「・・うん・・・」  
窓から差し込む陽の光が眩しい。  
何故か身体中が、だるく、重たい。なんでだ・・?なんかあったっけ?  
ぼんやりした頭で考えながら、傍らにある、さっきから抱きついていたものに頬を摺り寄せる。  
なんか気持ちいーー・・・。ずっとこうしてたいな。伝え聞こえてくる鼓動がとっても落ち着く。  
・・・鼓動・・?  
瞬時に覚醒した俺の視界に映ったのは、竜二の顔。  
「どわわわわわっ?!」  
「ずいぶん積極的だな。誘ってるのか?」  
からかうように放つ竜二の第一声を耳にしながら、俺の脳裏を、昨夜の出来事がマシンガンの弾のように打ち抜いていく。。  
・・そうだった。俺、昨日パーティーの後、こいつと・・。(赤面)  
結局あの後も求められるまま、何度も身体を重ねて。思い出してめちゃくちゃ恥ずかしくなる。  
そ、そりゃあ、竜二とそうなることは恥ずかしくはあったけど、嫌じゃなかったし、めちゃめちゃ気持ちよくもあったんだけど・・。  
そう、こんな風に・・。  
「ってこらっ!竜二。どこ触ってんだよ!もう朝だってのに。やめ・・んあっ・・」  
人がタイムトリップの渦に翻弄されてる隙に、竜二の手や唇が、俺の体のあちこちを滑っていた。  
「朝だろうが関係あるか。それに、もうこんなになってんじゃねーか」  
脚の間にも手は侵入していて、早くも中から溢れてきているものを掻き回している。  
「う・・それは、お前がそんないやらしい動きで弄るからじゃないかっ・・うぁ・はぁん・・やめっ・・」  
もう、なんだってこいつの指はっ・・反則だぞこれは・・。  
昨夜のうちに嫌という程知らされた手管に、身体も、そしていつか心も囚われていく。  
結局その後も押し切られてしまい、やっと解放された頃には、昼近くになっていた。  
 
くそ〜竜二のスケベ野郎め・・。なんだかいいいように翻弄されるままだった自分が悔しいような気分を抱えて、俺はバスルームへ向かった。  
紫煙をくゆらせながら、  
「一緒に入って欲しいか?」  
とからかうように言った竜二だったが、俺の恥じらいチョップに脳天をぷっくりさせながら、本当に付いてくる事は無かった。  
一応、気遣ってくれたんだろうか・・?そんな思いが浮かんだら、なんだか自然と顔が綻んでしまった。  
お湯の温かさと静寂に、やっと心和んできた俺だったが、ふと湯船の中を見やってぎょっとする。  
「げげ・・」  
身体中、付いていない所は無いのではないかというくらい、そこかしこに散らばる紅い花びら達。  
「ぐおおおおっ!!なんだこの有様はっ、まるでこれじゃあ俺は全身遠山の金さんじゃねえかっ!!」(大昔のドラマ放送chで観た)  
羞恥と驚愕に苛まれる俺に追い討ちをかけるように、鍵を掛けていたはずのバスルームの扉が開き、竜二が姿を見せる。  
「こらっ!まだ入浴中だぞ、何鍵まで開けて入ってきてんだよ!」  
「お前が長風呂な上に、ぎゃーぎゃー煩いから来てやったんじゃねぇか」  
「来てやったってなんだよ、別に俺は呼んでねーぞ!おいコラッ!何湯船に入ろうとしてんだ!お前まだ洗ってないだろっ」  
「洗ったら一緒に入っていいのか?」  
「いいわけ無いだろーーっ!」  
そんな怒号も虚しく、結局その後もいいだけ戯れられた俺だった・・(涙)  
 
 
やっと九竜組へ帰ることになり、身支度を整える。いつの間にか竜二が手配してくれたらしい服を身に着ける。  
昨日の服に若干デザインは近いだろうか。女物の服だ。露出は抑え目の為、キスマークはほとんど目立たないようでほっとする。  
軽くメイクをして、鏡の中の自分と対峙する。昨日の組員達や、おっちゃん達、そして竜二の反応を思い出す。  
そんなに変じゃないとは思うんだけどな・・・。まあ、いいか。後は帰るだけみたいだし。  
そう割り切って、続きの隣の部屋で待っているだろう竜二の元へ向かう。どんな顔するかなぁ?やっぱり俺気になってるみたいだ。  
俺を見た竜二の表情は、昨日と似たり寄ったりで、ちょっとがっかりする。う・・やっぱり変だったかなあ。  
「や、やっぱ変だったかな?昨日とかもさ、ヅラ付けた方が良かったかなーとか思ったんだけどさ」  
笑ってごまかそうとする俺にスッと近づいてきて竜二が言う。  
「似合ってる」  
上から下まで舐めるように見られてなんだか照れくさい。  
「だ、だって昨日もお前、そんな素振りしてっ。組員達や幹部のおっちゃん達だって、なんか珍獣を見るみたいだったしよ」  
「皆驚いたんだろ。ほとんどいつものお前のままで、そういうのが似合ってたからな」  
・・そ、そうだったのか。あれは珍獣に対する興味と侮蔑の視線では無かったのかーー!!  
「・・お陰でこっちが虫除けの心境だった」  
「へ?なんだって?」  
齎された新事実を噛み締めてる間に、ぼそっと漏らした竜二の言葉を聞き逃す。  
「なんでもねえ、帰るぞ」  
「あ、ああ」  
昨日と同じく腰に回された腕に従って、俺は竜二の隣を、九竜組へと向かった。  
 
九竜組へ戻ると、俺の部屋が無かった・・。俺の少ない荷物は、竜二の部屋に運び込まれてしまっていて。  
この日から、俺は竜二の部屋で寝起きするようになった。そういや、俺達「婚約」したんだっけ(照)  
なんて悠長にそこいらへんのバカップルのように陶酔するような状況でなかったことを、  
俺はその後の毎日で嫌というほど思い知らされることになるのだった。  
「婚約」「聖妻候補」という大義名分をいいことに、今まで以上に時と所を選ばぬエロ非道の限り。  
違う意味でやっぱりコイツは極道だ〜〜(涙)  
しかも、今まで以上に一緒にいる時間が増えた為、その危険な確率も比例して増えているわけで・・。  
ブンさんや、組員達も、そんな俺の苦労も知らないかのように。  
「四代目誕生も遠く無いのでは」  
なんて笑顔で囁きあう始末。  
ああ、ほんとにそんな日が近いのではないかと、俺は今日もまた竜二の腕の中でため息をつきつつ思うのだった。  
今日も重く気だるい身体の傍ら、俺にだけしか見せない竜二の寝顔がそこにある。  
いつもの組長の顔とは違う、幸せそうな顔で眠るその顔を見ていると、こんな毎日も悪くないかもなと  
そんな風に思えて、俺も胸の内に沸き起こるあったかいものを抱えて瞼を閉じるのだった。  
 
=おわり=  

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