明日のナージャ  

「ナージャ・アップルフィールドです。 ダンデライオン夜の部へ、ようこそ―― 
未だ未熟な見習いですが、どうか私の踊りをごらんになって、ひととき楽しまれますように」  
夜のステージ。  
テントに吊されているカンテラ達は外され、大部分を夜の薄暗闇が支配するサーカスのステー 
ジにて、その中央、拙い口上を述べた少女――ナージャ。  
彼女は客達が手にする無数の龕灯に照らし出さています。  
そのナージャはといえば、頭まで覆うフードと地面に引きずるマントといういでたちで、 
その活発な蒼い瞳すら隠して震えています。  
何も知らない者が見るなら、いかがわしげな舞台に引き出され怯える少女としか見れないので 
すが……。  
「まだ、振り付けも滑らかではありません――ですから、オババに条件を付けてもらって、舞 
台に上がることを許されました……ご確認くだ、さい」はらり  
ほぉ、とざわめきが大きくなります。  
マントをはね除けて露わになったのは、幼いなりにうっすらと化粧を施した、男を誘う娼婦の 
顔だったのですから。  
震える唇は興奮のせいだというのは、身を僅かに隠す薄絹の下でかろうじて膨らみ始めた乳房 
の頂点に卑猥につき勃つピンクの乳首と、細い太股を濡らす照り光る液体がしっかり物語って 
います。  
ナージャの身に纏っている紗――纏っていると言えるのでしょうか?――はふわふわと頼りな 
げに揺れる布きれを首から吊し、隅を錘で押さえているだけの物。  
腰回りはといえば、こちらも同じ材質の膝丈の腰布ばかり。  
練習着、と、そう言うことになっているために金の飾りや玉と言った物はないシンプルなもの 
で――それだけに、その下の肢体の稚さと肌の艶をより強調するようになっています。  
事実龕灯の光の円は、まるでその紗を透かそうとするように胸の先や股間へと集中しているの 
です。  
振り付けの未熟を露わにするために、と、そう言う建前ではありますが――それら全てがなに 
を目しているかは、客も、オババも……なによりナージャ自身がはっきりと理解しています。  
(ああ……恥ずかしい、のに……私、熱いこれは、明かりのせいだもん、こんなに集中された 
ら、当たり前、だもん)  

じっと、微笑みを浮かべながらの立ち姿勢――内心では下腹から吹き上がる熱にふらふらのナ 
ージャは、それでも必死にその熱を否定しようとします。  
けれど、そうやって意識すればするほどに反応は鋭くなってしまい、薄絹ごしに、むくむくと 
はしたなく膨らみ勃つ蕾や量を増し膝まで伝う粘液が客達の視線を象徴する明かりにくっきり 
と映し出されていきます。  
当然男達の欲望も昂ぶり――それを感じ取ってナージャの瞳が潤みます。  
それは彼女の天性の資質、幼いながらに身に余るほどの美しくも淫蕩な娼婦の本性。  
それに衝き動かされるまま、彼女は最初の姿勢をとり始めます。  
両手を開いての旋回――ひらひらとはためく布の下から、汗に光る乳房が晒されます。  
ざわり  
(ああ……見られちゃってる……そんなに、見たいの?なら、もっと激しく動くから……もっ 
と、見て、喜んで♪)  
はぁ、と熱いため息と共に身を傾け、左足を上げて水平に。  
ナージャの横手からは大きなざわめきが起こり、それに合わせて彼女の股間を熱が襲います 
――それは、灯りの物なのか、彼女自身の欲情なのか。  
垂直に垂れた腰布の向こうでは、その答えを語るように口を開きかけた陰唇が愛液を滴らせて 
しまっています。  
灯りの向こう側、欲望に光る目達だけがナージャからは見ることが出来ます――その全てが自 
分に集中している、自分を求めている。  
そう思うたびに彼女の心は歓喜に震え、青く未熟な体にそぐわない淫蕩な熱でゆっくりと性感 
を蕩かしてしまうのです。  
(今度は、前のみんな……見て♪)  
身を起こしてとん、と跳ねて。  
差しのばした足の付け根は正面からは丸見えでしょう――事実、前方の客からは喜びを、背後 
では失望を滲ませたざわめきが起こります。  
その全てがナージャが場を支配している、プリマなのだと証明してそのことにも彼女は深く満 
足を覚えます。  

その意識のまま、拙い動きを湧き上がる欲情で埋め合わせながらの淫らな舞が続きます。  
終わりが近づく頃には、汗で透け貼り付く紗ごしに薄い乳房の淫らさは露わになり、足首まで 
べっとり伝うほどに愛液を垂れ流してしまっています。  
最後のポーズ――足と背を高く反らし、右足だけで立つ姿勢。  
客達はそれを期待してほぼ全てがナージャの背後に集まっています。  
(あは♪いいよ……このまま見て、視線で奥まで……!)は……ぁ、くぅっ!」  
意識した途端にナージャは高く昇り詰めてしまいます――日頃、シルヴィに性感を開発されて 
いるときに感じた高みに、見られるだけで達してしまったのです。  
絶頂に震える幼い貌を趣味人な客が堪能しています、背後では即物的な客が従順にアクメを証 
す愛液の噴出を見てざわめいています。  
ナージャはそんな様子を眺め、淫蕩に笑う熱に浮かされた顔をそのまま立ち姿勢に戻ると  
「ご覧いただき、ありがとう、ございました。 どうか、次の公演も当ダンデライオンをご贔 
屓、に♪」  
熱に浮かされ途切れる仕舞いの口上を述べます。  
ですが客達は溜まりません、ここまで煽られても、ナージャはまだ売り場には上げられていな 
いのですから。  
そこへ機を見計らったオババがシルヴィを連れて現れます――シルヴィも、ナージャが最初に 
纏っていたマントと同じ物を着ていますが、その肢体の豊満さは隠すべくもありません。  
「ほいほいお客様がたご安心あれ、このアンナこのまま帰すなどと言う無粋なことは致しませ 
ぬ。 ナージャは未だ熟さぬ実故、当ダンデライオンの歌姫をご用意いたしました――シルヴィ」  

 

「はい……♪」  
声だけでそのうちに含む悦びを約束するような言葉が発せられると、するり、とマントが脱ぎ 
捨てられます。  
ナージャそっくりの紗――ただし、より肢体を淫蕩に演出するようにカットされ、  
埋め合わせにと金玉で飾られたたわわなプロポーションが露わになります。  
「ほれ、口上を」  
「シルヴィ・アルテでございます。 お客様方におかれましては、さぞおつらいことと存じま 
す――そこで、私の躰でそれを癒して差し上げたく……と、申しましてもこの身は一つ、  
時間を費やしてもお相手が叶うのは5人ばかりでございましょう、私はどのように選んだらよ 
ろしいのでしょうか?」  
お辞儀から口上へ――真に迫った切なげな様子と、発情していると全身で伝えるかのような仕 
草に男達は釘付けです。  
そこへ  
「5ポンド!」  
一声掛かります。  
金額にして、一月の稼ぎの1/20程でしょうか。  
「あら、そのような……「6ポンド!」  
また一声別に。  
こうなればもう止まりません、金額を吊り上げていく客達の声が喧噪を生みます。  
オババはそれをにこにこと眺めながら、最初に声を上げた二人に合図して下がらせます。  
恐るべき事に、声が途絶えがちになるとシルヴィは姿勢を変え、たわわな乳房の重たげに揺れ 
る様や、足を踏み変えてむっちりした太股を見せつけて煽るのです。  
その全てを見ながら、ナージャは少し面白くありません。  
彼女にしてみれば、シルヴィよりも女として見劣りする、と、そう言われているような物なの 
ですから。  
(いいもん……いつか、私だって。 こんな風にみんなを熱狂させるようになるんだから!)  
どのようなことであれ、目標を持つのはよいことです――多分。  
ともあれ、そんな彼女の行く末に思いを馳せつつ今宵も筆を置くことと致しましょう。  

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