「さて。帰るかな。  
タクは…、また観月のとこか。懲りないな。」  
 
 昼ごろまで自主トレをした後、大門高彦は帰宅の路に就こうとしていた。一緒に学校に出向いた小石川は、また観月を口説くために捜しに行ってるようだ。  
「多分、夏休みに学校に来る度に懲りずにこんな感じなんだろうな。タクは。  
…一人で、帰るか。」  
小石川を捜すのを早々と諦め、彼は校門に近づく。すると、異様な光景が目に入ってきた。  
 
ボロボロで倒れている柊教諭。  
恐らく彼のであろう。ドアが開きっぱなしになっている、ラテン語で“至高”の意味を持つT社の高級車。  
怯えた表情で壁際に後ずさっている女子達。  
同じく何故か怯えた顔をしている九澄と津川。  
 
そして、その輪の真ん中にいる、泣いている少女。  
 
 
洞察力はそこそこあると自負している彼だが、その状況は全く理解できなかった。  
「…ええと。C組の女子が、幼女を虐めてて?  
それを止めようとした柊教諭が三国あたりを中心に袋だたきにされた。と」  
 
頭の中でそう決め、大門は帰ることにした。  
 
…だが、一人で泣くその少女を放っておくのも気分が悪い。周りの女子も、泣かしたんなら泣き止ませれば良いものを。無責任な。  
「………」  
頭をかきながら少女に近づく。  
「ひくっ、…ふえ?」  
泣いてた少女が自分に気付く。大門との身長差は頭一つ弱ほど。  
 
「…こんにちは。僕は大門高彦。  
どうして君は泣いているんだい?」  
少女に視線をあわせ、大門は聞いた。  
 
大門に問われたその少女の名は胡玖葉といった。実は九澄大賀の姉なのだが、大門が知る由も無い。  
 
そして彼女は失恋直後でもあるのだが…、更に大門が知る由も無い。  
胡玖葉は、声をかけてきたその少年に見入っていた。  
涼しげな瞳。風を受けて靡く黒髪。整った顔立ち。  
自分の好みという訳では無いが、その少年には不思議な魅力を感じた。  
何より、先程の女子達とは違い、自分に視線を合わせてくれたのが嬉しかった。  
 
少女からの返事を待つ大門。だが10秒ほどで諦める。  
「…。聞こえてるかな?」  
 
胡玖葉はハッと我に還る。  
「ええと、そうだな…。…君の名前は?」  
前屈みの姿勢で大門は続けた。  
慌てて答える彼女。  
「はっ、はい!わ、わたし胡玖葉といいますっ!」  
 
この学校の生徒である以上自分より年下であることはほぼ確定なのだが、胡玖葉は敬語で答えてしまった。  
「…コクハっていうの?かわいい名前だね。歳はいくつ?」  
 
前半の部分に彼女は赤面してしまった。  
先程の輩達とは違い、この少年からは自分をからかっている様子が感じられなかったので少し照れてしまった。  
「…19です。」  
少しもじもじしながらの回答となった。  
「19なんだ。じゃあ僕の三つ上だね。」  
少しだけ意外そうな顔をした大門だったが、表情はすぐ元に戻る。逆にそれに対して胡玖葉が少し驚いた。  
『どうせ歳を信じてもらえない』と思っていたからだ。  
「…キミは、「嘘だ」って言わないの?」  
胡玖葉は思わず聞いてしまう。寧ろその質問に大門は不思議そうな顔をした。  
「…? ホントなんだろう?」  
大門の問いに疑いは微塵も含まれていない。身長が伸び留まった頃から、大門は人を見た目で判断する事が無くなった。そしてそれは幼なじみである小石川も同様にだった。  
大門と小石川の付き合いが長いのもそれに起因する部分があった。  
 
そんな中、ふと大門が周りを見渡すと、女子達は胡玖葉が大門と話してる隙にそそくさと帰ってしまっていた。  
因みに乾に引っ張られ連れられていった三国だけが、やや残念そうな顔をしていたが。  
大賀も、いつの間にやら姉から離れ、津川と帰ったようだ。気絶している柊教諭のみが残っている。  
「…本当に無責任な奴らだな。」  
声には出さなかったが、大門には僅かに嫌悪の表情が見えた。  
大門に見入る胡玖葉はそれに気付く。そして聞いた。  
「…?どうしたの?」  
そのキョトンとした表情は、大門の目に少し愛らしく映る。  
「…みんな、君をほっといて帰っちゃったみたいだ。無責任だな」  
ため息をついて大門は答えた。  
「いーんですぅ。あんな人達は!  
私の事子供としてしか見てくれなかったし。嫌いです!」  
胡玖葉が少しムスっと言う。  
「…それもまた失礼だな。」  
大門の表情がまた僅かに陰る。  
胡玖葉はくるっと彼に向き直り、言った。  
「…でも、キミは好きだな。」  
「……」  
しばらく目が合う二人。顔を赤くして大門が目を逸らす。  
「…年下をからかわないで下さい。」  
「…本当だよ?」  
「…………」  
大門は黙り込み、さらに赤面した。  
 
大門の、胡玖葉に対しての対等な立場での接し方や、僅かに見せた責任感などは、今日初めて会ったばかりの胡玖葉の心に深く響いていた。  
 
この短い時間で彼女は、既に大門に惹かれていた−  
 
「今日は私、ホントは弟と用事があったんですけど…、それはもういいです。だから…」  
「だから…、なんだい?」  
「…私と食事に行きませんか?」  
 
無意識にだが、先程の柊に向けてと同じ言葉で大門を誘う。もっと彼と一緒にいてみたい。話がしてみたい。  
そう、思った。  
 
「…僕と?ですか?」  
「はい。」  
彼女は本気だ。少し大門は考える。練習を終えての昼下がりで、空腹感は上々。行きたいとは思うが、お金があまり無い。年上とはいえ、女性に出させたくはない。  
 
だから一つ提案を入れてみた。  
「お腹は減ってる?胡玖葉さん」  
「ぺこぺこ」  
彼女はお腹を押さえるポーズをとった。  
「じゃあ、家に来る?多分夜中過ぎまで誰も帰って来ないけど、僕も料理ができるんで御馳走しますよ?」  
にこっと笑い、大門が聞いた。  
「えっ…。大門、くんの家…?」  
「うん。嫌なら別に  
「いい行きます!」  
彼の言葉を遮りながら胡玖葉が答えた。顔は真っ赤だ。  
 
再び大門が僅かに笑った。  
「じゃあ行こう?  
5分くらい歩けば着くよ。」  
 
大門は歩き出した。彼の横で胡玖葉は歩く。彼の身長は決して高くはないが、並んで歩く二人は客観的に「兄妹」に見えるか「恋人」に見えるかはやはり微妙なラインだ。「妹」に見える方が年上などとは、気付く者はいないだろう。  
 
歩幅に差が出るので、度々胡玖葉が早足になっている。それに大門が気付いてペースを落とす。  
そして胡玖葉と手を繋いだ。  
「あっ…」  
胡玖葉が声を出す。彼女は繋がれた手を見てから、続いてこちらを見ない大門を見上げた。  
そして自分がまた赤面してるのを悟り、大門の家まで下を向いて歩くハメになった。  
 
歩くこと5分。大門に連れられ胡玖葉は彼の家に着く。本当に誰もいないようだ。  
大門がバッグから鍵を取り出し開錠する。未だ真新しいドアはスムーズに開かれた。  
「あ。」  
先に玄関に入りかけた大門が何かを思い付き声を出した。そして彼は胡玖葉に向き直り、離した手を再び胡玖葉に差し延べ、言った。  
 
「いらっしゃい。胡玖葉さん」  
 
微笑む大門。  
また赤くなる胡玖葉。  
「はっ、はい!  
…失礼。…します。」  
段々声が小さくなってしまう。  
 
フラれ続けて幾星霜。同じ年頃の男どころか高校生にまで子供扱いされてしまう故に、告白はすれど自分の望む応えが返って来たのはほぼ皆無。  
 
 
胡玖葉は、男の家に来たのは初めてだった。  
 
「じゃあ、胡玖葉さん。僕の部屋で待っててくれる?  
今連れてくから」  
「…はい」  
言われるままに大門の部屋に連れて行かれる胡玖葉。そして、ベットに腰掛けた。  
そこで彼女は溜息をはき、言った。  
 
「…なんか、余裕だよね。大門くん。  
私のが年上なのに…。  
少し、悔しいな」  
その言葉に、部屋から出ていこうとしていた大門が足を止める。  
「…僕はそんなに大人じゃないよ?」  
戻って来た彼が胡玖葉の横に腰掛ける。今日一番の接近に彼女の鼓動は速くなる。  
「胡玖葉さんみたいな女の子部屋に入れて、普通でいられる訳ない」  
 
胡玖葉の小さい肩に大門は手を添え、彼女を正面に向ける。  
胡玖葉は大門を真っ直ぐに見れなくなっている。恥ずかしくて目を合わせられないのだ。視線が暫く泳いだ後、目を閉じる形に逃げた。  
 
真っ赤になって目をつむる胡玖葉の前髪を右手で上によける。  
彼女の幼い口唇に自分のそれを重ねる。  
「んむ」  
予想外の事に呼吸を乱した胡玖葉から声が漏れた。  
舌を用いて彼女の口内を這い、彼女と唾液と交換する。時たま口唇を離し呼吸を整えながら、二分程キスを続けた。  
そして唾液の糸を連ねて口を放す。  
それは胡玖葉にとっての、紛れも無い最初の口づけの終わり。  
目を開けない胡玖葉。今大門の顔を見たら、恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだった。  
 
「目、…開けてよ。胡玖葉」  
耳元でそう囁かれ、背筋から首にかけての神経がビクンと逆立つ。  
「ん〜ん!」  
首と髪を振って「やだ」の意思を示す胡玖葉。もう、耳まで真っ赤になっていた。  
続いて首筋に唇を延ばす。胡玖葉の肋骨の上から首の下まで辺りを、大門の舌と口唇が這う。  
「あっ…、 あっ!」  
初めての感覚に胡玖葉は声を上げてしまう。  
耳たぶを口唇で挟まれ、甘噛みされ、また違った感覚が押し寄せる。  
「ふっあっ…、あぅぅ!!」  
声は出してくれるが、未だ胡玖葉は目を開けてくれない。再び大門は耳元で囁く。  
「かわいい、よ。胡玖葉」  
 
再び神経がビクンと逆立つ。そこで彼女が数分ぶりに目を開いた。息が少し上がり、やや汗ばんでいる。  
「…からかってる、の?」  
少し表情を曇らせて胡玖葉が聞く。彼女はその手のからかわれ方が一番厭なのだ。  
その時。キスの辺りからほぼ無表情だった大門の顔が真剣そのものになる。  
 
 
「僕は、…大真面目だ」  
 
 
その言葉を聞き、自分の心がドクンと大きく脈打ったのが、胡玖葉には分かった。  
 
 
「…ほんと?」  
無言で、そして笑顔で頷く大門。その瞬間、ぎゅっと大門に抱きつき、胡玖葉は瞳をうるわせながら言った。  
 
 
「…ありがと。すごく、嬉しい…よ。  
 
大好き。大門くん」  
今度は彼女から、再び口唇を重ねる。  
そして離す。ずっと自分に付き纏っていた不安が晴れ、彼女は心から笑った。  
それに対し、大門も心からの笑みで返した。  
 
「…あの、大門くん。  
私…、まだ…その〜、ね?  
キスより先は…」  
 
体を小さくして、手をもじつかせ胡玖葉が言う。  
 
少しだけ沈黙が流れた。  
 
「…イヤ?」  
大門が聞いた。  
ハッとした胡玖葉が慌てて否定した。  
「ち、違っ!  
…そうじゃなくて…ですね。  
まだ、したことが…、その、無くて。」  
自分が言ってる言葉の恥ずかしさに気付き、胡玖葉は下を向いてしまう。  
 
「最初が、…僕じゃ厭?」  
 
胡玖葉が顔を上げ、首をぶんぶんと横に振る。  
大門は笑い、胡玖葉の頭を優しくなでた。  
そして三度目の口づけをしつつ、ぽふっとベットを弾ませて、胡玖葉を押し倒した。  
 
 本格的に「キスの先」が始まる。胡玖葉には完全に未知の世界。友人から話は聞いたことがあるが、参考にもなりはしない。  
 
キスを続けつつ、彼女の服越しに右手で胸に触れる。再び目を閉じた彼女がぴくりと反応し、声を上げる。  
「んっ…、んっ!」  
まるでつい最近膨らみ始めたかのような胡玖葉の胸。乳首の位置を探り当て、その周りを刺激してみる。ブラはつけていないようだ。  
親指と中指で乳房を圧迫しつつ、人差し指で乳首を擦り始める。乳首に触れた瞬間、胡玖葉の声は大きくなる。  
「んっ、んうっ!…あっ!あう!…くっうっ!」  
大門に触られるうちに、胡玖葉の乳首は勃っていく。  
右胸も同じように触られ、大門は彼女が身につけているワンピースの肩ひもを外側にずらし、腰くらいまで下ろす 。胡玖葉の乳房と乳首があらわになった。  
胡玖葉は「恥ずかしい」と言わんばかりに目をつぶったまま顔を横に背けてしまう。  
「あんまりっ、じっと…、見ないでっ。」  
お世辞にも「大きい」などとは言えない胸。  
だが、そこにある小さな桃色の乳首は彼女の白い肌に相乗し、とても綺麗に大門には見えた。  
一通り目で見回した後、それを優しく口に含む。  
同時に彼女は声を上げた。  
「…ひゃっ!あぅっ、んっ!」  
声と共に、胡玖葉がびくんっと体をのけ反らす。  
右胸、左胸と交互に舐め上げ、乳首を舌で転がし、口唇で吸う。  
口に含んでない方は、指での愛撫を続ける。  
「うっ、あんっ!、ふっ、うっ、あっんあっ!」  
舌と口唇と指が合わさって乳首を責めてくる。  
口から唾液が流れ出続ける。それを止める事なんて出来ない。ただ、初めての快感に喘ぐことしか出来ない。  
自分の胸に顔を埋める大門の頭を無意識に抱く。もう、意識が何処かに飛んでしまいそうだ。  
「もうっ!んっ、だっめっ…。…だめぇっ!」  
体の奥底から込み上げる何かを感じ取る。  
 
そして胡玖葉の体が大きくのけ反り、数度の痙攣と共に彼女は生まれて初めての絶頂を迎えた。  
 
彼女が果てたのを感じ取り、大門は一度体を離した。胡玖葉の喘ぎ声によって、彼の息もまた荒くなっていた。  
 
胡玖葉は朦朧とする意識の中、大門の股間に気付く。  
大きな何かが彼の制服を押し上げていた。  
『…あれは確か、私には無いもの。  
こういう時に、大きくなるもの』  
 
胡玖葉は体を起こし、未だ息の荒い大門のそれに触れてみた。  
「うっ…」  
唐突な感覚に、大門が思わず声を上げる。胡玖葉に触れられたことで、彼のそれはビクンと大きく脈打った。  
彼の表情から胡玖葉は、そこを触られた時の感覚を読み取った。  
 
 
そして、胡玖葉は大門の股間のファスナーに手をかける。  
「こ、胡玖葉さんっ…」  
そして開けた。  
 
ズボンが落ちて、下着の隙間を抜け、大門の大きくなった分身があらわになった。もちろん胡玖葉は初めて見る。  
 
彼女にとって凄く大きく感じたそれは、定期的にびくびくと脈を打っている。  
 
それを胡玖葉は握ってみた。  
「…っ…」  
大門の顔が歪む。  
彼の赤黒いそれは、凄く熱く、そして硬い。  
 
 
そして、大門を見上げつつ、胡玖葉はそれを口に含んだ。  
「ぐっ!」  
瞬間、またそれは大きく脈打つ。彼女の小さな口内で、大門の心拍数と共に脈動が速くなってゆく。  
胡玖葉の口の奥まで入っても、七割程しか隠れていない。  
自分の口に入っている所を吸い上げてみる。  
そして亀頭くらいまで抜き、再び奥までくわえる。  
ゆっくりとそれを3、4回程繰り返し、一度口を離して彼女は聞いた。  
「これ、…気持ちいい…?」  
大門はそれに頷く。  
彼女はそれに嬉しくなり、同時に安心した。  
続いて彼女は亀頭の裏から竿までに舌を這わせる。数回繰り返した後、脈打つそれを再びくわえ、吸いあげ、舐める。  
詳しいやり方を知らない彼女は何処かで得た知識のみでそれらを繰り返す。  
大門には必死な彼女が見て取れた。  
技術こそあるわけでは無いが、小さいその口に吸われ、ざらざらとした舌での刺激の一回一回により、体の奥から何かが込み上げる  
 
唾液を弾くちゅぱちゅぱという音と共に顔を上下させる胡玖葉。  
その彼女の喉の奥に、先程からの大門の込み上げてくる何かが形となり放出された。  
「くッ!」  
大門が限界を知らせる声を出す。  
「んぐっ!」  
胡玖葉の頭を押さえる大門。彼女が喉に強い圧力を感じる。そしてとても熱い半液状の何かが流れ込む。  
びゅくっ、びゅくっ、とより強く脈動する。  
 
「んっ!くッ!」  
 
逃げ場の無い彼女。沢山出て来たそれをすべて飲み込む羽目になる。  
それの動きが収まりきったのち、彼は胡玖葉の頭を放してくれた。  
ゆっくりと未だ敏感な大門のそれから口を離す。胡玖葉の唾液と彼の精液の混合物が、ベットに滴り落ちた。  
咳を吐く胡玖葉。喉にはまだそれが僅かに残っていた。  
 
「ごっ、ごめんっ!」  
胡玖葉の頭を押さえたのはほぼ無意識にだったが、咳をする彼女を見て罪悪感に囚われ、息が荒いまま大門が謝った。それに対し胡玖葉はふるふると首を横に振る。  
ティッシュで彼女の口を拭い、大門は彼女の頭に手を置いた。  
「…気持ち、良かった?」  
胡玖葉が心配そうに再び聞いた。途中の大門の歪んだ表情が彼女を不安にさせたのだ。  
「うん…。凄く」  
そう言い、再び彼女の頭を撫でる。  
 
胡玖葉の顔が明るくなり、「えへへ」と無邪気に笑った。  
ここで大門の表情が引き締まり、改めて彼女の名を呼ぶ。  
「胡玖葉さん」  
「…はい」  
胡玖葉が応じる。そして大門は彼女に問う。  
 
「挿れて、…いい?」  
 
胡玖葉は目を閉じ、そして微笑む。  
「…はい。  
…挿れて下さい。」  
 
胡玖葉は自ずからベットに倒れ込む。ベッドと自分の間から空気が漏れる、それからは太陽の匂い、そして僅かに目の前の彼の香りがした。  
 
彼女の上に被さり、そのままキスをする。  
最初のキスとは違い、胡玖葉からも口唇を求める。そしてお互いに舌を絡ませ合った。  
「んっ、んむ。ふッ、…う」  
先程大門にされたディープキスを見様見真似で自分もしてみるが、口の中をはいずる彼の舌に彼女は頭を真っ白にされ何もできなくなる。  
 
大門の数本の指が胡玖葉のへその下辺りに置かれた。キス責めでぼんやりとなった彼女の頭の中だが、下着の中に潜り込んでゆく彼の指に意識を覚醒させられる。  
 
大門が触れた胡玖葉の敏感な部分。そこには陰毛の触感がほぼ感じられなかった。そして入口の辺りはうっすらと湿っている。  
その入口に沿い指を上下させ、同時に片手で胸に触る。  
「ふむっ!んっう!んむうう!」  
胡玖葉は口を離して声を出したいのだろうが、胸に触れていた手を彼女の頭の裏に回し、キスから彼女を逃がさない。  
指を少し奥まで侵入させる。初めて男に触れられる胡玖葉のそこは、とても熱くて狭かった。  
唾液と共に口を離す大門。途端に胡玖葉の喘ぎ声が響き始める。  
「あっ、やっ…!あぅんっ!…んっうっあ!」  
 
それを聞く大門の指は、動きをだんだんと早めていく。  
入口をなぞるだけだった指は方向を変え、胡玖葉の内部を出入りしている。  
愛液がじゅぷじゅぷと水音を立てる。下着の一部が濡れて色が変わってきていた。  
「うっ、…くうっ!  
…だめえ…!だっい、もっんくんっ!」  
胡玖葉が出す声は大門を強く興奮させ動きを早めた。「…だめっ!だぁっ…めぇっ!  
またっ、なにかっ、来ちゃうっ、よぉ!」  
 
指を出し入れされるたび、自分の股間からの「びちゃびちゃ」といやらしい水音が部屋いっぱいに響く。  
さらに、入口の外側についている陰核に彼の指が擦れるたび、彼女がビクンと痙攣した。  
 
胡玖葉の恥部内から分泌される透明な液体にまみれた指を、「ずるり」と音を立てて大門はゆっくり引き抜いた。  
そして彼女の膝を縦に折り、下着に親指をかけ脱がしてゆく。下着と裂け目の間に貯まった液膜が弾け、ぴちゃっと音をたて、互いに粘液の糸を引く。  
 
胡玖葉のそこは、やはりほとんど毛は生えていなかった。  
下着を取り去った直後に、オーバーフローした愛液がおしりを滴い流れ落ちる。  
「やっ、あっ…  
あんまり、…見ないでっ」  
胸を見られた時の数倍の羞恥心が彼女に襲い掛かり、自分の腕で顔を覆い隠してしまった。  
自分の最も大切で、敏感で、恥ずかしい所。  
それが異性にじっと見られている。  
「恥ずかしい、よ…」  
思わず声に出てしまった。  
「んっ!」  
再び何かが自分の秘部に入ってくる。目を閉じているため彼女の神経はそれに集中してしまう。  
入って来た物の感覚は、先程までの指ではなかった。ざらざらとした、濡れた何か。  
「ふえっ…?」  
目をあけてみると、自分の股間に顔をうずめる大門が見えた。  
「そんなところっ、…なめたらっ、…きたなっ!」  
舌に動き回られ、声が止まってしまう。前後左右に動くそれは、指よりもより強い快感を胡玖葉に与えた。  
「ふう…ん!あぁっん…!ん!くぅっ!あっく!…ん…、…あっ!」  
唾液を垂らし、全身をくねらせて、胡玖葉は喘ぎ続ける。  
大門は胡玖葉の裂け目に舌で出入りを繰り返し、時たま陰核を刺激し、裂け目を舌先でなぞる。  
彼の唾液と合わさり、胡玖葉のそこから溢れる液はさらに量を増していく。僅かに生えた陰毛は、濡れて乱れて光を反射していた。  
 
流れ出る愛液によりベッドの一部が色を変えた頃、大門がそこを吸い上げ、口を離した。胡玖葉のそこは、ヒクヒクと痙攣を続けている。  
 
大門はズボンと下着を脱ぐ。胡玖葉の恥部の上に、再び脈打っている自分の堅物を置く。  
改めて、彼女に聞いた。  
「挿れる…よ」  
息を整えつつそれに頷いて、胡玖葉も言う。  
「きて…。大門くん」  
 
裂け目に、亀頭が触れる。  
そこはかなり敏感になったままで、彼女は「んっ」と小さく声を上げた。  
 
指よりも舌よりも固くて大きく、そして熱いモノが侵入してくる。膣の壁を拡げながら。  
「いっ…!」  
その声に、初めての証である膜の手前で大門の挿入は一度止まった。  
「…痛い?」  
少し腰を引き、大門が問う。  
しかし胡玖葉は目と口をきゅっと閉じて、「んーん」と首を横に振る。  
 
彼女の瞳からは、涙が流れていた。  
 
痛い、のだろう。だが、胡玖葉はそれを口に出そうとしない。  
 
そこで大門は意を決する。膜の手前から奥まで、一気に陰茎を突き刺した。  
 
「いっ、ぐぅっ!」  
 
彼女の意思とは無関係に、痛覚による声が洩れた。大門の陰茎の長さに対し胡玖葉の膣はストロークが短く、子宮の入口付近まで達している。  
拡張された膣壁が元に縮まろうと、飲み込んだ大門の陰茎を激しく締め付ける。  
胡玖葉が僅かに息を整えかけた時、大門が言った。  
「…動くよ。」  
胡玖葉は無言で縦に首を振り、肯定した。  
 
ゆっくり、ゆっくりと引いていき、亀頭が抜ける手前から再び子宮の入口まで捩込む。愛液のお陰か、出し入れはスムーズにできた。  
そのゆっくりな数度の出入で、早くも大門は僅かずつ限界を感じ取ってくる。  
絶え間無く締め付けてくる胡玖葉の膣壁と、痛いながらも必死にそんな声を出すまいと挿入を受け入れる彼女の表情は、確実に大門の絶頂を引き寄せてきていた。  
 
入れて出すだけだった行為が、次第に胡玖葉の股間に自分の股間をたたき付けるような動きに変わって来る。速度も当初の倍以上になっていた。  
涎を垂らして喘ぐ胡玖葉は今、大門を昇天させるため材料にしかならなかった。  
「あっ、あっ、あんっ!」  
胡玖葉の声に艶が出てくる。痛みの中に僅かながら性感が芽生え始めてきていたのだ。  
そして大門は汗の分泌量が増えている。もう、すぐに限界だった。  
 
「胡玖葉、さんっ…。…僕、もう、ダメ。  
だしてっ、いい?」  
お互い気を抜けばすぐにも果ててしまいそうな中、大門が胡玖葉に聞いた。  
胡玖葉はそれに返事する事はできなかったが、再び縦に首を振り肯定した。  
 
胡玖葉の膝に置いていた大門の手が、腰に固定される。  
そして動きと音が最も早く、強くなる。  
「あっああぁああっ!」  
胡玖葉の声も大きくなる。  
「こっ、…胡玖葉さんっ!」  
胡玖葉の膣がきゅうっと縮まる。  
「くっ…!」  
 
脈を打ちつつ、胡玖葉の中の更に深い所に、二度目の射精をする大門。  
 
「…熱い…のが、わたしっのっ…、なか…にっ!」  
自分の膣に収まる大門の分身から、大量の熱い粘液が放出されているのを感じ取る胡玖葉。  
それがびくんびくんっと脈打つたびに、ビュッ、ビュッと膣壁に当たってくる。  
精液を出し尽くし、彼は分身を引き抜く。  
自らの精液と胡玖葉の愛液の混じった液体が零れた。  
その手で胡玖葉を抱きしめ、額に口づけをした。  
「大好き。胡玖葉」  
そして大門は胡玖葉を抱いたまま…  
胡玖葉は大門の腕の中で…  
ふたりはそのまま眠りについてしまう−−  
 
 
 
 −「あのバカ大賀は忘れ物しすぎなのよ!」  
 
聖凪高校の校門を、一人の少女が歩く。  
彼女の名は九澄胡玖葉。聖凪高の一年生にしてゴールドプレートである九澄大賀の実姉である。何やら「朝練」があるらしく、弟は浮かない顔で家を出ていった。弁当を忘れて。  
 
だが不満を漏らすわりに、彼女はとても嬉しそうだった。  
それは、弟と同じく学校にいるであろう、「彼」に会えるからであった。  
 
「九澄大賀にお願いします。」  
先日女生徒たちに馬鹿にされた、外来客受付で大賀への弁当を託す。  
 
その時、唐突に後ろから腋の下に手を入れられ、持ち上げられる彼女。  
「ひゃっ…」  
浮いた足をばたばたさせる胡玖葉。そして声が聞こえた。  
「聖凪高に用事かい?お嬢さん」  
 
声の主はすぐに分かる。自分のとても大切な人。  
大門高彦がそこにいる。  
 
「…馬鹿にしてるでしょ」  
頬を膨らませ、首を回して彼を見る胡玖葉。大門は微笑み、彼女をゆっくりと下ろして言った。  
「少しだけ、ね」  
 
大門はすでに私服だった。先日、胡玖葉が弟と行くはずだった買い物に付き合ってと言われたのだ。  
 
学校と反対の方向に歩き出す二人。横の彼女は少し臍を曲げてしまったようだ。  
「どうせ私は子供みたいですよ〜」  
そっぽを向いて歩く胡玖葉。それを見る大門はくすくすと笑う。  
だが彼に手を延ばされると、赤面しつつ少し不満げにその手をとった。  
「胡玖葉さん?」  
「−なあに?」  
そして間を置く大門。  
 
「…聖凪に来ると、またバカにされちゃうよ?」  
 
やや渋い表情から、大門が言う。もちろん胡玖葉を心配しての事だったが、彼女に言いたくはなかった。  
 
「ん?いいよ別に」  
しかし胡玖葉はあっけらかんと返事を返す。そして大門に笑いかけた。  
 
 
 
「キミだけわかってくれてればいい。」  
 
赤くなる大門。胡玖葉も「えへへ」と照れた。  
 
 
「…いい、天気だね」  
 
 
雲が一つも見えない空を鳥が走ってゆく−。  
 
 
 
 
 
「…そうだね。」  
 

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