昼休み。  
今日もC組内では男数人が集まり女体談義に花を咲かせていた。  
「B組の時田の胸の触り心地はマジでヤベェぜ」  
「伊勢あいつのも触ったのかよ?羨ましい…」  
「当たり前じゃねーか俺がみすみす逃す訳ねーだろ」  
「お…俺は興味ねーぞあんなばかデカい乳なんて」  
「九澄、お前は柊のじゃなかったら他は全部『興味ねー』なんだろ」  
「俺は胸より足がそそるなー、すらっと長いやつ」  
「あー三国みたいなな。あれはいいな。」  
「いや、女はケツだろ、ケツ」  
伊勢・九澄・津川・堤本は自分のそそるポイントについて白熱した論争を繰り広げている。  
無論、女子の殺気まじりの視線には気付いていないようだ。  
そんな輪の中、特に話に加わることもなく影沼はちょこんと座っていた。  
 
(そうかーみんなそんな所にこだわってるんだ。  
胸とか足とか…むしろソソるってコト自体よくわかんないし。  
僕はどっちかって言うと小さくてふにふにしてる子がいいなー。  
勝気っぽいのとかはちょっと苦手だから大人しい子で…  
そう…乾さんみたいな…わー!!わー!!!何てこと考えてるんだ僕は…  
まぁ、なんにしろ僕には縁がないコトだろうな)  
などと呑気なコトを考えていたその時―  
 
 
クイクイ…  
   
 
「?」  
突然袖を引っ張られた気がして後ろを振り向いた。  
そこにはクラスメートの乾深千夜が立っていて、確実に自分の袖を掴んでいた。  
(え?乾さん??が、僕の袖掴んでる?)  
「……。」  
「……。」  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(なんだなんだ!?無表情だから考えていることが全く読めない…)  
「えっと…乾さん?」  
とりあえず呼んでみる。  
すると深千夜はグイっと袖を引っ張ったままスタスタと教室の外へと歩き出した。  
(えぇー!?僕連れて行かれてる!?)  
思いもよらない事態に少々パニックに陥った。  
が、どうしようもないので深千夜が止まるまで引きずられるコトにした。  
その辺の諦めの良さが影沼の良いところであり、情けないところでもある。  
   
しばらく歩くと、深千夜はピタリと足を止めた。  
そこは魔法手芸部の部室前。  
カチャカチャと鍵を開け、影沼を中へ入れると後ろ手に鍵を閉めた。  
(乾さん、一年なのに鍵持ってるんだ。すごいなー…)  
拉致・監禁という大変な目にあっているにも関わらず、  
影沼は的外れなコトを考えて1人関心していた。  
「…。」  
「…。」  
しばらく沈黙。  
「…。」  
(いやいや、沈黙って。ここは僕から喋りかけるべきなのかな?  
でも、なんて?しかも連れてこられたのに僕から喋りかけるの?)  
ぐるぐると頭をフル回転させてみるも、なかなかいい答えは見つからない。  
(とりあえず…なんの用か聞いてみよう…)  
「あのっ「…影沼君も、ああ言う話が好きなの?」  
かぶせられた…少しショック。  
「え!?」  
「さっきの…男達がしてた話」  
「あ…えっと…女の子の話…?好きではないけど…  
いや、違うかな…正確に言うと嫌いではないけど興味が無いっていうか…  
あっ、興味が無いって言ったら嘘になるんだけど…よくわからないっていうかなんていうか…」  
(うわーなんだ俺最悪じゃないかコレ!?何を口走ってるか自分でも理解不能だ…)  
目の前の深千夜の顔がどんどん険しくなっていく。  
眉間に皺を寄せて口をツンと尖らせている。  
(どうしよう!どうしよう!なんか怒ってる!?  
でも乾さんって怒った顔も可愛いなぁ…僕が怒らせといてなんだけど…)  
「って、痛いっ!?」  
プツンっと音を立てて髪の毛が一本…  
乾さんの手によって引っこ抜かれた。  
(なんだよもう!なんで僕がこんな目に…乾さんブツブツ言ってるし。  
なんて言ってる?小さすぎて聞えないよ乾さんっ!!)  
 
『一髪操作(ワンヘアーマペット)』  
 
「!?」  
これが深千夜の得意な物体操作系魔法だと気付いた時にはもう遅く―  
影沼は深千夜のヌイグルミと同じ動きをした。  
自分の意思に反し両手は大きく広がり、思いきり目の前で交差された。  
   
   
   
「えっ…えぇぇーーーー!?」  
この日初めて、影沼は大きな声を出した。  
自分の腕の中に、小さな深千夜がすっぽりと収まっていたのだ。  
深千夜は下を向いているので表情は読み取れないが  
真っ赤になった耳を見る限りきっと照れた顔をしているだろう。  
「い…乾さん…これは一体…」  
声を上擦らせながら尋ねてみる。  
しかし深千夜は何も答えない。  
その変わりにギュッと力を込めて影沼にしがみついてきた。  
(!!!ダメだ…なんか可愛いよ乾さんっ!なんかいい匂いするし乾さんっ!!)  
ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ  
多分普段の自分の10倍ぐらいのペースで血液が循環してる気がする…  
そして普段の100倍ぐらい緊張してる気がする…  
「影沼君…が、そういう話をするのは…嫌だ。」  
(あ…アウト―ッ!!その発言は完全に僕をその気にさせているよ乾さん!!  
そうやって僕の胸に顔を埋めるのは完全にアウトだよ乾さんっ!!)  
「あ…の、ゴメンね乾さん。僕は別に…そんなつもりじゃなくて…  
どっちかと言うと胸が大きいとか足が綺麗とかはあんまり興味なくて…」  
しどろもどろになりながらも何とか言葉を繋げる。  
「ホントに…?」  
おずおずと視線をあげる深千夜。  
不安げに眉を八の字に下げ、泣きそうな目で訴えてくる。  
影沼は自分でもヒく程にブンブンと頭を立てに振った。  
(あぁっ…自分の下腹部辺りに二つの柔らかいものが当たってるっ…  
これは気のせいじゃないよな!?絶対当たってるよな!?)  
これまでの人生の中でこれほど柔らかいものが体に触れたことがあっただろうか?  
否。考えるまでも無く答えはNOだ。  
(ダメだ…僕は狼になってしまうかもしれない…  
狼になる度胸もないくせに狼になろうとしているもう1人の僕がいるっ…  
頑張れいつもの僕っ!いつもの冴えない僕っ!!)  
 
深千夜は片手でチョイチョイと手招きをする。  
影沼は理性を抑えながら少しかがんであげた。  
耳元へ寄せた深千夜の唇から息がかかり、  
つま先から頭のてっぺんまで一気に電流が走るような感覚に捕われた。  
(耐えろ!!耐えろ自分っ!!)  
頭の中で呪文のように繰り返し唱える影沼だったが―  
 
 
「一髪操作(ワンヘアーマペット)はワンアクションしか出来ないから…  
この続きは影沼君に任せる…」  
「っっっっっっっっ!!!!」  
(耐エロ耐エロ耐エロ耐エッ…)  
ボンっと頭の中が爆発した。  
結論・耐えれる訳がない  
「い…乾さん…」  
深千夜の鼓動が体を伝わってくる。  
自分と変わらないくらいドキドキしている。  
(どうしよう…これはかなり嬉しい事態なんじゃないのか!?  
でも…一体何をすればいいのか全くわからないよ!!まず何から始めるんだ!?  
わー!!もっとみんなの話ちゃんと聞いてれば良かったよ…  
そんな気持ちとは裏腹に恥ずかしながら僕の下半身はもう狼になる気満々だ!  
どうする!?どうする俺!!!)  
 
 
 
@とりあえずオヤジギャグで場を和ませてみる  
Aとりあえず伊勢の真似して体を触ってみる  
Bとりあえず下半身の狼に全てを託してみる  
 
 

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