記憶が戻った時の俺の目の前に浮かんだのは、クセっ毛を掻き上げた満面の笑みのリュカの顔。
ブタみたいなマスクを取ってちょっと涙ぐんでるおてんばお姫様。
嬉しそうに鳴き声を上げているボニー。
そして……。左脚の疼きと同時に、…あの娘の泣く顔。
土星谷から相棒のヒモヘビのお陰で何とか戻れて…俺は実に三年ぶりに、親父と会えた。
俺の家は…、今にも潰れちまいそうなホームに姿を変えちまったが、親父の元気な姿は相変わらずだった。
いや…、少し、痩せたな。俺が記憶をなくしてる間、色々と苦労をしたんだな。
親父。俺はもう迷ったりはしない。とことんまでリュカを助けていくよ。
会えて…良かったよ。
そして、俺はもう一人、会っておかなきゃならない人がいる……。
-- Inside of memory −
次の針があると言うタネヒネリ島に行く前に、休みながらこれまでの事を振り返ろうと言う事で、今日はリュカの家に泊まる事になった。
「ふーん。これがお前の家なのか」
「うん。今日はここで寝泊まりして」
ドアノブのない家の前に差し掛かったとき、ダスターは足を止めた。
「リュカ。クマトラ。ボニー」
直ぐ様に「?」とでも言いたげな顔をして振り向く二人と一匹。
「何だいダスター?」
「どうしたんだ?」
「悪いけど今日一日だけ、俺を一人にしてくれないか?」
一瞬、ぽかんとした表情をする。
「…ええっ? 何で?」
「すまない。実は親父の他にもう一人だけ会っておかなきゃならない人がいるんだ」
「?? そんなの明日僕らと一緒でも…」
「明日じゃダメなんだよ」
リュカの言葉に、ダスターは少しだけ声を強くした。
「……俺一人じゃなきゃ、ダメなんだ……」
いつもと明らかに違うダスターの口調に、二人とも少し驚いたようだ。
動揺が顔に出ている。
「どうし…あっ!」
リュカが、唐突に声を上げる。
「? どうしたんだ?」
「わ、分かったよ。じゃあ明日の九時頃、海岸で待ってるよ」
「…え? リュカ、どうし…」
「ほらほら入って。待ってるからねダスター!!」
まだ理解しかねないと言うようなクマトラの背中を押して、リュカは家の中に入って行った。
どうやら、皆まで言わなくとも悟ってくれたらしい。
「……サンキュー」
ダスターは心配そうに見つめてるボニーの頭を撫でた後、軽くお辞儀をしてリュカの家を後にした。
少し歩いただけでも、タツマイリの村は見る影もなくなってしまっているのがよく分かる。村人も次々といなくなってしまっている。
あの幸せな村は、偽りの幸せで塗り固められた村になってしまっていた。
そして…。すっかり変わってしまった村のYADOの前で彼は足を止めた。
「…痛ぇ」
ずくん、ずくんって音がするみたいに、左脚に痛みが走る。
原因は分かっていた。自責の念と、…贖罪。
ダスターは痛みを堪えて一呼吸し…。YADOの自動ドアに手をかざした。
機械の音を立ててスモーク状のガラス扉が開いたその先には、前よりも輝いて見える女性の顔があった。
「……!! だ、…ダスター?」
その女性の顔は、すぐに驚嘆の表情になる。手に持っていたティーポットが今にも落ちそうだ。
「よう…。テッシー」
少し小刻みに震えながら、ダスターに近寄ってくるテッシー。
その表情はうっすらと涙を浮かべながら、嬉しさと驚きが複雑に混じり合っている。
「本当に……貴方なの?」
「ああ。DCMCのベーシストのタメキチであり……俺だよ」
「……!!」
テッシーは思わず、口を塞ぐ。指の間から、微かに嗚咽が漏れ始めている。
「…オヤジさん。部屋、空いてるか?」
ダスターは少し困った顔をして頭を掻きながら、フロントにいるYADOの主人のジャッキーに話し掛ける。
「…! あ、ああ。二階の一番奥の部屋が空いている。入りなさい」
そう言って、ルームナンバーが刻まれたガラスの飾りの付いた鍵を、ダスターに向けて放り投げる。
無造作に投げられたそれを、ダスターはあまり見もせずに、見事にキャッチした。
「有り難う。…お代は? 確かDPがいるんだったよな」
「いらないさ。君が…最後の客だからな」
「!?」
「…いや、何でもない。さ、テッシー。お客様を案内してあげなさい」
「は、はい」
テッシーはティーポットをフロントのテーブルの上に置いて、ダスターを上の階に案内した。
その間、二人はあまり目を合わせなかった。正確には、合わせ辛いと言うべきか。
「……こちらで…きゃっ!?」
キーに書かれた通りのナンバーの部屋の前に立ち、テッシーがそのドアを開けた瞬間。ダスターは彼女の手を引っ張って部屋に入れ込んだ。
そして大きな音を立ててドアが閉まった時。テッシーは彼に抱き締められていた。
「ダス…」
「我慢するな。もう…我慢しなくていい…」
頭の上から聞こえてくる、彼の囁き声を合図に、テッシーは抑えていたものを溢れ出した。彼の胸の中で…思いっきり泣いた。
ダスターは只黙って、彼女の頭を赤子をあやすように撫で続けた。
ここで場所は、一旦リュカの家に戻る。
リュカとクマトラの二人はダイニングの椅子に、隣り合って座りながら話していた。
「なぁ、何でダスターはいきなり"一人にしてくれ"って言い出したんだ?」
「クマトラ…。チチブーで働いてた時、気付かなかった?
ダスターを訪ねていた女の人がいたって事」
その言葉を聞いて、クマトラもようやくハッとする。
「…あ。そういえばライブの時、毎回見かける奇麗な女の人がいたっけ」
「うん…その人、この村の人でさ。テッシーって言って、ダスターの…幼馴染みの人なんだ。
僕も、随分と世話になった事があった」
「そ、そっか…」
「ねぇ、クマトラ。もしもクマトラが昔から知ってる人に話し掛けても"誰だ"って言われて突き放されちゃったら、どんな気持ちになる?」
クマトラは少し目を丸くして、ジッと考えてこう答えた。
「うーん。…オレでもいたたまれない気持ちになっちゃうだろうなぁ」
「そうだよね」
二人の手が、どちらともなくそっと握られていく。
「でもオレ、ヨシコシの格好でも一発でオレだったってリュカが気付いてくれた時は…嬉しかったぞ?
ありがとな……。リュカ」
「こ、こちらこそ…。僕の事覚えててくれて、ありがとうね」
くすくすと笑い合いながら、二人の額をこつんと合わせあう。
「ダスターって今頃、どんな事話したりしてるんだろうなぁ……」
クマトラの何気ない言葉に、リュカはほんのちょっぴり如何わしい想像をしてしまった自分に心の中でダメ出しをしながら…。
「…さぁ」とだけ答えるのだった。
嗚咽がある程度小さくなったところで、二人はベッドの上に腰を掛けた。
「ん…。有り難う。ある程度泣いたらスッキリしちゃった。
…実を言うとね。あのタメキチさんがダスターだって言う事には、あまり驚かなかったのよ。
こうして私の前に現れてくれたってだけで…何だか、溢れて来ちゃって」
「すまなかった。俺はあの時……記憶をなくしてた時、お前に酷い事を…」
テッシーは、記憶をなくしてDCMCのベースとして働いていたダスターに、会いに来ていた。
そして、ようやく面と会えた時に言った言葉。
『あんた誰だ?』
この言葉で、テッシーはそれ以上の深入りができなくなってしまった。遠くから、ライブをしている彼を見ているだけしかできなかった。
ダスターの方も、記憶が戻って以来、この出来事をずっと悔やんでいた。
「ずっと…。謝っておきたかった」
「お互い様ね。15年前のときは、私の方がずっと謝ってた」
「そうだったな。あの時…。師匠、親父の教えで、カベホチの練習中だったな」
「お昼休みに私がお弁当を持って来た時に…上の岩肌が崩れてきたのよね。
貴方が私を庇って、左脚が岩の下敷きに…」
テッシーがそっと、ダスターの左脚の膝を撫でる。
「俺もあの時は、本当に二度と歩けないんじゃないかって思ったよ。
テッシー…、ずっと謝りっぱなしだったよな。"ごめんなさい ごめんなさい"ってさ」
「あ、あの時は…、私のせいだって本気で思っていたし、他に言葉が見つからなかったし」
そんな彼女の頭を、わしゃわしゃと少し乱暴に撫でる。
「そんでも、毎日見舞いに来てくれた。リハビリにも付き合ってくれた。お前がいなきゃ、今の俺はいなかったよ」
「もう、大げさなんだから」
ようやっと、彼女の顔に笑みが戻った。
大人になっても、子供の時と変わっていないその笑顔に、ダスターも安堵の表情を見せる。
「俺は…大げさとは、思っていない」
自分の左膝を撫でていた手を取って、その手にそっと口付ける。
「ダスター…」
頬を赤く染めながらも、テッシーは拒まない。
「全て、君のお陰だ」
二人の間の空気が変わる。そして、二人の唇が近づき…。
「…!! けほっ、けほ…」
突然、テッシーがいきなり咳き込む。
「!! ど、どうしたっ?」
「こ、ごめんなさい…。ちょっとタバコ臭くて」
「た、タバ…はっ!」
ダスターは人よりも喫煙量が多い。その為にクマトラと初めて会った時には「口臭がする」と突っ込まれたものだった。
記憶をなくしている間も、その癖は治っていなかった。
「す、すまない。…キスは止めるか?」
テッシーはふるふると首を横に振り、少し息を吸うと。
「テッ…」
ダスターに抱きつくように、押し倒しながら自分からキスをした。
「「…………」」
二人の間に、沈黙が走る。
そして、テッシーの唇が離れると、小さな声で囁いた。
「私の事を全部思い出したのなら…あの時みたいに……」
ダスターは少し口の端にしわを寄せて、そっと頷いた。
腰から上を起こして上着を脱ぎ捨ててから、テッシーのエプロンを開けさせ、首筋に軽く吸い付く。
「……ん!」
一瞬、ピクリと反応する。
勿論その間に、手を服の中に滑り込ませて、器用に脱がせていった。
「…何か、手慣れてない?」
「そうか?」
「どうせDCMCだった頃、ファンの女の子と遊んでたんでしょ?」
言葉自体は素っ気ない言い方だが、表情にはジェラシーが露骨に現れている。
ダスターはにやり、と笑いながら、その言葉に対して一言。
「…ばーか。俺はお前以外にそんな事した事はねぇよ」
「だって…、チチブーのウェイトレスにも、仲が良さそうな娘がいたじゃない…。
ヨシコシ……ちゃんだっけ…」
いつの間にかカシューシャも外して、テッシーは産まれたままの姿になってしまっていた。
話しながらも、ダスターは三年ぶりに触れる彼女の柔肌に痕を付けていく。
「あいつは…、なんと言うか、妹みたいなやつなんだよ」
「んあ…! そ、そう、なの?」
「俺は嘘はつきませんよ」
赤く頬を染めながらもテッシーの表情が和らぐ。彼の顔を指で触れて、口元をそっと撫でた。
「信じる事にします。…ふふ。お髭がちょっとくすぐったいわね」
「すまないな。剃る暇なかったんでな…」
「平気。格好いいわよ」
額に軽くキス。
そしてテッシーも、ダスターがさっきしたように首筋や肩にどんどん口付けする。
「っ! おいおい」
「私だって触れたかったのよ。こうやって…」
ダスターの肩にかり、と軽く噛み付く。
「いってー…。いつからこんな女になったんだ?」
「クスっ、さあ?」
「まったく…!」
「きゃあっ?」
テッシーの腕を掴んで、自分が見下ろすように体勢を入れ替えた。
「悪いけど、俺はやられるよりはする方が好きなんでね」
そう言いながら、彼女の豊かな乳房に手を添えて、柔らかく揉みしだく。
弧を描くように優しく、時に強く。マシュマロのように柔らかく、形を変えていく。
「承知の上よ…。だって、子供の時から知ってるもの……ん、あ…」
「前よりも、大きくなったな」
「や、そんな事…言わないで……! んあっ!」
右の乳首を、軽く噛む。左の乳首にも、指で擦るように愛撫する。
三年ぶりに感じる彼の愛撫に、テッシーの唇から喘ぎ声が漏れていく。
「ふあ…、あ、ああんっ…!」
「感度も上がったな。ちょっと弄っただけでもうこんなに立っているぞ」
乳首を弄りながら、そっと意地悪っぽい言葉を囁く。
そして、ダスターの手がそっと彼女の身体をなぞり、甘い香りが漂う場所へと誘う。
だがその手を。テッシーはがっしりと掴んで止めた。
「あ…、ちょ、ちょっと待っ…」
「何だ? ここまでやらせてダメなんてなしだぞ?」
ダスターの言葉に、テッシーはモジモジとしながら呟くように言う。
「ち、違うわよ……。私も、やってあげるから」
少し沈黙したあと、言葉の意味を理解して目を丸くするダスター。
「……マジか?」
テッシーは耳まで顔を赤くしながら、コクリと頷いて、ズボンを履いたままのダスターの両脚の間に頭を持っていく。
そして、チャックを歯で噛んで下に降ろす。
降りきると、彼の隆々と反り立った逸物が彼女の眼前に姿を現した。
「お久しぶりね、暴れん坊さん」
テッシーはクスッと微笑みながら人指し指で軽く突っついた後、逸物の先端からぱくりと頬張った。
「ん、んん…ふむ」
久々に感じる彼女の口の中の温度と唾液と舌の柔らかい感触に一瞬達してしまいそうになるも、何とか我慢する。
テッシーは最初はゆっくりと、そして次第に少し早く顔を前後に動かしていった。
「…んん、ひもひ、いい…?」
「あ、ああ。
(……なんか、凄ぇなぁ)」
ダスターは、こんなにアグレッシブな彼女を今まで見た事がなかった。それでも、彼女の持つ魅力は更に際立って見える。
三年の年月の間に、テッシーは自分が思い描いていたよりも、もっとずっといい女になっているのだと言う事を、ダスターは改めて実感したのだった。
初めて結ばれた頃は、16の時だった。
その時は互いに経験なしでもダスターが何とか主導権を握っていたし、それ以後も彼がリードする事が殆どでこういう風にテッシーの方から積極的にしてくれた事は数える程しかなかった。
「(初めて口でしてくれた時は、吐き出して暫く項垂れていたっけなぁ)」
そう考えているうちに、早くも限界を感じて来ると、彼女の頭を掴んで強制的に動きを速くさせた。
「んん?! ん、んー…っ!」
「テッシー…、悪い、限界っ…」
久々に感じたぶるりと背筋を通る感覚とともに、ダスターはテッシーの頭を掴んだまま、彼女の口の中にその熱い欲望をぶちまけた。
「〜っ!! ん、んんぐ……!!」
テッシーはその濃い味とむせ返る感覚に吐き出しそうになるも、彼の腰に手を回して何とか我慢して飲み込んでいく。
そして、一通りの射精が終わったのを口の中で感じると、彼のものをそっと口から離す。離した瞬間、咳き込むようにケホケホと荒い息で呼吸をした。
ダスターは少しの間、彼女にかける言葉を思い悩んだ。
三年分近く溜め込んでいたとはいえ、あまりにも早すぎる自分が情けなかったし、自分に対して懸命に答えてくれたテッシーが、今はとても弱々しく見えているから。
そして…、彼女を宥める意味で、一言。
「…美味かった?」
「…訳ないでしょう」
即座にツッコミが入る。
流石のダスターも苦笑いをするしかなかった。
「……す、すいません」
「貴方以外のだったら、飲めないわよ。
それで……、どうだった? 少しは頑張ってみたけど…」
涙目でも、にこりと鈴蘭の花のように可憐な微笑みを見せる。
「………っ」
その健気な姿に、ダスターは久しぶりに胸を熱くさせる。
テッシーの身体をぎゅっと抱き締めて、自分ごと真横に押し倒した。
「頑張り過ぎだっつーの」
「もう、素直じゃないんだから…」
二人して、十代の頃に戻ったかのように子供っぽく笑いあう。
笑いあいながら、ダスターはもう一度彼女の秘所に手を伸ばした。
今度はジャマはされず、彼の指にとろとろとした液体の感触が走る。
「ん、やぁ…」
「今度は俺の番だな」
ダスターがかつての悪戯小僧のような笑みを浮かべたあと、彼女の蜜壷に彼の指が二本、突っ込まれる。
「ひゃあっ!! あ、あ……!!」
中の上の方を人指し指と中指で、きれいに処理されて生え揃っている毛の下から顔を出しているクリトリスを親指の腹でぐりぐりと弄る。
「これが好きだったよな」
「ん、あっ、言わ、あ、ないでぇ、ひあっ、んぁぁんっ!!」
空いた方の手は彼女の奇麗な弧を描いてるお尻に伸びて、その柔らかい肉を乳房の時のように揉みしだく。
そして、お尻を揉んでいた手がそっと菊門に近づいて、つぷり、と人指し指を入れる。
突然お尻の方にも感じた感触に、テッシーの背中が一瞬弓反りになった。
「!! だ、めぇ…!!」
「ここ…弄ると結構早くイッてたよな」
「そ、そんな事……はぁぁっ!」
ダスターの指が前後で動いて、更なる快感を彼女に与えていく。
テッシーも三年ぶりに感じた彼の太くてゴツゴツとした指が自分の中で蠢いている感触を、涎と喘ぎ声を漏らしながら身体全体で感じていた。
「はっ、あ、ああっ…!! ダメ、だめぇぇっ…!! アアン、私、もうっ…!」
「俺も一回イッたんだ。お前も一回…!」
そう言うと、彼の指の動きが早く、少し荒々しくなった。壷から溢れ出る蜜の量も、指の動きと同時に多くなる。
「駄目、だめ、ダメぇぇぇっ……!! くる、来るっ、来ちゃうッッ…!!
────っ!!」
テッシーの背中が二、三度ビクン、ビクンと撓り、指の隙間から潮が勢いよく噴いていく。
ダスターは両方の穴から指をそっと抜いて、絶頂の余韻に浸ってる彼女の額とまぶたに軽く口付けをする。
「ん…、ダスタぁ……」
少し涙を零して、テッシーは彼に向けて微笑む。
かつて何度も見て来た筈の、それでもいつも違って見えるその美しい顔に、ダスターは思わず唾を飲んだ。
「んな色っぽい顔するなよな…。また襲いたくなるじゃねーか」
「…いい、よ。貴方になら襲われちゃっても」
照れ隠しに言った言葉でも、彼女は更に上をいく。
「……まったく」
敵わねぇな、と心の中で呟きながら、ダスターはテッシーの上に覆い被さり、その細くて長い脚にそっと手を触れた。
「何言ってももう止めないからな…」
ダスターの逸物は一度出しても飽き足らずに天高く隆々と脈打っている。
そして、ひくひくと軽く痙攣して香り立つ蜜を溢れさせている彼女の花弁に、自身のそれをそっと当てがった。
「…来て…」
「ああ」
目と目で合図して、頷きあう。
そして、テッシーが目を閉じると、先端をゆっくりと入れ、ひとつ息を吸ったら腰に力を入れて、一気に奥まで貫いた。
「あ、んん〜っ!!」
三年ぶりに感じた彼女の膣内の暖かい感触と、痛いぐらいに締め付けて来る締まりで、ダスターの背中に身震いが走る。
「って…、だ、大丈夫か?」
「ん、な、何とか……。久しぶりだったから、ちょっと、痛かったけど…」
固く閉じていた唇を開いて、呟くように答えるテッシー。
その言葉に、改めて空白の月日が長いものだったのだと言う事を感じて、ダスターの胸を痛めた。
「で、でも…、もう大丈夫よ。
動いて。ダスターの、好きなように…!」
ダスターは一回頷くと、テッシーの両脚を持って、少しずつ腰を突き立てていった。
「かっ…! はっ、あ、はぁぁっ…!!」
「凄ぇな…。お前のここ。ヌルヌルしてんのに、ぎゅっと締め付けて…。
全く変わってない」
「は、や…っ! 言わないでぇっ……!! ぁあんっ!!」
腰の動きを強くすると、彼女の乳房がその動きに合わせて上下にゆさゆさと揺れる。
「…! よ、……っと!」
ダスターがいきなり彼女の腰を掴んで、繋がったまま起こさせる。そして自身は胡座をかくような体勢になった。
「え、あ。何…っああ!?」
体勢のせいで、さっきよりも深く繋がる。
「お前も……動いてみろよ」
「あ………う、うん…」
ダスターに促されて、テッシーも真っ赤な顔で頷きながら、彼の動きに合わせて身体を上下に揺さぶるように動かす。
「あ、ふぁぁっ…!! すご、あっ、いぃっ…あ、あー…!!」
いつしか夢中になって、テッシーは彼を求めるようになっていた。
自分でも気付かないうちに、動きは速くなっていく。
「う。く…! すげ…!!」
ダスターも負けじと彼女の腰を掴んで、奥を穿ち、貫ぬく。
ベッドが壊れるのではないかと言うぐらい、ぎしぎしと音を立てて軋んでいった。
二人の顔が向き合って、どちらともなく深い口付けをする。
「は! ああ! …んっ、んむ、ふぅぅっ…!!」
舌を絡み合い、唾液を飲み合う。最早煙草の匂いも気にならない。
周りの音さえも耳には入っていない。感じるのは互いの体温と与え合う快感のみ。
「ん、はぁぁっ…! だめっ、あ、だめぇぇ…!! 私、私ぃっ…!」
テッシーの言葉と共に、膣内の収縮が増した。限界が近い事を表している。
彼女の腕がダスターの背中に回って、爪で軽く引っ掻く。
その痛みに少し眉をしかめながら、ダスターも再び登り詰めていく感覚を感じ取っていた。
「ああ…! 俺もそろそろ…!」
最後の力とばかりに腰の動きを強くしながら、ダスターはテッシーを抱き締めて耳元で囁いた。
「我慢、するな……!!」
「……! うん、んん、は、あぁぁ──────────…っ!!」
囁かれた瞬間、ゴムホースから抑えた水が噴き出すように彼女の中で快感の波が襲い、彼女は絶頂を迎えた。
同時に膣口がダスターの逸物を絞り上げるかのように締まり、彼も彼女の中に白濁の欲望を思いっきり叩き付けた。
それから、何時間経ったのだろうか。
二人は食事も忘れ、時間も忘れて何度も貪り合った。空白の三年間を埋め合わせるかの如く。
YADOの主人が気を使ってくれたのか、テッシーは呼び寄せられたりはする事なく、彼との行為に集中できた。
ダスターもダスターで、彼女の身体に自分を再び刻み付けるかのように行為に没頭した。
そしていつの間にか二人で眠っており、気が付いたら朝を迎えていた。
ダスターがゆっくりと上体を起こす。
「…テッシー。俺……」
「分かってるわ…。リュカちゃんのところへ行くんでしょ」
彼女ももう起きている。そしてダスターが漏らした言葉の意味も、ちゃんと分かっていた。
「ああ。俺はあいつを…最後まで見届けたいんだ。あいつがどんなものを見て、どんな結末を迎えるのか…」
「そう…。…実を言うとね。私たち、明日ニューポークシティに引っ越すのよ。
お客さんもいないし、引っ越した方がいいかもしれないって…」
ダスターはその言葉でようやく、ジャッキーの言った"最後の客"の言葉を理解した。
「そ、そうか…」
「ごめんなさい。今まで黙って…むご」
泣き出しそうになって呟く彼女の言葉を、ダスターは指で塞いだ。
「ふぁふふぁー?」
「謝るのはもうなしだぜ」
にやりと笑みを浮かべるダスターに、テッシーは寝そべったままコクリと頷く。
そしてダスターも、顔を赤くして目を反らしながら彼女に言った。
「あ…。その。全てが…終わったら、迎えに行っても…いいか?」
テッシーは少しキョトンとするが、暫く立って言葉の意味を理解し、ボンッと湯気を立てる。
「……は、はい…」
その言葉のあと、二人してちゃんと起きて、互いに後ろを向きながら服を着る。
「じゃあ…、俺、行くわ」
「あ。待って」
服を着終わって、ドアのところに向かおうとしたダスターを、テッシーが慌てて引き止める。
そして、彼の前で膝をついて、左脚をもぞもぞと弄った。
「…なんだ?」
「いいから……。はい。これで良しと」
テッシーが離れると、彼の左の足首には彼女の使っていたスカーフが巻かれていた。
「…これは」
「お守りよ。そして…約束の証し。お気に入りだから…、必ず、返してね」
赤くなりながら言うテッシーに、ダスターも笑みを浮かべて、自分の首元に巻いていたバンダナを解いて、彼女の前に差し出す。
「…じゃあ、俺からもだ。お前が持っていてくれ」
「ダスター…」
「必ず、お前の元に戻るから。そして………またこの村に帰ろう」
テッシーは涙を一筋零して、頷きながらバンダナを受け取った。
「じゃあ、行って来る」
「行って…らっしゃい…!!」
彼女に背を向けて、ダスターはドアの外に出る。
信じ合える仲間の元へ。
奪われた本当の幸せを、盗み返す為に。
誇り高き、正義の泥棒として。
~おわり~
-おまけ-
ダスターは歩きながら、時計を確認した。
午前の八時をちょっと過ぎた程度。
「…やべ。早すぎた…」
今から海岸に行っても、多分誰もいないだろう。
「……リュカの家にでも顔を出して、ちょっくら驚かすか」
そう決めて、左脚をちょっと引きずってリュカの家へ。
途中にあったゴミバケツに、煙草を捨てながら。
「(タバコは、もうやめよう)」
そして、リュカの家の前に付くと。
ボニーがなにやら怪訝な表情をしている。
「ん? どうしたボニー。ひょっとしてご主人達はまだ起きてないのか?」
「クゥ〜ン…」
ボニーは何だか、呆れるような哀しいような。微妙な表情をしている。
ノックを二、三度しても、返事はなかった。
やっぱり寝てるんだなと思い、目覚ましゼミとサイレンクワガタを構えながらこっそりとドアを開ける。
「おーいリュカ! クマトラ!! 朝だ……ぞ……」
ベッドの上のその光景に、ダスターは唖然とした。
二人は涎を垂らしながら、寄り添うように寝ていた。…素っ裸で。
周りにはティッシュが散乱し、ほのかに漂うイカの匂い。
「こっ、こいつら…!」
二人の関係に付いては、薄々感づいていた。しかし、ここ待て背進んでいたとは流石に予想していなかったのも事実。
「…ってゆーか終わったら下着ぐらい履け!」
少々突っ込みどころが違うと言う言葉はさておいて、幾らフリントが滅多に帰ってこないとはいえ、幾ら何でも無頓着すぎる。
「…こりゃ長兄役としておしおきしなきゃあならんな……」
と考えるダスターの目に、油性の黒のマーカーが。
「……!」
ダスターの瞳が怪しく輝いた。
そして数分後、サイレンクワガタと目覚ましゼミのダブル攻撃に起こされたリュカとクマトラがそれよりも大きな声で言葉にならない笑いと絶叫が響いたのは、言うまでもなかった。