九竜組やポリスの目をかいくぐって辿り着いたここは、いくつかあるかわからない、牙流会の所有物のひとつらしい。大きな屋敷だった。
通されたのは薄暗く、広い部屋。中央に大きなベッドがひとつ。後はほとんど何も無いような簡素な部屋。
「ここが君の部屋だよ。そして俺のね」
「なっ!?うわっ、離せっ」
抱えあがられて、ベッドに降ろされる。
「いきなり何しやがるっ!うっ・・」
またしても、押さえ込まれて動けない。
「知ってるかい?女に服を贈るのは、脱がせる為だって」
「し、知るかっ、そんなのっお前が勝手にっ」
「どうやらまだ調教が必要のようだね」
言って首筋を舐められる。
「くっ・・野生動物と一緒にすんなっつってんだろっ・・」
カチリ、カチリ
無機質な音と共に、腕に何かがはめられる。これは、手錠。竜二のとこにもあったやつだ。磁力によって両の手を自由に拘束出来る。あれだ。
権佐衛門が取り出したリモコンを操作すると、左右に広げた形で固定されてしまって動けない。ベッドに連動してるのか・・?
「くそっ、コラっ、やめろっ」
足首にも、同じ物を付けられてしまう。
「大丈夫。あの薬を使ったりはしないよ。君が俺の元にいる間は、白神竜二に手出しもしない。死ぬなんてことも考えないことだね。
それこそ何をするか自分でもわからないから。」
微笑みながらも、目が笑ってねぇ・・。その目に思わず総毛立つが、なんとか言葉を搾り出す。
「くっ・・この腐れ外道っっ・・」
「お褒めの言葉ありがとう」
今度は嬉しそうににっこり微笑みながらほざく。なんなんだよ・・。
「褒めてなんかねえっ!うっ、やめろっ・・」
権佐衛門は、俺の着ている服に手を掛けると、上から下まで連なるファスナーを、ゆっくりと降ろしていく。晒されていく上半身。そして下半身も。
「う・・く・・」
何も覆う物の無くなった胸を愛撫されて、目を瞑り、唇を噛み締める。またこんなヤローにこんなことされるなんて・・。
「今度はさっきより早く起ってきたようだね。覚えがいいようだ。君の身体は。」
「くっ・・何ふざけた事ぬかしやがるっ・・あうっ・・」
急に電気が走ったようになって、背中が浮く。・・なんだよ、これ・・。
「感じてるみたいだね。かわいいよ」
「なっ、感じてなんかねぇっ・・うっ・・んっ・・やめ・・ろっ・・んふぅ・・」
甘いような、切ないような疼きが、遠くからだんだん近づいてくるようだった。それも、自分の身体の奥から。
時間が経つにつれ、その距離はどんどん狭められ、吐き出す息に、自分のものとは思えない響きが色濃くなっていく。
こんなの自分じゃない。こんな奴にこんなことされてるのに・・。
「んっ・・ん・・はくっ・・・んく・・ん・・」
なんとか声を出すのは阻止出来るが、吐息に混じる甘さは拭うことが出来なかった。
「我慢しなくていいんだよ。最も、その耐える姿も扇情的だけどね」
その手や舌の動きと同じく、纏わり付くような声色が言う。
「我慢なんてっ・・はぁ・・してねぇっ!!っあはぁんっ!・・」
ハッと気付いた時には、既に遅く隙を突かれたように受けた刺激に、今までにない甘い声を漏らしてしまっている自分がいた。
「いい声だ。もっと聞かせて欲しいな・・」
楽しそうな声で囁かれる。悔しさと恥ずかしさで背けた顔は熱く火照っていた。
そして奴は、最後に残っていた下着へも手を伸ばす。考えるより先に脚が動いて脱がされるのを阻止しようとするが、
奴はそんな行動さえ楽しくて堪らないという余裕の様子で、最後の一枚を奪い取ってしまう。脚も再び押さえ込まれて動けない。
「ここも、今度はもう濡れているね。」
広げられた脚の間で、指を蠢かせながら、耳元で囁かれる。
「んっ・・そんなこと・・ないっ・・っはぁ・・ん・・」
認めたくは無かったが、奴に触られているそこは、既にぬるついていた。
そして、奴の指が蠢くたびに、さっきから感じている、切ないようなじっとしていられない感覚が、じわじわと強くなり、
触られている場所から新しい潤みを生み出していた。
どうしちゃったんだよ、俺のカラダ。
自分の身体が感じてしまっている気持ち良さに、心まで引き摺られそうな気がして、必死で打ち消そうとする。
しかし、その感覚は弱まってくれるどころか、だんだんと深く濃さを増していくようで。
「あうっっん!!」
自分の声にも驚いて、何が起こったのかみると、脚の間に顔を埋めた奴が、俺のアソコに舌を這わせていた。
「馬鹿っ、そんなトコっ、やめろっ・・んぅ・・」
最後の方は、抗議の音にならずに、頬を枕に擦り付けて与えられる刺激に耐える。瞑った瞼の奥には、
目を瞑る前の情景がこびり付いて離れない。
また永遠とも思える時間が過ぎていったように思えた。いや、時間の感覚がわからなくなってきたという方が正しいかもしれない。
自分の身体と心の鬩ぎあいを続ける中、奴の舌は、外側を内側をと好き勝手に蠢きまわっていた。
静かな部屋に、ピチャピチャ、クチュクチュと卑猥な音がやけに響く。
その舌に導かれるように、とろとろと絶えず溢れ出す蜜と、時折、耐え切れず零れてしまう喘ぎ。悪夢のような非現実感・・。
「ふぁああっ!!!」
散々舐められた突起を、急に強く吸われて、勝手に声がまろび出た。背筋をビリビリと電流が通り抜け、弓なりにしなる。
息が整わないまま、シーツに沈む。記憶に残るのは、怖いくらいの浮遊感と、激しくスパークする光。
前に感じたものよりも強いそれに意識を彷徨わせていたところへ、これもまた覚えのある圧迫感が押し寄せる。
「ん・・あふぅ・・」
また自分の意識とは関係無く喉から声が漏れてから、自分の置かれている状況に気付くが、
覆い被さり、自分のモノを埋め込んでくるのを止められはしなかった。
それどころか、今も奴を呑み込んでいるそこは、まるで迎え入れるようにも感じられた。
奴が腰を進める度に、身体の奥からどうしようもないざわめきが高まっていくのも実感する。
「ん・・はぁ・・やだ・・あ・・ん」
それは自分への拒否の言葉でもあったのかもしれない。襲い来る快楽に身を委ねようとしている自分への。
ゆっくりと味わうように、最奥まで身を沈める終わると、腰を密着させたまま、耳元でまるで催眠術のように声が囁く。
「身体も心も委ねてごらん・・。怖いことはないよ・・もっともっと気持ちよくしてあげるよ。」
その声は、半ばぼんやりとした意識の中に、何か落ち着かないような、ざわつく様な感覚と共に溶け込んで来る。
「君はもっと気持ちよくなりたいんだよ・・身体の声に素直になれば、足りないものを手に入れる事が出来る」
「はぁ・・たりない・・もの・・?」
「そう・・何かまだ足りないだろう・・?君も感じているはずだよ・・」
足りないもの。先ほどからどんどんと強くなっている感覚。認めようとはしていなかったが、それは確かにあった。
意識の脇へ押しやろうとするものの、もっと高みを欲している自分がいる。
こちらの表情から何か読み取った様子で、奴はにっこりと微笑む。その表情にドキリと鼓動がひとつ激しく響いた。
まるでその音が聞こえたかのように、奴が動き出す。
「っはぁっ・・ん・・ん・・ん・・」
そしてゆっくり内側を動き出す感触に、吐息が鼻を抜けていく。
「いい子だ。それでいいんだよ・・。」
耳元で囁かれながら、次第に動きが速くなり、複雑さを増していく。
「ぅ・・んっ・・はぁ。あ・・ダメっ・・そんなっ・・っはぁ・・」
波に翻弄されて、自分の声が遠く感じられる。悪夢に囚われてしまったようだ。ただ、突かれ、捻じ込まれる度に、
精神を揺さぶる気持ちよさにしがみ付くだけ。
何度も何度もあの感覚がやってくる。その度にまた欲している自分がいた。もうとっくに何も考えられなくなっていて、
奴の腰に脚を絡め、熱情を受け入れた記憶が、何度目の事だったかもわからないまま、意識ごと身体をシーツへと沈めていった。