俺は何故かハルカさんに呼び出された。宇和井さんではなく。  
確かに最近顔を出していないとは、自分でも感じていたが……何かミスしたっけ。  
俺は少し不安になりながらも執行部の部室に向かった。  
時間指定も疑問だった。「下校時間に来て」……どういうことだろう。  
 
「九澄くん、来てくれたのね」  
部室に入ると、ハルカさんの明るい声が俺に向けられる。他の先輩達の姿は無い。  
「何の用ですか? こんな遅くに呼び出さなくても言ってくれればいいのに」  
俺はハルカさんに聞く。だが様子が変だ。  
「九澄くんって……柊さんのこと好きだよね?」  
「えっ!? 何言ってるんすか! 俺は……」  
突然切り出された内容が内容だけに、如何しても慌ててしまう。  
「見てたらわかるわよ、ずっと柊さんのことばかり考えてるんでしょ」  
少しおだけた雰囲気だが、眼は笑っていない。  
「俺はそんな……柊だって俺のことは」  
「柊さんも九澄くんのこと、好きだと思うよ」  
気づけば、ハルカさんが直ぐ近くに居る。  
さっきまで席に座っていた筈の彼女が、自分がテンパっていた所為もあるが何時の間にか……目の前に。  
「こうやって……くっつくのを待ってると思うよ……柊さん」  
 
ハルカさんがすっと俺に抱きつく。  
甘い香りと柔らかな胸が俺に飛びつき、嫌でも意識してしまう。  
この状況が全く理解できないが、突き飛ばす事も出来ない。  
「女の子ってね……男の子にこうやって抱かれるのが好きなんだよ?」  
「せっ……先輩、いきなりで意味が全くわかんねえんだけど……」  
俺は其処で自分自身を呪った。  
下半身がハルカさんのお腹の辺りをノックしている。  
制服越しだが、確実に相手には伝わっている。  
「そして……こうやってキスすると……」  
動きが止まる。だが彼女だけは俺を支配し始める。  
先ずは唇。顔や雰囲気にそれなりに適合した唇同士の抱擁。  
優しくて……温かくて……気持ちいい。  
それだけで、俺の疑問は脳の片隅に置き去りにされた。  
「んっ……ふぅん…」  
ハルカさんの指が俺の腰でそよぎ、脚へ。  
呪ってやりたい下半身が、意に反して硬化し続ける。  
絶対気づいてる筈だ……だって……指が何時の間にか其処に触れているんだから。  
 
「……男の子って……女の子とキスしたらこんな風になるんだ」  
興味心身に触れるハルカさんが、普段とのギャップで現実がどちらか分からなくなる。  
表情は普段の温厚で優しいハルカさん。じゃあこの抱擁は……キスは……指の感触は……。  
「こうしたら……気持ちいいの?」  
ハルカさんの指が膨張した中身の型をズボン越しでなぞる。  
立ったままの体勢の所為で、時折耳元で囁く声が欲を助長させる。  
妙に色っぽくて温かな吐息が俺の背筋を強張らせ、更に機能不全へと向かう。  
「大きいのね……九澄くん」  
再び呼吸が禁止され、指が何時の間にか直接触れている。  
チャックを下ろす音すら聞こえないくらい、俺の聴覚は既にハルカさんの声しか拾えなくなっている。  
情けない事に……俺はあっという間に吐き出しそうになっていた。  
この状況で我慢出来るやつがいるなら……変わって欲しいくらいだ。  
この不条理な展開で脳は制御不能。もう本能に身を任せるしか……このままじゃ……。  
 
 
 
「今日は終わり」  
ハルカさんの声で眼を開くと、俺はポツンと部室で一人立っていた。  
肝心のハルカさんは目の前で何時もの様に優しい笑顔で迎えてくれる。  
「……あれ……さっきまで俺……」  
身体を確認するが、何も変化は無い。チャックも閉まったままだ。  
さっきのは夢か?だとしたら偉く長くてリアルな夢だ。  
 
だが、興奮は冷めてはいない。  
下半身が膨らんだままの事を俺は察知し、急いでハルカさんに背を向ける。  
やばい……こんな姿を見られたら大恥だ。  
「どうしたの? 九澄くん」  
「いっいや! 少し調子が悪くて……」  
俺は必死に先程まで行われた淫行の記憶を消し去ろうとする。  
だが一端火のついた本能は、火消しするには吐き出すしか方法は無い。  
必死に理性で抑える。ハルカさんにそんな姿は見せたくない。  
だが、彼女は俺のすぐ側に迫っていた。  
 
「……また明日。この時間に……ね。家で出したりしたら駄目よ」  
 
そう言ってハルカさんは部室を後にした。  
 
 
 
結局、意味不明な呼び出しは翌日から続いた。  
ハルカさんの言いつけ通りに家では手をつけずに必死に我慢して学校生活を過ごした。  
少しでも気を抜くと欲に負けて吐き出しそうになる。  
それでも、俺は何処かに我慢することに対して必死になっていた。  
一度その習慣が付くと、止められなくなる。  
我慢する苦痛に耐えながら行われる、ハルカさんの“指導”に……。  
 
その“指導”のレベルは日を追うごとに厳しくなる。  
ハルカさん自身もキスや愛撫が上手くなった様子で、段々と凄さの増す展開になる。  
その度に俺は必死で耐えた。指でなぞられるくらいなら、何とか耐えられる所まで来た。  
だが溜まりに溜まった液体が袋で張裂けそうに貯蓄されている。  
苦痛は増える一方で、四日目の“指導”が終わる頃は正直ギブアップしようと思っていた。  
 
もういい。明日終わらせよう。というか……何の意味があるんだ。  
夢から醒めたように普段通りに振舞うハルカさんを見ると、俺だけが単に妄想癖なだけかと思ってしまう。  
だが確かにハルカさんと俺はキスをした。何度も。  
舌を絡めて、何度も、何度も。  
三日目には直に触れられ、歯を食い縛って耐えた。  
気が狂いそうになるくらいの快感はを思い出すと、慰めたい衝動に駆られる。どうしようもなく。  
だからもう限界だった。もう……明日で終わりだ。  
 
 
 
俺は部室に入る。すると何故か何時もとは違った女子が立っていた。  
「遅いわよ九澄! 早くこっち来て!」  
ハルカさんではなく、宇和井さんだった。  
既に構築された俺とハルカさんとの放課後の情事が……今日は彼女と!?  
俺は恐る恐る様子を見ながら近づく。  
「来ないならこっちから行くわよ、もう」  
宇和井さんは普段のように俺に飛びつく。  
ハルカさんとは違った甘い香りと胸や肌の感触が新鮮に感じる。  
今迄散々ハルカさんの色に身体が染まってしまったからだろう。  
その新鮮さが興奮を駆り立てる。  
「ふふ……今日はわたしが指導してあげる」  
……やっぱりそうか。  
もう理不尽でも何でもいい。早く俺の欲を吐き出してくれ、宇和井さん。  
 
宇和井さんは予想通り、ハルカさんとは違って強引でストレートだった。  
キスも愛撫も握る指も……全てが官能で卑猥。  
為すがままの玩具になった俺が覚醒したのは、彼女がズボンを下ろして口に含んだ時だ。  
俺は自分自身の情けない声に驚いた。  
いや……普段からそんな声は事ある毎に何度も出してるんだけど、それはもう姉ちゃんに締め上げられた時よりも情けない声だった。  
「九澄ってすごいね……上手く入らないわよ」  
何が。何処に入らないんだ、そう突っ込みたいが無理だ。  
もういいんだ。俺はここで終わるんだ。宇和井さん、我慢してくれ。  
「……くうっ……うああぁ……」  
馬鹿みたいに溜め込んだ液体を宇和井さんに吐き出す。  
あっけない。そして果てしなく心地良い。  
何度も上下し、筋が収縮して宇和井さんへと送り込む。  
その全てを宇和井さんが受け止める。  
漸く開放されたわけだ。  
視界が即効で暗闇に覆われ……。  
 
 
「九澄! しっかりしなさい!!」  
眼を醒ますと、宇和井さんとハルカさんが目の前で俺を心配そうに見ている。  
もう五日目だから慣れた展開だが、一応衣服や身体確認。  
……相変わらず変化無し。  
「こんな所で寝てたら心配するじゃない」  
「調子でも悪いの?」  
二人の様子は何時も通り。これも夢明けだと何時もの事。  
だが二人居るのは初めての展開だ。  
「じゃあ……俺はこれで……」  
すんなり立ち上がれない。おかしい。  
 
「何言ってんの? これからわたしとハルカで九澄に“指導”しないといけないのに」  
……?  
何言ってるんだよ、それはさっき……。  
「わたしだけだと恥ずかしいから、玲にも手伝って貰おうかなって……」  
駄目だ。全く展開が読めない。  
「それじゃあ、始めるわよ……覚悟しなさい」  
 
理不尽すぎる。どの現実がリアルなんだ?  
 
まあいいか。またここで我慢したら……俺はこの部室から開放されるんだから。  
 
 
 

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