天地創造 ─エジプト神話(ヘリオポリス神話)編─  
 
 
 遠い昔。  
 
 この世にはヌンと呼ばれる原初の海のみがあった。  
 そこにあったのはドロドロとした生命の源だけであった。  
 ある日、その原初の海から遂に初めての生命が生まれる。  
 
 男神ラー・アトゥムであった。  
 
 ラーは辺りを見回して嘆いた。  
 「なんということだ。ここには女がひとりもいないではないか。このままで  
は俺は一生童貞になってしまう」  
 大いに悲しんだものの、彼は生来の楽天家だった。  
 「──まぁ、とりあえず一発抜いて寝るか」  
 
     しこしこしこしこしこっ、どぴゅっ  
 
 「お、おおう。気持ち良かった……」  
 ラーが発射した精液は空中でテフヌト(湿気)という神になった。  
 発射後に洩らした吐息はシュウ(空気)という神になった。  
 
 「な、なんだコイツラ……」  
 ラーは驚いた。  
 よこしまな妄想をしながらチンポをしごいて飛ばした精子がまさか神になる  
とは思いもよらなかったのだ。  
 精子から生まれた女神テフヌトは、早々にシュウとセックスを始めた。  
 シュウがテフヌトの膣内にドプドプと精液を注ぎ込むと、やがて彼女からゲ  
ブ(大地)とヌト(天空)の二柱の神が生まれた。  
 ゲブとヌトはずっと抱き合っていたが、シュウがそれを引き離した。  
 このために、現在大地と天空は空気をはさんで存在している。  
 ゲブ(大地)は愛しいヌト(天空)に近づこうと、地面を盛り上げた。これが山  
である。  
 
 こうして、天地は創造された。  
 
 なお、ゲブとヌトが引き離された際に生まれたのが、後のエジプト神話を彩  
ることになる死の神オシリス、砂漠の神セト、生命の神イシス、ネフティス及  
びハロエリス達である。  
 
 

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