夜もすっかりふけた頃、ナージャはからくり自動車の中で小さな寝息を立てていた。  
ふと人影が月明かりをさえぎる。  
「ん……?」  
ナージャが重たい目を開くと、そこには何故か愛しい男……フランシスの姿があった。  
「フラン……シス?!」  
彼は無言のままナージャの口に手を押し当て、黙らせた。  
その暖かな手のひらの感触が愛しい。  
「着替えて、外へ」  
ナージャはうなずいて、いつもの服に着替えると  
そそくさと先に外へ出て行ったフランシスを追った。  
 
「一体いつギリシャからこっちへきたの?」  
公園のあちこちには強い輝きを放つガス灯が建てられ、  
不気味な青白い光と黒々とした闇のコントラストを生み出している。  
ナージャの問いかけに彼は答えず、静かにナージャの身体を抱きすくめた。  
 
「……フ、フランシス……?」  
「会いたかったよ、ナージャ」  
耳元で囁かれると、ナージャの身体はぞくぞくと震えた。  
(や、やだ……こんな急に……)  
「緊張しているのかい?」  
「そ、そういうわけじゃないけど……」  
ナージャは軽く身じろぎをして身体を離し、ピンクに染まった頬を隠すように顔を背けた。  
「ナージャ……」  
フランシスの指がナージャのあごにかけられた。  
「……」  
彼はためらうナージャの唇をふさぎ、再びその両手でナージャの身体をやさしく抱きしめる。  
(フランシス……私……ずっとこうしたかったよ)  
二人の唇は徐々に貪るように吸い付き合い、舌を絡ませあった。  
徐々にフランシスの手はナージャの腰からお尻に回され、やさしいタッチでその上を  
這い回り始めた。  
「……んっ」  
思わず震えたナージャだが、抵抗しようにも口づけの甘い恍惚感に押され、  
身体は動こうとしない。  
「ナージャ……君が欲しい」  
「フラン……シス」  
二人は木々にさえぎられた公園の芝生の上に倒れこみ、激しく唇を重ねあった。  
 
「んっ……ああ!」  
フランシスの手が、スカートの中に差し込まれる。  
這い回る愛しい男の手の感触は、今まで感じたことのないくらい熱く、淫らだ。  
「濡れているね」  
フランシスは意地悪くいい、ナージャの下着に染み込んだ愛液を指でなぞる。  
「……いや、恥ずかしい……んっ」  
太ももを閉じ合わせようとしたナージャだが、  
下着の上からクリトリスをつつかれ、思わず腰を揺り動かしてしまう。  
「いつからこんなに淫らになったんだい……?ナージャ……」  
逆光になっていて、彼の顔をよく見ることはできない。  
フランシスの声は笑っているようにも、困惑しているようにも聞こえる。  
「違うの……わ、私……やあっ……」  
ぬるっ。  
フランシスの指が、下着の隙間から滑り込み、ナージャのヴァギナに差し入れられた。  
「こんなに濡らして……ナージャ、君はなんてはしたないんだ……」  
「ひああ……ああん」  
強弱をつけたピストン運動でヴァギナをなぶられ、  
既に快感を覚えているナージャの身体はすぐに燃え上がってしまう。  
スペインでホセに仕込まれて以来、すっかりナージャの身体は淫蕩になってしまっていた。  
「ふわあ……ぁん!いやぁ……んっっ」  
 
フランシスの身体にしがみついて、ナージャは体中を駆け巡る快感に  
絶えようと息も絶え絶え、切ない喘ぎ声をあげた。  
「驚いたな……一体いつ……まさか」  
ナージャの感度のよさに気付いて、フランシスは指を止めた。  
「ご、ごめんなさい……フランシス……。わ、私スペインで……  
ホセっていう人に……でも、無理やりだったの……最初は……!  
でも、ずっと心のそこからスキだったのは、フランシスなの!だから、だから……」  
「そうか……」  
フランシスはやさしく笑った。ナージャにはそう見えた。  
「最初は無理やりだったって事は」  
再びフランシスの手が動き始める。  
スカートをたくし上げ、ナージャの下着を足首まで引きずり下ろした。  
「その次からは、無理やりじゃなかったって事だね」  
フランシスはナージャのまたの間に体を割り入れ、ズボンを下穿きごとおろす。  
「そ、そんなことは……」  
「ないっていえる?」  
「……」  
「ナージャ、君が誰と寝ようと、僕の気持ちは変わらないよ」  
彼は自分のペニスに手を沿え、ナージャの濡れたヴァギナにあてがった。  
「あん……」  
 
「もう我慢できない。入れるよ」  
ず……ぷちゅ……。  
「んん……」  
(入ってくる……フランシスのおちんちんがっ……!)  
ずっ……ずぶっ  
久々の甘い感覚……そして、初めての、愛する男を体の中に受け入れる感覚に、  
ナージャは周囲をはばからずに切ない悲鳴を上げた。  
「んぁああああーっ……」  
「こんなに感じてるなんて……俺……僕も嬉しいよ」  
(……あれ?)  
なにか違和感を感じたが、ナージャがそれを口に出す前に、  
フランシスは激しく腰を揺らし始めた。  
愛しい男のペニスに突き上げられ、ナージャは再びあまいよがり声を上げた。  
「ふあ……ああ、フランシス、フランシスゥ……!」  
ずんずんと容赦なく男はナージャの狭いヴァギナを突き上げた。  
しばらく男を忘れていたナージャの幼い膣は、久々に差し込まれたペニスを、  
きゅうきゅうと締め上げていく。  
「ああ……!んあああ!すごい、気持ちいい……フランシス!」  
 
「ナージャ……ずっとこうしたかった……」  
二人は繋がった唇を重ね、抱き合い、もつれ合いながら快感にふける。  
「……もう、だめた……イクよ、ナージャ」  
「ひう……ひあ……うん!!」  
フランシスは腰をねじりこむように押し付け、ナージャの中で精を放った。  
「あ……あああっ」  
子宮に注がれる精液の熱さに、ナージャはぶるぶると身を震わせた。  
しかし、フランシスの固い起立はそれだけでは収まる様子もない。  
「今度は、こっちにお尻を向けて」  
一度ペニスを引き抜くと、フランシスはナージャを四つん這いにさせた。  
ねだるように突き出されたナージャの白いお尻は、ほんのり桃色に染まっていやらしい。  
赤く充血した割れ目から、とろっと精液が零れ落ちる。  
「垂れてきてる……」  
フランシスは、そっと愛液を精液が交じり合ったそれを指で掬い上げ、  
押し戻すように膣に指を差し込んだ。  
「うああ……ああん……!」  
崩れ落ちそうになるナージャだったが、もじもじと腰を振る事を忘れなかった。  
男を誘うやり方は、いつの間にか身についていた。  
 
「……やれやれ、指じゃ物足りないってここがいってるよ」  
「ひあ〜ん……っ!」  
フランシスは性急にナージャの中にペニスをねじこんだ。  
「しゅ、しゅごい……フランシスゥ……!ふわああん!」  
再び体中にかっと熱がめぐる。  
ナージャは自ら獣のように激しく腰を振り、フランシスのペニスを際奥まで導こうとする。  
フランシスも、少女の淫らな姿にあてられ、  
我を忘れてその体にペニスを打ち付けていく。  
十分にほぐれたナージャの肉壁は、たっぷりと湧き出した愛液をペニスに  
すりこむように吸い付いていく。  
「フランシス……好き……好きだよ」  
「…………ナージャ、どうして欲しい?どうされのが一番いいんだい?」  
「わ、わかんないっ……今、気持ちっ……いいの……幸せなのっ……」  
フランシスはナージャの両手首を掴み、自分のほうに引っ張りながら腰を振る。  
ナージャは体をのけぞらし、ますます深く入り込んでくるペニスを  
少しでも深く味わおうと腰を淫らがましく振る。  
ナージャは首をねじってフランシスと唇を重ねた。  
「好き……フランシス」  
「……ナージャ……」  
朝が来るまで、二人は何度となく交わり続けた。  
 
 
朝日がほのかに夜空を薔薇色に染め始めた事、フランシスは立ち上がり、  
ぐったりと横たわったナージャの手に何かを握らせた。  
「へ……これは……!」  
それは、エジプトであの二人組みに奪われた、ナージャ自身のブローチに違いなかった。  
「ど、どうして……フランシスがこれを……」  
戸惑うナージャを、フランシスは黙って見つめている。  
どこか濁ったその表情には、愛を確かめ合った恋人の顔ではなかった。  
何か、間違いを犯してしまい、激しい後悔と悔悛に苦しんでいるような表情……。  
きらきらと白い朝の光が、空の向こうからこぼれ始めた。  
「……キース?」  
ふとナージャの口をついたのは、フランシスの名前ではなかった。  
男は静かに目をそらし、そして再びナージャの方に向き直った。  
「ナージャ。俺は俺だ。俺の気持ちは変わっていない……」  
「キース……なの?」  
「ヘルマンと言う男に、気をつけるんだ」  
そういうと、キースは茂みの向こうに駆け出していった。  
呆然とナージャはそこに座り込んだまま、動けなかった。  
「私……ずっと……フランシスの名前……呼んでた……」  
もう分からない。  
自分誰が好きなのか。本当はキースだって気づいていたような気もする。  
いや、気がついていなかったような気もする……今、だまされた気分じゃないのは、  
なんでなんだろう……。  
ナージャは震えながら、木立に体をもたれかけ、ブローチを見つめた。  
その表面に、少しだけ曇りがあり、指でこすると赤黒い汚れがついた。  
「血……?いつ、ついたんだろう……」  
ナージャがその血の意味を知るのは、かなり先のことになる。  
 
 

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