不肖の弟、須佐之男のことを考えると天照大神はまた憂鬱になる。
このゴロツキが高天原に居候を始めてこのかた、天照大神には気の休まる時がない。
最近の彼女の1日は須佐之男への苦情の処理で始まる。
やれ田畑を荒らされた、神殿に糞尿を撒き散らした、深夜の大音量、ごみを分別しないetc・・・
日本史上初のDQNであり住所不定無職の先駆けたるこの男、
姉が自分には甘いのをいいことにやりたい放題なのである。
問題の事件というのはつい先日、機織り小屋で天照大神と機織女たちが神聖な衣服を織っていたときのこと。
突然轟音とともに屋根を突き破って落ちてきたのは皮を剥いだ馬1頭だった。
もちろん悪酔いした須佐之男の仕業だ。
しかも悪いことに機織女の一人が泡をふいて倒れたとき、
打ち所が悪くそのまま帰らぬ人となってしまったのだ。
これには組合も黙っておらず、どこからわいて出たのかプロ市民やら人権派弁護士やらも
まじえての上へ下への大騒ぎとなってしまった。
経営者であり、警視総監であり、司法長官であり、行政府の長をも兼ねる、
これもキャリアウーマンの先駆けたる天照大神だがこの騒ぎにはほとほと疲れ果て、一計を案じることにした。
全ての仕事を投げ出して天の岩戸に引きこもってしまおうというのだ。
太陽の化身たる彼女が身を隠せば天地は闇におおわれ高天原の機能も麻痺し、
外で騒いでいる連中もあわてて彼女の助けを求めてくるに違いない。
おそらく須佐之男は彼女が身を隠している間に高天原を追放されるだろうが、自業自得というものだ。
果たして人目を忍んで天の岩戸にたどりついた天照大神は
巨大な岩戸を閉め壁によりかかってほっと一息つく。
だがこの薄暗い岩屋の中で頭に思い浮かぶのはどういうわけか須佐之男のことばかり・・・
*****
彼女の記憶の中のまだ少年の須佐之男。
父イザナギに対して、母に会いたいとだだをこねては泣いてばかりいる。
母を捨てた父に対して彼なりに含むところがあったのだろう。
母親代わりではないが、いつのまにか須佐之男のお守りは天照大神の役目になってしまった。
末っ子でわがままな須佐之男も天照大神の言うことだけは不思議とよく聞いてくれた。
須佐之男はいつも思ったことをそのまま口に出す。
「俺は姉上のことは好きだよ。」
「まったくこの子ったら・・・」
苦笑しながらも自分はどうなのだろうかと考える。
この無軌道な弟を放って置けないような気がするのは確かだと思う。
やがて父は歯向かうばかりの須佐之男を放逐し、天照大神は父のあとを継いで高天原の守護者となった。
一方の須佐之男は諸国を放浪し悪評は高まるばかりだ。
そして時は流れ、高天原に流浪の須佐之男がやって来たのは今から一月ほどまえだったか。
須佐之男来るの一報に八百万の神々もいよいよ高天原をのっとられるかと戦々恐々としていたところ、
場を静めたのは天照大神のツルの一声だった。
「須佐之男については、私が一人で全責任をもって対処します。各々方は決して手出し無用のこと。」
その当日、天照大神は髪も結い直し戦士の装束を身にまとい、どんな鎧も打ち貫く強弓を手にして
須佐之男の前に立ちふさがったのだった。
遠目にも凛々しい彼女に対し、須佐之男はといえば生意気に髭など生やし、くたびれた風体に
大きな図体を揺らし表情には不敵な笑みを浮かべ一歩一歩近づいてくる。
内心は懐かしさで胸が一杯になりながらも、
天照大神は弓に矢をつがえ須佐之男に向けて言った。
「止まりなさい、須佐之男。この聖域を犯さんとする輩はたとえ弟といえど容赦はしません。
この強弓を受ければ豪傑のおまえとて、ひとたまりもないはず。」
「これは姉上、久々の感動の対面だというのに物騒なことですな。」
須佐之男は動じる様子もなく、歩を進めながら言う。
「まあ正直、そういう下心が全くなかったとは言いませんがね。実際こうして姉上の凛々しい姿を
拝見したらそんなこたあどうでもよくなっちまいましてね。」
苦笑しつつ肩をすくめる須佐之男。
「むしろ別の聖域のほうに・・・いやそれはとにかく・・・
そういえば姉上にはガキの頃から世話になってばかりでしたっけ・・・
要は少々の間だけ宿を貸してくれさえすればこっちはなんの問題もないんですよ、姉上。」
などと遠い眼をしながら語りだす。
天照大神も情にほだされ、いつしか弓をおさめていた。
生真面目だが情にもろくもある天照大神は須佐之男の口八丁にまるめこまれ、
いつの間にやら須佐之男は高天原の賓客として遇されることとなってしまった。
そのあげくが今のこのありさまだ。問題がないどころの話ではない。
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(結局、須佐之男は好き放題に振舞うために私を利用したということか・・・)
暗い場所でひとり思いをめぐらしてもろくなことは思い浮かばない。
彼女は他の者と違って須佐之男を嫌ってはいなかったし、彼に対しても礼を尽くして遇したはずだ。
それだけに裏切られたという思いが強い。
(これだけ長い間離れ離れだったのだからもはや他人も同然ということ?)
かつてもっとも近くにいた肉親に背を向けられたと思うと、
口惜しくて目頭が熱くなってくる。
「須佐之男・・・か・・・」
声に出してみる。
「呼びましたかい?」
(ひっ!・・・・・)
天照大神は飛び上がって驚いたが悲鳴をあげるのはどうにかこらえて、
声のした方に目をやる。
「おやこれは姉上、意外な場所で会いますな。」
須佐之男は相変わらずの涼しい顔でぬけぬけと歩み寄ってきて言う。
「なあに、少々そこらの有象無象どもがうるさいのでね。ほとぼりをさますまで
身を隠すにはこの岩屋などは絶好の・・・」
ピシッ!
天照大神の鋭い平手打ちがそれをさえぎる。
「おまえのように他者を信用しない人間には、私の気持ちなどはわからないでしょうね・・・・須佐之男。
こんな思いをするくらいなら・・・・・再会など・・・するのではなかった・・・・・」
あとは嗚咽になって言葉にならない。
須佐之男はいつになく神妙な面持ちで近づくと、
天照大神の震える背中にそっと腕をまわし優しく抱き寄せささやいた。
「どうも姉上の前では素直になれなくってね・・・・・昔はこんなことはなかったはずなんだがな。
・・・・・すまなかった・・・・・」
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天照大神は混乱の極みの中にいる。須佐之男に抱きしめられたことまでは覚えている。
二人はやがて崩れ落ちるように身を横たえ、
そして今は須佐之男の腕の中で熱く甘い愛撫・・・・・愛撫?
「ちょ、ちょっと須佐之男、お待ちなさい!・・・こ、これはいったい・・・?」
いつのまにやら胸元をはだけられ、あられもない姿にされている。
豊饒を司る女神である彼女だが、須佐之男の掌の中で弄ばれる白い乳房も豊かに実り、
上にのしかかっている須佐之男を歓ばせる。
「姉弟のあいだでこのような・・・・・お前には・・・・・」
「わたしゃ昔のように自分の気持ちに忠実に行動することにしましてね。
さっき謝ったのも本心だし、今こうしているのも本心からの行動。
さて、・・・姉上のほうはどうなんです?」
「わ、私は・・・・・あっ・・・・・馬、馬鹿っ!!」
須佐之男のもう片方の手は天照大神の裾を割り、下半身へ忍び込んでくる。
「そもそも人外に生を受けた我等。人や畜生でもあるまいし近親姦を禁忌とするなど笑止。
誰に後ろ指をさされるいわれもありますまい。」
「でも・・・うっ・・・」
須佐之男自身の指のほうはすでに天照大神の秘裂の感触を愉しみその潤いを確めている。
彼女のそれは異物の侵入を容易には受けつけず、なおも進もうとする彼の指をきつく締めつける。
百戦錬磨の須佐之男はその間にもするすると彼女の帯をほどき、瞬く間に一糸まとわぬ姿にしてしまう。
天照大神の白い肌は暗闇の中でも白陶磁器のように艶やかに輝き、その肌を愛でる須佐之男を満足させる。
その頂点に可憐に揺れる両の乳首を須佐之男に啄ばまれ、身を震わせて鳴くその姿はもはや俎の上の鯉のようなものか。
やがて須佐之男は天照大神の両足の間に腰を入れて言った。
「私はこれでも嫌がる女性を無理やり手篭めにするというのは流儀ではないのでね。
姉上が本当に嫌ならここでやめてもよろしい。
でなければこのまま最後まで続けさせてもらうが・・・如何?。」
「ええ・・・・・えっ?・・・」
天照大神は羽化登仙の心地で意識の雲の上を漂っている。
太股にはなにやら熱く硬いものの感触が・・・・・
(否・・・と言わないと・・・否と・・・で、でも・・・)
しかし彼女の唇は動かず、眼はとろんとして須佐之男を見つめるばかり。
「・・・姉上、愛しています・・・」
(・・・そんな・・・・・ずるい・・・)
須佐之男は天照大神の締まった両太腿を抱え上げ、無造作に腰を進めていった。
これ以上はないほどに膨張しきった須佐之男の分身は容赦なく天照大神の中を押し拡げつつ侵入してゆく。
「ん・・・・・なっ・・・・こんなの・・・・・何?・・・・・ううっ!・・・」
突然現実に引き戻された彼女は鋭い痛みに身をのけ反らせる。彼女の膣は本能的に異物を排除しようとするが、それは須佐之男のそれを締め付け快感を与えるだけの結果におわり、須佐之男はその心地よさに酔いながら天照大神と完全にひとつになった。
須佐之男の巨大なモノを受け入れた天照大神は息も絶え絶えな様子でそれに耐えていたが、やがてうめくようにして言った。
「す、須佐之男・・・こうして想いを遂げた以上は・・・」
「想いを遂げた?想いを遂げるのはこれからですよ、姉上。・・・存分にね。」
突然須佐之男が動き出す。
それにあわせて天照大神の体も揺り動かされてゆく。
「ひっ・・・・・あっ・・・・・・んっ・・・・・んっ・・・・・」
それにつれて動く両の乳房も艶かしい。
もはや須佐之男に突かれるままに喘ぎ声を抑えることのできない彼女である。
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存分に突きまくり天照大神の感触を堪能した須佐之男は体勢を入れ替え、
彼女をうつ伏せから四つん這いの体勢に持っていった。
そして自分はその豊かな尻の感触を愉しみつつ、腰を抱えて背後から責め立てる。
「須佐之男・・・・・私・・・・・もう・・・・・っ・・・・・」
「ああ・・・俺も・・・そろそろ限界のようだ・・・・・」
「す、須佐之男・・・私も・・・うっ・・・お前のことを・・・んっ・・・」
須佐之男の動きが強く激しくなり、天照大神はそれ以上言葉を発することもできない。
そしてそれに屈した天照大神が凄絶に気を遣る。
「んんんっ・・・・・・あっ・・・・・・・ああぁんっ!」
全身を硬直させると、身を仰け反らせ快感の荒波に身を委ねる。
彼女は胎内に咥えた須佐之男のモノをその襞で激しく締め上げ、愛液を飛沫かせる。それは須佐之男をも同時に頂点へ追いやる。
「おおおっ!・・・・うっ・・・・」
ドクンッ・・・・・ドクッ・・・・・ドクッ・・・・・ドクッ・・・・・
須佐之男は快感に巨体を震わせながら天照大神の中へ存分に精を射つ。
天照大神は須佐之男の脈動を胎内に感じながら徐々に意識を薄れさせていった・・・
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天照大神は須佐之男の腕枕に抱かれている。
「まさかお前とこのようなことになろうとはね・・・」
などとはにかみながら語りかける。
「満更悪くもなかったでしょう?」
「・・・・・馬鹿・・・・・」
頬を染めてうつむく彼女はただの一人の可愛い女になってしまっている。
「それはそうと・・・外の方が何か騒がしいようだが?」
須佐之男が物音を聞きつけ、岩戸を少し開けて様子をうかがう。
岩戸の外では大宴会がひらかれており、中央で舞っているのは美女の誉れも高い天宇受売(あめのうずめ)。
そもそもこれは引きこもった天照大神の気を引こうとして始めた宴だったのだが、
天宇受売が舞い始めると全員そんなことも忘れていまや彼女の舞に釘付けにされている。
その舞というのが音楽に合わせて1枚ずつ脱いでいくという、
日本史上初のストリップというのだから恐れ入る。
天宇受売は理知的な天照大神とは正反対のタイプの、まさに色気が服を着て歩いているような女神(ディーヴァ)であり、それが服を脱いだのだから残るのは色気だけだ。
周りの男神どもは全員彼女の色気に当てられ鼻の下を伸ばしている。
須佐之男などは目尻を下げ頬は緩みの今にも涎がたれてきそうな風情だ。
そしてその背後には目を三角にした天照大神が・・・・・
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かくして須佐之男はめでたく高天原から追放され、天上界にもようやく平和が戻ってきた。
この最低男須佐之男が何の因果か怪物を退治して英雄と呼ばれるようになるのはもう少しあとのお話。
了