――――――― 澄み渡る蒼穹  
―― それは私の大切な人といろんな思い出を作ったときの空  
―――― 私は………  
 
「愛花。学校に遅れるぞ?早めに支度しておきなさい」  
「え?あ。は〜い」  
今日もいつもみたいにお父さんと過ごす朝。なんでもない、でも一日一日をつくる大切な時間。  
パジャマを脱いで制服に着替える。今度は鏡の前で髪に櫛をとおして整える。  
「これもつけないとね。おはよう」  
青い……蒼穹を思わせるペンダント。大好きな人から貰ったプレゼント。  
身支度をすませたらいつものように「いってきます」って言って家を出る。  
今日もまた一日が始まる。そろそろ……いろんな出来事が思い出に変わる季節。  
「3年か…結構短かったな〜……」  
なんてことを呟く。でも自分でも分かってる事……  
たとえ短くても、自分にとってとても…とても大切な思い出がたくさんあった時間。  
「九澄君。明日は卒業式だね」  
まだ少し寒さが残るそんな季節。でもすぐに暖かくなっていろんな春をつげる…そんな季節。  
手には空から放たれる光を反射して、もとある色をいっそう金色に輝かせていた。  
この一枚のプレートに今までの…………  
楽しかった思い出。悲しかった思い出。辛かった思い出が詰まっていた。  
「頑張ればできるんだね。ここまでこれるなんて自分でもビックリだよ?」  
学校への道についてそんなことを言う。  
3年で変わった事。変わらなかった事がたくさんある。私は変わったのかな?  
九澄君……ここまでこれたのも…九澄君のせい……だよ?  
風が吹き抜ける。呟いた言葉はその風に阻まれてそこに舞う。  
「愛花〜!」  
久美とみっちょんに途中で会う。これも思い出になるのかな?  
ううん…きっと変わんないよね。私も二人に駆け寄る。  
「おはよう!二人とも!」  
 
―――――― 2年前  
私には一つの感情が芽生えていた。いつも私を影から支えてくれた男の子への思い…  
「よお。柊」  
「あっ…九澄君……おはよう!」  
朝からこの声を聞くだけでとても幸せな気分になる気がした。  
どんな日でもこの瞬間はいつも少し熱い。  
「愛花〜な〜に幸せそうな顔してんのさ〜」  
久美がそんな意地悪なこと言ってくる。でも他愛ない事でも動揺してしまい自分がいた。  
「ふぇ!?べ・別にそんなのじゃないって〜…」  
「ま…か……んとに…愛……ほれ…させ…なんて…九…もな…な…やるよな」  
久美はボソッとよく聞こえない声で呟いている。  
そして久美はよくないことを考えてる時のイジワルな顔で詰め寄ってくる。  
「愛花〜…九澄のこと好きだろ?」  
ブッとふいてしまった。久美はニヤニヤしながら見てくる。  
「な・なななな何言ってんの!久美〜!!」  
「動揺するのが怪しいんだよな〜……それともホントに嫌いとか?」  
ぴくっと体が反応する。たとえごまかす為でも嘘はつきたくない。  
私は何もいわなかったけど久美は続ける。  
「そりゃそうだよな〜…愛花は男がどうなんて興味なさそうだし第一、九澄なんかじゃ……」  
『なんか』。その言葉に口が勝手に動いていた。  
「九澄君はいい人だもん!」  
………………長い沈黙。  
周りには移動教室で誰もいない分静かな沈黙が続く。  
そして私からその沈黙は消えた。自分の言ったことにとても熱くなって声が上ずる。  
「ア…えと…あの……ソの?」  
「あはははは!やっと本音言ったね!で?どうすんの?」  
「どどどどうするも何も…九澄君は私のことなんて……」  
そう。九澄君が私のことなんて、いいって言うわけないし……  
う…自分で考えた事なのにそれだけで目に涙が出そうになる。  
「あいかわらず鈍いなあんたは〜。いいから告ってみなよ?案外上手くいくかもよ?」  
そんな事……っていいそうになる口を久美が指で押さえる。  
「いいから!私が保証するよ。ちゃんと秘訣も教えるから放課後告ってみなよ」  
そんなこんなで半ば強制的に久美が押し切り私が九澄君に告白する事になった。  
半分涙が浮んでそれでも動揺して、体が熱くなった。  
その日の空は青く澄んでいた……  
 
―――――― 放課後  
――― 空は紅い。  
青かった空が紅くなるときというのはなんともいえないほど綺麗だ。  
「柊、いるか?悪ぃ。少し遅くなっちまった」  
九澄君はそんなこと言ってくる。私としては心の準備がまだだったんだけど……  
それで何だ?と九澄君は続けた。  
えと…どどどういえばよかったんだっけ?たしか久美は………  
「う・ううん。えと…たいした事ない…なんてこともないんだけど…えと」  
九澄君は頭にはてなマークを浮かべているようだ。  
ど〜しよぅ久美〜……久美は後ろから見てくれてる…気がする。  
えと…だから…とにかく言わないと……!だよ…ね?  
「九澄君。えと…その……ね?いきなりなんだけど…」  
言って…私……言わないと…でももし……  
想像しただけでまた泣いてしまいそうだ。九澄君はそんな私を見て同様してる。  
早く…今だけでも…九澄君を困らせちゃ………  
「…っく・くく九澄君……その……あなたのことが…好きでふ!」  
…………噛んだ。舌がヒリヒリする。  
いや。それ以上にこんな場面でこんな失態をさらしてしまった自分が恥ずかしい。  
顔が空の色と同じになって目尻に涙を浮べ顔を伏せてしまった。  
九澄君は少しの間、ボーッとした顔で一瞬で理解したように顔を伏せる。  
「あ〜…そ・その…ひ・柊?えと……」  
………………………しばしの沈黙。九澄君はキッとこっちを見て…  
「柊。悪ぃ……な」  
え……?九澄君はなんか付け足してるみたいだけどショックで聞こえない。  
こらえてた涙があふれ出る。九澄君は困ってしまうはずなのに。  
「あ……その…ごめんね。こんな事…迷惑だよ…ね。忘れて…いいよ」  
その場を出て走っていってしまった。視界が悪くて壁にぶつかりそうになる。  
いつの間にか外は暗くなっていて月が見える。  
今日の月は少し蒼かった。校庭の端で泣いてしまう。  
あんなに出したはずなのに……まだでてくるのだろうか?  
「っク……ヒ…ク…グス…く…ずみ……く…ん」  
「っ…柊」  
声に反応して顔を上げる。九澄君は走り回っていたような格好をしてる。  
九澄君は申し訳なさそうな顔で、続けた。  
「悪ぃ……変な誤解させちまって……俺…いつか自分から告白しようと思ってたんだ」  
え……?また衝撃の言葉に驚く。  
「俺も…好きだ」  
涙があふれ、それでも九澄君をしっかり見ながら抱きついた。  
蒼い月は私たちを照らし、影を大きく映す。これが一つの始まり。  
 
周りでみんなは卒業式の準備をしている。やはり先生たちも忙しそうだ。  
「愛花。今日はどうすんの?」  
「う〜ん。今日は少し用事があるかな。ごめん」  
いや、いいよと久美はいってくれた。  
久美のおかげで私は九澄君と恋人になれたんだよね。本当に感謝してるよ。  
「ねぇ…愛花。愛花の願いってさぁ…やっぱり……」  
「うん。もう決めたから」  
あれは……付き合いだして半年くらい経った時だった。  
ひと時の幸せは………ほんの一瞬で終わりを告げた……  
 
―――――― 去年の2学期  
「危ねぇぞ!!皆避けろ!!」  
魔法の入力ミス。誰なのかはわからない。  
でも、こうした前例は前にあったといううわさは聞いていた。  
――― 止め処なく降り注ぐ一閃の矢 それが一つの終わりで始まりだった。  
「おい!そこ!危ねぇぞ!!」  
……………………………次の光景は…想像を絶した。  
いや。想像はしていたのかもしれない。でも………なって欲しくなかった。  
「九……澄…君?」  
どうあっても最初に止まるのは目の前の惨劇。  
大好きな……大切な人の………終わり。  
紅く染まる廊下。壁、床、天井、全てが紅い。  
なんで?どうしてこんな事になったんだろう?目の前には見たくないモノがある。  
嫌………いや………イヤ……イヤ…イヤ…イヤ………  
おかしくなりそうだった。ううん。今おかしくならなかったら……  
「イヤァアアアアアアア!!!!!!」  
いつおかしくなるんだろう?  
 
事は魔法の入力ミス。世間に公開するわけにはいかない。  
入力ミスをした生徒は記憶を消され退学になったらしい。  
九澄君の家族には九澄君は行方不明になったという事で知らされたらしい。  
「九澄……君……」  
今でも信じられない。いや、信じたくないといった方が適切…だろうか?  
「ヤダ……やだよぉぉぉ……また…会いたいよぉ…」  
今ほど世界が絶望に満ちて、どうでもよかったときなんてない。  
ベッドの中でそう呟いた。会いたい、話したい、触りたい、感じたい。  
「ッふ……く…ア…はぁぁぁ………」  
いつの間にか自分を慰めてしまっていた………  
「はぁぁっぁぁあああ………」  
右手で自分の胸を少し乱暴につかむ。  
少しでも九澄君のことを今思い出さないように。  
右手の動きは強弱をつけて激しくもんだ。徐々に高ぶる体に苛立ちをおぼえた。  
「な…んで…九澄…君のこと……かんが…アッ!え…テ……ふぁぁぁああ……」  
胸への感覚だけでは物足りなくなったのかいつの間にか…下のほうに手を伸ばしていた。  
下着越しに上下の動き。徐々に濡れていく下着。  
濡れていたたとっさに指が奥にはいった。  
「ンはぁ!!あ!ア!はぁぅ……」  
苦しい、これが初めてではなかった。でも……今ほど虚無で辛くはなかった。  
いつの間にか腰は浮き、足が痙攣している。  
ベッドの上ではつかみどころが少なく、足が絶えず悶えているようだった。  
下着越しだった手は、じかに触れている。  
「イッ!あ!あ!あ!いいぃいぃ!!!」  
胸をつかんでいた右でさえも下着の中に手をいれ、両手で秘所をまさぐった。  
左で敏感な蕾をこすり上げ、右の指で中を出し入れした。  
「ひアッ!あ!…いぁぁああ……はぁ!…あ…ク…ひあぁぁあああ!!!」  
ビクンビクン!!!と体が痙攣する。  
その瞬間に両手と下着が一気に濡れる。  
体が自由をきかなくなっていた。でも結局…九澄君を忘れたときはなかった……  
 
一週間たっても九澄君のことを忘れたときはなかった。  
「愛花…知ってる?最近さ……」  
周りの声も気にならなくなっていた。九澄君………  
「愛花……ふぅ…あ〜い〜か!」  
「ふぇ!?な・なに?」  
「だから最近校長室に幽霊が出るらしいんだよ。なんでも少女の声で虎を呼ぶんだって」  
虎?意味不明なことだったが少し関心がわいた。  
結局…久美とみっちょんには世話になりっぱなしだな〜……  
 
「愛花…どうかしたのか?」  
「え?ううん。なんでもないよお父さん」  
そうか……とお父さんは言う。お父さんも心配しているようだった。  
結局……一人じゃ何も出来ない自分が悔しかった。  
「愛花。そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」  
何を?といいたかったがお父さんは知っていたように続ける。  
「もう来年は卒業だろう?願いはなんなのか教えてくれてもいいんじゃないか?」  
願い……願い!  
「お父さん!」  
「まぁ…来年を楽しみにしてるさ。少しは考えておきなさい」  
それが……始まりだった。  
 
私は九澄君の家に寄っていた。  
今は誰もいない……九澄君の家。家族の人は家の事情で別の所で暮らしているらしい。  
家が残っているのはいつか九澄君が帰ってくるかもしれないからって……  
お守りの中の合鍵を使って中に入る。  
久しぶりの九澄君の家………でも不思議と昨日のように思えた。  
九澄君の部屋にはいる。前のまま。においも変わらない。  
私はベッドに寝そべって……  
 
 
 
「なあ柊ってこういうのいるか?」  
学校の帰り道で九澄君はそんなことを言った。  
「え?これ……」  
「えと……いままで何もやれなかったからさ…プレゼントだ」  
嬉しい。私はその日初めて九澄君から贈り物を貰った。  
――― 青いペンダント  
―――― まるで今の蒼穹を思わせる綺麗な色だ  
「ありがとう!大事にするよ!」  
その帰り道。突然雨が降ってきた。天気予報は大はずれ。さっきまでの天気が嘘みたいだ。  
 
「えと…その今日は雨降ってるし!泊まっていかないか…?」  
いくら私でもその意味は分かってる。今日は九澄君の家族が知り合いのお葬式でいないことも。  
私は顔が沸騰するくらい真っ赤になって首を縦に振った。  
九澄君はお風呂の準備。私は夕食を作っていた。  
「なんか…新婚さんみたい」  
自分で言った言葉が少し恥ずかしい。私はその間にお父さんに電話をした。  
内容は「雨が降ってきて帰れないから友だちの家に泊まるね」というもの。  
二人で夕食を食べて九澄君がさきにお風呂に入る。  
理由は私が入ったあとのお風呂だと私が恥ずかしいから。  
だったけど…よく考えたら私も九澄君の後のお風呂に……私はお風呂の中でのぼせそうだった……  
九澄君の部屋にはいる……  
男の子の部屋ってもっといろいろ散らかってるって久美が言ってたけどそんな事ないみたいだった。  
「えと…柊」  
ギュッと九澄君が後ろから抱きしめてくる。  
わ〜!!これって緊張するよ〜…  
「えと…電気…消して?」  
久美がなんかこういったらいいっていってたような……  
九澄君は顔を真っ赤にして電気を消した。  
カーテンからこぼれる月明かりが私たちを照らす。  
九澄君はそれからしゃべらず触れてきた。  
「ン…は…あ……」  
両手で胸を優しく包み込む。時折力をこめて下着越しに乳首をつまむ。  
徐々だけど体が敏感になり乳首がたっていく。  
下着にあたって苦しい。下着ごしにこすられるだけで高ぶって声が漏れる。  
「ん!…はぁ!ア…やぁ!やぁ……ひゃぁぁああ……」  
あまりの感覚に髪をブンブン振る。逃れられない心地よさにおかしくなりそうだった。  
ふと九澄君は下に手を伸ばし下にも同様の感覚を与える。  
違うのは押し寄せる波が格段に違うことだった。  
「アァ!いひゃア!…アふぅ…く……ううぅぅうううんんんん!!!」  
ビクンビクン!!体がおかしくなりそうなくらい揺れた。  
ハァハァと息が荒くなり、唾液が滴り落ちる。  
唾液だけではなく下の方からも液体が落ちる。  
そして下着がずらされて丸見えの状態になる。  
「いやぁ……恥ずかしいよぉぉおお……」  
グパァ…と九澄君は大事な所を開いて指をいれたりだしたりする。  
 
「あぁ……ひゃあぁぁああ!!!」  
最も敏感な位置を指の原でこする上げられ声が一気に漏れた。体が熱くて意識が朦朧とする。  
クチュクチュと恥ずかしい音がこだまし、口が勝手にパクパク開く。  
唾液が垂れ落ち九澄君は舌でそれをすくい上げるようにキスをする。  
そのまま九澄君は胸の方に顔をうずめて乳首を吸う。快楽の波はいっそう押し寄せ声を強制的に出させる。  
「あ!ひゃあ!九…ず…君!吸っちゃ!すっちゃあ!!!」  
なめては吸い、唾液が落ちてはキスをしてなめとる。  
「ンチュ…んふぁア!…あ!ふぅ!ひゃあ!やぁ!こえ…でちゃあ!!」  
おへその方に舌を這わせ、敏感な所をすりあげる。  
足の指の先がピンとのび、力が入らない。快楽の波から逃げられない。  
下半身に力が入り、また波にのまれそうになった時九澄君は大事な所に顔をうずめた。  
「!!!!っはぁぁぁあああああ!!!!!」  
ビクンビクン!!!!!  
どうしようもないほどの快楽に既に意識が遠のき快楽は止め処なく襲ってくる。  
敏感な所も吸い上げられ、もう何も考えられない。ただ九澄君に気持ちよくさせてもらうしかない。  
もう口の周りも大事な所もべたべたになっている。  
それを綺麗になめとるようにしたを這わせるけど止め処なくあふれ出る液に限りがなくそれが延々と繰り返される。  
正直こんなにすごいものだなんて知らなかった。  
目はもう何も映さず、体が人形のように勝手に動かされ、たまらなく目の前の男の子が愛おしかった。  
「柊。いれて・・・いいか?」  
声が出せない分、体を揺らして反応する。  
最後に奥の方に舌をのばして液を吸い取りあげて九澄君は自分のそれを出す。  
怖いけど逃れる力もない。ううん。たとえ力があっても逃げたりしない。  
グチュ………!!  
「くはぁぁぁああ!!!」  
痛い。でも我慢しないと。九澄君のことが大好きだから。  
九澄君はそれを察すようにまた敏感な位置をこすり上げ、キスをしてくる。  
「ん!ンチュ…ン…くはぁ!!!!」  
体がおかしい。少しずつでも痛かった事が一気に貫かれたとたん少し楽になった。  
たとえ痛くても……と思ってたことが間違いだった。時間が経つたびに先ほどと同様の快楽の波が来る。  
どうしよう……また…声が…きもちいよぉ…!!  
「ひゃア!!きぁああ…い!…あぁぁああああ!!!!」  
足が痙攣して言う事を聞かない。下半身が支配されているように他愛なく動く。  
足で九澄君を挟んで体を少しでも沈めようとする。でも無理のようだった。  
いきなりの波にのまれ体が大きく揺れる。  
「イ…ふぁぁぁあああああああ!!!!!」  
「くっ!!」  
九澄君は一気に引き抜き外に熱い液を出した。体を気遣ってくれたのだろう。  
九澄君の優しさと体温に癒されるようにその日は眠りについた。  
「別に…中でもよかったんだよ?」  
 
あ・・・気づいたときには夜。いつの間にか昔の夢をみていたみたいだ。  
明日は…願いをかなえる日。  
「九澄君………また会えるよね?」  
 
 
―――――― 卒業式  
みんなの願いがかなっていく。そして私の番になった。  
「柊さん。少しいいですか?」  
校長先生がそういってくる。  
「たとえゴールドでもかなわない願いというのもあります。それでも…」  
「それでも……私の願いは変わりません。お母さんには会いたい。でも…九澄君とはずっといたいんです!」  
分かりました…といって…周りが光に包まれる。  
突然意識が遠のく。体が倒れそうだった。  
「九澄…君…」  
そのまま私は倒れてしまった………  
 
 
「ん……」  
目が覚めた。ここは…保健室?どうして?  
「目が覚めましたか?」  
先生の声がする。私は耳だけ傾ける。  
「残念ですが…あなた一人のプレートでは、人を生き返らせることは出来ませんでした」  
!! じゃあ……九澄君は?会えない……二度と…?  
ほかに用事があるといって先生は部屋を出た。  
私はどうしようもない絶望にのまれそうになった。九澄君に会いたかった……  
 
 
ここは…どこ?  
一面が鮮やかな青。まるで空の上にいるようだ。  
「よお。柊」  
そこには大好きな人がいた。という事は…ここは?  
「天国っていったら大げさだな。まぁ夢…かな?」  
九澄君は「はは」と笑っている。私がこんな思いをしてたのに!  
「会いたかった…会いたかったよぉ!」  
「ごめんな。柊」  
たとえ夢でも。私は今幸せだった。でも幸せな時間は続かない。  
「柊。そろそろ時間だ。言いたい事がある」  
……イヤだ…でも…聞かないと……そして次の言葉は想像外だった。  
 
―――――― ただいま。柊  
 
口には湿った感触。その感触に驚いて起き上がる。  
「九…澄…く…ん?」  
「おはよう」  
抱きついた。今までこらえた分の涙を流した。だって、だって!  
「九澄君!!!会いたかった!!!!」  
しばらく抱き合っていた。九澄君のにおい。懐かしい。  
あれ?でも……  
「九澄君。私、失敗したんだよね?でも…なんで?」  
「あぁそれな」  
ドアから聞こえる声。  
「おい!押すなって!」「私も見た〜い」「お前らいい加減にしろ!」  
ガラッと九澄君はドアを開けるとそこには皆が崩れ出た。  
「あ〜…あはは久しぶり…だな」  
「あぁ。ありがとう」  
 
 
「やはり…失敗ですね」  
残念そうに校長は次の準備に取り掛かろうとしたとき……  
「校長!俺のプレートも使って願い叶えられないか!?」  
「津川!?何いってんだ!お前にも…」  
「いいんだよ。少しだったけどあいつといて俺は楽しかったんだからな!」  
津川の言葉がスイッチになった。  
「じゃあ私も。愛花が元気になるなら安いもんさ」  
「私も……」  
「別に九澄のためなんかじゃないんだから…柊さんがかわいそうだし…」  
そして…その願いは受け入れられた。九澄の蘇生は成功した。  
 
 
「じゃあ……」  
「愛花。元気になった?」  
うん!と私は大きな声で言った。みんなが私を支えてくれた。  
九澄君にもまた会えた。私は今とても幸せだ。  
「おい。桜だぞ。早くないか?」  
そこにはお父さんがいた。ひょっとしてこの桜は……  
空が青い。この蒼穹と同じ色のペンダントが光る。  
今日の天気もまた思い出が生まれる天気。  
桜の舞う蒼穹。私たちは歩き出す。なかった時間をうめる様に。  
今度は……長い時間をかけて ―――――――  
 

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