……かくして母神・伊邪那美命様を恋い慕いて泣きいさちる速須佐之男命様は、父神・
伊邪那岐命様によりて大海原より追い遣られてしまわれました。
母神のおられる根之堅州国を応(おとな)おうした速須佐之男命様は、まず姉神・天照
大御神様にその旨を一言告げようと高天原に向かわれました。
なれど、姉神様から見れば、己が領土にあきたらず高天原まで己が物にしようと言う悪
心を抱いての応いでしかないと見えたのです。
故に弓矢を持ち、髪や小手に勾玉を備え、勇ましき姿で弟神様と向かい合われたのでし
た。
かくして、姉神様と弟神様は、顔を向け合う事になりました。
「妾の國に何用があって参ったのじゃ!」
弓を振り立て、姉神様が声を荒らげました。
不遜な言葉があれば即座に射殺さんと見せる其の姿に、弟神様は驚き慌てて頭を垂れま
した。
「僕(わたくし)には汚き心など微塵もございませぬ。なきいさちる僕は、父神様に国を
逐われたのです。それ故、母神様のおられる底根国に向かう事にしたのですが、一目なり
と姉神様に言向けたく参ったのです」
「そのような言、信じりゃれなどと言われても無理ぞえ。汝(なれ)が清く明るき心を、
いかに示しやるきじゃ?」
姉神様の圧迫に、弟神様は恐れさえ顔に浮かべて、必死に頭を下げております。
ただ会いに来ただけだというのに、姉神様の仕打ちに弟神様は恐れを浮かべました。
それは当然でしょう。
三柱貴子(みはしらのうづみこ)と纏められてはおりますが、姉神様達は偉大なる空に
掛かる太陽であり月なのです。
大地を洗う暴風が、高き空にある太陽や月に勝てる道理は在りません。
「宇気比(誓約)して、子を成しましょうぞ」
「……意味を知りて言うておるか? ソレを妾に求める意義を分かっておるかえ?」
恐れを抱いたまま、それでも弟神様の言挙げに姉神様が不愉快そうな言葉を投げかけて
こられました。
その理由が分からず、弟神様は顔を上げられます。
姉神様がその頬をわずかに赤らめ、弟神様に向けてこられています。
弟神様には、その理由が分かりません。
宇気比によりて子を成せば、それが正しき事の証なのだと、それしか知りませぬ故。
「よかろ、なればこちらについてきやれ」
姉神様が歩き出します。
その後に従う弟神様は、姉神様の変貌が理解できずに、ただついて行きました。
天安河の河原に参られた姉神様と弟神様は、そのまま天之真名井の側にまで行かれまし
た。
「では汝の十拳剣をだしりゃれ」
姉神様の言葉通り、弟神様は腰に佩いた剣を外し姉神様に差し出されました。
ですが、姉神様はその剣を受け取ろうとはしません。
「聞こえなかったのかえ? 妾は汝の十拳剣を出せと言うておる。それとも本当に知らぬ
のかえ?」
姉神様のどこか小馬鹿にするような言葉に、弟神様は訳も分からずただ見詰めることし
かできません。
やれやれと、首を振って姉神様が天之真名井から水を掬い上げられました。
それを、何を思ったのか、弟神様に思い切り振りかけられたのです。
「姉神様、なにをなされます」
弟神様は驚きながら言葉を返されました。
その弟神様のすぐ側に歩み寄った姉神様が、弟神様の衣服を手早く剥ぎ取ってしまわれ
ます。
その行為の意味が分からずに、弟神様はただ姉神様の為すがままにされておりました。
「ほほ、立派な剣じゃの、ふむこの逸物なればよかろう」
呟きながら姉神様が弟神様の、成り成りて成り余れる処に手を伸ばされました。
姉神様の細くしなやかで柔らかな指先が触れ、成り余れる処は、堅く立ち聳えます。
「姉神様、何を成されて」
「宇気比じゃ」
それ以上、言訳けたまうつもりなど、姉神様には全くないのでしょう。
しゅにしゅにと、いきり立つ弟神様の逸物を姉神様がこすり立てております。
その動きが、摩擦が、姉神様の掌の柔らかさが、弟神様の体の内側に熱をもたらしまし
た。
気がつけば、姉神様の衣がはだけ、たわわに実った柔らかな固まりが弟神様の目の前に
晒されております。
弟神様にはなにも考えることが出来ません。
ただ気がつけば、その柔らかな二つのふくらみを掌中に収められていました。
「そうじゃ、そのまま揉み込むがよい。ふぅっ、よい、よいぞえ! もっと揉み込め、妾
を気持ちよくしりゃれ!」
その固まりは、弟神様が指に力を込めるたびに、応じるように柔らかく形を変えられま
す。
まるで芯の感じられない柔らかさに、弟神様は驚きながらも指を動かし続けておられま
した。
そうしなければ、逸物より走る奇妙な熱が、押さえきれなくなりそうなのでした。
「姉神様、これは、これは……」
何か熱い物が込み上げてくるのを、弟神様は感じられておりました。
それが何なのか、弟神様には全く持って分かりませぬ。
ただ、姉神様の指が蠢くたびに、全身に熱が籠もり成りあまれる処が何かを放とうとし
ているのです。
同時に、掌に湿り気を感じ、弟神様は姉神様のふくらみへと視線を転じられました。
真白に柔らかきふくらみ、その中で桜の色目を示す堅く尖った物から、とろとろと白い
液体がこぼれ落ちております。
「んっ、ふぅっふくっ! よ、よい、よいぞえ! 心地よいぞえ、確かに悪心はないよう
じゃ!」
姉神様が声を挙げると同時に、弟神様は地面に押し倒されました。
もはや、弟神様には言葉を挙ぐる余裕もございませぬ。
姉神様が腰の物の裾を割り開き、隠された陰門(ほと)を露わにされたのです。
「さあ、吸え! 吸うのじゃ! 妾の成り成りて成り足らぬ処を、そこより漏れ零るる蜜
を、妾の乳と混じり合った物を吸いりゃれ!」
熱く潤んだ叫び声を挙げて、姉神様が弟神様の顔に陰門を乗せられます。
弟神様は、訳も分からず其処に吸い付き舐めしゃぶりはじめました。
口の中に甘く不可思議な薫りを放つ液体が溜まってきます。
もはや、思考することもなく、弟神様はソレをすすり上げ飲み込まれました。
「っっ!?」
同時に、弟神様は驚きに体を固めました。
堅くそそり立つ逸物に、ぬめぬめとしたなま暖かい物が触れたのです。
姉神様の成り足らぬ処に遮られ見ることが出来ませぬが、その感触がなんなのか、弟神
様にはなぜか理解できました。
それは姉神様が舌を這わせておられるということが。
あまりにも異様なその感触に、背筋が震えるほどの快楽(けらく)を弟神様は感じてお
られました。
口中に溢れる味も、成り余れる処からくる快楽も、初めて味わうものなのです。
弟神様はもはや、自らの意識が何処にあるのかすら分からなくなっておりました。
ただ姉神様の陰門に己が舌を突き込み、姉神様の悶える仕草と声に心を奪われになられ
ておられます。
「そろそろかえ!? よいぞ、よいぞ、もっとじゃ、もっともっともっともっと!」
「んぐっ! 姉神様っ? くぁっっ!」
逸物が強く吸い込まれ、弟神様は何かが溢れ出そうとしている事に気付きました。
もはや、止めようもなく、ソレを告げることも出来ないと思われた瞬間です。
「っっっっっっ!」
姉神様が腰を強く押しつけて来られたのです。
それまで溢れていた蜜とは違う、さらりとした液体が口中に流し込まれてきました。
同時に、弟神様も成り余れる処からなにやら液体が一気に噴き出したのを弟神様は感じ
られました。
それを姉神様が受け止め、飲み下していることもでございます。
しばし、その余韻に身を任せていた弟神様の上から、姉神様が体をお離しになられます。
「……濃い、の。もしや汝は子種を吐くははじめてかえ?」
そう告げてくる姉神様の言葉が理解できず、それでも先ほど体から放ったものが子種と
言うものだろうと見当を付け、弟神様は無言でこくりと頷きます。
「くくっ、確かに澄め明るき心じゃの」
其処まで呟くと同時、はぁっと姉神様の口から白い靄が吐き出されます。
見目麗しき三柱の女子(おみな)が成りいでたまいました。
弟神様も、胸の奥からなにやら奇妙な固まりが外に出ようとしているのを感じて、口を
開かれます。
ソレに合わせるように、白い靄が口から飛び出て五柱の男子(おのこ)に成られたまい
ました。
姉神様が弟神様の方を見ながら笑うように呟かれます。
「三柱の女子は、汝の物実によって成れるが故に、汝の子じゃ。五柱の男子は妾の物実に
よって成れるが故に、妾の子じゃ。三柱の女子が汝の心がすめらかなるを露わにしておる
故に、しばし成れば妾の国を応うことを許そうぞ」
姉神様の言葉に、快楽の余韻に身を任せていた弟神様は、訳も分からずただ頷かれまし
た。
かくして、弟神様は高天原にしばしなりと居を置くことに成られたのですが、姉神様と
の宇気比によりて、春知り染めた弟神様は乱暴狼藉を尽くすことになりまする。
それはここで語られませぬ。
いつか時が在れば、また新たな語り手が語ることでしょう。
では、真説・好色記(こじき)宇気比の条はこれにて。