ナデシコ――それはロボ、熱血、友情、愛、萌え、萌え、萌えなどを乗せ木星へと向かう  
ネルガル重工の戦艦である。  
 熱く滾るソウルを持つ男がいる、かと思えば戦艦の花形・女性パイロットもいる、かと思え  
ば幼女に巨乳に普通の娘におっさんまでいるさまざまな要素を混ぜ合わせた、つまりは  
そういった空間を有した戦艦である。人類の存亡を一身に背負っているはずが、クルーは皆  
和気藹々とし非常に和んでいたりする。恋愛悲哀片思い、甘酸っぱくほろ苦い青春の一時  
もあれば、激しい戦闘の最中に命さえ落とすシビアな世界。かと思えばやはり甘酸っぱく。  
 ナデシコとはそういった戦艦である。  
 
 
 
 
 というのは表の姿である。裏では一人の人物が、暇さえあればクルーの動向を探り、彼女  
ら彼らの大人の情事を覗き見てほくそ笑んでいたりするのだ。そう、彼女を除いた全てのク  
ルーにプライバシーは、無い。  
 ナデシコとはそういった戦艦である。  
 
 
 
 
「お疲れですか?」  
 ナデシコ最年少クルーのホシノ・ルリは同じくブリッジにいるハルカ・ミナトに声をかけた。  
「あら? 見ちゃったの」  
 目尻に溜まった涙を拭いながら返事をする。現在ここにいるのは彼女らだけである。他  
の者はいろいろと理由をつけて出て行った。  
「どうぞお休みになってください。ここは私一人で大丈夫です」  
「いいのかしら?」  
「ええ。あと一時間もすればメグミさんが交代に来るはずです」  
 ルリ一人を残していくことを申し訳なく思っていたが、それを聞いて安心した。この子も  
大分変わったな、と思いつつミナトはルリに一言かけてから、また大欠伸をしながらブリッ  
ジから姿を消した。  
「…………」  
 ナデシコのブリッジは、独りぽつんと残されたルリにはいささか広すぎた。  
「…………」  
 が、寂しくは無い。何故ならこの独りきりの時間こそが、ルリの楽しみにしている時間な  
のである。  
 前触れ無くルリの正面にウィンドウが一つ、ふっと現れた。  
 
 ここから先は十八禁  
 
 可愛らしい字体で書かれた「それでも見ますか?」の文字を顔色一つ変えずにぽちっと  
触れるとすかさず幾つもの小ウィンドウが咲き誇った。ウィンドウに映し出されているのは  
ルリと親しいクルーのものばかりである。アキト、ユリカ、ジュンやイネスなどの室内の光  
景が様々なアングルから捉えられている。ナデシコの全てを司る中枢コンピュータ「オモイ  
カネ」と強い繋がりを持つルリならではの人間観察、クルーウォッチ、性活盗視。ルリの楽  
しみが露呈する危険はほぼゼロ。何故なら現在ナデシコの、文字通り全てを手にしている  
のは艦長ユリカではなくオペレータルリなのだから。  
 ウィンドウの一つが赤く明滅する。  
 
 生脱ぎ、ライブ、LIVE、G行為勃発  
 
 やはり可愛らしい字体で下品な言葉がつらつらと紡ぎだされるのを適当なところで遮り、  
ルリはオモイカネが示したウィンドウ一つを残して他を消した。  
「これは……今日もリョーコさんですか」  
 含みを持たせた言葉を漏らす口の端は、彼女には珍しく小さく綻んでいた。この時間は、  
いつもこうなのだが。  
 
 

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