太陽神アポロンと月神アルテミス。
ゼウスを父に持ち、同じ母から生まれた兄妹神である。
幾多の神々が住まうオリンポスでも一、二を争う権勢を誇る彼らは、望むと望まざるとに関わらず、その美しさでも数多の者たちを魅了してきた。
娘たちはアポロンの逞しくも優しげな微笑みに頬を染め、若者たちはアルテミスの冷たいほど清らかな瞳に引き込まれた。
兄妹が並び立つ姿は、人々が焦がれて止まない、神の世界の象徴であった。
二柱の神にとっても、それは至極当然のことだった。
彼らは世界の昼と夜とを休みなく紡ぐ。
彼らが居なければ何人も生きては行けない。
お互いの存在そのものが、兄妹の誇りだった。
――そして、アポロンはアルテミスを愛していた。
血の繋がった妹としてではなく、一人の女性として。
アルテミスはその事を知らない。
人間の常識を超越した神々とはいえ、同じ母から生まれた兄妹の婚姻は許されるものではない。
その上、彼女は恋すら知らない処女神であった。
しかしアポロンは満足だった。
アルテミスの最も近くで、その怜悧な横顔を見つめられるのは、自分だけの特権であったから。
あの男が現れるまでは。
オリオン。
獅子をも仕留めたという比類なき射手。
凛々しく、美しく、強く、そして……
アルテミスに愛された人間の男。
狩猟の女神と、人間の中で最も素晴らしい狩人。
出会ってから恋に落ちるまで、そう時間はかからなかった。
エーゲ海に浮かぶクレタ島で二人、狩りを楽しむ日々。
まるで一対の絵のようだと、人々は誉めそやした。
神々でさえも、二人の婚姻を歓迎する風だった。
アポロンは愕然としていた。
ほんの少しオリンポスを留守にした間に、あの男嫌いの妹が、まさか自分以外の男を近づけるとは。
だが、彼が何よりも許せなかったのは、オリオンが多情だったことだ。
妻や愛人を持ちながらもアルテミスに近づき、想いを遂げた今はまた別の女に手を出そうとしている。
手下のカラスを偵察にやってみると、オリオンは仲間たちに得意げに喋り散らしていた。
「あのアルテミスでさえ、俺にはぞっこんさ。処女神ってだけあって床の中ではいまいちだが、ゼウスの義理の息子になるのも悪くはあるまいよ。まあ、あの様子なら他の女を切らなくても良さそうだ」
アポロンは何度も妹に忠告した。
お前は騙されているのだと。このままではいずれ捨てられると。
しかし妹は、見たことも無い艶やかな表情で言うのだった。
「兄様。あの人は私が一番だと言ってくださいました。私はあの人を愛しています」
その言葉を聞いた時、アポロンの中で理性の壁が崩れた。
新月の日。
アルテミスがオリンポスの邸宅に一人で戻ったところに、従者のニンフが兄の来訪を告げた。
急いで自室から出ようとすると、そこには既に兄の姿があった。
「兄様……お待ち頂ければ出迎えに参りましたのに」
甲冑ではなく薄衣を身にまとったアルテミス。
一筋の乱れも無く結い上げられた髪が、月のように白い首筋をくっきりと際立たせている。
アポロンはニンフを下がらせると、しばらく誰も近づかぬようにと命じた。
「……兄様?どうかなさいましたか?」
その問いかけに返事もせず、アポロンはアルテミスを寝台に突き飛ばした。
不意をつかれた彼女は、そのままシーツの上に倒れ込む。
「え……っ」
アポロンが口の中で何事かを呟くと、植物の蔓がアルテミスの両手足を瞬く間に拘束した。
「!? に、兄様…っ、何を……!」
叫ぼうとする唇を手のひらで塞ぎ、アポロンは妹の耳朶に囁きかけた。
「このような姿、従者たちに見られても良いのなら、叫ぶがいい」
それは、彼女にとっておよそ受け入れられない選択肢だった。
「兄様……何をなさるのですか」
押し殺した声がわずかに震えている。
それを聞いて、アポロンは口の端を歪めて笑った。
「何を?……生娘でもあるまいに、これから何をされるのか、本当に分からぬのか」
「……!!」
ゾッとするような冷たい声に、アルテミスは顔をひきつらせた。
何とか脱け出そうと身をよじるが、蔓はほどけそうにない。
その様子を眺めながら、アポロンは彼女の上にまたがり、胸元に手を伸ばした。
「声を上げれば、お前の忠実な従者が飛んでくるかも知れんな」
薄衣の上から、形の良い乳房に触れる。
そのままゆっくりと擦り上げ、こねるように揉みしだく。
「……っ」
アルテミスは唇を引き結び、顔を横に背けた。
アポロンはなおも乳房の感触を楽しんでいる。
膨らみの頂上にはあえて手を触れず、時折かすかに布が擦れる。
そのたび、アルテミスの体がぴくりと震えるのを、彼は当然見逃さなかった。
やがて、布越しにもはっきりと分かるほど、その先端が尖ってきた。
「これは何だ?お前、私にこんな風にされて、感じているのか」
「や、違……ぁっ……」
否定の声を上げようと口を開いた瞬間、乳首をきゅっと摘まれ、思わず女の声を出してしまう。
指の腹で布地ごと乳首を転がされれば、吐息が漏れて、口をつぐむこともできない。
「……はぁっ、…んっ……」
「やはりな。こんな風にされたかったんだろう?」
「そんな……っ!」
今度ははだけた薄衣の合わせ目から、直に乳房を愛撫される。
アポロンは固く尖った乳首を口に含み、舌で転がしてその感触を楽しんでいた。
「あぁ……オリオン……っ」
「……!」
彼女が呼んだ恋人の名前は、返ってアポロンの嗜虐心をかき立てた。
頭を押さえつけて強引に口づけると、驚きに開いたままの唇に舌を滑り込ませる。
歯列をなぞり、舌を絡め、口内を蹂躙する。
その間にも片手は乳房を愛撫し続け、もう片方の手は徐々に下へと降りて行く。
足を閉じることも構わず、唇を塞がれて声も出せずにもがくアルテミス。
ついに、アポロンの指が彼女の秘部をまさぐった。
彼は唇を離して身を起こし、くちゅ、と水音を立てて、そこを浅くかき回した。
「濡れているな。男のことでも考えていたか?」
嘲るように言い放つ。
「な……っ」
アルテミスは羞恥と怒りに頬を染め、またも顔を背けた。
長い髪が乱れ、一種退廃的な美しささえ感じさせる。
「お前があの男を本当に愛しているのなら、よもや自分から欲しがったりなどしないだろうな」
そう言いながら、アポロンは指を蜜壺の入り口に引っ掛けるように、くちゅ、くちゅと規則正しいリズムで小刻みに出し入れした。
時折乳首を舌先で舐り、空いた手で肉の芽を押しつぶすようにこねる。
アルテミスの身体がびくびくと震え、声にならない吐息が漏れているのを確認しつつ、アポロンはしばらく単調な愛撫を続けた。
快感は強くとも、決して絶頂に達することの無い刺激。
指に絡む蜜は徐々に粘性を増し、ぐちゅぐちゅと淫猥な音を響かせる。
あえて一言も発さずにいると、アルテミスの吐息が徐々に大きくなってきた。
頃合いを見計らって、突然指を引き抜き、身体を離す。
「……ぁ、……っ」
半分蕩けたような目で、兄を見上げるアルテミス。
「どうした?」
と問いかけてやれば、我に返ったように睨みつけてくる。
少し時間をおいてから、また同じように愛撫を繰り返してやると、先程よりも更に吐息が甘さを増した。
そんなことを数回繰り返すうち、高潔な月の女神は、ついにそのプライドを投げ出した。
「お、おねがい……もう、我慢できない……っ」
しかしアポロンは、表情を変えずに、
「何のことだ?止めてほしいのか?」
ととぼけてみせた。
アルテミスは瞳に焦燥の色を浮かべ、動かない身体をよじって身悶えする。
「そんな、兄様、お願いだから……!」
「……可愛い妹よ」
アポロンはいつもの優しげな笑顔を浮かべた。
「ならばどうしてほしいのか、お前の口で言ってみることだ。お前の願いなら、何でも聞いてやろう」
「あ……」
兄の言わんとすることを理解して、アルテミスは目線を逸らした。
しかしその間にも、アポロンは彼女の身体のあちこちに僅かずつの刺激を与え、解放してはくれない。
「私はこのままでも構わないよ。お前の嫌がることなどできない」
そううそぶきながら、彼はまたアルテミスの蜜壺を浅く抉った。
「あっ……!!はぁっ、はぁ、あぁっ……に、兄様、お願い……兄様の……太い、モノで……私を……貫いてください……」
「……良い子だ、アルテミス」
そう呟くと、アポロンは衣服を脱ぎ捨て、屹立した陽根を露わにした。
そして妹の手足を戒める蔓をほどき、優しく抱きしめるようにしてその蜜壺に自身を埋めて行く。
「ああぁぁぁ……っ!!」
ひときわ高い声を上げ、アルテミスが兄の身体にしがみつく。
「……っ」
生娘でなくなったとはいえ、アルテミスの中は陽根にきつく絡みついてくる。
アポロンは最奥まで挿入してからゆっくりと引き抜き、その感触を楽しんだ。
「兄…様……っ、私……もう……」
散々焦らされていたアルテミスが、早くも絶頂に近づいたのを見て、アポロンは抉るように腰を動かした。
「ああぁっ……兄様っ、兄様ぁ……!!」
アルテミスは背中を反らしてびくびくと身体を震わせ、直ぐに達した。
挿入したまま、しばらく動きを止めて抱きしめていてやると、彼女ははぁはぁと荒い息を吐いて、
「ご、ごめんなさい……兄様……私だけ」
「構わないよ。その代わり、もっと私を呼んでおくれ」
そして再度、腰を動かし始める。
達したばかりのアルテミスはその度に小刻みに震え、切なげな声を漏らす。
浅く、深く抜き差しを繰り返すうち、アポロンにもその時が近づいていた。
「アルテミス……、いくぞ……っ!」
「兄様、兄様ぁ……私もっ、また……」
ぱんぱんと音がするほどに腰を打ちつけ、アルテミスの体内にありったけの精を放つ。
と同時に、彼女の蜜壺もぎゅうっと収縮し、二度目の絶頂に達したことを窺わせた。
「兄様……申し訳ありませんでした」
改めて衣服を身にまといながら、背を向けたままでアルテミスが言った。
「兄様が本当に私のことを案じてくれていると、分かっていたのです。それなのに……」
「そんなことは良い。もう、お前を何処へもやるつもりは無い。それでいいな」
「……はい」
今までになく強引な物言いをするアポロンに、アルテミスははにかんだような笑顔を見せて、頷いた。