今宵は月明かりが程好く地上を照らす夜。
初夜を過ごす雰囲気としてはなかなか良いと思った。
オルフェウスはエウリディケを抱きしめ、そっと彼女の唇に自分のそれを重ねた。
この時、潤った新妻の唇から震えが伝わってくることに気づいた。
オルフェウスにとっても初めての交わりとなるのだが、
やはり受け入れる側という立場の女性にとって、それは男性以上に恐いのだろう。
オルフェウスは妻の恐怖を理解し、口付けを施したまま、
彼女の髪や背中をあやすように撫でた。
エウリディケは自分の中の恐怖が、次第に薄れていくことに気づいた。
彼の琴は人間だけではなく、動物や植物、果ては神々さえも魅了する力を持っていた。
それは技巧だけではなく、彼自身の中に秘められた何かがあるのだろう。
恐怖から解放されたエウリディケは自分に正直になることが出来た。
もっと、そんな不思議な力を持つ夫に触れたいと思った。
そして今度は自らオルフェウスの頬を包み込み、口付けを求めていく。
「ん・・・ふぅ・・・」
同時にオルフェウスからの口付けが激しくなり、
エウリディケは声を漏らし、彼の背中に両腕を回した。
ほどなくしてエウリディケの白い体は、芝に敷かれた布の上に押し倒される。
夫が彼女を傷つけないように敷いた白布だった。
オルフェウスは妻から唇を離し、その顔を覗き込んだ。
彼に見つめられエウリディケは恥ずかしくなり、少しだけ目を逸らす。
すると夫の大きな手が髪の中に分け入ってくる。
「エウリディケ・・・君は本当に可愛いね」
オルフェウスは心底愛おしそうに、エウリディケの柔らかな髪を弄んだ。
髪に触れられるのがたまらなく気持ち良い。
エウリディケは瞳をトロンとさせて夫を見上げた。
「もっと・・・」
「え?」
「もっと・・・欲しい・・・」
妻の艶っぽい口調にオルフェウスの優しげな瞳の中で男の欲望が揺らめいた。
「エウリディケ・・・僕もだよ・・・」
もう一度だけエウリディケの唇にキスを落とし、そのまま白い首筋に吸い付く。
男の独占欲が湧いたのか、オルフェウスは何度も何度も妻の首筋に赤い痕を残していった。
吟遊詩人として優雅さは微塵もなく、そこにはただ愛する女を求める男の姿だけがあった。
「あ・・・あぁ・・・!」
「エウリディケ・・・可愛いよ・・・可愛いよ・・・」
オルフェウスは妻への愛を囁きながら、手ではその豊満な乳房を捕らえていた。
揉み解す度に白いそれは可愛らしく揺れ、震える。
甘えるようにその谷間に顔を埋め、固く立ち上がった薄紅色の突起を舐め上げる。
エウリディケは押し寄せる快感に夢中になり、夫の後頭部をグッと自分の胸に押し付ける。
「あぁっ・・・あな・・あなた・・・!もっと・・・すって・・・!」
「・・・!」
“あなた”という言葉を聞いた瞬間、
オルフェウスは自分の意識が恍惚に浸っていくのを覚えた。
自分はこの美しく愛らしい女性の夫になったのだと・・・改めてそう感じたからだ。
オルフェウスのますます男の欲望が膨らむ。
両手で両の乳房を包み込み、それごと口の中に導き吸い上げてから、
突起のみを集中的に攻めるというのを何度か繰り返した。
そのうちに、ふと頭の片隅でもう一人の自分が“まるで赤ん坊みたいだな”と自虐的に呟いた。
そして、オルフェウスの頭に一つの光が芽生えた。
「・・・?どうしたの?」
「いや・・・こうしてしゃぶりついていると、まるで赤ん坊みたいだなって思って・・・」
オルフェウスが照れくさそうに言うと、エウリディケも頬を染める。
「そうね」
「それに・・・・・・」
オルフェウスは一瞬言うのを躊躇ったが、
エウリディケの物欲しげな瞳に促されて先を続けた。
「もし僕達の間に赤ん坊が出来たら、その子もこんな風に母乳を吸うんだろうなって・・・」
初夜に早急すぎる話題だったかと思ったオルフェウスだが、
エウリディケは優しく夫を受け止める。
「そうね・・・あなたの赤ちゃんなら、元気よくお乳を吸うわ。きっと・・・」
甘えるように夫に抱きつき、その首筋に口付けをし胸板に頬擦りをする。
オルフェウスも妻を抱き寄せ、柔らかく芳しい髪に顔を埋めた。
生まれてくるであろう新しい命を思うと、双方に早く繋がりたい願望が芽生える。
「エウリディケ・・・」
オルフェウスは再び彼女を押し倒し、手をふくよかな太腿の間に這わせた。
「脚を開いて・・・」
エウリディケは躊躇いつつも、少しずつ両脚を開いていく。
やがて、女性の花園がオルフェウスの目の前に晒される。
オルフェウスは手を彼女の両腿に宛がい、初めて目にする花園を観察した。
「あ・・・!あなた・・・恥ずかしい・・・!」
まだ触れられてもいないのに、最愛の男性に見られているだけで感じてしまう。
そこは先程の愛撫で既に濡れているようだった。
「触れて・・・良いかな?」
「ええ・・・でも・・痛くしないでね・・・」
妻の言うとおりに、オルフェウスはそっと人差し指でそこに触れてみた。
エウリディケの体がビクンと強く反応した。
ピチャ・・・という虫の鳴き声ほどの小さな水音が微かに聞こえた。
人差し指を離すと、そこにはトロリとした蜜が付着していた。
「濡れてるよ・・・エウリディケ・・・」
エウリディケは顔を真っ赤にして目を瞑る。
オルフェウスは妻を傷つけぬよう、指の腹で花園を優しく愛撫した。
撫でれば撫でるほどそこは蜜で溢れていく。
最初は全体的に撫でるだけだったが、震えている桃色の肉芽が気になりそこに触れた。
「あぁんっ!」
エウリディケの体が一際強く跳ね上がった。
「どうしたんだ?」
「いえ・・・なんだか、すごく感じてしまって・・・」
「ここが気持ちいいのかい?」
オルフェウスは指の腹で押したり、摘み上げたりして肉芽を弄んだ。
肉芽は触れる度に熱を帯びて肥大していった。
女性の体にこんなにも可愛い部分があることを初めて知った。
「あぁぁぁっ!!いやぁっ・・・!はぁん!あなた・・あなたぁ・・・!!」
エウリディケは敷かれた布をグッと掴み、容赦ない快楽の津波に耐えた。
愛する夫が自分でも知らなかった快楽を与えてくれている・・・
その喜びが快楽を更に強めた。
蜜液が零れ落ちて白い布に吸収される。
「エウリディケ・・・中に入れるよ」
「中に・・・?」
「そうだよ」
オルフェウスはエウリディケの耳元に顔を近づけて囁き、その額に軽くキスを落とした。
初めて男性を受け入れる彼女を少しでも安心させたかった。
蜜液で濡れそぼった指で花弁をなぞり、ゆっくりとその中に埋め込んでいった。
エウリディケは初めて異物を入れる痛みを感じ体を震わせる。
オルフェウスは指を引き抜こうとするが、妻がやめないでと懇願したのでそのまま続けた。
オルフェウスは慎重にエウリディケの中をかき回していく。
彼女の中は熱く潤い、肉壁は夫を求めるように貪欲に吸い付きしめつける。
中を愛撫していくうちに、彼女の花園が愛おしくてたまらなくなり、
オルフェウスはそこに口付け、唇と舌で幾度も愛でた。
エウリディケの最も感じる神秘的な部分であり、
いつか自分の子がこの世に生まれるために通ってくる場所である。
エウリディケの肌には汗が滲み出て、艶やかさを引き立てていた。
彼女の切なげな嬌声が辺りに響き渡る。
唾液と蜜液で充分に濡れるとオルフェウスはそこから唇を離しそっと妻の手を掴んだ。
そして、その手を充分過ぎるほど膨らんだ自分の男の部分に触れさせた。
「あっ・・・あなた・・・それは・・・」
「これから、君の中に入るからね。その前に僕のモノにも少しだけ触れて・・・」
エウリディケは初めて触れる男性の象徴に驚いていたが、徐々に慣れて優しくそれを擦った。
妻の愛撫を受け取ったオルフェウスはエウリディケの両脚を広げその間に割り込んだ。
「入れるよ・・・エウリディケ・・・」
「ああ・・・来て・・・あなた・・・」
オルフェウスは立ち上がったモノをエウリディケの花弁に宛がい、
ゆっくりと奥に推し進めていった。
「あっ・・ああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
強すぎる刺激にエウリディケは我慢できなくなり、夫の首にしがみ付いた。
処女を貫かれた痛みはさほど感じなかった。
それどころか蕩けた花園は嬉しそうに蜜を溢れ出して、夫を受け入れている。
オルフェウスも物理的快感と愛する妻と
一体となっているという精神的快感を同時に受けていた。
「ああ・・・エウリディケ・・・エウリディケ・・・可愛い僕の・・・僕だけの妻・・・!」
妻の名を何度も呟き、腰を動かしていく。
熱い肉壁がモノを強くしめつけてくるため、
このまま彼女に飲み込まれそうな錯覚さえする。
これから夫婦でどれほど愛を囁き合うのだろう?
子供は何人生まれるのだろう?
最初に生まれてくる子供はどちらに似ているのだろう?
そんなことは考えているうちに、最も甘美なエクスタシーが間近に迫っていた。
「エウリディケ・・・!君の中に・・・出すよ・・・!受け入れて・・くれ・・・!」
「あぁぁ・・・あなた・・・・あなたの赤ちゃんを・・・あぁぁぁっ!」
オルフェウスは妻の胎内にいつか自分の子が宿ることを夢想しながら、
絶頂に達し白濁の液を吐き出した。
エウリディケは夫の分身が早く胎内に宿ることを願い、
陶酔に浸りながらそれを受け入れた。
「子供が生まれたら・・・」
オルフェウスは自分の胸板に頭を寄せている妻の髪をそっと撫でた。
「僕は君とその子のために詩を作るよ。そして、永遠にその詩を奏で続けよう」
エウリディケはまだ生まれぬ子供のことを想う夫の気持ちが嬉しくて涙を流す。
流れ落ちた涙がオルフェウスの逞しい胸板を濡らした。
「泣いているのかい?」
「ええ・・・とても嬉しくて・・・」
「きっと、君に似た美しい子が生まれるよ・・・」
「私、早くあなたの赤ちゃんを産みたいわ」
夫婦はお互いを強く抱きしめ合った。
そして、将来生まれてくる子供のことを思いながら心地よい眠りに就いた。
この時・・・
子供に出会うこともなく、二人の愛が一匹の毒蛇によって
引き裂かれることなど知る由もなかった。
★ 終わり ★