不思議の海のナディア
「女ってのはねぇ、少しくらい我が侭なほうが良いんだよ・・・」
「でも・・・・ジャンに嫌な女だって、酷い女だって思われたわ」
愁い
ナディアの故郷を求めてカトリーヌ(別称グラタン)で旅する一行が一時身を寄せた村。
動く島での体験がジャンに対するわだかまりとなって、他の誰かに安らぎを求めようとしたナディアは
その村の青年に一目惚れをした。
いや、好きだと思い込もうとした。ジャンへの想いを忘れるために・・・・・
だが村の青年はナディアの想い人にはなれなかった。
結局ナディアはジャンの心を傷つけ、そしてジャンの想いを裏切っただけ。
村を出てからナディアはジャンと一言も言葉を交わしていない。
気球の修理が終わったカトリーヌ(別称グラタン)は空の旅を続けていた。
搭乗者達も忙しく働いている。
サンソンはカトリーヌ(別称グラタン)の操縦と周囲の警戒。ハンソンはカトリーヌ(別称グラタン)
の整備。ジャンはハンソンの助手。
操縦席裏のソファー脇ではマリーとキングが毛布に包まれてお昼寝中。
そしてグランディスはソファーに座って沈み込むナディアを慰めている。
「なんで私あんな事したんだろう。いま思えば、あの人のこと好きでも何でも無かったわ。それなのに
ジャンに辛く当たって・・・」
ナディアは身を震わせて俯く。グランディスにはひとつ確かめたい事があったので訊ねる。
「ひとつ聞かせておくれ。あの島でいったい何かあったんだい? あれからだよ、あんたがジャンにつ
れなくし始めたのはさ」
動く島が沈むとき、ジャンはナディアを探して島の地下に潜った。危機一髪でふたりは脱出できたもの
の、それからナディアは少し変になった。グランディスは二人がギクシャクしている原因は、あの時何
かがあったに違いないと睨んでいた。
「・・・・・・・・・・・」
でもナディアは俯いたままで、どうしても話そうとしない。
「・・ふう、いま如何しても言えないんならそれでも良いさ。でもね、いつか必ず教えるんだよ」
「・・うん・・」
ナディアはコクンと小さく頷く。
「あたしが見たところじゃあ、ジャンは今でもあんたに気があるね。でも、あんたが絶対話かけるなっ
て雰囲気を出してるから声をかける切っ掛けが掴めないんだよ」
パッと顔を上げてグランディスの目を見つめるナディア。でも、すぐに俯いてしまう。
「だってジャンに嫌われてるもの。あんな酷いことしたんだもん、許してくれる筈が無いわ」
「はぁ・・・それがダメだっていうの! 良い女ってのは男を振り回してやるものなんだよ。つれない
振りや気が多い振りをしてヤキモキさせるんだよ! そうすれば心配になった男は慌てて積極的にアプ
ローチしてくるってものさ」
操縦席でカトリーヌ(別称グラタン)を操りながら、聞くとは無しに二人の会話を聞いていたサンソン
は顔を引きつらせて呟く。
「・・・ひ、ひでぇ女・・・」
「サンソン、いまなにを言ったんだい? だいたい乙女の秘密の話を盗み聞きしてんじゃないよ! さ
っさと出て御行き!」
「とほほー・・・そりゃ〜無いですぜ・・・」
とぼとぼとサンソンは外に出て行く。グランディスはドアの鍵をかけて誰も入ってこないようにした。
「ごめんよ、邪魔が入ったね・・」
ナディアは申し訳なさそうに詫びるグランディスが自分の事を本当に心配してくれていると知った。
それがとても嬉しかった。そう思うと、すこしだけ心が軽くなったので話を続けることが出来た。
「でもジャンは全然話しかけてくれないわ」
「そりゃ、あんたがそんな風じゃ当たり前さね」
グランディスにはジャンのことを想いながらも相変わらず意固地なナディアが可愛くてしかたがなかっ
た。
自分の昔の姿がそこにあるような気がしたから・・・自分のありたかった姿がそこにあるような気がし
たから・・・
「さあ、ここからが難しいよ。あんたの言うとおりジャンは少しだけナディアから距離を置いているか
らね」
「・・・ぅぅ・・・・ヒ・・ヒック・・・」
娘は堪えきれず涙を零しはじめる。
「泣いてる暇なんてないよ。女が勝負をかける時なんだから!」
ナディアは唇を噛んで涙を懸命に抑える。
「うんっ!」
「良い返事だね。その意気でジャンを口説き落とすよ!」
ふたりは顔を見合わせてニッコリと笑う。
「でも・・・私どうすればいいのかな」
ナディアは瞳を少しだけ潤ませてグランディスの目を見る。
「あんたの今の感じは凄く良いわ。女が憂いってものが滲み出ている。女のあたしでもゾクゾクするく
らいにね」
「え・・・そうなんですか?」
そういってナディアは恥かしげに、でも嬉しそうに頬を染め、瞳をうつろわせた。
「もちろん。その雰囲気に少しだけ艶を足してジャンの所へ御行き。あとは自分の心に素直にいるんだ
ね。そうすれば必ず上手く行く筈よ」
「艶ってどうすればいいのかしら」
「簡単に言えば色気を出すのさ。ハスっぽいのはダメ。下品なのもダメ。微かに、でも確りと相手に伝
えることが大事なんだよ」
「そんなの如何したらいいのか分からない・・・」
グランディスはナディアを見つめる。
不安な面持ちで身を震わせ、少し俯いて身体に自分の腕をまわしている。
ソファーの端に座って好きな少年のことに思い悩む不器用な娘がいじらしく、そして愛しかった。
「仕方が無いね・・・少しだけ教えてあげる。こっちへおいで」
そういってナディアの背に腕を回し、軽く引き寄せる。
「・・・あっ・・・」
娘の身体がグランディスに包まれる。
穏やかな抱擁と肌から伝わる温もりは優しさと心地よさを少女に感じさせた。
そして少女の耳元に口を寄せ甘く囁く。
「ジャンとキスをしたそうね。どう、気持ちよかった?」
少女の身体がビクッと小さく跳ねる。
「あの子に抱きしめて貰ったかしら。たとえば、こんな風に」
ナディアの腰骨から背にそって軽く指を泳がす。
「・・・ぁぁ・・・」
うなじに唇を押しあて、舌で舐め上げる。
もう一方の手を膝から尻へ向けて這わせて行く。
ぶるっと少女の身体が震える。
女は少女の背にしっかりと腕を回す。
そして、ゆっくりとソファーに身体をあずける。
グランディスは体重を少しずつ少女にかけてゆく。
その重みの心地よさに少女は驚き、思わず女の背に自分の腕をまわしてしまう。
ナディアの身体が女の下で徐々に開かれていった。
グランディスは少女の瞳を見つめて呟く。
「ナディアは可愛いわ。こんなに可愛い娘に慕われるジャンが羨ましい・・・」
そして唇をあわせる。
初めは軽く、徐々に深く。
「はあっ!」
堪えきれずに娘が唇を離して喘ぐ。
すうっと脇から胸へ向けて手を這わせながら少女の唇を追う。
「・・・・だめよ、まだ許さない」
さらに深く、音が漏れるほどに唇を奪う。
指を膝から内股へすりあげる。
「んあぁぁ・・・・ぅぁっ・・・」
あわせた唇の合間から少女の溜息と喘ぎが溢れた。
娘の身体から少女の甘い匂いに成熟した女の匂いが混じる。
唇をナディアの首筋に寄せて舐め上げる。
少女の乳房を柔らかく捏ねる。
「はうっ・・・ああぁっ!」
娘の背が反り、身体を女から逃がそうと暴れた。
だがグランディスは娘を追うように、自身の身体を更に深く少女へ重ねてた・・・・・
ソファーの傍らでマリーは目を閉じて身を硬くする。
何の性知識も無く、あどけない心と身体をした幼子にとって、グランディスとナディアが睦みあう姿は
禁為以外の何ものでもなかった。
(見ちゃダメ! 聞いちゃダメ!)
身体を丸くして、じっと恐怖に耐えるマリー。
それでも何故か二人を嫌う気持ちにはなれなかった。
(ふたりのしてる事、きっと大切なことなんだ)
そんな風にも思えている自分が不思議だった。
だから薄く開いた瞳から、ふたりの情事を見つめ続ける・・・
惑い
(やだよ、肌が馴染むじゃないか。なんて相性が良いんだろう。それに可愛く喘いで・・・・あたし本気に
なりそうだよ)
少女の首筋に浮かぶ汗を舐めとるように、唇で刺激を与える。娘は震え、小さく跳ね、甘い溜息をつく。
グランディスはナディアの匂いに酔い始めていた。成熟とは程遠い乳房を手で絞るように寄せ、薄い布
地の上から乳首を摘む。
まだ薄い胸元に顔を埋め、娘の肌と匂いを楽しむ。より深い性の香りを求めて強く乳房を捏ねる。
「・・ぃゃ・・・いやぁ・・・だめぇ!」
少女は堪えきれず女の声を漏らす。そして脚を絡めて腰を浮かし、未だ幼い部分をグランディスに摺り
合わせた。
たどたどしく女の腰で自らの部分を慰める少女。
グランディスはふっと微笑み、身体をずらして太股を少女の場所にあわせる。
「ふうぅ・・・・・・・ん・・・」
女の身体が離れてしまい切なげに視線を彷徨わせたナディアだが、脚の間に太股が挿し入れられて安堵
し瞳を閉ざす。
そしてもぞもぞと腰を蠢かせ太股をより密着させた。
グランディスは少女の柔らかい部分が当っているのを確かめ、太股を摺り上げる。
くちゅっ
閉ざされていた陰唇がわずかに開き、あふれた液が下着を濡らした。
女は目を細めて娘を見おろすと、背を丸くして少女の唇に自分の唇を寄せてついばむ。
ついばんだ唇を舌でねぶり、甘く噛む。
ひとしきりナディアの唇を弄んだあとグランディスは少女の背に手を回しブラに沿ってつつっと指を運
び、ゆるゆると太股を揺らす。
「いけない子。こんなに濡らすなんて・・・」
娘は閉じていた目を大きく見開く。女は薄く笑うと視線を絡み合わせた。
「・・・それとも、これは違うのかい?」
女は太股を左右に揺らし娘の陰唇を開かせると、細かく震わせる。
ちゅっ、くちゅっ
ふたりの合わせた場所から淫らな水音が漏れる。
「ぅぁっ・・ぃゃぁ」
ナディアは小さく喘ぎ首を反らせた。
グランディスは無防備な首筋を舐め上げつつブラの紐をほどく。
少女の背をそっと押し上げると、心細げに宙を見つめながら娘は身体を僅かに浮かせた。
すうっとブラを引き抜いたあと、グランディスは顔を上げてナディアの瞳を見つめる。
「ナディア・・・本当に可愛い娘。あたしに全てを見せておくれ。あんたの全てを愛してあげたいから」
少女は女の背に回した手を解くと、グランディスの頬を両手で挟み引き寄せて、自ら女の唇を奪った。
娘の口付は技巧ではなく、女を求めるひたむきさで悦びを与える。
「・・ぁぁ・・ふぁっ・・」
はじめてグランディスが声をあげた。
ナディアは頬から手を離し女の熟れた乳房にあてると、柔らかく揉みしだく。
「・・・グランディスさんの全ても見たい。わたしも愛してあげたい・・・」
ちいさく細い声で囁く少女。
その瞳は潤み、あきらかに女のそれになっていた。
「・・・ええ、あたしを愛して。そして、あたしを深いところまで運んでおくれ」
ふたりは視線をあわせて微笑み、軽くキスを交わす。
グランディスは唇の愛撫を少女の胸に運びつつ、身に纏った衣装を緩める。
娘は与えられる快楽に耐えながらも女に手を貸して重みのある衣をといてゆく。
女の唇が乳房の頂に達する寸前、彼女は身を起こして赤い布を脱ぎ捨てた。
ナディアは期待した刺激が与えられなかったことに不満を感じながらも、下着姿になった女の肢体に目
を奪われる。
「綺麗・・・グランディスさん、とても綺麗」
女の身体は均整がとれていた。
白く熟れた乳房から細く締まる腰そして張り詰めた臀部に至る全てが、彼女が女として最も美しい頃合
だと告げていた。
みだれた髪をまとめて横に流した女は、後ろ手に下着の紐の結び目をほどくと再び娘に身体を重ねる。
「ナディア、あたしを脱がして」
グランディスの心地よい重みに酔いながらも、少女は女に腕を回して熟した果実の戒めを放とうと背を
探る。
しかし女の脚がやわやわと揺れ、あらわになった乳房に女の視線を感じ、心が乱れて手元がおぼつかな
い。
もどかしく感じた少女は背に回した腕に力をこめて女を強く抱きしめる。
女は力を抜いてナディアのするがままにした。
柔らかい身体が押し付けられ、どこか淫靡な香りと女の柔らかな重みが少女を蠱惑してゆく。
「ん・・・ふわぁ」
娘の口元から思わず溜息がこぼれた。
娘の溜息が耳朶にかかり、グランディスの官能を煽る。
それは母性と嗜虐心、相反した二つを刺激して女を挑発的にさせた。
唇を娘のうなじから耳元へ這わせる。
たどり着いた耳に吐息を吹きかけてから、貪るように咥えて嘗め尽くし、ささやく。
「ナディアを素肌で抱きしめたい。はやく脱がして・・・もっと感じさせて・・・」
ビクン!
少女の身体が大きく震え、女を強く抱きしめた。
だがグランディスは耳を強く噛んで娘を叱咤し、身に纏う戒めを解くよう強いる。
ナディアは陶然としながらも女の背をまさぐり、たどたどしく下着を緩める。
でも少女の手が進むたびに女は耳を嬲り、脚から脇を摺り上げる。娘はぶるぶると身を震わせた。
しかし手が疎かになると女は耳を強く噛み、少女の官能を冷ましてしまう。
ナディアは苦しくて、そして悲しくなった。
女の唇が欲しくて顔を寄せようとしても、濡れた場所を摺り上げられて引き剥がされる。
我を忘れてグランディスに抱かれたいのにそれを許されず、グランディスの唇に口付けて貪り貪られた
いのに拒まれてしまう。
快感に溺れることも出来ず只々弄ばれる少女。喘ぎとも泣き声ともつかない声が漏れる。
「ぅぅ・・ああっ!・・・やぁ・・・ふぁ・・もぉ、やめ・・ひぃっ・・ふぇ・・」
翻弄され続けるナディアは半ば泣きながらも、やっとのことで下着の紐を抜いた。
それを確かめると女は少女の髪を優しく撫でる。
「ありがとう、ナディア。辛かったかい? ごめんよ、許しておくれ・・・」
娘は顔をあげてグランディスの瞳を見つめる。
「ぅ・・うわあぁぁぁぁぁぁぁ・・・ぃゃぁ・・もぉ・・やだぁ・・・ふあぁぁぁぁ・・・」
涙の雫を落としながら女にしがみ付いて泣き声をあげる少女。
女は慈母のように優しく娘を見つめて微笑みを浮かべた。
やがて落ち着いた少女の頬を撫でながらグランディスは身体を起こす。
娘が見つめる中、下着を脱ぎ捨て素裸になると、ソファーに脚を揃えて座った。
「ナディア・・・ここへおいで」
そして娘の手を引いて膝の上へ横座りにのせる。
「グランディスさん・・・?」
娘は少し訝しく思いながら女の膝の上に座って瞳を覗き込む。
そんなナディアが愛しくて、グランディスは髪を撫でながら娘の服を脱がせた。
「恐かったかい?・・あんたが可愛いんで、つい無茶をしちゃったね」
女はソファーにもたれながら娘を引きよせ、熟れた乳房に娘の顔を抱きしめる。
「なぜだろうね、ナディア。あんたが愛おしい」
「・・・・」
「母親の気持ち・・とは違うね。妹、友人、恋人、あってるようで全部違っている。・・・ごめんよ、あん
たの気持ちも考えずにこんなこと言ってさ」
娘はグランディスの乳房に顔を埋めながら、ふるふると首を横に振った。
乳房に頬を摺り寄せるナディア。
母の記憶はなく、それに替わる人もいなかった。ましてやこんな風に自分を愛してくれる人など・・・・・
ジャンに対する想いとは別のところでグランディスが恋しい。
どことなく寂しさを漂わせているこの女性が愛しい。
このひとを愛してあげたい。
そんな想いがナディアの中で募った。
娘は少し顔を離すと、左の乳房の頂に唇を近づける。小さく舌を出して乳輪にそって舐め上げた。
右手を腰から乳房へ摺り上げると、グランディスが小さく喘いだ。
「・・ぁぁ・・」
それが嬉しくて、今度は脇から内股へと指を這わせる。
「んぅっ!・・・はぁぁ・・」
小さく身体が揺れて、溜息が漏れた。
女の喘ぎが、そして甘い溜息が聞きたくて感じる場所を探しながら何度も手を、そして指を這わせてゆ
く。
頬で乳房に愛撫をくわえ、舌で舐め上げ、唇で吸いあげる。
「んふっ・・ぁぁぅ・・・あっ! そこ・・・」
次第にグランディスの息が荒くなり、唇から漏れる喘ぎは艶がこもり始めていた。
女の甘い吐息を感じながら乳房に頬を寄せると、何故かナディア自身も陶然とした気持ちになる。
それをもっと感じたくてグランディスの下に指を運び、おずおずと恥毛を分けて女の部分に触れた。
少し開いていた場所に指を当てながら摺り下げる。同時に唇を乳房の頂につけて吸う。
「ぅぁ・・待って、ナディア・・」
ぶるっとグランディスの身体が震え、娘が弄ぶ乳房もそれにつれて、ぶるっと揺れる。
その拍子に乳首を深く咥えてしまい、少し開いていた口元でぷくりとしたそれを軽く噛み締めてしまう。
さらに女の部分の敏感な突起に指が擦れ、包皮と共に捏ねあげていた。
ビクン!
女の身体が跳ねる。
首を後ろに反らせたかと思えば、すぐに顎を引いて何かに耐えるような仕草で唇を引き結ぶ。
だが、よせる快楽は唇から喘ぎ声をあげさせた。
「あぁぁぁぁぁぁぁ・・」
女は声を絞ろうとナディアの首筋に顔を埋める。だがそれは自らの痴態を再確認させてしまう。
愛しく思う娘にもてあそばれている。
そんな背徳心をともなう愛おしさが、グランディスを技巧ではなく愛情ゆえに小さな頂へたどり着かせ
る。
「くぅっ・・はぁ、はぁ・・・・あっ・・んぁぁああっ!」
ビクン、ビクンっ!
女は可愛いくおもう少女を、きゅっと抱きしめる。
そして身体中へ甘い震えが広がり、女を僅かな間弛緩させた。
「グランディスさん、グランディスさんっ!」
ぷるぷると震えるグランディスにナディアが声をかける。
やがて女の震えが小さくなり、詰まっていた息も荒く戻ってきた。
女の身に何事が起こったのかを知らない少女は、頂を降りつつある身体に強く抱きつくほか術をしらな
い。
グランディスは娘の心地よい素肌に身を任せていた。
・
・
数分の後、息を整えたグランディスはナディアの唇をたっぷりと貪ってから愚痴をこぼす。
「何て事をするんだろうね、この子は」
そう言いながらも女はクスクス笑っている。
ナディアは何が起こったのか理解できずにキョトンとしていた。
「いまのはね、女が愛しい人に求められて達するってことなのさ」
グランディスは少女の耳元でそう呟くと、小さくキスをした。
「・・・ええっ!」
ぱあっと、ナディアの身体が紅く染まってゆく。
そんな様子が可愛くて、ふふっと微笑みながら膝の上に座る娘の乳房を撫でる。
「やん・・もぉ、きらいっ! ねぇ、グランディスさん・・・それって、どんな感じなの?」
少女は恥かしさに身を小さくしながらも女に問いかける。
やさしく抱きしめてからナディアの身体を起こす。
未だ小さな胸のふくらみ。そのうえに、ちょこんと身を硬くしている淡い色。
グランディスは、それを唇に含む。
「あっ」
ピクンと薄い乳房が揺れる。女はもう一度乳首をついばみ、ささやく。
「ふふっ・・・これから教えてあげる」
それだけのことでナディアの身体は揺れてしまう。吐息は熱く、肌はしっとりと潤いを帯びている。
グランディスは回りくどい愛撫を避けて感じやすいところに左手を這わした。
つつっと指を運ぶ。内腿から薄い布に包まれた小さな丘へ。
右手を臀部にあて、ゆっくりと撫で、やわらかく揉む。
ビクっ
少女の脚が跳ね上がる。だが直ぐにぐったりと力を失い、女にもたれかかる。
すこし強く太股から尻を摺り上げ揉みしだくと、ナディアは息を荒くして女の唇を求めてきた。
「ん・・・ぐぅ・・くちゅ・・はぁぁ・・」
重ねた唇の合い間から、喘ぎと水音が混ざり漏れ聞こえる。
娘は恥じらいながらも貪欲に女と舌を絡めた。
グランディスは少女の丘へあてた指を少しずつ蠢かす。左右に押し開いても直ぐに閉じるそこは、確か
に濡れていた。
女は頃合と思い、娘のショーツに指をかけて、そっと降ろしてゆく。
「あっ・・・だめぇ!」
少女は手を下半身に動かして下着を取ろうとする女の手を押し留めた。
「お願い・・・そこは身体を拭いてから・・・・」
娘は視線を彷徨わせて恥じらう。
グランディスは少女に口付けながら、肉付きの薄い双丘を撫であげた。
「そうね・・・あたしがきれいにしてあげる」
ナディアは顔を真っ赤に染めながらも、グランディスにキュッと抱きつく。
女は娘の顎に指をかけ、顔をあげさせてもう一度深く唇を吸うと、立ち上がって娘の手を引き、浴室に
いざなう。
少女は小さく頷いて、女のあとを追っていった。
・
・
・
「・・・・」
ソファーの脇で身を硬くしていたマリーは身体を起こして首を左右に振る。
顔を紅く染め、腕を自分の身体にまわし、もじもじと身をまさぐる。
しょざい無さげに視線を宙に浮かべ、なにかを求めるように脚を、脇腹を、胸を撫でる。
だが求めるものが見つからず、身体を丸くして耐えるマリー。
唇を噛み締めて求めるものを探す。
やがて幼い娘はサンソンが外に出たドアを見つける。
マリーは立ち上がるとそっとドアに向かい、音を立てずに扉を開き外へ出て行く。
扉が外から静かに閉められると、部屋には束の間の静寂が訪れた。
サンソンを求めてグラタンを彷徨うマリー。
エンジンルームではハンソンとジャンが忙しく働いていた。
開け放たれたハッチの上には誰もいない。
マリーはグラタン上部のデッキを目指した。
機体の脇に取り付けられたステップを風に飛ばされまいと、しがみ付きながら登る。
スカートがはためき、投げ出されそうになる小さな身体。それでもサンソンの姿を求めてデッキを目指
す。
でも手が痺れてきたのかマリーの身体が大きく揺れる。
慌てて踏みしめたステップを滑らせて外し、下半身が風に流されてしまう。
「助けて、サンソンーっ!!」
助けを求めて声を限りに叫ぶマリー。幼い叫びがデッキにいたサンソンに届いた。
「マリー!!」
彼は半ば風に飛ばされているマリーに気付く。そして駆け下りるが如くステップを降りる。
マリーの左手が滑りステップから外れた。このままでは彼女を繋ぎ止めている右手も直ぐに離れてしま
うだろう。
「もうだめぇ、飛ばされちゃう!」
今にも離れてしまいそうなマリーの右手。掌が開きステップから離れる寸前、サンソンが手を掴み小さ
な体を引き寄せた。
「サンソン、サンソン、サンソン・・・ぅぁぁああああっ」
マリーは彼にしがみ付き、彼の名を呼びながら、ぽろぽろと涙を零す。
サンソンはマリーを連れてデッキに上がり、彼女を胸に抱きしめる。
「大丈夫、もう大丈夫だよ。オレが付いてるだろ。恐くない、もう恐くないよ、マリー」
彼はマリーの髪を撫で、背をぽんぽんと軽く叩いた。
おずおずと目を開き、あたりを確かめるマリー。
やがて落ち着きを取り戻すと、サンソンの胸に頬をこすりつける。
「恐かった、恐かったよぉ・・ヒック・・ぅぅ・・・」
安堵したマリーは恐ろしさが蘇えったのか、再びしゃくり上げた。
「ああ、泣かないでくれマリー。もう心配要らないよ、恐いことなんて何も無いんだ。オレがマリーを
守るから・・・だから泣き止んでくれ」
サンソンはさらに高くマリーを抱き上げ、マリーの頬に自分の頬をよせる。
いつの間にか彼の中に芽生えたマリーに対する父性。それは我が身に変えてもこの娘を守りきると彼に
誓わせていた。
彼の思いはマリーはナディアやジャンからでは決して得られない安らぎを感じさせている。
「・・サンソン・・」
小さく彼の名を呟いたあと上半身を反らせて体を離す。
マリーはサンソンを見つめると彼の頬を幼い両手で挟む。そして、彼をクッと引き寄せてキスをした。
マリーがサンソンにキスをしたのは、彼を喜ばせたかったからだ。
彼を自分に引き付けておきたい。離したくない。
父と母を失った幼子の本能にも近い渇望だった。
その方法は最悪だとしても。
突然のことにキョトンとするサンソン。
そんな様子が可笑しくって、もう一度彼にキスをする。
・・・・ちなみに今度は口を開いていた。
小さな唇でポカンと開いたサンソンの唇を愛撫する。
どうすれば良いのか分からないので、グランディスの真似をして舌を出して舐めてみた。
唇、歯、歯茎、唇の裏など、思いつく限りの場所を舐め尽くす。
サンソンはパニックに陥り、ずるずるとデッキに腰を降ろしてしまった。
身体に回された腕がほどけたマリーは立ち上がってサンソンの首に唇を這わせながら考える。
(えっと・・・グランディスさん、つぎはどうしてたかな?)
自分がとんでもない事をしているとも知らず、それ以上にとんでもない事を考えながらマリーはサンソンのネクタイを解く。
ぎこちない手つきでサンソンのシャツのボタンを外す。
(ボタンってだいっきらい! うまくできないんだもん)
考えていることは実に年相応なのだが、やっている事は実にとんでもない。
マリーは上から四つのボタンを何とか外した。そしてシャツを開きサンソンの胸に唇を近づける。
ちゅっ
音を立てて彼の胸を吸った。
ちゅっ、くちゅっ、っっじゅっ・・・
マリーはサンソンの胸にキスを繰り返し、時に舌を這わせる。
そのくすぐったさにサンソンは我に返った。
「・・・・っ!! マリー、止めるんだ!」
ビクンっ
幼子は彼の胸に唇を押し付けたまま固まる。
マリーは涙目になりながらサンソンを見上げた。
(サンソンおこってる! なんで? どうして? ナディアもグランディスさんもよろこんでたのに)
シャツを握りしめながら、うるうると瞳を濡らしてサンソンを見上げるマリー。
怒る気も失せてマリー頭をグリグリと撫でる。
幼子は彼の様子から、何か違うと考えるに至った。
(キスじゃだめ? じゃあ、どおするとサンソンうれしい?・・・・あっ、そっかぁ。あのときナディアも
グランディスさんもハダカだったもん。ふくをぬがなくちゃだめなんだぁ)
今度こそ喜んでくれる! マリーは得意げにサンソンを見つめた。
「サンソン〜・・・えへへ〜」
にへらっと笑い、マリーは彼の顔を小さな手のひらでビタビタと叩くと、おもむろに身を翻し服に手を
かけてズボッと脱ぐ。
呆気にとられるサンソン。
ちなみにマリーのストリップを、『まるでトウモロコシが自分で皮を剥いてるみたいだ』、とか考えて
いた。
上着に続いて下着に手をかけるマリー。でも下着のボタンを外すのに手間取っている。
茫然自失、真っ只中のサンソン。
ちなみにマリーのストリップを、『そうそう、トウモロコシの中の繊維って剥き辛いんだよなぁ』、と
か考えていた。
たっぷり10分かけて一糸纏わぬ姿になったマリー。
くるりと振り向くと、ニコッと笑みを浮かべる。
そして両手を広げると、
「サンソンー!」
と大きな声で叫び、彼の首にむしゃぶりついた。
サンソンは毒気を抜かれて怒る気にもなれない。
デッキに座り込んで縋りつくマリーに手を回し、幼すぎる裸体を抱きしめる。
(よかった〜、サンソンよろこんでる。うん、あたしもうれしい)
満面の笑顔で頬擦りしたあと、幼子はチュッと口付けた。
さらに、小さな手で彼のあちらこちらをまさぐり始める。
顔を歪めて憤るサンソン。それでも、彼には幼い娘を叱責できなかった。
何とか心を落ち着かせながら、マリーに問う。
「何処でこんなことを覚えたんだ?」
幼女はぺたぺたと体に触りながら、あっけらかんと答える。
「さっきナディアとグランディスさんがしてた」
「トホホ〜っ!」
サンソンはガックリとうな垂れた。
「姐さん、そりゃ〜ありやせんぜ・・・・・・・」
小さく首を振り続けるサンソン。
そんな様子を見てムッとしたマリーは彼の首に噛み付いた。
「イテっイタタタタっ、何をするんだマリー!」
「グランディスさんのこと考えちゃイヤっ!」
「はぁ?」
サンソンはマリーを見つめた。
幼子はシャツを握りしめ、顔を真っ赤にして震えている。
「サンソン、あたしを守ってくれるんだもん。あたしを助けてくれるんだもん。グランディスさんのこ
と気にしちゃダメぇ!」
もう一度マリーを見る。幼女は体を赤くして、全身で訴えている。
サンソンはあたしのだ、と。
マリーはまだ四歳。目前で両親を殺されてまだ数ヶ月しか経っていない。母親の優しさと父親の温もり
が恋しいだろう。
それなのにじっと耐えている。思えば異常なまでに聞き分けの良い娘だ。
でも、それは大人達の中で邪魔にならないよう自分を押さえていたに過ぎない。
嫌われないように、捨てられないように。
「そうか・・・そうだったな、マリー」
サンソンは幼女の髪を撫でた。愛よりも父性を選んだ瞬間である。
頭を撫でられたマリーは安堵と共に嬉しさが募った。部屋の中で自分が何を求めていたのか気付いた。
だから、もう一度サンソンに飛びついて思いっきり唇を吸う。
「○×△?*!〜〜〜っ」
口を塞がれているので声にならない悲鳴を彼は漏らした。
たっぷり数十秒サンソンの唇を吸い尽くし、マリーは離れる。
「「ぷはっ」」
ふたりの唇の間で唾液の糸が光る。およそ四歳児との間で成す所業ではない。
精も根も尽き果てたような表情でサンソンは呻く。
「マリー、もうこんなことしちゃあダメだ・・・」
「なんで?」
心底わけが分からないって感じでマリーが聞いてきた。
「はしたないからだ!」
「はしたないって何?」
暫し考慮の末サンソンは答える。
「慎みが無いってことだ!」
「つつしみがないって何?」
熟慮の末にサンソンが答える。
「身持ちが悪いって事だ!」
「みもちがわるいって何?」
迷いに迷った末、サンソンは答える。
「姐さんみたいなことだっ!」
「・・・・・・・・・それはイヤ・・・」
マリーは理解を示した。
サンソンは何かを完全に失う。
その後マリーとサンソンは話し合い、裸にならない、人前ではキスしない、舌は入れない、という条件
で交渉が成立した。
彼はマリー限定のペドフィリアになった・・・・・
そのころ浴室ではグランディスとナディアはひとつに重なりながら緩やかに揺れていた。
女は湿らせた布でゆっくりと娘の肌を清めながらも、あいた手と唇で少女を責め続ける。
そして少女を絶え間なく喘がせ、雫を溢れさせ、身を震わせ、跳ねさせていた。
ナディアの肌はまだまだ冷めようとしない。
グランディスの中に灯った炎も消えようとしなかった
飛行中のカトリーヌ(通称グラタン)はそれ程多くの水を蓄えているわけではない。
その水にしてもエンジンの冷却水を補充するための貴重なもの。湯船に水を張るのはもとよりシャワー
ですらもってのほか。
だから飛行中はエンジンの余熱で蒸気を浴室に充満させるスチームバスをその代用としている。
浴室に入ってきた女の白く細い腕が戸棚から小さなガラスびんを取り出す。
そして蓋を開け、中の液体を数滴零した。
衒い
ナディアは女の身体へたどたどしく指を這わせていた。
グランディスはこれから交わす行為でのぼせない様に蒸気の量を少なく調整しつつ、ぶるっと身体を震
わせる。
(肌が熱い・・・この娘が触れているだけで登りつめてしまいそう)
少女の呼び起こした官能を、そして少女に晒してしまった嬌態を思い出し頬を染める。あたりに漂う香
りが更に肌を熱くさせる。
女は火照りを隠すことなく少女の目前に立つ。娘の視線が乳房から這うように降りてゆく。
それすらも悦びに変えながらナディアの頬に両手を添える。そして首筋から肩へ、さらに脇から腰へと
手を蠢かす。
「ふぁっ・・・・あっ・・・ぁぁ・・・・」
少女を翻弄しつつも、初々しい喘ぎ声と切ない溜息を楽しむ。
やがて指は最後の薄布に辿りつく。
ピクン
グランディスの指が少しだけショーツを降ろしたとき、ナディアは身体を小さく震えさせた。
脱がされる。
全てを見られてしまう。
そして求められる。ずっと隠していたところを愛されてしまう。
恥かしくて、身を小さく閉ざしてしまいたい。
でも甘い痺れのようなものが腰のあたりから広がり、背筋を伝う。
もどかしい想いが何かを欲している。
このひとに見てほしい。愛してもらいたい。
「はやく・・・して・・」
我知らずナディアはそう呟いていた。
グランディスはショーツのゴムを軽く引いてから放す。
ショーツが小さな音を立ててナディアを打つ。
ゴムが叩いたところを、白い指が這うようになぞる。
「・・・ほしいのかい?」
女の囁きに少女は顔を上げる。
「いやあっ!」
娘は小さく叫び、そしてふるふると首をふる。
・・・ふふっ・・・
女は微笑みながら娘の前で腰を屈め、そして膝立ちになって少女を見上げた。
「いま脱がせてあげる」
ナディアはもじもじと内腿を摺り合わせ、下腹部に手を置き、そしてコクンと頷いた。
グランディスはゆっくりと両手でショーツを降ろす。
未だ薄い陰り。
閉ざされた薄い丘。
羞恥に震える内腿。
「・・・ぅぁ・・・」
見られている。すべてが露になっている。恥かしさのあまりナディアは両手で顔を覆い隠した。
女は震える内腿に唇を付け舐めあげて行く。そして娘の薄い丘に頬を寄せた。
「ああっ!」
少女の手が女の髪に触れて、押し留めようとする。
だが、それを許さず娘の腰に手を回して更に引き寄せながら、淡い陰りとふくらみを頬で摺る。
・・ふぅ、とグランディスは溜息をつく。
瞳を閉じ、満たされた面持ちで娘の密やかなところを楽しむ。
香料の微かな香りにナディアの女の匂いが重なる。
今すぐこの娘を滅茶苦茶にしてしまいたい。
グランディスは自分の落とした香料とナディアの匂いに酔っていた。
両手を娘の腰から尻にさげ、強く揉みあげる。
「ふぁっ!」
少女から短い悲鳴があがる。
女は娘の閉じた丘を割って唇を付けた。
「ダメ・・・ダメっ・・・・いやぁ!」
そう叫んであばれる娘。だが尻にまわされた手を振りはらうことは出来なかった。
グランディスは包皮につつまれた小さな突起をかるく嬲り、唇を少しずつ下げてゆく。
女の唇が蠢くたびにナディアは尻を捩り、身を震わせ、細く高い喘ぎをあげる。
唇が薄い内側の襞をゆっくりと伝い降りる。
襞の形を確かめるようになぞると、ぷるっと双丘が震え、少女の身体が揺れた。
唇が閉ざされた窪みに達する。
そこを吸い上げる。
「んぁっ・・・ひっ・・ぁぁぁ・・」
娘の身体が跳ね、トロっとそこが溢れる。
いつの間にかナディアの手は女の髪をかき乱していた。
唇の触れている部分が疼く。
トクン
その場所の中が脈打つように振れる。
いままで意識したことが無い部分。
身体の奥底に何かがある。そこが濡れてゆく。溢れてゆく。
溢れるところが疼き、それが腰へ、そして背筋を辿り全身へと広がる。
甘い痺れが背筋に生まれ、それが腰へと戻り、娘の内側を満たす。
ナディアはそのとき、それが快感なのだと知った。
女の髪にあてた手に力が込もり、グランディスを自身に強く押し付ける。
「くぅっ・・ふぁぁぁ・・・」
がくがくと膝が震えて立っていられない。
娘は女を抱きしめながら、床に座り込んだ。
呼吸を荒くしながらもナディアはグランディスの唇を吸う。
その唇が自身の女の場所を愛撫していたことなど関係なく、女の唇と舌を貪りたかった。
・・くちゅっ、じゅっ、っっじゅくっ・・・
淫らな水音が浴室に響いた。
やがて唇を離すと、娘は女にしがみつき囁く。
「・・わたしの身体の中に何かがあるの。そこが熱くなって、疼いて・・・グランディスさんが欲しくって
・・・」
そういうと、恥かしげに身を竦めて女の乳房に顔を埋める。
(あぁ・・・この娘がどうしようもなく愛おしい。この子の全てをあたしのものにしたい・・)
少女の髪に顔を埋めながら、グランディスはそんな衝動に身を任せようとしていた。
それでも何とか自制して少女の髪から顔をあげる。
「ナディア、それはお前が女だって証。女はね、心と身体の奥で・・・ここでも愛しい人を求めるんだよ」
女は少女の下腹部にそっと手をあてた。
ぶるっと娘の尻が震え、ふぁ・・と熱い吐息をつく。
「さぁナディア、身体を拭こうね」
娘を軽く抱きしめてから一旦身を離す。
ショーツが膝のところに留まっていた。
グランディスは娘を前屈みにすると、床に手を付けさせて少女の足元から薄布を抜く。
尻があがり、その部分が露になる姿勢に気付くナディア。
「やんっ!」と小さく悲鳴をあげて尻を振った。
そんな娘に手を回しながら、湯桶を拾い上げて湯を満たす。
浴室のタイルを湯で打ち清め、ナディアを清めた場所に座らせた。
少女は女に背を向け、膝を閉じて脛を八の字に開き、お尻をペタンとタイルに付けている。
グランディスはもう一度湯桶に湯を満たす。
その中で柔らかな厚手の布を濯いで軽く絞るとナディアのうなじから拭き清め始めた。
少女は薄くかいた汗を拭う布と、肌を這うグランディスの手に身を任せていた。
ゆるゆると厚い布地が身体を清めてゆく。
そして女の手が柔らかく乳房を捏ねる。時折指がその頂を摘まみあげる。
まさぐられている筈なのに、何故か心地よく安らぐ。
(さっきまで、あんなに乱れてしまっていたのに・・・今はこんなに落ち着いていられる。・・不思議ね・・)
もちろんナディアの身体は今だ疼いている。
でも、ほのかに漂う香りと穏やかな蒸気に包まれていると、素直にグランディスの愛撫を受け入れられ
た。
女が浴室におとした雫は、没薬、桂皮、沈香から抽出した香料。(旧約聖書の時代から言い伝えられる
媚薬)
それは気分を落ち着かせ、少しだけ開放的な心持ちにさせる。
ふたりは、その香りに包まれながら愛を交わす。
「・・あぁ・・・っっ!・・・ふあぁぁ・・・」
脇腹を布で拭われながら、乳房を強く揉みしだかれた。
ビクン、とナディアが跳ねる。
「そう・・これが良いのかい?」
ふふっとグランディスが笑う。
ふたりの身体が重なり、緩やかに揺れる。
「・・ぅぁ・・ぃぃ・・・きもちいいの・・」
娘は再び小さく喘ぎ、淡くもやったところの下を溢れさせ、濡らしてゆく。
うしろから女に抱かれながら、少女の官能はゆっくりと高まって行った。
居間へと続く扉の外で小さな呻き声があがる。
しかし重なり合うふたりに、その声は届かなかった。
・
・
・
「サンソン、なんだか変なの」
幼女の脱いだ下着を慣れない手付きで着せる途中、マリーはうわ言のように呟いた。
1000m近くの高度を保ちつつ順調に飛行を続けるカトリーヌ(通称グラタン)の上部デッキは吹き
付ける風もあいまって寒い。
そこで裸になれば大人でも直ぐに身体の芯まで冷え切ってしまうだろう。
ましてや小さなマリーが長い間なにも身に纏っていなかったのだ。結果は考えるまでもなく知れている。
案の定、幼い娘は身を震わせ始める。歯の根は合っておらず、唇も色を失いかけていた。
急いで幼子が脱いだ服と自分の上着を彼女の背にかけ、小さな身体を抱きしめる。
「・・・あったかぁい」
嬉しそうに男の胸へと身を委ねるマリー。
だが低温に長時間さらされて感覚がずれてしまっているから、そう感じているに過ぎない。
もっとマリーを暖める必要がある。幼児には低温に耐えられるような体力が無い。
最悪、心停止に至ることすらあるのだ。
サンソンは内心の焦りを隠して幼い娘に語りかける。
「マリー、少しの間だけここで我慢しているんだ。すぐに暖かくしてやるから何処へも動かずに待って
いるんだぞ」
幼女はコクンと頷いた。
野暮は承知した上でサンソンはデッキ下の操縦室兼居間へ降りて毛布をかき集めることにした。
足元にある潜水艦と同じ仕組みの厳重なハッチを開けて中に潜り込む。
だが室内には誰も居なかった。
覚悟していたグランディスの怒声もナディアの悲鳴も無い。
ふぅ、と一つ溜息をついてから毛布を探す。ソファーの傍らで眠るキングから毛布を奪い取る。それで
もキングは眠り続けた。
安穏と惰眠を貪る仔ライオンを叩き起こしたくなるが、なんとか八つ当たりを抑えて収納から毛布を3
枚引き出す。
目的を終えてデッキに上がろうとしたとき、浴室に続くドアから微かに聞こえるくぐもった喘ぎ声に気
付いた。
(・・・ぁ・・・・っっ!・・・・・ぅぁぁ・・)
ナディアのものであろう細く高い声。
視線を宙に浮かべ、奥歯を噛み締めてサンソンは耐える。
(・・そう・・これがいいのかい・・・・ふふっ・・・)
艶めかしいアルトが喘ぎ声に混ざり漏れ聞こえてきた。
ふと目に付いたソファーには、グランディスとナディアの服と下着がしどけなく脱ぎ散らかしてあった。
彼は顎を引いて目を閉じ、眉間に皺を寄せて閉じた瞼に力を込める。
毛布を抱いた両手が震えぬよう、身を固くして拳を握り締める。
「ぐぅぅぅぅ・・・がぁっ!」
まるで手負いの獣のような唸り声を小さくあげて、何かを切り捨てるように身を返した。
そしてデッキへ繋がるハッチを開ける。
だが、こんな殺気立った状態で幼い娘に会えば脅えさせてしまうだろう。
ガツンッ!
サンソンは開け放った重いハッチに思い切り頭をぶつけてからマリーの元へ戻った。
「待たせたな、マリー。直ぐあったかくしてやるからな」
凍えた身体を温めるには直接肌を合わせるのが一番良い。
彼はシャツを脱いで上半身裸になると、苦労して着せたマリーの下着を脱がせて再び素裸にした。
そして自分の背中に毛布を一枚かけると、残りを幼女の頭から被せる。
「これで良し。さあ、こっちへ来るんだマリー」
だがマリーは嫌がって近づこうとしない。それどころか裸のままで後づさって行く。
「やだ・・・サンソンなんだか恐い。まだマリーのこと怒ってるよぉ・・」
消え入るような脅えた声だ。
幼い娘はデッキの隅までさがり、身をすくめて叱られた子供のように上目遣いで彼を見ていた。
「あぁ、さっきハッチに思いっきり頭をぶつけちまってな。なんだかクラクラするんだ。マリー、ちょ
っと見てくれないか?」
とたんにマリーは心配そうな表情に変わり、サンソンに近づいて彼の頭を撫でる。
「すごく大きなタンコブがある!」
彼は顔をしかめて痛みに耐えるふりをした。
「ちくしょう、酷く痛むぜ。それに寒い。マリー、暖めてくれないか? そうすれば良くなると思うん
だ」
マリーは泣きながら毛布を被って彼の懐に縋りついた。
「お願い、元気になって・・・ぅぅ・・パパやママみたいに冷たくならないでぇ・・・」
そして涙でクシャクシャにした顔を毛布から出して彼を見上げる。
幼子は母の身体に隠されることでネオアトランティスの凶弾を免れていた。だが、その代償として両親
は亡き人となった。
幼い娘は両親の死を『冷たくなってゆく身体』としてとらえていた。
サンソンはそれを思い出す。
(なんてドジな真似を。思い出させちまったじゃねぇか!)
己の迂闊さに内心で毒づきながらも無理に笑顔を作って答える。
「ああ、マリーはあったかいな。こうしていると直ぐに良くなりそうだ」
「ほんと? じゃあ、ずうっとこうしてる!」
彼の胸に頬をつけて、渾身の力を込めて縋りつくマリー。
サンソンはずり落ちそうな毛布をもう一度頭から掛け直し、娘のまだまだ冷たい素裸の体を軽く抱きし
める。
腕の中の小さな身体も一生懸命に手を広げて大きな身体を抱きしめていた。
彼はくすぐったい様な切ないような、不思議な気持ちになる。
殺伐としていた心が何故か満たされてゆく。
サンソンはポコっと腹の上で膨らむ毛布を見つめた。
毛布に包まれながら自分にすがり付く小さな手、小さな足、小さな体。
その全てが言いようも無いほど彼の中で大きくなって行く。
今なら叶う事の無いであろう恋心にけりが付けられると思った。
(こんな失恋の仕方も良いのかも知れない)
男の険しかった表情が柔らかいそれに変わる。
少しずつ暖かくなるマリーの体温を感じながら、腕の中の小さな体を悪戯っぽく揺すり立てた。
ゆらゆら揺すられて不安を感じた幼子はモゾモゾと毛布から頭を出す。
おずおずと顔を上げると、そこには優しい微笑みがあった。
「サンソン! もう痛くない? 苦しくない?」
娘は懇願するかのように問いかける。
「ああ。マリーがあっためてくれたから、すぐに直ったよ」
ぱあっと笑顔になるマリー。
だが彼の顔を見つめるとなぜか涙ぐむ。そして毛布を被り直すと再びサンソンにしがみ付いた。
「もっともっと、あったかくしなくちゃダメ!」
「どうして?」
毛布の中の幼子は精一杯の力で彼を抱きしめる。
「サンソンまだ痛そうだもん。だから、もっとあったかくするの!」
「・・・マリー・・・」
幼子の汗が感じられる。
細い腕が力の込めすぎでふるふると震えている。
彼は毛布の上から小さな身体をゆっくり撫でると、毛布ごと肩口まで持ち上げた。
「マリーの言うとおりまだ少し痛いけど大丈夫。こうしていると、どんどん良くなってくるんだ」
彼を抱きしめる腕や脚からゆっくりと力が抜けると、体温を確かめるように毛布の中で男の胸に頬擦り
する。
「ほんとにだいじょうぶ? ぜったい冷たくならない?」
サンソンはクシャっと表情を歪ませた。
「あたりまえだ!マリーをひとりっきりになんか・・出来るかよ・・・ぅぅっ・・」
彼は不覚にも涙腺を緩ませている。
それを隠すために幼子の首とおぼしき場所へと顔を埋めた。
「うぎゅっ・・サンソン、苦しいよぉ」
いつの間にかマリーを抱く手に力が入ってしまった。
腕の中で小さな手足がぱたぱたと暴れる。
彼は慌てて力を抜くと、そっけなく幼子に話しかけた。
「お・・・おう、悪かったな。痛みは大分引いたぜ。マリーのおかげだな」
再び腕の中で小さな手足が暴れたかと思ったら、ヒョコっと幼子が毛布から顔を出した。
じっとサンソンを見つめるマリー。
そして満面の笑顔を浮かべて彼の首にしがみつく。
「サンソン、もういいの? よかったぁ」
その拍子にマリーの肩から毛布がずり落ちる。
彼は幼子の肩に毛布を掛けながら、お尻に手を当てて、「ヨイショっ!」と抱き上げた。
幼女は男の首に回した手を伸ばし、彼の顔を真正面から覗き込む。
「しつれいねっ。あたし、そんなに重くないわよ!」
ぷくっと頬を膨らませて、生意気にも大人の女のような憎まれ口をたたくマリー。
すっかり温まった小さな体。ピンク色に染めた幼い笑顔。
もう大丈夫だな。このまま懐炉みたいにあったかい娘を抱きしめていよう。
サンソンは苦笑しながらも、嬉しそうにマリーを揺らす。
「ふんっ! そんな台詞は10年早いんだよ。そういうのはレディーになってから、ほざくもんだぜ」
すると幼い娘は真剣な表情になり、彼の顔を引き寄せる。
そのまま、じっと彼の目を見つめ続ける。
「どうした? そんなに見られちゃあ、照れるだろ」
彼はすこし心配になり、軽口を叩きつつ娘の表情を探った。
突然小さな腕が震え始める。見開いた瞳がウルウルと潤む。
そして幼女は彼に口付けをした。
もうしないと約束した筈の舌を絡める口付け。
それなのにマリーは強引に舌を差し入れてきた。
彼は身を引き剥がそうと腕に力を入れる。
それでも幼女は首に回した腕を絶対に離そうとせず、頑なに深い口付けを続けた。
薄く瞼を開けて娘の瞳を見る。
きゅっと閉じられた瞳からは涙が零れていた。
やがて幼子は合わせていた唇が離した。瞳からは止め処なく涙が溢れている。
「じゃあ、ずっと一緒にいてくれるの? 10ねんご、れでぃーになるまで、ずうっとあたしと一緒に
いてくれるの?」
マリーはサンソンに問うている。
一緒に暮らしてくれるの?・・・と。
しかし、それは懇願だった。
娘の全てを賭けた、精一杯のお願いだった。
とても前を向いていられない。
サンソンは俯き、顔をクシャクシャにして涙を零す。
堪えきれなくなって嗚咽を漏らしてしまう。
「・・マリー・・っうぅ・・・お前、そんなに・・くぅっ・・・・」
幼子を抱きしめ、娘の首筋に雫をこぼし続ける。
マリーはそれを否定と受けとめた。
一緒に暮らしてくれない。幼子はそう思った。
「なんでダメなのよ! どうして一緒じゃいけないの! どおして・・どおしてなのよぉ!」
こぶしを丸めて、ぽかぽかとサンソンの頭を叩く。
足をばたばたさせて、胸をける。体を捩って自分の胴回りもありそうな腕から逃れようとする。
でも彼は絶対にマリーを放そうとしなかった。
強く幼子を抱きしめたまま、その首筋を濡らしてゆく。
マリーはサンソンの髪を力一杯掴んで叫んだ。
「やだぁ! ずうっと、あたしと、一緒にいてぇー!」
とうに毛布は滑り落ちていた。
半裸の男は、素裸の泣きじゃくる幼児を抱きしめて涙を零し続けている。
やがて幼子はおとなしくなった。
「サンソン・・・ふぇ・・サンソン・・ぅぁぁ・・」
しゃくりあげながら小さい声で男の名前を呼び続けた。
「・・・ああ、一緒に暮らそう。ずっとマリーと一緒だからな。嫌だって言っても、もう遅いんだぞ」
濡れた目尻を拭おうともせず、サンソンは顔を上げて呟いた。
・
・
マリーは涙と鼻水で顔をくちゃくちゃにしながらサンソンを見つめる。
「ほんと?」
「・・・本当だ」
ずずっと鼻をすすり上げてから、サンソンの髪を握り直す。
「ぜったい?」
「・・・絶対だ。逃げるんじゃねぇぞ」
小さな手がキュッとサンソンの頭を抱きしめる。
涙と鼻水が彼の髪に染みて行く。
そんな事には御構いなしに、ゴツイ腕が小さな体を撫でる。
「うん・・うん!」
マリーはサンソンの髪に顔を埋めた。
・・・クチュン!
幼子がひとつ、くしゃみをした。
サンソンの髪はマリーの涙と鼻水でベトベトになった。
「マリー、お前なんて事するんだ!」
「しょうがないもん!」
ふたりは毛布を被りながら睨みあう。
「しょうがないもん・・じゃあ、ねーだろうが! 見ろよ、この頭!」
「だって寒かったんだもん!」
「「うぅ〜〜〜っ!」」
睨み合いが続く。
サンソンはニヤリと笑うと、マリーの脇の下に指を当て、こちょこちょとくすぐり始めた。
「きゃあ! あははっ、きゃははははっ、やめてよぉ〜」
「ほれほれ、ほぉ〜れほれ」
マリーはサンソンの腹の上で身を丸くして脇への攻撃を避けた。
サンソンは手を脇腹に移して再度くすぐり始める。
「んきゃっ! ひゃはっ、ぃゃあー・・・うきゃあーーーーっ!」
・・・
ひとしきり娘で遊んだ彼は、脇腹から手を離して幼子の髪を撫でる。
マリーはうっとりと目を閉じてサンソンに身を任せた。
そして囁く。
「・・・ずうっと一緒だよね?」
男が穏やかに答える。
「当たり前だ」
毛布の下でグシュッと涙を拭う音がした。
やがて幼子の健やかな寝息が聞こえ始める。
程無くしてサンソンも眠りについた。
次回予告
ふたりは親子でも兄妹でもない。
男は幼子を守ることに生きる意味を見い出し、幼子は男から安らぎを得る。
そんな危うい関係。
それでも時は少しずつふたりの情を深めさせて行く。
だが、刹那の情を交わすふたりもいた。
続けて良い関係ではない。続けられる関係でもない。
それを知るからこそ、深く情けを交わす。
女は、娘の肌に記憶を植え付けるかの如く愛撫を加える。
娘もそれに応じ女を求め続けた。
そしてふたりは、のぼりつめて行く
・
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