― Interlude 3.37 津川編
スケボー君とメガネちゃんの約束 ―
―――ふう。
あの館から見たら眼と鼻の先なのに……遠いな。
―――よっと。
それにしても風がキモチイイな!
参加して正解だったな。
俺は石の階段をテンポ良く降りていた。
両脇には木造建築が並んでいる。
俺のじいちゃん家も……こんなカンジの所にあったな。
何処か懐かしい。
空気。風。虫の鳴き声。
小さい頃に……感じた自然。
いつもはこういう……哀愁じみたカンジは苦手なんだけどな……。
ようやく海岸に着く。
意外に時間がかかった。
携帯の液晶を眺めたら、時刻は十時チョット。
あそこを出たのは九時半くらいだったから……四十分もかかったのか。
まあのんびり歩いてきたからな。
俺は潮風を胸いっぱいに吸い込む。
――――潮の香り。
……やっぱ夏は海だよな!
明日の昼には……みんなで海水浴とかいいかもな。
「水着は持ってきてなかったな……まあ桜庭が何とかしてくれるかな」
砂の上じゃスケボーは走らせることはできないから、海岸線の道路で走る。
「ははっ!!やっぱキモチいいわ!」
俺は海岸線を気が済むまでかっ飛ばしていた。
魔法が使えたら……もっと良かったんだろうなぁ……。
砂浜に戻って一息つく。
身体を大の字に投げ出す。
空を見上げたら…驚くほどに星が眩しい。
――――――しばらく俺は空を眺めていた………。
ピリリリリリリリリリ!!!!
着信音がする。
俺はポケットを探って携帯をとる。
……メール?
差出人は…………委員長だった。
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2007/ 8/4 22:46
From 委員長
Subject こんばんは☆
今日はお泊りだって聞いたよΣ川〇∀〇*川
実はね……私も出雲と桃と氷川と四人でお泊りしてるの♪
でも…それが私の家でなんだよ!?
みんな一番私の家が綺麗だからって言って…ヒドいよ(っω;`。)
そっちはどんな感じなの?
三人が気になってるみたいで……私も少し気になってメールしたの(*・ω・*)
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「なんだ。委員長達も同じ事やってんのか!」
俺は委員長に返信した。
そういや……委員長とメールなんてあまりしなかったから……なんかヘンな感じだな。
学校ではよく話したりしてるんだけどな……。
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2007/ 8/4 22:52
To 委員長
Subject Re:
そっちもお泊り会やってんのか!
仲良い奴らばっかで羨ましいな。
コッチは中々大変だったんだぜ?
一応……決勝で戦った奴らだし…。
まあ俺が上手く間を取り持ったけどな!/ ゚ー゚)
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………五分後。
委員長からの返信だ。
俺は画面を見る。
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2007/ 8/4 22:57
From 委員長
Subject Re:Re:
いきなりなんだけど……電話しても良いかな?
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直球過ぎてビックリした。
突然の短い文章。
俺は『いいよ』と返信する。
「……なんだろ。なんかドキドキするな………」
もう直ぐしたら電話が……そう思うと少しドキドキした。
―――――携帯が鳴った。
直ぐに出るのは……待ってたみたいで恥ずかしいから三回コールしてから取った。
「……もしもし、津川くん?」
「ああ。どうしたんだ?いきなり電話したいなんて……」
「桃が……どうしても電話しろっていうから………ゴメンね」
「そうなん?相変わらず仲いいよなぁ」
「あっ…ありがと。(そう来るかぁ〜!!)」
『ちょっと委員長!私がやれなんて、そんな事言っちゃダメじゃん!!つうか相変わらず津川のやつ鈍すぎ』
【そうよ!さっきリハーサルしたでしょ!?】
「んっ?出雲と桃瀬か?」
「えっ!!?あ〜っ…もう。ゴメンね。みんなテンション上がっちゃって……」
「まあそうだよな!夜に友達の家で遊んでたらなんか楽しくなるよなぁ」
「うん。そうだね……えっとぉ………その……」
「???……」
「津川くん。このまえ、インストールに手こずってたよね」
「あぁ……見られてたのか。恥ずいなぁ……」
「だから………月曜日にね、コーチしてあげようかなぁって………いいかな……」
「マジ!!?手伝ってくれんの?そりゃ助かるよ」
『やったあ!!チャンスだよ委員長!』
[月曜日かぁ……グロスとかチークとかバッチリキメないとね]
「??なんであいつらが喜ぶんだ?」
「あアっ!!も〜っ……えっと……それじゃあ……月曜日にね」
「ああ。わかった。―――――おやすみ。委員長」
「――――うん。おやすみ、津川くん」
……………。
電話が切れ……風の音が辺りを包む。
「なんか後ろが騒がしかったけど…まあいいか。
早く韋駄天号を使った新魔法、習得したいし……。
つうかなんか俺、委員長に魔法とか勉強とか助けてもらってばっかだな……もっと頑張らんとなァ。
……それに委員長には何かお返ししないとな……」
俺は真っ黒な海に浮かぶ月を眺めて―――――。
「うおお!!なんか俺らしくねえ!!……よっしゃ、もういっちょイクか!」
俺は再び風を切り裂く。
その時は、委員長とあんな事になるなんて思わなかった。
今思えば……それが俺とアイツとの初めての約束だったな。
―――――This love story continues to M:59