― Interlude 4.75 大門編  
 
                        smile. ―  
 
 
 
僕は街道を歩いていた。  
周りは緑で覆われていて、少し獣道の様相を呈してきている。  
街灯は等間隔でポツンと立っている。  
其のボンヤリ照らす光を求め、夜光虫が群がる。  
僕は眺め、歩く。  
歩きながら、先程観月との会話を思い出していた。  
 
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――  
 
 
九澄、津川、観月が柊を運びに行って………しばらくして。  
 
………観月が帰って来た。  
足早に席に着く。  
「九澄はどうしたんだい?」  
僕は観月に問う。  
「水を取りに行ったわ」  
「そうか…」  
僕には解っていた。  
観月の様子が変化した事。  
ただ敢えて口にはしなかった。  
 
「ねえ大門………男って……なんなの!!?」  
「……なんだい、いきなり」  
「なんで男って自分勝手なの?女の発言とか無視して突っ走って。  
 置いてかれる私のことはどうも想ってないわけ!?ほんっと頭にくるわ」  
「……………」  
観月は鬱憤をぶちまけた。  
酒の後押しもあったんだろう。  
さっき九澄が柊をお姫様抱っこしただの、何だの。  
………取り敢えず聞かされる側の身にもなってくれないか。  
 
観月は………。僕に溜まりに溜まった鬱憤を吐露した。  
僕は………。それでも黙って彼女の言葉に耳を傾けた。  
 
 
 
――――――……二十分後。  
 
「―――――――……もうお終いかい?」  
「えっ??………ええ……」  
「どうだい。気分は晴れたかな?」  
「……なんか……すっきりした…」  
「フン。ならいいけどね…もうこういう役は嫌だから、次は九澄相手にやってくれ」  
「!!どうしてアイツがでてくんのよ!」  
「解り易すぎだな。……さあ、九澄の処へ行ったらどうだい」  
「…………」  
「さっき言った台詞をぶつける相手は九澄だ。僕じゃない」  
「………ありがとう」  
観月はそう言い残して広間を後にした。  
「……さて、夜風にでもあたりに行こうかな。ここは君達二人に任せたからね」  
そう言って僕もその場を離れた。  
 
「まあ……僕には関係の無い事だ。恋愛なんて……ね」  
 
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  
 
 
先程の観月とのやり取りを思い出し――――思慮に耽る。  
 
 
彼女を突き動かすモノ……。  
僕にはソレが無い。  
異性への愛―――――其れだけじゃない。  
………仲間。  
タク、観月、そしてクラスメイト。  
付き合いは深くても……浅くても、あくまで戦うのは一人だ。  
強さってなんだろうか。  
単に魔法の威力、性能、術者のスキル……そう思っていた。  
そして僕は其れを得て、一年トップの実力を得た………九澄を除いて。  
奴のプレートは既にゴールド。  
だが……僕に対して使ったのは防御魔法の一回のみ。  
タクに対しては一切魔法を使っていない。  
単なるプレートの色が違うだけで……此処までの実力差が出るんだろうか。  
確かに奴はゴールド、対して僕はホワイトアイアン。  
誰が見ても無謀だった。  
其れでも……僕は九澄に挑戦した。  
結果は………惨敗だ。  
 
何処かに……自分に酔っていたんだ。  
魔法試験をトップ通過したために出た驕り。  
もちろん勝つつもりで戦った。  
………それが……あのザマか。  
傍から見ればどんなにマヌケだったんだろう。  
今のようなやり方では……どうだろうな。  
観月のように支えてくれるヒトがいるのも……悪くないのかもな。  
強さって……そんな物なのかも知れないな―――――  
 
 
「ははっ!!」  
僕は嗤った。  
僕らしくなかった。  
声に出して嗤うのも……そんな考え方も。  
だが……。  
 
 
僕は九澄を追う。  
心を燃やすなら、中途半端な燃料よりも上質な方がイイ。  
 
 
―――――そんなことを色々考えながら、僕は暫くの間辺りをブラブラ散歩をした。  
何時もは一貫した思考しか出ないんだが……今日は沢山の言葉が溢れた。  
少し変な気分だったが………何処か心地良さがあった。  
 
「おう、大門か!!」  
呼び止められる。  
振り返ると津川がいた。  
「なんだい?見た感じ、気の済むまで走ってきたようだけど」  
「………何か侮辱してないか?」  
「思った事を言ったまでさ」  
「相変わらず口の減らないヤツだな。  
 お前はこんな処で何やってんだ?どうせ黄昏てたんだろ!?キザなヤツだな」  
「散歩がキザなら君も当てはまる事になるよ。  
 まあ流石の僕でも、そんな髪型にしてる君には負けるけどね。髪の立ち具合とナルシスト度だけね」  
「おまっ馬鹿にしてんのか!!?………やっぱり口の減らないやつだなぁ。可愛くないヤツ」  
そんなやり取りをしながら館に戻った。  
 
汗をかいたから、シャワーを浴びて……自分の部屋に入り、ベッドに横になる。  
時刻は…もう日付が変わっていた。  
今日一日を振り返ってみる。  
………楽しかった。純粋に。  
くだらない事でも笑えた。  
最初は柊に対する社交辞令で参加したんだけどな。  
幹事の伊勢と三国には感謝しないとな。  
………ほんの少しだけだが。ほんの……少し。  
 
 
眼を瞑ると、直ぐに眠りに堕ちた。―――――心地良かった。  
さっきからこみ上げる不思議な感覚。こういうのも……悪くないな―――。  
 
 
 

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