名は鍬潟陽介。  
 刑事さんならこれだけで十分わかるでしょう?」  
いんこはあっさりと答えた。  
「く、くわがたようすけ・・!?  
 前にそうじゃないかと疑った事があったけど・・・!  
 やっぱりそうだったの!?」  
思わず口を抑えた千里にいんこは意地悪く微笑んだ。  
「じゃあ脱いでください」  
少し呼吸して落ち着くと千里は片手を胸から外した。  
「あんたがこんなエッチだなんて知らなかったわ。  
 逮捕した後にいんこはエッチだってみんなに言いふらしてやるから」  
憎まれ口を叩いて千里はズボンを脱ぎ始めた。  
片手で脱ぐのは面倒だが、さっきよりも気は楽だと思った。  
何しろ、脱いでしまってもちゃぶ台で下半身は見えない。  
それに、いんこが弁護のためや逃げる為でなく  
自分を求めているような要求をする事が嬉しかった。  
 
「さ、脱いだわよ。  
 これでいいわね」  
「ふふ、それじゃあ私の次の要求はキスにしましょうか」  
いんこが楽しそうにそう言うと千里の顔はまたも真っ赤に染まった。  
「き、き、キスって・・そんな・・・」  
「嫌、ですか?」  
この問いには答えず千里はうーうーと唸り始めた。  
質問をすればキスを承諾した事になる。  
恥ずかしくて口には出せないが、行為自体は嫌ではない。  
無理矢理とはいえ一度はいんことキスした事があるし、実は夢で見た事もある。  
しかし、無理矢理ならともかく、自分から承諾するのは恥ずかしすぎる。  
「まだ聞きたい事はあるんじゃないですか?  
 この部屋を作った理由とか、部屋を出る方法とか。  
 是非、聞いてもらいたいんですがね」  
「・・・・こ、これはあんたを逮捕する為だから!  
 しょうがなく質問すんのよ!」  
千里の前置きにいんこは分かってると言わんばかりにうんうんと頷いている。  
「素顔を・・素顔を見せて!」  
「わかった」  
これもあっさりと承諾するといんこはカツラとマスクを取り外した。  
「お・・・男谷マモル・・・!  
 男谷さん!?」  
現れた顔は千里も見覚えのある顔。  
お見合い相手でマナーを教えたりした気障ったらしい男の顔だった。  
「ど、どうして・・・う、嘘でしょ!?」  
いんこはおもむろに立ち上がると目を白黒させている千里の横に来てしゃがみ込んだ。  
「さあ、この顔の下にさらに顔があるかどうか  
 好きなだけ触って確めるといい」  
 
おずおずと手を伸ばし千里はいんこの顔を撫でさする。  
頭からうなじ、顎、首すじ、もみ上げ。  
触るだけにあきたらず鼻をつまんで頬を引っ張る。  
「本当に・・・どうして・・・?  
 男谷さんが・・いんこで・・・くわがたようすけって・・・」  
戸惑いを隠せない千里の髪を掴むといんこはゆっくりと顔を近づけた。  
「ん・・・・」  
震える唇に唇を押し付けると体重をかけて押し倒していく。  
千里を完全に寝かせてしまうとちゅっと吸って顔を浮かせた。  
「次もキスだ。  
 質問は?」  
声を出す度に吐息がかかり熱く火照った顔を冷ましてくれる。  
「・・・この部屋を出る方法は?」  
「インコの声真似。  
 声紋照合システムで鍵がかかってるんだ」  
言い終わるや否やいんこは千里の唇を奪った。  
優しく唇を合わせ、強引に舌をねじ込んでくる。  
口の中を舐められる感触が千里から思考する力を失わせていく。  
「もう一度キスする」  
いんこの荒い息が千里のほほを愛撫する。  
「あ・・・」  
口の中を蹂躙される感触を嫌でも想像させられ千里の唇が躊躇する。  
「どうして・・・?  
 どうしてこんな事・・・」  
「好きだから。  
 俺は君のことが好きなんだ。  
 初めて会った時から・・・今までずっと」  
桜色に艶めく唇に柔らかく、今までよりもずっと優しく唇が重ねられた。  
 
何度も何度もキスをしていんこは千里の胸に手を伸ばした。  
豊かな乳房にそっと指を置くとそっとそっと滑らせる。  
指の重みだけで形を変える乳房をそろそろと玉を磨くようにこする。  
ふもとから頂上へ揉みこむとツンとしました乳首を指の腹でこねる。  
一流のスリの指が全精力を持って乳房を弄んでいた。  
「何でも答える・・・、逮捕されてやってもいい・・。  
 俺の・・俺の最後の願いを聞いてくれないか?」  
長いキスをようやく止めたいんこの目が千里をとらえた。  
いんこの哀願するような表情に千里は口を聞けなかった。  
仕方なく鼻を擦り合わせて千里はこっくりとうなずいた。  
「君を千里万里子ではなく、  
 朝霞モモ子として抱きたい」  
その瞬間、千里の頭の中で何かがはじけた。  
真っ白になった頭の中で”朝霞モモ子”という名が駆け抜ける。  
白黒の光景が次々と浮かびあがり色を取り戻していく。  
そして、父と母の顔が浮かんで消えると  
目の前で見つめる顔にもう一つの顔が重なり合った。  
「・・よ・・ようすけくん・・・!?  
 陽介くん!」  
「モモ子ちゃん!」  
力強く抱きついたモモ子をいんこは力強く抱き返す。  
「アタシ・・・どうしたらいいの?」  
「ごめんよ、モモ子ちゃん。  
 どうしても・・・君に戻って欲しかったんだ」  
いんこが悲しそうな顔で謝るとモモ子は小さく首を振った。  
「ううん・・・アタシこそ思い出さなくて・・・んぐっ」  
モモ子が謝ろうとする寸前にいんこはキスをした。  
「抱いてもいいかい?」  
いんこらしい微笑みを浮べたいんこにモモ子は少し戸惑い  
ゆっくりと頷いた。  
 
「じゃあ、いくよ」  
全裸になったいんこはモモ子の体に残っていた最後の衣服に手をかけた。  
返事の代わりにモモ子がお尻を浮かせるとさっと脱がせてしまう。  
「んっ・・」  
茂みの奥に指を這わせ、女陰の位置を確認する。  
「モモ子ちゃん・・・」  
「陽介くん・・・」  
モモ子のお腹をおさえいんこはぬるぬると肉棒を侵入させていった。  
「くぅっ・・・」  
モモ子の上半身がくねり長い髪が畳みにはらはらと散る。  
胸への愛撫で十分に濡れていたモモ子だったが  
初めての挿入から痛みを消し去るほどではなかった。  
浅く、ゆっくりと腰を動かしながらいんこはモモ子の陰核に指を這わせた。  
「くゥんっ!」  
触れている事を気付かれないほどにかすかに触る。  
不器用に蠢くモモ子の陰肉に肉棒を擦らせ溢れる液体を抉り出す。  
「はぁゥっ・・そこ・・・それ・・・めぇっ・・」  
腰の動きを徐々に早めそれにあわせて陰核をこしこしと擦る。  
ぷるぷると踊る乳房を掴んで動きを抑え腰を突き上げる。  
「ぁっ・・・.んっ・・・んっ・・」  
モモ子の口が閉じる事を忘れ突かれる度に音を漏らす。  
いんこはモモ子を抱きしめほほを合わせると  
最後に残っていた理性を消して容赦なく突き上げた。  
「くぅぅぅっ・・・あぅっ」  
モモ子の中に射精してもいんこは動きを止めず  
モモ子の膣で精液をにちゃにちゃと突きつづけた。  
 
「ねえ、どうして・・・」  
いんこの胸に頭をのせモモ子が呟いた。  
ほとんどの疑問はすでに解けた。  
正体をばらしたのもこの部屋を作ったのも千里万里子を朝霞モモ子にする為だった。  
残った疑問は一つ、何故朝霞モモ子にしたかったのか。  
「僕は・・・どうしてもモモ子と一緒に復讐したかったんだ。  
 モモ子の両親を殺した鍬潟隆介への復讐を・・・!  
 聞いてくれ、芝居であいつを殺す方法を・・・」  
モモ子を抱くいんこの手に力が込められる。  
とうとうと語るいんこの話を聞いていたモモ子の顔が跳ねるように上がった。  
「そんな・・・殺されちゃうよ・・・!  
 復讐なんて止めて!」  
「モモ子・・・でも、君の両親はあいつに殺されたんだぞ。  
 これは正義の・・・!」  
「止めて!正義なんて・・・正義なんて口にしないで!  
 それじゃあたしの父さんと一緒じゃない!  
 正義のためなんて言って自分も母さんも殺して・・・」  
モモ子は体を起こし上に乗っかると、いんこの顔を見下ろした。  
「正義のためなんかで死なないで、あたしのために生きてよ!」  
モモ子の目からひとしずくの涙がこぼれ落ちる。  
「死んじゃうんなら思い出させないでよ・・・。  
 酷いよ、そんなの・・・・辛いだけじゃない・・・!」  
胸に落ちた雫の暖かさにいんこはそっと目を閉じた。  
命をかけて芝居をし散ったピエロの顔が浮かんでくる。  
(ごめん、トミー。俺はやっぱり物真似のいんこだ。  
 本物の役者にはなれない・・・)  
「モモ子・・・・・わかったよ・・・  
 いつになるか分からないが、他の・・命の危険が無いやり方を探す事にするよ」  
その言葉を聞きモモ子は陽介の頬で涙を拭いた。  
「へへ、そういえば質問残ってるよね」  
モモ子がにっこりと微笑む。  
「あたしのこと・・・愛してる?」  
 

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