狭い高天の原の中では私、伊耶那岐と伊耶那美の兄妹の名前は
有名であった。
伊耶那美は神々の中でも随一の美貌を誇っていた上、
何をやっても万能にこなす優秀な女神として高天の原でも尊敬を
一身に集めていた。一方で、兄である私、伊耶那岐は容姿はぱっ
とせず、何をやってもおよそうまくいったためしがないという、
妹と正反対に凡庸な男神なのであった。しかしながら、小さな口
喧嘩を毎日繰り返しながらも私たちは日々うまくやってきた。小
さな頃から一緒に育った環境もあるのだろうが、神々の中でのお
互いの立場とは関係なく、私達はいつまでも兄と妹であり、最大
の喧嘩相手であり、最大の親友であり、唯一心の底からの本音を
漏らせる相手であったのだ。もっとも、長じて思春期を迎えるに
従い、ご多分に洩れず私達の間にも小さな秘密はあった。しかし、
それは仕方のないことなのだ。例え妹であったとしても、彼女は
高天の原でもっとも魅力的な若い女神には違いはなかったのだか
ら。
さて、遥か昔、天地はひとつのものであった。それが分かれて
ふたつのものになったのだが、この頃には大地はまだ固まりきっ
ておらず、水に浮いた油のような状態のままであり、世界は混沌
の様相を呈していた。
そういった世界に秩序をもたらし、この世に天地を創造するた
めに我々天つ神は姿を現した。であるから、天つ神一同で合議を
行いながら少しでも豊かな世界を創造すべく日々活動しているわ
けだ。そして長年の下準備は結実を迎えつつあり、いよいよ大海
の中に大地を創造する段階に辿りつきつつあった。そしてその方
法とは、すなわち男神と女神が契りを交わすことなのだった。女
神はあっさりと私の妹である伊耶那美に決定した。私は全力で反
対したのだが、ただひとりの発言では決定は覆すことができない。
なぜ私が反対を唱えたかというと、つまり・・・その・・・、妹
が夫を持つことに対して抵抗があったという、あまりにも個人的
かつ未熟な理由に過ぎなかったのだから会議で棄却されたのは当
たり前なのだが。
なにせ、肝心の伊耶那美が乗り気なのだからどうしようもない。
「さて、では次は伊耶那美の夫となる男神を決定せねばならない」
と議長である須比智邇の神が言った。すかさず、かねてから伊耶那美に想いを寄せていた男神たち
が我も我もと立候補する。なにしろこれは世界で初めての聖婚である。高天の原一の美女と、世界で
最も親密な関係を結ぶというのであれば、誰もが夢を見るのは無理からぬことであった。
「ふむ、立候補の数が多すぎて収集がつかぬな。これは世界の大事業であるから、最も優秀な男神
を選ばねばならぬのだが・・」
「議長」
その時、一方の主役である伊耶那美が凛とした声で発言を求めた。例え大勢の前であろうと臆する
ことなく自分の意見を発言できるのが伊耶那美の長所とするところだった。
「契りを以って大地を創造するという大事であれば、私の意見も尊重して頂きたいと思います」
「ほう、なるほど。では、そなたは誰を推薦するのか?」
議長が先を促すと、伊耶那美はきっぱりと断言したのだった。
「我が兄、伊耶那岐以外には考えられません」
な・・・っ!! 一同の視線が伊耶那美を見て、そしてゆっくりと私の顔に移る。誰もが、信じら
れない、といった目をしていた。なんでこいつが?、という声が聞こえてくるような気がする。
だが一言言わせて欲しい。私が一番信じられない。
「もしも我が兄以外が選ばれるというのであれば、私にはこの役は重過ぎますので、辞退させて頂
きたいと思います」
控えめな言葉遣いを選んではいるものの、決然たる表明であった。
ほぼ満場一致で決定した伊耶那美の代わりを探すことは難しい。
かくして、渋々といった形で合議は私の着任を認めたのであった。
「では、大地を固め、形を整えるための聖矛を与える。我々の仕事の総決算と言っても良い重大事
だ。がんばってくるのだぞ」
須比智邇の神から私は天の沼矛という矛を受け取り、深く礼をする。私と伊耶那美を取り囲んでい
る神々たちの視線が痛い・・・。
しかし、いずれにしても合議の決定に逆らおうとまでする神はいなかったと見え、我々は高天の原
を穏やかに送り出された。
「さて、ナミ、これからどうしようか」
私は幼い頃からの習慣で、公の場以外では妹の名を省略していた。
「まずはさしあたり、あたし達が降り立つための土地を作らないといけないわね」
伊耶那美はにこにこと笑いながら私を見る。何が嬉しいんだ、こいつは。私とともに契りを交わす
ということの意味をわかっているのか? どうも、私は幼い時分から妹を知っているせいか、いつま
でもこのバイタリティー溢れる女神を子供に見てしまい、心配する癖がある。もっとも、私よりも遥
かに行動力のある妹は、いつでも私の介入を待たずに何事もうまくやりおおせ、私は取り越し苦労に
終わるという按配なわけであるが。
「では、手頃な島を作るぞ」
私と伊耶那美は天上界と下界をつなぐ天の浮橋に立ち、そっと矛をさし降ろした。泥のような海を、
餅でも練るようにかき混ぜ、矛を上げた時、先端から滴り落ちる海水が積もり重なって島となった。
これが兵庫県南淡路市にある於能碁呂島と言われている。
私達ふたりは島に降り、天の御柱という神聖な柱と八尋殿という広い御殿を建てた。
「ふふ、お兄ちゃん。これがあたしたちふたりの新居なのね」
と、伊耶那美は高天の原を出て以来ずっと浮かべ続けている笑顔のまま言う。いや、確かにそうな
んだが、なにか生々しい表現だから止めて欲しい・・・という私の希望に関わらず妹は嬉々として私
達の新居の設営に勤しむのであった。本当に、どこまでわかってんだ? おままごとでもやるような
気持ちでいるとしたなら、えらいことになるんだぜ、ナミ。わかっているのか?
「さて、お兄ちゃん」
と引越しのすべての準備が整い、私と伊耶那美は天の御柱の前で向かい合って立っていた。
「いよいよこれから婚姻の手続きをするのね」
「ああ、そうだな」
「議長から預かってきた指示書によると、婚姻の手続きでは、あたしは天の御柱を中心に右から回
って、お兄ちゃんは左から回る必要があるわ。で、出会った所でお互いに愛の言葉を誓うのよ」
「うん、わかった」
「じゃあ、行くわよ」
私達は天の御柱を中心として左右から回る。しかし、天の御柱とは巨大な柱であり、くるっと回っ
て終了とはいかない。およそ5分ほどもかかるのである。
しかし・・・と私は考えた。これから一体どうなるのだろうか。淫らな要求をされたらさすがに能
天気な妹も拒絶反応を起こすのではなかろうか。しかし、今さら中止するにはあまりにもこの仕事は
重大である。そもそも伊耶那美はなぜ私を婚姻相手になど選んだのだろう。
・・・と、ここまで考えて、私ははたと気づいた。いつもの癖なのか、どうやら私は妹の心配ばか
りして、自分があの妹と結婚するのだ、という意味について考えが及んでいなかった。そう、外面は
良く一見優等生然としながら、内実はひどく生意気で我がままな内弁慶。そして誰よりもとびきりに
愛らしい笑顔を持っているあの反則女。あの女と、自分は永遠の愛を誓うのだ。
そこまで思いが至った時、私はちょうど天の御柱を半周回り終え、反対側からやってきた伊耶那美
と出会った。すっかり物思いに耽っていたので、私は意表を突かれる形で立ち止まった。
すると、伊耶那美は少し照れたような顔で私の目をまっすぐに見つめてきた。
「お兄ちゃん」
「・・・」
「あなたはこの世界で一番素敵よ。あたしは、あなたが好きです。いつまでも、あたしだけを愛し
てください」
「・・・」
私はひどく間抜けな表情で口を開け、夢の中を歩いているような不安定な心地を感じていた。我が
妹は一瞬照れたような顔をしていたものの、口にした後には生意気そうな吊り目を大きく見開いて何
かを待ち続けるのだった。
何秒が過ぎたのか、やがて伊耶那美は訝しげな表情に変わった。
「・・・お兄ちゃん? 婚姻の儀式では、お互いに愛の言葉を伝えるんでしょ?」
「あ、ああ・・・そうだった」
そう、そうだった。思わずどぎまぎしてしまって、今何をしているのかがすっかり意識から飛んで
しまっていた。それだけ、私にとっては心臓に悪い台詞だったということなのだが。
「でもな、ナミ。指示書によると男神から愛の言葉を言わなければいけないらしいんだ」
「えーっ!? なんで!? 順番なんて関係ないじゃん」
妹は不満げに特徴的な吊り目をさらに吊り上げて見せた。勝気なこの少女にとっては納得いかない
手順なのだろう。
「ちぇっ、しょうがないなぁ。じゃあお兄ちゃん、もう一回やり直そうか」
伊耶那美は再び天の御柱を半周しようと私を反対側へ押し出した。
またひとりになって天の御柱を私は回る。心が動揺しているのが自覚できた。生まれてから、妹の
無数の表情や言葉を私は経験してきたが、先ほどの伊耶那美は私にとってはまるで初めての姿だった。
兄である私にとっては妹はどこまでも妹であり、赤くなる表情や愛の言葉など永遠に知ることはない、
と思っていたのに・・・。
再び、私と伊耶那美は出会った。妙に早く出会ってしまうのは、こいつが走っているからなのでは
ないか?という気もする。
今度は、立ったまま伊耶那美は口を閉じ、何かを期待するようにきらきらと光る目で私を見つめて
いる。
「えー、その、なんだ・・・・」
と私は口ごもった。そう言えば、愛の言葉など何も考えていなかった。
「まぁ、愛している。おまえは生意気で手のつけられない我がままな妹だが、それでも、まぁ、愛
している」
褒めているのかけなしているのか良くわからないような事を私が口にすると、伊耶那美は何も言わ
ずに私のすねを蹴っ飛ばした。
「あだだだっ!!」
ひどく不満だったのか、伊耶那美は、
「ああ、あなたも高天の原でもっとも頼りないダメ男ですが、それでも愛していますわ、ほほほっ」
と投げやりに宣言した。こんなもんが世界で最初の愛の誓いということになってしまっていいのかい?
「とにかく、これで、お兄ちゃんとあたしは結婚したのね」
と伊耶那美は夢見るような顔つきで言い、力強く私の腕を取って自分の身体に抱きしめた。
「こ、こら、そんなことするなよ」
「あら、どうして?」
伊耶那美はクスクスといたずらっぽく笑った。
「今までにそんなことしたことがないだろう?」
「だって、あたしたちはたった今から夫婦になったのよ。そうでしょ、あなた」
わざとこの娘は「あなた」という言葉に特別な意味をこめてにやにやと笑い、あまつさえ私の動揺
する反応を楽しもうとさえするのだった。
「なにがあなた、だよ。俺から見たらおまえなんか子供みたいなものだよ」
私が心の動揺を押し隠してわざと冷たく言うと、こしゃくなこの女は、抱きついた私の腕をごしご
しと自分の胸にこすりつけ、
「これでも、子供なんて言えるの? あたしだってお兄ちゃんの知ら
ない所で大人になっているのよ」
と片目をつむった。
「な、な・・・」
私は絶句し、無表情の仮面をかなぐり捨てて腕を振り払う。こんなに胸が大きくて柔らかくなって
たなんて、知らなかった!
「あら、さわらないの? いいわ、どうせ家に帰ったらあたしたち、本当の夫婦になるんだもの」
「な、な・・・」
伊耶那美は再び言葉を失った私の心の隙をつくように、小さなつむじ風となって私の懐に飛び込ん
でその可憐な唇を私の唇に押し付けた。
「んーっ!!」
そしてすぐさま唇を離し、ぺろっと舌で自分の唇をなめ、嬌声を上げながら、子犬のように八尋殿
へと走り去っていった。
ともあれ、こうして私と妹伊耶那美は夫婦となったのであった。
「じゃあナミ、始めるからな」
伊耶那美は今にも涙がこぼれ落ちそうなほど濡れた瞳で私の目を見つめていた。
八尋殿の褥の間。今まさに、世界で初めての誕生の儀式が行われようとしていた。
私の心臓は先ほどからすっかり休憩を忘れてしまった早鐘のように打ち続けている。そしておそらく、
それは伊耶那美も同じ。
「待って、お兄ちゃん」
と伊耶那美は言った。
「その前に、もう一度だけ言わせて」
そして目を瞑る。
「世界で一番愛しているわ」
私はそっと、このいじらしい少女の唇に自分の唇を重ねた。幼い日からの関係が壊れていくような奇
妙な喪失感があった。しかし、同時に何よりも甘い何かが形作られていくような、不思議な感覚がする。
私達が大人になるためには幼年時代に別れを告げねばならず、新しい何かを掴むためには必ず古い何か
を失う感傷がつきまとう。
「ナミ、おまえを俺のものにするからな」
私はそう告げて、身体を硬くしている少女の上着を脱がせた。先ほど衣服ごしに図らずも確認してし
まった豊満な乳房がたわわに実って、ふるふると頼りなくふるえていた。大きい。伊耶那美の身体はど
ちらかというと細身で、ひきしまったカモシカを思わせるようなバネのある体躯だった。しかし、どう
したことか胸だけはたっぷりと柔らかい肉が盛り上がって少女からすでに大人の女に成長していること
を過剰気味に自己主張しているのだ。
その張りのある果実に私は吸いついて、思うさま揉みしだいた。
「っっっっ」
伊耶那美は痙攣するように身体を弾けさせ、目をぎゅっとつむったまま言葉にならない言葉を発した。
いきなり強い刺激を送りすぎたのかも知れない。私は最初は微妙に、そして少しずつ女体への責めを強
めていった。乳房ばかりでなく、陶器のように滑らかな女の体を隅から隅まで舌と指で繊細に愛撫して
いく。微かな刺激に呼応するかのように女体は震え、私のタッチの正否を答えていく。伊耶那美は目を
つむって唇をかみしめたままだったが、私とこの女は身体で会話をしているかのようであった。そして、
少しずつ息遣いが荒くなり、身体が熱を持ってくる。
「ナミ、いくよ」
と、私が告げると、少女は切羽詰った表情のままうっすらと目を開けて微かに頷いた。その目は油の
膜が張ったように茫洋としている。
私は熱い芯の通った男のものを妹の秘所にあてがい、腰を押し込んだ。
「っっっっ!!」
妹は私の両腕を跡が残るほどの力で鷲掴みにして顔をひきつらせた。
「大丈夫、大丈夫だから・・・続けて」
と、健気にも言い募る。
私は可哀想な妹を気遣う気持ちと初めて味わう快楽の狭間で葛藤し、腰の抽送を始めた。そして、私
と一体になろうとするかのようにすがりついてくる伊耶那美を抱きしめたまま、ふたりは快楽の曲線を
上り詰め、白く光る世界の中でひとつに溶け合った。
こうして生まれてきたのが、現在の淡路島である。
「まだ・・・抜かないで」
と弱々しく伊耶那美は言った。
「うん、わかった。まだおまえの中にいるよ」
「ねえ、お兄ちゃん」
と、少女は肩で息をしながら、目をつむったまま言った。
「お兄ちゃんはあたしのことが好き?」
「うん・・・、好きだ」
「ウソよ」
「え? 嘘なんかじゃないさ」
伊耶那美はうっすらと目を開く。
「だって、お兄ちゃんはあたしが結婚する時にも立候補しなかったじゃない」
「え・・・、だってそれは・・・」
「それは?」
「俺は、おまえの兄貴だからだよ」
「例えお兄ちゃんであっても、それは関係ないことじゃない?」
「兄貴っていうのは、夫とは違うものだと思ってた。おまえはきっともっと素敵な、なんでも出来る
男と夫婦になるんだと思っていた」
「違うよ。あたしは、ぱっとしなくて何をしてもうまくいかないお兄ちゃんと、毎日喧嘩したり、泣
いたり笑ったりしながら過ごしていけたら、それが幸せ」
「そんなこと、考えもしなかったよ」
私は伊耶那美の中に飲み込まれたまま、桃源郷を漂っているかのような心地がしていた。
外面はやたらと優等生で、なんでも出来る美貌のスーパーウーマン。家では私とバカなことを言った
りやったりしているが、最後はきっと立派な夫と聖婚するんだろうと、私は自分の気持ちを押し殺そう
としていたのだ。だが私は本当は、このじゃじゃ馬をどうしようもないほど愛していたのだった。しか
し、彼女を目の前にすると口をついて出るのは憎まれ口ばかりなのだ。
「ふん、いつまでも子供だな、ナミは」
「あら、その子供のおっぱいを夢中になって吸っていたのは誰かしら」
でも、そんな私の天邪鬼ぶりもこの愛すべき賢妻にはお見通しなのか、さらりとやり返されて私には
返す言葉もないのだった。早くも尻に敷かれているのだろうか。私の方が兄だったはずなのだが。
「そんな生意気な妻には、お仕置きが必要なようだな」
「きゃあ」
私は、愛らしい若妻の乳房に吸い付き、再び男の特権である甘美なお仕置きを彼女の弱い秘部へと打
ち込みはじめるのだった。
一線を越えた兄妹はその後も愛の契りを熱心に交わし続け、現在の四国、隠岐島、九州、壱岐島、対
馬、佐渡島、本州と次々と大地を創造していった。その度に伊耶那美と私は愛し合う術を磨いてゆき、
いよいよ深い快楽の境地を共にさまようようになっていった。あるいは、長い間、抑圧していた愛の反
動なのかも知れない。まるで爆発するかのようにお互いへの愛を抑えきれず、たがが外れたようにお互
いを深く求め合うのだった。
「お兄ちゃん」
と、本州が生まれた後、気だるさの中で夢うつつになっていた私の肩を伊耶那美がそっとつついた。
そして、もう片方の手で力が抜けた私の陰茎をそっと握る。今や、私の陰茎はこの無邪気なじゃじゃ馬
の所有物であるかのように普段から遠慮なく自由に弄ばれている。
「これって、さわってあげると気持ち良いんでしょう?」
「うん、とっても気持ちが良い」
「じゃあ、舐めてあげたらもっと気持ちが良いのかしら?」
私が返事をする前に、私の非常に敏感な部分がパクッ、という感じで妹の口に含まれた。
「はっ、はわわっ」
精神的な動揺と身体的な快感で解読不能な言葉を洩らす私。私の股間という不浄の場所にその可愛ら
しい美貌を埋めた伊耶那美はいつものようないたずらっぽい目の輝きで私の反応を楽しんでいる。口の
中でぬるりとした舌が私の敏感な表皮を這い回る。た、たまらん・・・。やめて・・・、でも、やめな
いで。
伊耶那美は小さな唇から陰茎を吐き出し、
「気持ち良かった?」
と聞いた。
「うん・・・もっとしてくれないか」
私が言うと、この淫靡な天邪鬼は得たりとばかりにますますいたずらっぽい顔つきになるのだった。
「えー、どうしようかなぁ」
と、私の目をじっと見つめ、反応を楽しもうとする。
「頼むよ、ナミ」
「んふふ、お兄ちゃんのをしゃぶる代わりに、一体何をしてもらおうかしら」
私の若干情けない顔がいたくお気に召したのか、私の亀頭の先をそっと撫でながら我が妹はいよい
よご機嫌である。
「じゃあね、あたしのことを好きだって、いっぱい言って」
「な、なんだって。前にも言ったはずだろう」
「お兄ちゃんはいつもちゃんと言ってくれないわ。だから、あたしのことを愛してるって、あたし
の目を見ながらはっきりと何回も言って」
どうやら、愚かな私はそんな基本的なことも愛すべき妹にきちんと伝えられていなかったようだ。
私は、伊耶那美をかき抱いて頬を寄せ、耳元で何度も何度も愛の言葉を囁いた。先ほどまでは淫らな
悪女のような素振りを見せていた伊耶那美は、今はまるで花も恥じらう清純な少女のように顔を赤ら
めて、私の言葉にいちいち神妙に頷いていた。
そして、
「じゃあ、あたしも愛情表現をしてあげるね」
と、顔を再び私の陰部へと沈めていった。う・・・っ、やっぱり気持ちが良い。さっきよりもずっ
と伊耶那美は丁寧に私の陰茎を愛撫しているようであった。口に含んで激しく舐めまわしたり、時に
は口から出して舌でぺろぺろと舐め上げる。そして、雁首の裏側が私にとって一際感じる部位である
と瞬く間に見破ると、そこに集中攻撃を加えて私を悶絶させるのであった。
「ああ、たまらないよ、ナミ・・・」
「うふ、ここが好きなんでしょう、お兄ちゃん」
伊耶那美は私の陰茎に沿って下から舐め上げる。もはや私の快楽は妹に管理され、この少女は私の
甘美な支配者として君臨していた。
「ここはどうなの?」
「あ、そこも・・・気持ちいい」
伊耶那美は私の玉袋を指先で微妙にくすぐり、私の背筋をぞくぞくとさせた。この女はもしかする
と悪女の素質があるのではないか? 伊耶那美は私の股を左右に割り開き、玉のひとつを口に含んだ。
そしてそれを私に見せ付けるようにしながら舌で転がす。ああ、これもたまらない。そして身をよじ
る私を見る時、我が妹は妖しいほどに生き生きとするのであった。
「お兄ちゃん、ここって男の人の弱点なのよね」
「うん、そうだよ」
「もし、今あたしがこれに噛み付いたらどうなるの?」
「え、気絶するくらい痛いよ」
こんなやり取りで我が妹はサディスティックな興奮を覚えるのか、小さく精嚢に歯を立てる素振り
を見せて私をからかったりするのだった。
「そう考えると、お兄ちゃんは一番の弱点をあたしの前に今さらしている、ということになるわね」
「まぁ、そうだな」
「それって、あたしを信用しているということ?」
「それはそうだよ。他人の前には弱点はさらせないからなぁ」
「そっかぁ」
と、伊耶那美は嬉しそうな顔をして、
「あたし以外の前に出せないんだったら、あたしが舐めてあげないといけないね」
と、また小さな可愛らしい舌を伸ばして私の玉袋を口にふくみ、さきほどよりもずっと熱心に愛撫
を加えるのだった。
伊耶那美は敏感な陰茎や玉袋だけでなく、陰部全体に舌を這わせ、私の股間をぬめぬめにしていく。
ああ、なんと淫らな光景であろうか。そして、何を思ったかそのまま私を引き起こして四つんばいに
したのである。
「何をするんだ、ナミ?」
淫らな悪女と化した妹は興味深げに私の股間を観察し、玉袋のわずかに後方、蟻の戸渡りと言われ
る部位を舌で押し、私を悶絶させる。そして、指で私の肛門を引き開いた。
「ば、バカ! なんて所を見るんだよ!」
これにはさすがの私も仰天してやめさせようとしたが、妹はまったく動じる気配がない。
「いいじゃない。あたしはお兄ちゃんの妻になったのよ。だから、あなたのすべてを知る権利があ
るわ」
「バカ、それとこれとは違うだろ!」
「お兄ちゃんの恥ずかしい所も、あたしは知って受け入れたいわ。ほら、こんなことだってでき
る・・・」
美貌の女神は小さく可愛らしい舌を伸ばして、あろうことか私の最も不浄な肛門をぺろりと舐めた。
「こら、なんてことするんだ!」
「どうして怒るの?」
とむしろ伊耶那美は不思議そうな顔をする。
「当たり前だろう。おまえみたいな可愛くて若い女の子が他人のケツの穴なんかなめたらダメだ」
説教を受けているはずなのに、愚かな我が妹は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、心配してくれたのね。でも、あたしとお兄ちゃんはもう他人じゃないんだよ」
取り返しがつかないくらい深刻なブラザー・コンプレックスの妹はそう言ってなおも私の肛門に舌
を這わせるのだった。しかし、偉そうに説教している割りに私も快感に動けなくなっているのだから
何の説得力も威厳もあったものではない。美少女に肛門なめられてはぁはぁ言ってる男がどんな偉そ
うなことを口にしても鼻で笑われるだけだ。
「ぷはっ・・・お兄ちゃん、可愛いね」
初めての契りの時には私がこの女を支配していたはずだが、いつの間に支配構造が逆転したのか?
まったくもって愛とは摩訶不思議なメビウスの輪だ。
男の私が息も絶え絶えに喘いでいるのが我が妹のじゃじゃ馬魂を刺激したものか、四つ這いになっ
た私の後方から伊耶那美は私の陰部をしごきつつ、さらに舌による責めはますます激しさを増してい
った。ついには固く伸ばした舌先で勢いよく私の肛門を貫く。
「はうっ」
オカマを掘られるのってこういう気持ちかしら。ああ、いやだわ。私は快楽の中枢を打ち抜かれ、し
ごかれ続けていた陰茎から精液を勢いよく噴射した。これが思ったよりも量が多く、全国に散らばった
ために現在の小島、小豆島、屋代島、姫島、五島列島、男島女島になったというのは真っ赤な嘘だ。
在住の皆様ごめんなさい。
ともあれ、どれだけ信じる人がいるかは疑問だが、こうして日本列島は創造された。その後、大地
に続いて私達夫婦は多くの神々を生み出し、子孫たちの活躍を見守りながらいつまでも幸福に、毎日
喧嘩したり泣いたり笑ったりの日々を過ごした。エ!? 黄泉の国めぐり伝説!? ナンデスカソレ
ハ。僕が妻を見捨てるわけないじゃないですか。多分後年の歴史学者の捏造ですよ、捏造。秩父原人
とかと一緒です。
いや、ゴッドハンドの話はさておき。何が言いたいかというと、時々妹に萌えてしまう気の毒な人
が生まれてくるのは多分私のせいである。正直すまんかった。