アルゴス王、アクリシオスにはダナエという娘がいた。
ダナエはその美貌が国中に響き渡るほどの器量の良い娘で、アクリシオスの
自慢の種であった。
彼女を目にする者は皆、宝石のように透き通るその瞳に心を射抜かれ、胸を
かきむしられるような恋心に眠れぬ夜を過ごすこととなる。
当然のようにダナエは多くの王子や若い家臣達から熱心な恋の語らいを受け
るのだった。
しかし肝心の彼女はというと、過ぎた気丈さが災いしたのか、まるで年頃の
男性には興味のない素振りで、ただ父王になついているだけなのであった。
さて、アルゴス王にはひとつの悩みがあった。
彼には世継ぎとなる男子が授からなかったのである。困った彼は、神の宣託
を受けることとした。
宣託の儀式となる神殿には王家の一族全員が揃い、神官の宣託を今か今かと
待ち受けていた。
世継ぎができずにアルゴス王にもしものことがあれば、立ちどころに王家は
内紛に巻き込まれ、分裂し国は乱れる。
粛々として託宣を待つ王家の親族と家臣達の前で、神官は厳かにに口を開い
た。
「──神託を告げる」
すべての人間達の視線が集中した。
「次代アルゴス王の座は、王家の男子によって継承される」
おおっ、という喜びの声。
「……だが、それは王の息子ではない。王女ダナエの息子である」
神殿に、どよめきの声が響き渡る。
「──王女ダナエの生む男子がアルゴス王アクリシオスを殺し、国を奪うで
あろう」
驚愕が一同を襲った。
「──ダナエを監禁しろっ!!」
宮殿に帰るや、アルゴス王は鋭い口調で命令を下した。
「し、しかし王様。ダナエ様は王女です。ましてや王様の大切なご息女では
ありませんか……」
ダナエを敬愛する家臣は諌めるように言う。
「黙れっ!」
アルゴス王は怒鳴った。
衝撃のあまり我を失っていたのである。
「お前もあの託宣を聞いたであろう。ダナエの息子がいずれ私に反乱を企て
るのだ。
ならば、ダナエを監禁して男との交わりを一切絶たせ、子供など一切生ませ
なければ良い」
「王様、王女に対しその仕打ちはあまりに酷ではありませんか……」
「反対は許さん。
どのような間違いがあってもダナエを男に接触させてはならんのだ。ただの
監禁では手ぬるい。
入り口には三重の壁を築いて兵士に守らせ、さらに地下奥深くへ掘り込んだ
上で、牢は四方に青銅の壁を張り巡らせるのだ!」
「な、なんですと……」
家臣は目を丸くした。
「どれだけ厳重にしてもしすぎるということはない。とち狂った男がダナエ
を連れ出そうと、どれだけ押し寄せてもそのすべてを跳ね返すだけの完璧な牢
獄を築くのだ!」
恐怖に脅えたアルゴス王は、今までに聞いたこともないような堅固な牢屋を
宮殿の中庭に築き上げ、そこへ愛娘を幽閉したのであった。
地下牢の入り口は防御柵と衛兵達によって幾重にも囲まれ、鼠一匹も通すこ
とがないようである。
また、石の階段を降りていくと、光も射さぬ地下奥深くに青銅で覆われた小
さな牢室がある。扉は何重にも錠前をつけられ、それらは別々に隠され、その
場所を知っているのは王だけだった。
食事や水は女性によって小さな明り取りから出し入れされるのみで、それに
よって、ようやっと王女の生死が確認できるという有様であった。
要塞のような牢獄を作り上げ、アルゴス王は一息ついた。
「これだけ厳重に監禁すれば、決して誰もダナエに近づくことなどできま
い」
安心した王は、やっと少しだけ笑みを浮かべた。
「どのような重要人物でもこれほどの牢に閉じ込められたことはあるまい」
王は哄笑した。
「あのような堅固な要塞を破ってダナエの下に辿り着くことなど、神様でも
ない限り不可能に違いないわ。
ふはははははっ!!」
「ハクション!!」
その時、オリンポス山で盛大なくしゃみをする者がいた。
彼は鼻を啜りながら、再び湖を眺めた。
そこには、アルゴス宮殿の中庭にある牢獄が映り込んでいる。
「ダナエ……美しい……」
彼は呟いた。
やがて湖面からすうっと映像が消え、それはただの水面となり、彼の顔を映
り込ませた。
逞しい肉体に、豊かな顎髭。手にはオークの王錫。
──彼こそは神々の長、最高神ゼウスであった。
「何とかしてあの美少女を我が物にしたいものだが、どうしたものかな」
ゼウスは空を見上げた。
そこには、今にも降り出しそうな大きな暗雲が漂っていた。
アルゴルに昼から降り始めた雨は次第に激しさを増し、深夜には地面を叩く
大雨となった。
警備兵達は詰め所に入り、雨を避けている。
職務に忠実な彼らは、外部からの侵入者がないかどうか絶え間なく目を光ら
せていた。
だが、彼らの視線の遥か上で、雲の一部が微かに光った。
光の雲はやがて黄金の雨へと姿を変え、地面へと降り注いだ。
黄金の雨は遮られることなく地下牢へ続く階段を通り、厚い扉の前へと進ん
でいった。
そして、雨は音もなく扉の隙間から牢屋へと滑り込んだ。
薄暗い牢屋の中で、黄金の雨が再びゼウスの姿へと収束する。
「きゃあっ!!!!!」
悲鳴が牢屋の中に響く。
それは、奥の机に腰掛けた美少女、ダナエのものであった。
「──ああ、ダナエ、なんと美しいのだ」
ゼウスは彼女の美貌に目を奪われた。
このような暗く不潔な牢獄の中でさえ、ダナエは輝くような美しさと気高さ
を失ってはいなかった。
まだ娘らしいあどけなさの残る童顔と、引き締まって無駄のない身体がゼウ
ス好みであった。
ゼウスの好色そうな視線に気付いて、ダナエは身体を手でかばい、奥へ退い
た。
ゼウスは追い詰めるようにダナエの方へと近づいていく。
「ダナエ。おまえは父の理不尽な命令のためにこんな所に監禁されているの
だろう?
わしがおまえを解放してやろう。
その代わり──」
最高神は下卑た表情を浮かべた。
「おまえのおいしそうな身体を頂くぞ」
ゼウスは生娘の身体へ手を伸ばす。
ビシッ!!
その手は平手打ちで返された。
「余計なお世話よ。私はどんな理不尽な命令であっても、お父様に従うわ。
私は、お父様を信じているの」
ダナエは気丈な視線でゼウスを睨み付けた。
その強気な瞳を受け、彼の股間から巨大な屹立が盛り上がった。
最高神は、勃起していた。
ゼウスはこういう強気な少女を手篭めにするのが大好きだった。
「──そもそも、あんたは誰なのよっ!!」
気高き王女は射るように神々の長を見つめた。
「ふふふ。わしか? 聞いて驚くな、わしの名は──」
「わかった、あなたが噂に聞く悪魔ねっ!?」
「違うわ!!!!!! わしこそがオリンポスの主、最高神ゼウスだ!!」
ダナエの目が見開かれる。
「な、なんでオリンポスの最高神様がこんな所に来たのよ!?」
「さっきも言っただろう? ぐふふ、おまえの若い身体を我が物にするため
に来たのだ」
ゼウスの下品な視線に怖気立つダナエ。
「私は解放の必要なんてないわ!!!」
ぴしゃりと言い放つ。
「そうか。交渉決裂か」
ゼウスは残念そうな顔をした。
「そ、そうよっ。だからさっさと帰りなさいっ!!」
「ならば仕方ない。交換条件は諦めて──」
と、ゼウスの身体が光り、無数の光の糸に変わっていく。
「──単に、おまえを犯すことにする!!!!!!」
最高神は黄金の雨となって、いたいけな美少女に襲い掛かった。
「いやあああああああああああああっっっっ!!!!」
「ふふふふ、泣け、喚け。ここは厳重な地下牢。どれだけ助けを求めようと、
誰にも聞こえはしないぞ」
ゼウスは高笑いした。
黄金の雨に触れるとダナエの衣服は霧散し、その滑らかな肌へと雨は吸い付
いていった。
「おまえのその悲鳴がわしの手管によって、やがて快楽の喘ぎへと変わって
いく。ぐふふ、それがたまらぬのだ」
ゼウスが愉快げに言うと、ダナエは目を吊り上げた。
「だ、誰がっ!」
吐き捨てるように言う。
「絶対にあんたなんかに負けたりはしないわっ!」
だが、その反抗的な態度がいよいよゼウスの倒錯した性癖を愉しませるのだ。
「その強情がいつまでもつかな。
わしの最高神の力を持っておまえに必ずや、わしのモノを求めさせてみせる
わ」
「そんな力の無駄遣いをしている暇があったら、どこかの国のひとつやふた
つでも救ってたらどうなの!!」
王女の至極もっともな指摘に対し、
「フッ、バカな」
とゼウスは言った。
「──女を犯して子を作るのがわしの仕事なのだ」
そう宣言すると、彼はダナエの肌を責め始めた。
居直った神ほど手のつけられない厄介者はいないのであった。
ダナエは口づけさえ知らない生娘だった。
王女に不逞を働く者などいようはずもなかったから、その繊細な青い身体は
いまだ未開発もいいところだった。
その過敏な身体に黄金の雨を浴びて、果たしてダナエは電撃を受けたような
衝撃を受けた。
無防備な裸体の隅々へとぬめ光る液体は張りつき、そしてそれはずりずりと
這いずりまわりはじめた。
「あ、あうっ!!」
寒気怖気に良く似た感覚が走り、鳥肌が立っていく。
──なんだろう。
なんともいえない違和感。
今までに感じたことがない異質な感じ。
排斥したい。
今すぐに引き剥がしたい。
だがそれは、蛭よりもぺったりと張りついて流動し、処女の青い肌を滑って
刺激する。
身をよじっても逃れらることができない。
そうであれば、いっそこの感覚に同調し、受け入れて順応するしか、耐えう
るすべはない。
ダナエは身体の力を抜き、流動を続ける光の粘液の感覚に神経を集中させた。
そして、その違和感の正体に気付いた。
そう。
それは──初めての性感だった。
そう気付いた瞬間、「あ……ンッ」とダナエは生まれてから今までで最も女
らしい声を上げた。
鬼畜最高神は、喘ぎ声を出し始めたダナエを見て暗い愉悦を覚えた。
ゼウスは嫌がる娘を追い掛けて犯し、快楽で屈伏させるのが好きというおよ
そ最高神らしからぬ性癖の持ち主だった。
そんなゼウスにとって、小生意気な処女が生まれて初めて洩らし始めたよが
り声を聞くのは悦楽の極みであった。
容赦のない彼は、甘く溶けはじめた女体に対し次なる攻勢へ打って出ること
にした。
光の粘液が静かに収束を始めた。
薄く這っていたそれらは徐々に川の流れのように合流していく。その目指す
先は──女の身体の最も敏感な一点。
「ちょ……っ、どこに行く気よっ!! そ、そこは……っっっっ」
ダナエが慌てて言った時には、光の液体に変化したゼウスはしゅるしゅると
処女の股間へと潜り込んでいく所であった。
「や、やめてえっ!!」
と哀れな処女は叫んだ。
だが、好色の神はそんなことなど聞いてはいなかった。
黄金の雨は今や怪物の極太触手かと思われる姿に成り果てて美少女の恥部へ
と突進していた。
黒い色ならば完全に怪物の触手だ。神の化身には到底見えない。
ゼウスは、神様のくせにモンスターみたいなことを本気でやってしまう男だ
った。
神様だからといって何をやっても許されるわけではないが、それを教えてや
れるのはここにいないヘラだけだ。
うねりながら膣洞を堀り進む光の触手は、やがてコツンと少女の防壁に突き
当たった。
「あうっ」
と少女の身体が跳ねた。
ゼウスは勢いをつけると、膜の向こうへ向けて突撃した。
ぷつっ
ゴムの切れるような小さな音がして、黄金の奔流はダナエの奥の奥へと侵入
していく。
「ああああああああああああああああああああっ」
ダナエは悲鳴をあげる。
少女は強すぎる刺激にのたうちまわった。
普通の処女貫通儀式ならば、ここで終わるはずだったに違いない。
だが、気の毒なことに相手は最も性質の悪い好色大魔王ゼウスなのだ。
黄金の触手は膣洞の最奥へといきなり到達するや、その先の子宮へ雪崩れ込
んでいった。
触手は溶解して粘液と化し、子宮を満たしていく。
そしてその粘液はやがて触手を生やし、膣道を貫いて挿入口まで飛び出して
は子宮へと舞い戻る。それは、考えうる最長距離のピストン活動だった。
目にもとまらぬ速度でピストンが繰り返されるたび、美処女はうなり声をあ
げ、身体を震わせた。
ゼウスは、処女に対してやって良いことと悪いことの区別のつかない男だっ
た。
要するに、そういう神なのだった。
今までに感じたことのない感覚がいくつもいくつもダナエを襲っている。
処女膜を破る灼熱の痛み。
敏感な膣孔を抉る異物感。
しかしながら、それらを吹き飛ばすほどの快感の嵐が少女の身体を吹き荒れ
ていた。
──ああ、なんという気持ち良さなの。
ともすれば飛びそうになる意識の中でダナエは思った。
黄金の粘液は絶妙の弾力で形を変え、ダナエの女の通り道の起伏をこすり上
げる。時に意思を持ってもぞもぞと動き、彼女の気を狂わせんばかりの快感を
与える。
子宮の中に、ゼウスの存在を色濃く感じた。
妊娠するということは、これに似た感覚なのだろうか。
自分の女の最奥に存在感があり、確かな意思表示を伝えてくる。
しかもそれは、無力な胎児ではなく、強力な快楽を持って責め立てて来る陵
辱者なのであった。
ダナエは身を捩り、何とかこの快楽地獄から逃れようとするが、闖入者は子
宮の中に居座っているものだからどうすることもできない。
身体の中から犯される感覚とはなんと成す術もないものなのか。
少女は床を掴み、歯を食いしばった。
生まれて初めて昇り詰める予感がする。
子宮が、胎動する。
神の化身たる黄金の粘液は、聖なる力で処女を絶頂に押し上げようとしてい
た。
ゼウスの存在を感じる子宮が熱い。
「おうっ、気持ち良いぞ、ダナエ。わしはイクッ!」
最高神は言うと、ダナエの子宮に何かの飛沫が続けざまに打ち寄せられた。
その感覚がとどめとなった。
ダナエの視界は白く濁って飛んだ。
薄れゆく意識の中で、股間からすうっと何かが抜けていくのを感じた。
──だが同時に、彼女の中にゼウスの残したものをも感じていた。
アルゴス王は理由のわからない胸騒ぎに襲われ、地下牢を訪れた。
これだけ厳重な警備体制を敷いている上、絶対に開かない扉で塞いで監禁し
ているのだ。
絶対にダナエが男と交わることなどない。あるはずがないのだ。
そうは思いつつも、知らず急ぎ足になる。
彼が長い階段を降りると、奥の牢から微かな声が聞こえてきた。
──なんだ?
聞き覚えのある声。
ひっきりなしに繰り返される、あの声は。
いや、まさか、そんなバカな。
絶対にそんな事あるはずがない。
アルゴス王は駆け足になって牢の扉に近づき、明かり取りから中を覗き込ん
だ。
直後、
「なぜだああああああああああああああああっっっっっ!!!!!!!」
という、アルゴス王の絶叫が国中に響き渡ったという。
それから、十数年が経った。
成長したダナエの息子、ペルセウスは冒険の旅の途上で、波が打ち寄せる孤
島の岩壁に乙女が縛り付けられているのを発見した。
「おお、なんという美しい娘なのだ」
ペルセウスはたちまち彼女の虜となった。
彼女の名はアンドロメダ。聞けば、国を荒らす大海獣を鎮めるための生贄と
なっているのだという。
「そうか。それならば、俺が大海獣を倒してやるから──」
ペルセウスは言った。
「──俺の妻になれっ!!!」
……………………。
まあ、その、なんだ。
相手の意思確認という過程をすっ飛ばし、力で女を奪い去ろうとするのは、
血統ということなのだ。
やがてこのペルセウスの孫娘に、性懲りもなくゼウスは欲情する。
自分の曾孫を犯したくて仕方ないという、困った最高神は彼女の婚約者に化
けて彼女に身体を開かせる。
神の力で一夜を三倍に延ばすという荒業まで使って、たっぷりと彼女を犯す
ことになるのだが、それはまた別の話。
おわり