やわらかな光が部屋に差し込み、ベッドに横たわる少女に降り注いでいる。  
「……ん」  
少女はまどろみの中から目覚め、朝が訪れた事を知った。  
起き上がった少女の肩からウェーブのかかった柔らかな栗色の髪が一房落ち、それをかき上げる  
仕草は、そばかすが残るあどけない面持ちとは対照的なしっとりとした艶やかさを漂わせていた。  
少女は傍らで寝息を立てている男を愛しそうな眼差しで見つめ、起こさぬようにそっと  
ベッドを離れた。  
 
少女は身支度を整えキッチンに立つ。  
しばらくすると、パンの焼ける匂い、コトコトとスープの煮える音や湯気が部屋いっぱいに広がる。  
手際よくテーブルセッティングを済ませると、部屋を見回し少女は満足気に微笑んだ。  
そこには、少女が幼い日に体験し、ずっと夢見ていた情景そのものが広がっていた。  
「さて、これからが大変なのよね」  
少女は呟くと、エプロンを脱いで椅子に掛け、小走りでベッドルームへと向かった。    
ベッドでは、少女が起きがけに眼差しを向けた男がまだ気持ちよさそうに眠っている。  
少女はベッドに乗り、男の肩をやさしく揺らしながらその名を呼んだ。  
「サンソン、起きてサンソン」  
「……」  
少女にサンソンと呼ばれた男は、目覚める気配がまるで無い。  
「サンソン!サンソンったら!朝よ起きなさい!」  
今度はサンソンの肩を激しく揺すった。  
 
「……あ〜…頼むからあと5分寝かせてくれ〜」  
やっと言葉を発したかと思いきや、サンソンはベッドの中へもぞもぞと潜り込んでしまった。  
「ああ!もう!しょうがないわね、毎朝!毎朝!」  
そう言って、少女はベッドから降り2、3歩後ずさりしたかと思うと、  
「えい!」  
掛け声と共にサンソンに向かって飛び込んだ。  
――ぐおぉっ!!  
サンソンの叫びが部屋中に響き渡った。  
「マ、マリー!お前なぁぁっ!!」  
サンソンが飛び起きると、見事に腹の上に覆い被さっている少女、マリーがクスクスと悪戯っぽく  
笑っている。  
「…ったく。16にもなって、いつまでも4つのガキみたいな事してんじゃねぇよ……」  
毎朝繰り広げられるハードな起こし方に、ゲンナリしたようにサンソンは呟いた。  
「素直に起きないサンソンが悪いんでしょ!まったく、四十路だっていうのに寝起きが悪いったら  
ありゃしない」  
「四十路と寝起きの悪さは関係ねぇだろが、それに俺はまだ39だ!」  
四十路と言われたサンソンは憮然としながら反論する。  
「大体なぁ、お前、ガキの頃から体重が何十倍増しになってると思ってんだ?ちったぁ考えろや」  
「失礼ね。何十倍も増えてないもん!せいぜい3倍くらいだもーん」  
自分の腹の上で拗ねたように頬を膨らませ、足をバタつかせているマリーを見て、サンソンは  
少女の幼き日の姿を重ね見た。  
 
 
「…ったく…」  
諦めたように溜息を付くと、気の抜けた声でサンソンは続けた。  
「とにかく、飛び込みは禁止だ。いくら俺でも身がもたねぇ…」  
頭を掻きながら天井を仰ごうとしたその時、起き上がったマリーの腕がサンソンの首に絡みついた。  
マリーは自分の額をサンソンの額にコツンと合わせると、  
「私は、このぐらいで死んじゃう男を旦那様にしたつもりはございません」  
そう言いながら上目遣いでサンソンを見つめ、嫣然と微笑んだ。  
「――!!」  
その艶やかな微笑にサンソンは思わず息を呑む。  
ついさっきまで、まるで小さな子供のような振る舞いをしたかと思うと、瞬時にして凄烈な色香を  
放つ女に姿を変える。  
この位の年頃の娘は皆そうなのか、自分達夫婦の複雑な成り立ちがそうさせるのかは、サンソンには  
判らなかったが、その微笑みは自身を昂らせるには十分だった。  
「……マリー…」  
サンソンは右手でマリーの腰を抱き、左手でそっと頬を撫でると唇を重ね合わせた。  
 
「…んっ?!」  
朝のキスだと思い感触を楽しんでいたマリーだったが、腰に添えられた右手の怪しい動きに気が付いた。  
視線を腰に落としてみると、サンソンがスカートのボタンを外し始めている。  
「ちょっ…ちょっと、サンソン何してるの!?」  
マリーは驚いて身を離そうとしたが、力強い腕がそれを許さなかった。  
「まっ、いいじゃねぇか」  
「よくない! 仕事に遅れちゃうよ」  
マリーは自分を拘束するサンソンの腕をペシペシと軽く叩く。  
「なぁに、お前が早く起こしてくれたおかげで、時間は十分にあるさ」  
サンソンはマリーの言葉など気にも留めず、栗色の長い髪を指先で弄り楽しんでいる。  
「でも…でも…朝だし……明るいし…」  
この後に及んで、まだこの状況を収めようとしているマリーに、  
「つれねぇ事は、言いっこ無しだ…」  
サンソンは唇でマリーの言葉を塞ぎ、下唇を自分の唇に挟むようについばんだ  
 
「…あっ……」  
マリーの唇から微かな声が洩れた。  
サンソンは薄く開いたマリーの唇に舌を滑りこませると、マリーの舌を捕らえた。  
「……ん…くっ…ふっ…っんく……」  
その熱く大きな舌はマリーの舌に絡まり、舌裏を舐め上げ、口腔を掻き回し、出口の許されない  
吐息はマリーの喉を鳴す。  
舌の動きがだんだんと激しくなり、それに呼応するかのうに身体の芯が熱を帯びてゆくのを  
マリーは感じていた。  
そして、おずおずと自らも舌を絡ませ、応えた。  
サンソンはその反応を確認すると、応えて来たマリーの舌を弄び続けながら、するするとマリーの  
纏う物の全てを掃い始めた。  
マリーはもう抗う事もせず、サンソンに身を委ねている。  
一糸纏わぬ姿にし終わると、そっとベッドにマリーを横たえてサンソンは唇を離した。  
「――ふわぁっ!」  
やっと唇を解放たれたマリーは大きく息づくと荒く息を弾ませた。  
 
伸びやかな瑞々しい四肢が、朝の光の元にさらけ出されていた。  
ほっそりとした首筋。白く滑らかな喉元。薄く浮かぶ鎖骨の下の乳房はふっくらと小高く盛り上がり、  
程よく括れた細腰から双丘へとふくよかな曲線を描き出している。  
(…こんなにも変るものなのか)  
そこには、つい2ヶ月前に初めてマリーを抱いた時の、あどけなさが殆どを占めていた身体の面影  
はどこにも無かった。  
少女から女へと変化していく、限られた時にのみ見られる儚い美しさに、サンソンは改めて目を  
見張った。  
「……やだ…」  
サンソンの視線に気づいたマリーは、あらわになった白い膨らみを腕で隠し、横を向いて恥かしげに  
軽く身を竦める。  
「…ここには俺とお前しか居ねぇよ。恥ずかしがるこたぁねぇ…」  
サンソンはマリーの肩をゆっくりとベッドに押し戻し、正面を向かせた。  
「…や…こんなに明るいと…見えちゃうもん……」  
腕で乳房を隠しながら、恥らいに目を潤ませてマリーは軽くかぶりを振った。  
「…じゃ、目、つぶっとけ……」  
マリーの額を撫でながらサンソンが言うと、マリーはただこくり…と頷いて、きゅっと瞼を閉じた。  
 
「…マリー…」  
サンソンはマリーを抱きしめ耳元で囁き、耳たぶを軽く食むと、舌を耳殻に沿ってゆっくりと這わせ、  
耳孔に硬く差し込んで中を舐り回した。  
「は…んっ……」  
耳の中で生まれる淫靡な音がマリーの頭に直接響き、羞恥が甘い吐息となって洩れる。  
舌や唇が白い首筋や鎖骨の窪みを上下に、まるで焦らすように這うと、マリーの身体はサンソンの  
腕の中でやるせなさそうに身をよじらせる。  
そして、まだ胸元で交差する腕をゆっくりと開くと、中から小高く盛り上がった磁器のような  
白い乳房がこぼれ出した。  
その薄い皮膚の下には青く細い血管が透け、程よい大きさの乳暈はほんのりと桜色に染まり、  
中心には若い実が息づいている。  
サンソンの舌は、右の乳房の裾から頂きへと円を描くようにくるくると舐め上げ、乳暈の回りを  
ちろちろと意地悪く這った。  
「んっ…あっ……あっ……」  
マリーの吐息が喘ぎへと変わり、背伸びをするかのように胸をせり上げてサンソンの肩に手を置いた。  
サンソンは、右の乳房の尖端の実を口に含み舌先でころころと転がしながら、柔らかな果実を扱う  
ように双の手で乳房を持ち上げ、ゆっくりと揉みしだくと、口の中の実は硬く膨らみを増してくる。  
「はあっ!…あっ……あんっ!!…」  
マリーはビクン!と首を仰け反らせ、サンソンの肩をぎゅっと掴んだ。  
 
サンソンは、マリーの身体が自分の愛撫に呼応するのを心の中で愉しんでいた。  
マリーを抱き始めた頃はあまりに痛々しく思えて、傷つけぬように壊さぬようにと慎重に扱ったもの  
だったが、肌を合わせるごと変化するマリーは、蕾から少しずつ綻ぶ花のように違った姿を見せ続ける。  
当然、マリーにとって初めての男が自分であり、この先もこの花を愛で、開花させるのは自分自身のみ  
であるという事実は、サンソンの心身を捉えようもなく昂ぶらせた。  
 
マリーの身体がうっすらと蒸気し、薄紅色に染まり始める。  
揉みしだかれた乳房は、サンソンの手の中で張りを増し、舌で弄ばれた実は硬く尖り起っている。  
(――もう、いい頃合だな)  
サンソンは左手をそっと脇腹から腰、太腿へと身体に沿うように滑らせ、閉じられた内腿に手を  
這い入れた。  
しっとりとした柔らかな感触は、挟まれた手がそのまま吸い込まれてしまうかに思えた。  
「んっ…」  
マリーの内腿にきゅっと反射的に力が入ったが、サンソンは手を回転させ、そっと花唇に中指を  
滑らせると、そこはもう十分過ぎるほど潤いをみせていた。  
「…あっ」  
マリーは思わず身を竦めようとしたが、サンソンは手のひらで恥丘を圧迫すると、一気に中指を  
花孔に沈めた。  
 
「っ…ああぁぁっ!!」  
マリーの双の腿がひきつった。熱い肉壁が沈めた中指を締め付ける。  
サンソンは中指を手前に戻し、浅い位置にあるうねを指の腹で刺激する。  
「…あっ、あっ、うっ…は…ふっ……あぁぁっ!!」  
刺激に耐えかねマリーが膝を合わせようとした時、サンソンは親指で探し出した花唇の中の  
膨れた尖りを弾いた。  
「はぅっ!!」  
マリーの背中が思いきり反り返る。  
全身に走った疼きでマリーは思わず目を開らくと、サンソンの顔が瞳に映った。  
「…やっと、目ぇ開けたな」  
朝の光彩は、思っているより全てをはっきりとさせている事にマリーは気付いた。  
「…や…やぁ…だぁ……」  
マリーは腕で顔を隠そうとしたが、そうはさせじと、サンソンは埋められた中指で浅いうねを、  
親指で尖りを激しく律動させた。  
「あああぁぁっ!く……あっ…うっ…あんっ!」  
顔を隠そうとした双の腕は脇に投げ出され、シーツに爪を立てた。  
「はっ…うっ…く、サン…ソ……みちゃ…い…やぁぁっ……」  
熱を孕んだ瞳でサンソンを見つめると、絞りだすようにマリーが呟いた。  
「俺は、いろんなお前を見てみたいから…いいんだ…」  
サンソンはそう言うと、マリーの唇を軽くついばみ、花孔を刺激しながら乳房や腹に舌を這わせ  
下方へと滑らせていった。  
 
舌が恥丘に到着すると、サンソンは花孔から指を離してやわらかな内腿を左右に持ち開いた。  
現れた花唇は、もう潤み尽くされていた。  
「そこ…い…やあぁっ!…全部…みえ……だ、……めぇ、っ、……!!」  
マリーは自身が晒されている事に激しい羞恥を感じ、膝を閉じようと内腿に力を込めたが、  
サンソンは身体を割り込ませて腿を押し止めた。  
そして、そのまま花唇に顔を埋め、膨らんだ尖りを根本から薄皮を剥がすように舌で揉み込み、  
薄皮をするり後退させると、現れた花核を弄った。  
「ひっ!ひ…あっ…ふっ……あ…んっあっっ!!はぁんっ!…ああんっ!」  
びくびくとマリーの背中と足先が舌の動きに呼応し、幾度も跳ね返る。  
「……もう…だ…め…はぁっ!……サ…ンソン…も…う…私、お…ねが…いっっ…」  
マリーの腰が軽く痙攣し始めた。  
サンソンはマリーが気を放つ前に唇を離し、激つ自身を花唇にあてがうとゆっくりと沈めた。  
「あぅっっ!!」  
マリーの下腹に力が入り、花孔口が自身の尖端の括れを絞り上げた。  
「くっ…」  
痺れるような感覚を堪えサンソンはさらに奥へと自身を沈めていく。  
まだ受け入れをこなしていない花孔は異物を吐き出そうとするかのように蠢き、きつくサンソンを締め付けた。  
自身を根元まで沈めきると、サンソンはゆっくりと腰を進め始めた。  
 
乱れ舞った長い髪がマリーの顔を隠し、紅く染まった唇だけが見え、薄く開かれた唇からは  
甘い声がせわしなく洩れる。  
その姿はひどく扇情的で、よりサンソンの体動を誘った。  
「あっ、ん…っ…い…あっ…っ…んっ!あんっ!」  
自らも触れた事の無い奥処の熱い塊の支配に、愉悦を覚え込んだマリーの身体は呼応する。  
感覚だけが身体を駆け抜け、快楽の波がマリーを襲った。  
「…サン…ソンっ、サンソンっっ!!」  
マリーの双の腕が宙を彷徨い、サンソンの首を探しあて腕を回してぐっと引き寄せた。  
サンソンの頬にマリーの荒い吐息がかかる。  
「…サ…ンソン……マリー…マリー…ね……もう…もう…」  
サンソンは耳元でマリーの刹那の声を聞くと、律動の速度を一気に速めた。  
「あっ、あっ、あっ、…マリー、もう…!!あぁ、―――っ、ぁ…ああああ…っ!」  
マリーの白い喉元が、背中が、腰が、足が、びくびくっと大きく波打ち、マリーは気を放った。  
「う……くっ」  
数秒遅れて、サンソンもマリーの中に熱い奔流を注ぎ込み、果てた――。  
 
マリーはサンソンの懐に深く収まり、疲れたのかいつの間にか寝息を立てている。  
(ちと、やりすぎたか…)  
サンソンはマリーの髪に顔を埋めると、そっと抱きしめた。  
マリーの柔らかな温もりが、安らぎとなって心に染み渡っていくのをサンソンは感じた。  
そして、マリーの寝息が子守唄となり、サンソンもまた、再び眠りの淵へと落ちていった。  
 
第1部 おさな妻・早く起きた朝には… 終わり   

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