魔法を学ぶことが出来るという特異な学び舎、その名は聖凪高校。  
外観にはこれといって特徴の無い校舎が夕暮れの朱色に染まっていく。放課後はとうに過ぎており、今はクラブ活動が支配する時間帯だ。  
「……ひぃー、疲れた…」  
生徒会魔法執行部と書かれた扉がガラガラと開き、黒い短髪の少年が前かがみになって出てきた。  
足取りが不安定で、額には脂汗が滲んでいる。彼、九澄大賀は魔法執行部所属の一年生。  
日々の激務のせいで休みがほぼ無いのに加えて、周りが先輩ばかりな故に下っ端としてこき使われる疲労が重なり、この日の活動報告を書類にまとめ終わる頃には体力自慢の九澄も足がフラついた。  
「ちくしょう…こういう事務っぽいことは慣れてねーんだよな。駄目だ、今日は帰ったら適当に風呂入って寝……」  
顔を上げた先には、何の変哲も無い壁と大きな窓があるはずだった。  
しかし、猫背気味になった九澄の目に、床の上に立つスラリと伸びた長い足が見えた。  
「(ん……?このハイソックス……学校の?)」  
宇和井さんが戻って来たのだろうか、と九澄は体を起こす。  
しかし、そこに居たのは副部長の宇和井ではなかった。  
「よ、九澄」  
「…三国?」  
いつもの大雑把で男っぽい口調で軽い挨拶をしてきたのは、同じ班の同級生、三国久美だった。  
その長身に映えた長いストレートの髪も相変わらずだ。  
しかし…。同じクラスで過ごす授業や休み時間以外でこうして会うことは珍しかった。いや、この日が初めてかもしれなかった。  
「こんなとこで何してんだ三国。執行部に用事なら誰もいないぜ?」  
俺が最後なんだよな、と九澄は執行部室の鍵を片手で放り投げて受け、チャリンと音を鳴らした。  
「まあ俺一人で良いんなら力貸してやってもいいけど…」  
執行部に問題解決でも依頼しにきたのだろう、と九澄は解釈して話を進める。  
ところが、三国はすぐ手を振って打ち切った。  
「ああ、違う違う。用事があるのは九澄、お前だ」  
「へ、俺?」  
九澄はポカンと口を開けて自分を指さした。  
三国はその間の抜けた表情に苦笑いしながら、  
「うん、一人だっていうのならむしろ都合がいい」  
と言って頷いた。  
人の居ない静かな廊下に、陽の落ちかかった夕暮れの光が窓から差し込んでいる。  
ありがちなこのシチュエーションに九澄は見覚えがあった。気づいた途端、どんどん動悸が高まっていく。  
「(え…えっ? オイオイ、これってクラスメートの雰囲気じゃないよな!? まさか…いや、三国に限ってそれは…!)」  
自問自答と動悸の連鎖。  
目の前の少女にそれを悟られまいと、九澄は最大限に平然を装って聞いた。  
「俺に……用事って?」  
照れ隠しでつい真剣な表情になってしまっていた。  
 
「あのさ……九澄」  
 
自分の名前が彼女の口から出たことにすら、今の九澄には気持ちを昂らせていた。  
緊張した空気にまともに相手を見られず、思わず目を閉じている。  
 
「愛花のこと、気になってんだろ?」  
 
「…は?」  
目を開けると、何やらニヤニヤしながら胸元で腕を組んでいる三国の姿があった。  
「いちいち分かりやすいよな九澄は」  
「なっ…!」  
顔が赤くなるのを止められず、九澄はうろたえる。  
この想いのことは、誰にも話していないのに。いきなり伊勢カヲルに気づかれたと思えば、今度はこの少女まで!  
隠し事の出来ない自分の顔が呪わしくなり、九澄は何かに頭を思い切りぶつけたいような衝動にかられた。  
「な、何勝手に決めてんだよ!ひ、柊のことは別に、俺は…」  
怒鳴る勢いで真っ向から否定しようとしたが、自分の気持ちに嘘はつけず、しどろもどろになる九澄。  
「大丈夫だって、別に誰にも言わないから」  
ヒヒヒ、と笑う三国の顔は、愛花をイジっているときと同じ表情をしていた。  
「…愛花も九澄のことが気になってるみたいだしな」  
「ま、マジで!?」  
思いがけない情報に、九澄は一瞬脳内で天に昇る自分を描いた。  
俺のことを違った目で見てくれている……柊が!?  
「本ッ当に分かりやすい奴だなー…。それはそうと、この事は公表したくないんだろ?廊下で喋るのはマズいんじゃないか?」  
「あ……」  
言われてみれば、今は人が居らずとも、いつどこぞのお喋りが通り過ぎないとも限らない。  
そして、九澄の手には先ほど錠をかけたばかりの、執行部室の鍵が握られていた。  
 
実のところ、校内にボルトの生首が転がってきたあの日から、親友の愛花と、この少年の気持ちに三国は気づいていた。  
奥手な九澄と、ニブチンの愛花のやり取りは見ていて微笑ましくて、そんな二人を時々からかうことが彼女は楽しかった。  
そして、二人の距離は徐々に近づいている。  
友人として後押ししてやりたいから、相談でも受けてやろうかとわざわざ三国は九澄に会いに来たらしい。  
女生徒三人組の中で一番面倒見のいい彼女らしい行動だと九澄は思った。  
部室の戸は閉めてあって他の誰かに聞かれることはないし、三国は親友とまで言える関係ではないが信用はできる。  
意を決して、九澄は愛花に対する想いの丈と、この先自分はどうするべきなのだろうかと、三国に話した。  
「なるほどな……」  
うんうん、と頷いて聞き入っていた三国は、足を組み、偉そうに腕を組んで椅子に座っていた。  
「…まあ、それはもう告白すべきだと思うな」  
「え、えぇぇっ!?」  
いきなり!? と九澄は驚いた。  
「あと一息、ってとこにきてるってことだ。愛花は鈍いからな、九澄の方から積極的になってやらないと」  
「うーん……」  
確かに、このままではらちがあかないような気がした。  
愛花との距離にいつしか慣れかけていた九澄に、告白という言葉はひどく衝撃的に突き刺さった。  
「それにさ、その先のこともあるだろ?」  
いつになく、三国が真剣な目をしていた。  
親友を思う強い気持ちの表れだろうか。高い身長も相まって、九澄は威圧感を感じ取った。  
「分かってるさ。俺が前に立って、アイツを引っ張ってやらなきゃ…」  
飲み込まれないよう、真摯な想いを込めて九澄は三国と目を合わせた。  
「そうそう、そのまま部屋に連れ込んで…」  
「そう、勢いのままにベッドイン…ってするかぁぁぁぁ!!」  
食事中ならちゃぶ台ひっくり返しているであろう形相でツッコむ九澄。  
三国はまたもニヤニヤ顔で九澄をからかっていた。  
「なんだ、しないのか?」  
「で、で、で、出来るわけねーだろが!だって俺も柊も、まだ……」  
否定しながらも一瞬想像してしまった九澄の顔は真っ赤だ。  
「でもまあ、ヤるときも九澄がリードしてやらなきゃ駄目だぞ? 愛花は真面目だけど頼りないんだから…」  
三国は立ち上がると髪をなびかせ、九澄とすれ違うように歩きながら言った。  
「ヤるの確定かよ!」  
九澄は後ろに立った三国に振り向かずに怒鳴る。  
「お前らはそーいうの早そうだからな。…で、九澄は経験あるのか?」  
「あるわけねーだろ!」  
「…だと思った」  
三国の呆れたような声が響く。  
「ヘタなことして愛花に傷でもつけられたら困るし…、九澄、本番の前に一度は経験しといたほうがいいぞ」  
「馬鹿野郎、そういう相手がホイホイ居たら苦労しねーよ…」  
腕を組んでため息をつく九澄。  
 
その後姿に、三国は突然抱きついて腕を回した。  
 
「……み…く………!?」  
最初何が起こったのか分からず、状況を飲み込んでいくうちに痛いほどに心臓が高まるのに気づく九澄。  
年頃の少女の甘酸っぱい香りが鼻をくすぐり、背中に柔らかい二つのものが押し当てられている。  
「確かに…そんな女がワンサカ居るわけないよな」  
左耳に暖かい息がかかり、九澄は三国の顎が自分の肩に乗っていることを知った。  
 
「だったら、私が教えてやろうか?」  
 
 
人に悟られないよう電気を消して、校庭側のカーテンを全て閉める。  
部室の鍵には既に錠がかけてある。  
外側から開けることの出来る唯一の鍵も、中にいる九澄が持っているため誰かに入られることはない。  
だが……誰にもバレない、と自分に言い聞かせても、九澄は落ち着かなかった。  
自分がソワソワする理由が、第三者にバレることを恐れているわけではないからだ。  
「さて……」  
一方の三国は冷静だった。戸惑い、目のやり場すら落ち着かない九澄を指示した場所に寝かせる。  
「九澄は……。キスについて、どのくらい知ってる?」  
仰向けになった九澄に、四つん這いで同じ目線のところまで圧し掛かっていく三国。  
長い睫の揃った二つの目が、猟奇的な色を瞳に宿しながら瞬いた。  
「ど、どのくらいって…」  
具体的な言葉が思いつかないばつの悪さと、まっすぐ見つめてくる三国に恥じらいを覚え、九澄は目を逸らしていた。  
「ま、実際やってくれたほうが早いよな。……やってみなよ。私が愛花だと思ってさ」  
目尻の整った顔が、クスリと微笑んだ。  
九澄は無茶な相談だ、と思いまた顔を赤らめた。  
本命はあくまで柊…とはいえ、モデルのような抜群のスタイルと非の付け所の無い顔立ち、風に靡けば思わず見とれるようなサラサラの長髪も相まって、三国は男子からの人気が高い。  
一人の美少女として意識せざるを得ないではないか。と、九澄は心の中でその小悪魔的な表情に文句を垂れた。  
「…いいのか? お前は」  
お前自身は、本当にこんな事をしていいのかと。  
本当の気持ちが別の女に向いている奴に、友達だからってここまでしていいのかと。  
こうして、冷たい床に寝転がる前にも彼女に何度も聞いたことを、また聞いた。  
「…さっさとしなよ。別に減るもんじゃなし」  
返ってくるのは、同じようなあっさりした返事だけ。  
もう一度聞いたら流石に怒るよな、と九澄はやっと意を決した。  
「分かった……。失礼しますっ」  
らしくない丁寧語を最後に、九澄は少しだけ体を起こすと、三国の瑞々しい長髪にそっと指を絡めた。  
そのまま彼女の後ろ頭を支え、九澄は三国の薄桃色の唇に自分のそれを押し付ける。  
 
「……んっ…」  
第三者の視点で見たことしかなかった、正真正銘のキス。  
ほんの数秒、九澄は触れた唇の柔らかい感触に酔いしれた。  
このぐらいかな、と九澄は手を離してまた頭を床に預けた。  
「……」  
少しの間、沈黙が続いた。  
「…ここまで知らないとは……」  
先に沈黙を破ったのは三国だった。  
ハー、と心底呆れた表情でため息を漏らす。  
「情けないね、私は。こんなドラマの接吻しか知らんやつに愛花をやるわけにはいかないな」  
母というより父親のような口調で嫌味を言う三国。  
「え……うそっ! なんかマズかった!?」  
わざとやったわけではない九澄は、何がいけなかったのか尋ねるしかない。  
「しょーがないなあ」  
やれやれ、と苦笑いすると、三国は九澄の後頭を両手で抱えるように持つ。  
「噛んだら殺すからな」  
その途端、突然とも言える早業で吸い付くように九澄の唇に彼女自身のを重ねた。  
「…ッ!」  
勢い余って前歯同士がぶつかり合い、その痛みに思わず九澄は呻く。  
声の出た一瞬、口が開く。三国はそれを見逃さず舌を進入させた。  
「!? ん……ふぁっ…!??」  
初めての感覚に身じろぎする九澄を押さえ込みながら、三国は九澄の口内に濡れた舌を這わせ、時折彼の舌に自分のを絡めた。  
汁まみれでのたうつ桃色の蛇は極めて乱暴で、九澄は自分の唾液が絡めとられるたびに顎から力が抜けていくようだった。  
やがて、口の中がカラカラになった、と九澄が感じた時。  
淫らな音を立ててぬらついた熱い液体が口の中に流れ込み、九澄は目を見開いてまた呻きだす。  
「…………!!!」  
全て飲み込まされ、息苦しくなったところでようやく唇が離れた。  
混ざった唾液が二人の間でまだ繋がっており、見下ろしている三国の顔はほんのり赤い。  
汚いはずのそれは、今は雨に濡れた蜘蛛の糸のように美しかった。  
 
「…うわっ……」  
三国は、腿に当たる何かの感覚に目を向け、驚いたように声を漏らした。  
九澄の股間の位置にあるズボンの布が、引き伸ばしているかのように見えるほどシワのないテントを張っている。  
「早いな……おいおい、この段階で情けないよ?」  
「う…うるせーよ……!」  
九澄は怒鳴っていたが、頬に熱を帯びながらの暴言はちっとも説得力が無かった。  
「ウブだとは分かっていたけど重症だなこりゃ。耐えられるなら九澄の好きにさせてやったのに……」  
目にかかる前髪を横に払いつつ、三国は九澄の両足に腰を落とした。  
「ま、私はコッチの方が楽しいからいいんだけどな」  
またも怪しい色が三国の瞳に宿った。  
曇りのない透き通った眼に九澄自身の顔が映り、九澄は背中の毛がゾッと逆立つのを感じた。  
「ほーら、まだ固くなるんじゃないか?」  
三国は制服の裾に手をかけていた。  
「え!?ちょ、待っ…!」  
予告なく次に移ろうとしている三国に九澄は慌てた。  
しかし、聞いた様子も無く、加えて躊躇いもなく三国は脱いでいた。  
清楚な色調のセーラー服が無くなり、次の瞬間、生まれたままの姿がそこにあった。  
九澄は鼻血を噴くのも忘れ、目を奪われ意識すら朦朧とした。  
「どう? 愛花もなかなか凄いけど、私もこっちには自信あるんだよな……」  
薄暗い密室。白い素肌で僅かな光を受けている三国の神秘とも猟奇ともとれる姿。  
魅力を超えもはや魔性とも呼ぶべき大きな胸を、アンバランスに小さい黒のブラが必死になって受け止めているようだった。  
「ねえ……揉んで?」  
三国が言う。  
それがどこの事を指しているのか九澄はすぐ気づき、ゴクリと唾を飲む。  
「ほら、ビビってんじゃないよ。男だろ?」  
僅かに動くたび、そのやや縦長の胸が熟した果実のようにぷるんと揺れる。  
躊躇っていた意思を、生理的な欲望が消し去っていくのに時間はかからない。  
それでも九澄はやや慎重にではあったが…。三国のそれに手を伸ばしていた。  
 
乳房の下からそっと手を当てただけで、重みと柔らかさを感じて九澄は動悸を高まらせずにはいられなかった。  
ぎこちない動作で力を込める。それは、握れば握られるままに形を変えた。  
「弱いなあ…。ねえ、もっと力入れてよ……」  
甘い、少し震えた声で、三国が強い快感を求めてくる様は恐ろしいほどに扇情的だった。  
九澄は頷くと、もう少し力を込めて慎重な動作で揉んでみる。  
すると、されるがままにふにゃっと潰れていた胸が、あるところでグッと反発してきた。  
「んぁっ…」  
三国が小さな甲高い悲鳴をあげた。  
「あっ…だ、大丈夫?」  
やりすぎたか、と九澄は慌てた。  
しかし、三国は妖艶な表情で笑ってこちらを見返しており、苦痛な様子ではなかった。  
「ううん…いいよ。凄くいい……続けて…」  
余裕の口ぶりだった三国の声に、荒い息遣いが混ざり始めている。  
「これ…邪魔……」  
とうとう、三国は上半身最後の一枚であるブラに手をかけて脱ぎ捨てた。  
支えを失った胸が大きく揺れると、ツンと立った乳首があらわになる。  
全裸の姿に限りなく近づく。残っているのは、長い足に深いところまで密着したハイソックスと、九澄にまたがる股間の部分を覆い隠すスカートだけだ。  
耐え難い思いを感じて、九澄は今度は進んで三国の胸に触れていた。  
「…っはっ……やっ……はぁんっ……」  
敏感な部分を責められるたび、三国はいつの間にか目を閉じて喘いでいた。  
形では押し倒されながら九澄は、一人の美少女の淫らな声を聞きたい一心で責めている。  
垂れ下がる三国の長い髪が九澄の首筋を羽箒のように撫で、九澄のイチモツは更に固さを増していった。  
 
「はぁ、はぁっ……」  
感じる部分を絶え間なく刺激され、頬を染め呼吸を乱している三国は一見疲れているようにも見えたが、九澄が手の動きを止めるとねだるように困ったような顔で彼を見つめた。  
「ンッ…揉んだら、大きくなるって、本当なんだな…九澄……」  
「そ、そうなのか…?」  
「私……もっとガキだった頃から、揉んだら感じちゃって…」  
それこそ、まるでつるぺただった頃から、と三国は続けた。  
気づいたその日から、誰も居ない時、誰も来ない場所を見計らって、溜まった時はいつもそうやって自慰をしていたらしい。  
続けているうち、初めは平らだったそれが、やがて片手に収まらなくなり、しまいには服の上からも目立つほどになったのだという。  
「そんなんででかくなるとか…俺、初耳だぜ……?」  
どういう仕組みで成長していくのか、九澄が脳内で勝手な憶測を始めようとした時。  
下半身に電撃が走ったような感覚に全身が痙攣した。  
「ぃっ…!?」  
目の前の胸に目を奪われていた九澄は、喘ぎながらもズボンのチャックを下ろしていた三国の行動に気づいていなかった。  
黒いズボンの裂け目から飛び出す自身の二号機は、ひとたび握られただけで押し殺し切れない悲鳴が漏れるほど硬くなっている。  
「うっわ…ビクビクいってる…。こんなとこだけは男らしいんだな……」  
普段の倍の大きさにはちきれんばかりに硬く膨らんでいるそれを見て、三国は感心したように言った。  
「…でも、やっぱりガキだよな」  
「ぐっ…いちいちうるせーんだよ!」  
これでも努力してる方だぞ、と目をそむけて怒鳴っている九澄のものは、まだ半分ほど剥けきっていなかった。  
「……いいさ、私が男にしてやるから」  
弱い部分を責められなくなったことで、三国は普段の会話ペースが戻り始めている。  
「は……?」  
一体何を、と九澄が言おうとした時。  
三国はゆっくりと姿勢を屈め、天井向かって伸びている根に顔を寄せた。  
それから、蝋燭を吹き消すように丁寧に息を吹きかけた。  
「!!!???」  
たったそれだけで全身が跳ね上がるように痙攣する九澄。  
その様子に満足そうに微笑みかけると、三国はすぐさま九澄の陰茎を口に頬張っていた。  
 
「まっ……待った、待ったッ!」  
自分のが包み込まれた感覚に、九澄は取り乱す。  
しかし、振り払おうにもできない。少しでも動くと三国の口腔に並ぶ硬い歯に根が触れ、頭がイカれてしまいそうな物凄い刺激が走るからだ。  
三国は口に咥えたまま何も喋らず、やがて舌を剥けかけた亀頭にそっと這わせた。  
「つっ………!!」  
――ずっ…じゅっ………ちゅるっ…ぴちゃっ…ぬちゃっ……ずるっ…。  
亀頭からまた舌が離れたと思うと、三国が今度は口をすぼめて吸い出すように陰茎を撫でる。  
そのまま舌を巧みに操り、剥けきっていない皮を徐々に押し広げていく。  
「ぎっ……な、何してんだよ三国!」  
まるで何も聞いていない三国に、九澄の声は届かない。  
夢中で舌を這わせており、穴に染み込んだ唾液の激痛に九澄はまたも悶えていた。  
自分の恥部が、女の子に触られていることを頭で認識するたび、九澄はカチカチの肉棒がますます熱くなっているのを感じていた。  
 
「ふうう…」  
頬を窄めて男根に舌を絡ませていた三国の顔が、ようやく離れた。  
「はぁ、はぁっ・・・」  
九澄は殆ど五体から力を抜いており、息も切れもはや何も抵抗できない状態だった。  
意識だけはまだハッキリ保たれているらしく、反抗的な目つきは残したままだったが。  
「……っの…!」  
快感に脳を揺さぶられることが無くなると、九澄はプライドを傷つけられた先ほどまでの行為に怒りがこみ上げてきた。  
「三国、あのなぁっ! いい加減に……!!」  
良いように弄ばれていることに腹が立ち、大声を上げる九澄。  
しかし、大声は意味の無い喘ぎ声に変わった。  
「くぅあっ……!?」  
痛すぎる快感。弓なりにビクンと背を跳ねさせる九澄。  
あろうことか、三国は剥けきった亀頭をさらに指で押し広げ、それを舌先で小突いていたのだ。  
尿と精液しか通ったことのない管の中。ついさっき唾液が少しばかり入ったことがあったとはいえ、直にモノで撫でられる感触とは段違いだ。  
「そっか……気持ちいいんだ、ココ」  
触れては離れるを繰り返していた舌が、さらなる奥地を求めるかのように力を込めてグリグリと穴に押し付けられる。  
指の代わりに舌が、未開の地まで尿道を犯そうとしているのだ。  
「っ!!あぁーっ!や、やめろ三国、まじで、まじ…やば……ひぃっ!」  
無防備な細き管の中。この甘美な責めから自らを守るものは、少年の中には何も無い。  
直に伝わってくる刺激から逃れるすべもなく、九澄は液にまみれた舌にされるがままとなっていた。  
「いい子だな……可愛いよ九澄」  
「くそっ…俺は全然嬉しかねえよ!!っつーかだいたいこれ普通男女が逆…」  
だが…こうやって九澄が、溜まっていた文句を精一杯三国にぶつけようとするたび。  
喋らせないぐらいの快感を、彼女は九澄に何らかの方法で与えてくるのだ。  
唇を窄め、口の中の唾液をひねり出すと、九澄の尿道にあふれ出んばかりのそれを注ぎいれた。  
「っああっがぁっ!!? な、何やってん…あ、あひぃ、ひぃぃぃぃぃっ!!」  
体温より熱い液体が、粘りのせいですぐには流れず、ゆっくり、ジワジワと、九澄の肉棒に進入していく。  
亀頭を駆け、尿道を伝い、もっと奥…。自身の体を知るはずの九澄さえ、ここはどこだったか分からないような奥にまで入り込む唾液。  
そして、膨大な量のそれは全てたどり着く…。  
溜め込まれた、玉袋の中へと。  
 
「ぁっ…ぁあっ、があぁぁっ!!」  
蹴られれば凄く痛いあの場所。  
敏感で、大切なそこへ、生きたものから離れたばかりの熱い液が流れ込む。  
度を越えた刺激に、痛さが不意に消えていく。  
苦痛が消えたときに取って代わるのは、この行為が当たり前となったような、依存的な感覚…。  
…しかし、紙一重保っている九澄の理性は、その現実を受け入れなかった。  
「ぁぁっ…やばい……熱…これ、……っっっ!!!」  
この先の現実に抵抗を見せるも、単語しか言葉に出来なくなっている九澄。  
あれほど男根が硬さに磨きをかけるような事をされ、挙句の果てには管だけではなくその根元まで犯された。  
本能の最後の壁。これにストップをかけているのは理性1つでしかなくなっていた。  
「いいよ……出したらいいじゃん」  
何でもなさそうに、クスッと微笑みながら言う三国。  
「だ、だけど……ぁっ…」  
「ほら…。我慢しすぎ。こんなに汗かいちゃって」  
吐息1つで、九澄はもう声を出さずにはいられない。  
感度が飛躍的に高まっている証拠だった。  
「飲んでも…いいよね」  
長い指でチョイチョイと男根をいじっていた三国は、自然な動作で唇をそれに被せて舐め始めた。  
ずっと味わっていたい大好きな飴を舐めるときのように、丁寧に、満遍なく…欠片も残さず味わうように優しく。  
もうすぐにでも飛び出してくるであろうモノを催促するように、三国は咥えながら九澄の目を見つめた。  
仰向けになった九澄に圧し掛かるようになっている三国は、九澄のそれを咥えながら彼を見ようとすると必然的に上目遣いになる。  
この表情が、九澄にとってはとんだ起爆剤だった。  
普段から眉を吊り上げ気味な表情が多く、立ち振る舞いもサバサバしている三国が、今や子供のように眉の垂れた上目遣いでこちらを見つめてきているのだ。  
そうして……。  
最後の堤防が、切れた。  
「ーーーーーーーっ!!!」  
理性の全てが本能に飲み込まれた瞬間。  
九澄の男根からは堰をきったように勢いよく濁った液が飛び出した。  
「ぅっ……!? っん……ぅ…………ふっ…!!」  
――びゅるるるるっ…!びゅくっ、びゅくびゅくびゅくくっ………!!!  
泉のごとくとめどなく大量に吐き出されてくる。その勢いに、自ら吸い付いた三国も驚いていた。  
一方、九澄は驚いているだの恥ずかしいだの考えているどころではない。  
全部、吐き出してしまいたい……。本能に従っていた。  
溜まりにたまっていたあまりに膨大な精液は、飲み込もうとするも間に合わない三国の口から漏れていく。  
「(凄い……九澄のヤツ、こんなに……!)」  
 
 
「…出すぎだっつーの。まさか、最初から溜めてたんじゃないよな」  
「だ、誰のせいでこんなことになったと……」  
終盤、なりふり構わず暴走するペニスが三国の口を離れてまで暴発し、三国は顔から前髪まで匂いのついた白い液でびしょびしょになっていた。  
最初から口に咥えており、相当飲み込んでいたはずなのだが…。  
それでも、受け止めきれなかった精液の伝った跡が口元から顎先まで残っており、チャックのみを開け男根を取り出していた九澄のズボンには飽和するほどに液がしみていた。  
「とりあえず、この様子なら次も行けるよな」  
「逆だっつーの……わりぃけどもうカンベンしてくれ、俺はもう疲れて……」  
と、自分のを見下ろした九澄の顔から血の気が引いていった。  
全て吐き出したはずの塔は、まるで衰えを見せずに固く伸び切ったままだった。  
「…申し分ない、か。これなら……」  
と、三国は九澄に跨ったままの体勢でスカートを前から持ち上げた。  
柔和な肉を締め付けるような下着に……光る染みがついていた。  
 
「……ッ」  
雫の輝きに、九澄は息を呑んで硬直した。  
本当は事故で何度か三国の下着を見てしまったことはある。  
しかし、あのときは一瞬であり、しかもその直後に思いっきりしばかれたものだった。  
ところが、今や彼女は九澄に濡れた下着を見せ付けて微動だにしない。何より、三国は自らスカートをめくりあげているわけで……。  
「…………!!」  
――いくらなんでも、好きでもない男相手にここまで出来るか?教えてやるという建前は嘘で、やっぱり三国は俺が……  
そんなことを思い浮かべ、彼の股間はまたも硬さに磨きをかけて盛り上がっていく。  
「私のワレメ、もうこんなにびちゃびちゃになっちゃって……アンタのせいだからね」  
そう言いながら下着とスカートを一気に脱ぎ捨てた三国は、もう完全に一糸纏わぬ姿だった。  
そこらで売ってる雑誌のグラビアのほうが劣っているのかと思える、完璧なプロポーション。  
そんな少女が股間の中洲に生える毛を淫乱な匂いでずぶ濡れにしている。  
「ほーら、もっと見てもいいんだぞ九澄。もう二度とお目にかかれないかもよ…ほらほらっ」  
「ぐっ・・・や、やめろっ……」  
初めては愛花がいいと心の奥で夢想していた九澄は思わず後退ろうとするが、縦に割れた陰唇から滴る愛液からは目が離せなかった。  
呆気なく壁際まで追い詰められてしまう。  
「今更、もう嫌だなんて言わせないよ」  
「うっ……ご、ゴムなしでやったらマズいだろ! 俺持ってないし、それより三国が…」  
「そうだなあ、孕んだら責任とってもらわないとなあ……」  
そんなことで躊躇ってたのか、と三国は短いため息をつくと、自分の指で股間の裂け目を広げてみせる。  
「まあ、一回ぐらい……大丈夫だって」  
「お、オイ待っ…!」  
「九澄はさっきから『待って』ばかりだな!」  
責任という言葉が九澄の耳に焼きついたまま。  
青ざめた表情の彼を無視して、三国はいきり立った亀頭に自分の裂け目を持っていって腰を落とした。  
濡れた鮮肉色の丘がその固く伸びきった肉棒を受け入れて歪む。丘に生えた襞の感触が、敏感になった肉棒を撫でさすっていく。  
「ぁっ…ん、く、九澄の、すっご、すっごく熱い…んあぁっ!」  
「―…ッ、う、うおおおおおお!!」  
三国が甲高い歓喜の声を上げたのを合図とするように、進入してきた肉棒を逃すまいとぎゅうぎゅう締め付ける膣肉。  
充分すぎる下準備をされた肉棒が、入るべきところに手厚い歓迎をうけ、きつく挟まれたとき。  
男の下半身の本能が、再び理性を打ち破る。  
「え……っ!?」  
三国は、予期せぬ膣内の刺激に驚いていた。  
性欲を貪る獣と化した九澄が、押し倒された姿勢のまま突如腰をうねらせ杭打ちのごとく肉棒を上下させ始めたのだ。  
―――ずちゃっ…ずるっ、ぬちゃっ! ぐちゃっ! ずちゃっ! ………  
「んぁっ…すっご……私、負けそ……ぁあんっ…!」  
全身を揺さぶられ、三国は結合したまま九澄の上に全体重を預けて倒れこんだ。  
覆いかぶさってきても、九澄はその上下運動を止めたり緩めたりなどは決してしなかった。  
むしろ、豊満な胸が自分の胸板に押し付けられたことで、さらに欲望が駆り立てられて動きに激しさが増したようだった。  
力任せに打ちつけられてくる痛みと快感は耐えようもなく、踏ん張るものの無くなった三国は、代わりに九澄の体にギュウと強く抱きついた。  
「出すぞ……っ! もう、だめだ…!!」  
九澄が喉から声を絞って絶叫する。  
もう、止まらない。  
「いいよ、私の中で………お願いっ!!」  
九澄の上下運動に合わせて三国も腰を振って膣を大きく抉る。  
一振りごとに際限なく生み出されていく快感に、二人の動きはますます速くなっていく。  
――じゅぷっ、ずぽっ、じゅるっ、ずちゅぅっ…!  
「で………るぅっ………!!!!」  
ギチギチに四肢を強張らせ、九澄が呻いた…。  
――じゅぼぼっ、びしゅっ、びゅくくくくくっ!!  
「ああっ、あ、は、入ってるぅ! ああっ、あああああああ!!」  
これまで聞いたこともないような高い声をあげ、三国は膣内に噴出してくる白い液を感じていた。  
射精と同時に意識を失った、九澄を床に横たわらせたまま……。  
 
 
……と、これがちょうど一年前のこと。  
入学して間もない、一年生の頃の思い出話だった。  
夕暮れに染まる校舎。  
「…ふあー、疲れたなあ……」  
一年前と同じ、放課後の生徒会執行部室の扉を開ける九澄。彼はもう二年生で、相変わらずM0プレートで奮闘している。  
エリートばかりのここの入部試験は厳しく、新しく入れた部員は今のところゼロ。先輩たちも進級でこの校舎にはいられなくなって。  
実質一人の部活動を、九澄は知り合いや先生に臨時的に力を借りて、校内の問題解決に奔走していた。  
なれてきたとはいえ、パシられてた頃より更に激しい活動。終わると、九澄はいつもクタクタになった様子で部室を出る。  
「……ん?」  
扉の前には何も無いはず。  
ところが、九澄は今日は何かをそこに見つけた。  
女性との通学用の革靴が目に入る。  
……目の前にいるのは誰なのかを目にしたとたん、疲れ果てていた顔がフッと微笑んだ。  
「……柊」  
名前を呼ぶと、黒髪の少女は見ただけで癒されるような笑顔を九澄に向けた。  
入学当初から九澄が恋心を抱いていた少女、柊愛花。そして今、九澄にその手を向けている彼女。  
九澄が決死の告白を行い、愛花がそれを受け入れてから、既に数ヶ月がたっていた。  
あとは告白するだけ……。三国の言ったことは、嘘ではなかった。  
互いに後一歩が踏み出せなかっただけだったから。三国の後押しのおかげで、二人は結ばれた。  
この大きすぎる感謝の気持ちは言葉に表せない。礼を言ったら、彼女はいつものニヤニヤした顔でからかってくるのだろうか。  
「……帰ろうか」  
九澄は、照れくさそうに言うと愛花の手を取った。  
 
 
――ぐいっ。  
 
「はい?」  
だが、帰り道とは反対方向に腕を引っ張られ、九澄は素っ頓狂な声をあげた。  
愛花は手を握ったまま執行部室へ九澄を引きずっていき、扉を閉めて鍵をかける。  
「あの……帰らないのかな?」  
九澄は声が上ずっている。  
それを見ている愛花は相変わらず笑顔のままだ。  
「その前に………しよ?」  
それから、さらりと大胆なことを言って、愛花は九澄に強く抱きついた。  
「ね、誰もいないし、いいでしょ? 久美から凄いコト教わったんだー」  
求められていることはうれしいが、突然すぎる。  
それに自分は、さっきまでの激務でクタクタ。  
その上、日々多数のプレイを取得し、レベルが上がっている愛花の技術。三国のせいだ。  
「おいおい、今は勘弁…」  
流石に拒否の意思を示すも、彼に選択権は無い。  
柔らかい胸が押し当てられ、彼の下半身もやる気満々だった。  
「(…くそっ……三国のヤロー……やっぱ礼は取り消す!)」  
されるがままに恋人に押し倒された九澄は、愛花の笑顔に三国の小悪魔な表情が一瞬重なっていたように見えた。  
 

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