――何でコイツと……――
……彼女の思考が頭の中に入ってくる。
「それは、こっちの台詞だな、チャンドラ・ナラー」
紅の瞳が此方を向く。
「……アンタが頭ん中をヨめるの忘れてたわ、ジェイス・ベレレン」
……今、俺達がいるのは次元の狭間だ。
それ自体は問題じゃない。
問題は「普通でない」、という事だ。
「普通」ならば出られるはず……何故だ…?
……原因を調べるしか無――
「コレ、忘却の輪をムチャクチャに強化したエンチャントみたいよ」
――い訳では無さそうだ。
「何故分かる」
「だって」
彼女が答える。
「直接見たもの、誰かが私たちにコレを使う瞬間を」
成程、それなら脳味噌が筋肉で出来た奴にも分かるはずだ。
「……誰が脳筋ですって?」
「口に出ていたか、俺もまだまだ甘いn」
「自分のドジをカッコよく纏めようとしないで」
目の前の空間が「点火」される。
俺は其れを体を後に反らして避けた。
「なんなら今からさっきの続きをシてあげてもいいのよ?」
「遠慮しておこう」
俺は彼女の挑発を無視し、此処までの情報の整理を始めた。
俺たちは彼女の盗み―彼女曰く、「借りただけ」―が原因で殺し合い、いや、もっと甘いな。
……喧嘩あたりが近いか?其れをしていた。
その途中に、彼女の言った通りならば、何者かに強力な忘却の輪を使われたのだろう。
そして、今に至る、と。
「……コレを使った奴は、どんな奴だった」
「たぶんレオニンね、少なくとも人間じゃないわ。あと、片目が潰れてた。
…そうそう、毛は真っ白だったわよ?『この森に手を出すなーーーー!!』とか叫んでたわね」
「……心当たりがある。
此処を出た後に少し挨拶に行こう」
そう言うと、目の前の紅の瞳が爛々と光った。
「楽しそうね、私も一緒に行っていいかしら♪」
「……いいだろう」
……女性に恐怖したのは、子供の頃に母に怒られたとき以来だな。
兎も角、今は此処からの脱出が最優先だ。さて、どうするか……。
……ああ、其の方法にはずっと前から気づいている。
だが――
「……どうかしたの?」
「いや、なんでも、無い」
やはり、駄目だ。
――どうして?
……何だ、誰の声だ。
――オレはオレだぜ?……俺。
……そういえば、こんな話が在ったな。
全てを操る者は、全てに操られる、と。
――その通りだ、俺。
馬鹿馬鹿しいな。
第一、俺は精神しか操った覚えが無い。
――ほら、一つを修めるは、万事を修めるに同じ、って言うだろ
……御託を並べるのはいい、何が、目的だ。
――オレは俺なんだ、考えてることは、同じのはずだぜ?
もういい、黙れ。
――返答が早いな、図星だからか?
違う。
――大丈夫だって、ココから出るためだって説明したら、アイツも納得するさ
違う違う違う。
――素直になっちまえよ、俺。俺の願いは、
違う違う違う違ウ違ウ違ウ
――アイツを
違う違う違う違ウ違ウ違ウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチg………
――俺の、オレの、俺たちの手で
「さて……聡明なアンタのことだから、どうやって脱出するのかなんて
もう思いついてるんでしょう?」
……正直言うと私はこの手のエンチャントは苦手だ。
場合によっては壊すことすら出来ない。
……まぁ、大抵そうなる前に、全部燃やし尽くしたケド。
けど、今回の場合、もうエンチャントは発動してるから、私には
もうどうしようもない。
だから――まぁ、癪だけど――コイツに頼るしか、ない。
「………ねぇ、じぇ・い・す?何か思いついた?」
私の持つ最大限の魅力をもってアイツに聞いてみる。
自慢じゃないけどコレを使ってオチなかった男は今までに会ったことは無い。
で、その対象はと言うと。
「チガウ…………チガウ………」
被覆を持っていました。
「……何なのよ……」
思わず、口に出る。
せっかくデレてみたのに、さ。
……別にこんな奴、好きじゃないけど。
……それから暫くして
「……………そう、だったな」
アイツがそういった。
「さっすが天才、何か思いついたのね?」
出来る限りのお世辞を言う。こういうのは、割と得意なつもりだ。
「……ああ、とても、簡単だ」
「どうするの?」
そう聞くと
「こうするのさ」
アイツは
「……え?」
私を
「二人のマナを、融合させて、放出する」
……押し倒した
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